2016年9月20日(火)。シンガポール・セントーサ島のWorld Convention Centreにて、世界中から人々が集まるイベントが開催されました。
そのイベント名は、”Slush Singapore 2016”(https://singapore.slush.org/)。
こちらはフィンランド発・世界のスタートアップが集まるグローバルイベントで、2008年にフィンランドでスタートして以来、2015年に東京および北京でも開催されています。今年2016年の5月には、大幅に参加人数と参加国を増やす形で、再度、東京にて開催されました。(その時の様子はこちら)
そして今回、その活動範囲を広げ、シンガポールでの開催に至りました。
わすか1日のみで、参加者は2000人以上。そのうち投資家数150、スタートアップ企業数215、また60以上のメディアも参戦する形となりました。
ますますグレードアップをしていくSlush。その勢いを、初開催となったシンガポールでの模様とともにお伝えしていきます。
目次
1. シンガポール・セントーサ島で体験する異空間
今回のイベントが開催されたのは、シンガポールのセントーサ島。セントーサ島はシンガポールの中で南に位置する島で、ユニバーサルスタジオや水族館、カジノやビーチなどがあり、テーマパークとして人気を集めているエリアです。イベントの舞台となったのは、島の中にあるWorld Convention Centreという大規模施設でした。
World Convention Centreに一歩足を踏み入れると、そこはシックなホテルのような作りになっており、重厚感のある空間が広がっていました。入口からエスカレータにて地下に降りると、そこにはイベントの入口が。
中に入ってみると、未来や宇宙を思わせるような、不思議は映像が投影された空間になっており、何パターンもある為、しばしば見入ってしまいました。
入口を抜け、いよいよ本会場へ。
会場の照明は暗めで、全体が青や緑の光によってライトアップされており、あたかも異空間にいる様な感覚になりました。
Slushでは、投資家とスタートアップの出会いを促進し、世界規模のスタートアップのコミュニティを作ることを目的としており、会場の「Investor Lounge & Meeting Area」という商談スペースでは、多くの方々が集まり、話に打ち込んでいました。
驚きだったのが、食事や飲み物のサービスもあったこと。参加者はセルフで食事を取ることができ、食事をしながら商談をしている人の姿もありました。
そして、今回のイベントに集まったスタートアップのブース。シンガポールはもちろん、オーストラリア、香港、イスラエル、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、韓国、アメリカなど、多様な国からのスタートアップが自分たちの製品・サービスを出展していました。
2. アントレプレナーやスタートアップがが展開するLIVEステージ
Slushのイベントの特徴は、世界中から投資家とスタートアップが集まるということにプラスして、イベントを通して展開される、アントレプレナー(起業家)やスタートアップによる数多くのLIVEステージが展開されるということです。
今回のSlush Singaporeの会場には「Live Stage」「Future Stage」「Pitching Stage」という3つのステージがセッティングされていました。
こちらはLive Stage。
ここでは、すでに起業家として活動している方々が、これからの起業家に向け、自分たちのストーリーを語るという場。3つのステージの中で一番観客と近く、成功も失敗も包み隠さない生の声を間近で聞くことができ、とても臨場感がありました。
(左)Crayon Data(https://www.crayondata.com/)のFounder & DirectorであるSuresh Shankar氏
(右)ORAMIの(https://orami.com/)のGroup CMOであるShannon Kalayanamitr氏
(左上)MomoCentral.com(https://momocentral.com/)のCo-Founder & CTOであるJason Lim Yuen Hoe氏
(右上)
ALPHA Camp(https://www.alphacamp.co/sg/)のFounder & CEOであるBernard Chan氏
Founder at TechLadiesのElisha Tan氏
Takatack Technologies(https://www.wantedly.com/companies/takatacktechnologies)のChief Technology OfficerであるVincent Lau氏
(中央下)
Vertex Ventures(https://www.vertexventures.com/israel/)のDirector of Communicationsである Anh-Minh Do氏
HUBBA(https://hubbathailand.com/)のGroup CEO & Co-founderであるAmarit Charonenphan氏
GeekHunter(https://geekhunter.co/)のFounder & CEOであるKen Ratri Iswari氏
Hackerspace SGのCo-founderであるJustin Lee氏
8Spaces(https://www.8spaces.co/)のlaís de oliveira氏
こちらはFuture Stage。
ここは、テクノロジーの最先端を行くスピーカーたちが、将来の世の中についての自分達の考えや意見、予測を共有する場。自動運転車やAI、ドローン、ロボット手術、ヘルステックなど、テクノロジーがもたらす未来について、様々な切り口から話が展開されていました。
Golden Gate Ventures(https://goldengate.vc/)のManaging PartnerであるVinnie Lauria氏
Spotify(https://www.spotify.com/jp/invite/)のFormer CTO & First EmployeeであるAndreas Ehn氏
Carousell(https://carousell.com/app/)のCo-FounderであるQuek Siu Rui氏
(左)Impact Investment Partners LLP(http://www.impactinvestmentpartners.com/)のNadia Sood氏
(右)Synapse Partners(http://synapsepartners.co/)のFounder and Managing Directorである
Evangelos Simoudis氏
Teamie(https://theteamie.com/)のCEO & Co-FounderであるShivanu Shukla氏
Conexus APAC(https://www.conexusmobile.com/) のChief Learning OfficerであるDamine Yee氏
