「闇が深い」という意見も見られるSES業界ですが、なぜそう言われているのか、理由が気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、そんなSESの悪いところはどういう状況なのか、そして良いところはあるのかなどを中心として、良いSES企業の見分け方なども合わせてご紹介したいと思います。
1. SESとは
SES(システムエンジニアリングサービス)契約とは、ITエンジニアの雇用における契約形態のうちのひとつです。書類上では「準委任契約」と呼ばれており、インフラ環境の構築やシステム開発などを行うために、クライアント先に常駐して技術的サービスを提供します。
「派遣契約」と大きく違うのは「作業指示が誰から出されるか」という点です。派遣契約において作業指示はクライアント先の上長から直接行われますが、SES契約の場合、作業指示は自社の上長を経由して行われるという特徴があります。
SES契約についてもっと知りたいという方は、次の記事をご覧下さい。
2. SESの闇は深い?悪いところ6選
ではこのSES契約が「闇が深い」と言われがちなのは、どんな理由があるからでしょうか。SES契約の悪いところを見ていきましょう。
2.1 案件の良し悪しがやや激しめ
SESには様々な条件の案件が存在していますが、それゆえに良し悪しの触れ幅が通常の就職よりも激しめとなっています。それゆえにくじ引きを示すゲーム用語に例えて「案件ガチャ」と呼ばれることも。
つまり常駐先にかなりの当たり外れがあるということですが、それについては案件の紹介を受けるSES企業を選ぶ時点でしっかりと良い企業を選んでおくことが重要です。そうしておけば、「聞いていた条件と違う!」や「常駐先の人間関係が辛い」などの状況に陥った際にも、SES企業側できちんと対処してもらえます。
2.2 商流の深さについて
SES企業の良し悪しを考える場合、重要になるのは「商流の深さ」です。商流とは、簡単に説明すると「クライアントと自社の間に何社仲介を挟んでいるか」です。
仲介が多くなるほどに商流は深くなり、中間マージンが発生します。すると最終的にエンジニアが受け取れる報酬が目減りしてしまうのです。また商流が深くなることにより、より高付加価値な上流工程に携わることが難しいという側面もあります。
逆に商流が浅いSES企業は、エンジニアにとって働きやすい「プライム案件(エンド企業と直接契約している案件)」を多く確保しているのです。
2.3 働きやすさについて
常駐先に「同じ企業の社員がいるか?」によって、働きやすさは大きく変化します。もちろんクライアント先や他社の社員にも親身になってくれる人がいないわけではありませんが、やはり困った時に相談しやすいのは、同じ会社の同僚であることが多いです。
さらに一人で顧客先に常駐した場合「評価者が同じ現場にいない」「評価項目を社員に周知していない」という状態になりがちです。その場合は社内の評価が契約金額頼りになり、つまりいくら仕事の内容でがんばっても、単価が低ければ評価も低いという状況に陥ってしまいがちなのです。
2.4 指揮命令権があやふやになりやすい
SES契約は、書類上では「準委任契約」とされているケースが大半です。しかしこの「準委任契約」には「労働者派遣契約」と大きく異なる点があり、それは「指揮命令権が誰にあるか」という点です。
指揮命令権がクライアントにある派遣とは違い、SESの指揮命令権は本来、SES企業にあります。ところがその実態は、自社SES企業の上長経由ではなく、常駐先であるクライアント企業のリーダーから、直接作業指示が出されているという状況になっている場合があります。
しかしこのような「SESとみせかけて実際は派遣」という状況は「偽装請負」と呼ばれ、法令違反になります。この偽装請負が摘発された場合、行政指導など様々なペナルティーが課されることとなりますので、指揮命令権の所在には注意が必要です。
2.5 精算幅
精算幅とは、SES契約でよく交わされる契約条件の一つです。例えば精算幅が「140時間~180時間」とある場合、ひと月に就業した時間がその間だった場合、支払われる単価は同額です。しかしGWや夏休みが含まれる月などで140時間を下回った場合、控除精算と呼ばれる単価の減額が発生するのです。
とはいえこれは社員の給与ではなくクライアントからSES企業に支払われる金額の話なのですが、SES企業によっては控除の発生を避けようとして「精算幅の下限に足らないから有給取らないで欲しい」や「残業して時間を増やして欲しい」などの指示を出すケースもあるようです。
2.6 技術力が身につかない?
定期的に自社で研修や勉強会を開催しているSES企業もあるため、「SESだから技術が身につかない」と断ずるのは間違いです。とはいえ案件によって習得できる技術が偏ってしまうのは事実で、常駐先によっては開発自体が回ってこないというケースもあります。
特に未経験からIT業界に入りたての方の場合、テストばかりする案件や、ヘルプデスクで顧客対応ばかりする案件が多く回って来ることがあります。そのためタイミングが悪いとなかなか開発に携わる機会を得られず、いつまでたっても技術力がアップしたと感じられない状態に陥ってしまう場合があるのです。
3. SESの良いところ5選
そんなSES契約ですが、実は良いところもあります。次はSESの良い点5つをチェックしてみましょう。
3.1 未経験者・プログラミングスクール卒業生でもキャリアをスタートできる
日本は受託開発の市場規模が大きいため、SESは常に新しい求人が生まれている状態です。そのため未経験者からIT業界に転職したい方やプログラミングスクールの卒業生も、積極的に採用するSES企業もあります。
特に企業の業務システム開発でよく利用されるJavaなどの言語をプログラミングスクールで学んだ卒業生は、需要に即したスキルセットを持っていることが多く、求人とマッチングしやすいという状況です。さらに社会人経験者からのプログラミングスクール卒業生であれば、すでにビジネスマナーが身についているということも大きな強みになるようです。
3.2 開発・スキルアップに専念できる
フリーランスエンジニアの中には、技術力があっても営業が苦手で思うように案件が取れないという方もいます。また未経験からスタートする方は十分なポートフォリオを用意できず、やはり思うように案件が取れないという方がいる状況です。
そんな場合には、SES企業の利用がおすすめです。エンジニアの代わりに営業担当者がマッチングを行い、適した案件にアサインしてくれるのです。
さらにこれまで自分が営業に割いていたリソースをSES企業の担当者に任せてしまうことで、エンジニア自身は開発やスキルアップに専念できるようになるという利点もあります。
3.3 充実した研修が用意されていることもある
SES企業によっては、きちんとした研修を用意して、エンジニアが十分成長する機会を提供しているところもあります。さらに企業によっては、資格試験を受ける際に補助を出したり、受かった際に報奨金を出すところもあります。
このように、SESだからと一概に「技術力が身につかない」や「教育機会がない」というのは誤りです。社員の技術力アップのために充実した教育体制を用意しているSES企業もありますので、入社前にしっかりと見極めておくことが重要です。
3.4 労働時間が適正に管理される
ITエンジニアと言えばやはり残業時間が長くなりがちな印象がありますが、実はSES契約の場合はSES企業がしっかりと労働時間を管理しているので、結果的に無駄な残業は少なく抑えられます。逆に自社で作業している方が、労働時間の管理がルーズになりがちという場合も多いのです。
3.5 年齢層が高いエンジニアでも案件獲得のチャンスがある
求人には条件に年齢制限があるものも多いですが、SESでは年齢制限のない求人案件も数多く取り扱われています。年齢以外が募集要項とマッチしている人材であれば、40代や50代でもマッチング機会が得られます。年齢層が高めであっても、スキルセット次第で案件を選べるチャンスも十分にあるのです。
4. 優良SES企業の特徴
このように、一言でSESと言っても企業により大きな差異があります。良いSESを見分けることが重要になりますが、良いSES企業には、次のような特徴があります。
• 商流が浅い(元請け、二次請けまでの)案件の割合が高い
• 人事評価の基準が明確
• 自社から複数人体制で入る案件が多い
• 社員の平均年齢が高い(勤続年数が長い)
• キャリアパスが明示されている
• 研修や教育の制度が充実している
■ 商流が浅い案件の割合が高い
商流が浅い案件は、単純に考えて同じ仕事内容であっても報酬が高くなります。さらにそういった案件を受注できる企業は、商流の深い企業より上流工程に携わる機会も増え、幅広いスキルアップやキャリアアップにもつながります。
■ 人事評価の基準が明確
「評価者」や「評価フロー」、そして「昇給条件」などの人事評価の基準が明確であれば、前述のように「契約の額面のみで、実力を見ずに評価される」という事態を回避することが可能です。
■ 自社から複数人体制で入る案件が多い
契約金額以外の要素で評価してもらうためには、身近に同僚の存在が必要です。さらにいざというときに同僚は頼もしい存在であるほか、体制で入れる(必要なスキルセットを持つエンジニアを複数揃えられる)企業は、人材が安定していると言えるでしょう。
■ 社員の平均年齢が高い(勤続年数が長い)
社員(エンジニア)の平均年齢が高いということは、長く働き続けられる会社の可能性が高いと言えるでしょう。
■ キャリアパスが明示されている
勤続年数が長くなると、やはり気になるのはキャリアパスの行方です。しっかりとしたキャリアパスが明示されていると、社員が長く働くことをきちんと想定していることがうかがえます。
■ 研修や教育の制度が充実している
自社での研修や勉強会などの教育制度が充実している企業の場合、エンジニアとしてのスキルアップが見込めます。さらに事前に研修を受けることによって、スキルがマッチしない案件に急に放り込まれて困るなどの事態を防ぐことができるのです。
5. おすすめのSESの求人案件
■ フロントエンドエンジニア向けの案件
一般ユーザー向け小説投稿システムの、フロントエンド開発を行うエンジニアを募集する案件です。詳しくは案件情報ページをご覧下さい。
▸ 案件情報:フロントエンドエンジニア★toC向け小説投稿サイトの開発|プロエンジニア
■ サーバーサイドエンジニア向けの案件
経済メディアプラットフォームの開発をJavaを用いて行う、サーバーサイドエンジニアを募集する案件です。詳しくは案件情報ページをご覧下さい。
▸ 案件情報:サーバーサイドエンジニア★経済メディアプラットフォームの開発|プロエンジニア
■ インフラエンジニア向けの案件
システム更改や基盤系システムの構成変更などに関連するプロジェクトに参画する、インフラエンジニア(ネットワークエンジニア)を募集する案件です。詳しくは案件情報ページをご覧下さい。
▸ 案件情報:メール配信システム向けネットワーク設計構築|プロエンジニア
■ 組み込みエンジニア向けの案件
C言語にてリアルタイムOSプラットフォーム開発を担当する、組み込みエンジニアを募集する案件です。詳しくは案件情報ページをご覧下さい。
▸ 案件情報:組込みエンジニア★リアルタイムOSプラットフォーム開発|プロエンジニア
6. まとめ
闇が深いという意見も目立つSESですが、どのSES企業を選ぶかによって、その環境には大きな差が生まれます。そして良い企業を選べば働きやすいのは、自社開発のエンジニアと同じなのです。本記事の情報が、あなたに適したお仕事選びの一助となれば幸いです。