CLANED(https://www.claned.com/)のChief Educational ScientistであるTopi Litmanen氏
Solve Education!(https://www.solveeducation.org/)のCEOであるJanine Teo氏
Jobbatical(https://jobbatical.com/)のFounderであるKaroli Hindriks
こちらはPitching Stage。
ここではスタートアップが自分たちのサービスや製品のプレゼンを行い、審査員からの質問に答える形式のLiveが展開されていました。
今回は、200エントリーの中から選ばれたスタートアップ45社がステージに登場。その中からファイナルステージに進出する6社が選出されるようになっており、会場のステージでは、彼らによる熱の込められたトークが繰り広げられていました。
AllSome Track(https://track.allsome.my/)
マレーシアのスアートアップで、荷物をトラックにて運送する手続きが、アプリを使って簡単にできるというサービス。一定量であれば、無料でこの手続きができるようになっています。
Aimazing(https://www.aimazing.sg/)
シンガポールのスタートアップで、携帯を使って支払いができるサービスを開発。SoundWavesという音によって、端末間の情報の暗号化と解読を行うという技術が使われています。駅や店舗、オンラインストア、ATMなどで利用でき、また、鍵のロックへの利用を可能になるということです。
BIOLINKS(http://biolinks.com.sg/)
ベトナムのスタートアップで、喘息患者向けのウェアラブル型の電子デバイスを開発。こちらの端末は心拍数や呼吸数、体温などの人体のデータを観測し、早期に健康上の問題を発見したり、より良い診断を提案するというものです。ビデオやメールを通して、医師とコンタクトをとることも可能です。
そして、ピッチの最後にはベンチャーキャピタリストのトークが。
写真はInternational Finance Corporation(国際金融公社)のPravan Malhotra氏。具体的な投資先企業の例を挙げながら、投資先としのポイントについて説明しました。分野としては、「Grobal Internet」「Education」「Healttech」「Cleantech」の4つに注目しているといいます。
そして、今回集まった200のスタートアップが集結した「Exhibition & Demo Area」。
iPaymy Technologies(https://ipaymy.com/)
クレジットカードでの支払いをマイルに変え、空港券やホテル、その他のサービスに変えていくプラットフォームを展開。
early coders academy(https://earlycoders.com/)
シンガポールを拠点とする子供向けのプログラミングスクールで、経験を積んだエンジニアのインストラクターから、HTML,JavaScript,jQuery,BootStrapなどを学習します。
FLEZIO(https://flezio.com/)
シンガポールを拠点に、シンガポール・バンコク・ジャカルタの3か国にある600以上のワーキングスペースやシェアスペースを検索&利用できるプラットフォームを提供。
Tripcendo(http://www.tripcendo.com/)
地ならではのユニークな旅行を体験したい人と、ホストとしてもてなしたい人をマッチングさせるプラットフォームを提供。
Singapore University of Technology and Design(https://www.sutd.edu.sg/)
MITとのコラボレーションによって設立された同校が開発した新型バイク。
(左上)FundedHere(https://www.fundedhere.com/)
シンガポール初のクラウドファンディングのプラットフォームを運営。
(右上)REFASH(https://refash.sg/)
シンガポールを拠点としファッションのeコマースサイトを運営。
(中央下)YUEN LAW LLC(https://yuenlaw.com.sg/)
シンガポールを拠点とする法律事務所もブースを設けており、相談ができるようになっていました。
Singtel Innov8(http://innov8.singtel.com/index.html)
ハードディスクドライブ製造メーカーであるアメリカのシーゲイト・テクノロジーグループのベンチャーキャピタル。会場には、同社以外にも多数の投資家が参加してり、ブースで熱心に話し合いをしている光景を目にしました。
3. 最年少13歳が送るオリジナルストーリー ”The Big Red Dot”
そして今回、イベント開催前から話題になっていたのですが、Future Stageにて、本イベント最年少、13歳のDylan Sohくんのスピーチが行われました
ステージでDylanくんが話したのは1つのストーリー。
「The Big Reg Dot」というタイトルのこちらの物語は、彼と彼の父親であるCalvin氏が一緒に作ったのだといいいます。ちなみに、イラストは全てDylanくんが描いたそうです。
「昔、小さくて、赤い点がいました。」から物語はスタート。
そしてふと、自分は周りから言われる人生を生きたいのか、それとも自分の人生を生きたいのか、そしてこれまで自分は誰の声を聞いて生きてきたのかと、疑問に思います。
そこで、彼女(点は女の子の設定)は友達の元を後にし、冒険に出かけていきます。
途中行く手には、色んな障害が現れますが、彼女は前向きに乗り越えていきます。
そして、周りの人が「失敗」と呼んでいるものを、彼女は成功のチャンスとして掴み、更に前進していきます。
すっかり立派になった彼女に、以前一緒にいた友達が話を聞きに来ます。
そんな中、友達から「でも、なんで君は自分のことを小さな赤い点って言うの?君はそんなに小さいようには見えないよ」と言われ、はっと気づきます。自分は自分のことを小さいって思ってたけれど、それは自分がそう思っていただけなんだ。
そしてこれまでの冒険のことを振り返りながら思います。外見は小さいけれど、自分の中身は大きいんだ!と。
最後に、彼女が冒険の途中で辛くなった時、いつも口ずさんでいた歌がスクリーンに映し出されました。
そして、Dylanくんがギターを弾きながらこちらの歌詞を歌うというパフォーマンスを披露。彼が歌いえた瞬間、客席からは本イベントで一番大きかったのではないかと思う拍手が沸き起こりました。
4. 選出者6名によりファイナルピッチバトル
そしてイベントが終わりに近づいてきた頃、ついに、Slushのメインイベントであるスタートアップのファイナリストたちによるピッチバトルが展開されました。
Onelyst(https://www.onelyst.sg/) シンガポールのスタートアップで、ローンを比較し、希望にそいながら、一人一人にあったローンプランを提案するプラットフォームを開発。
PolicyPal(http://www.policypal.co/index.html)
シンガポールのスタートアップで、保険を簡単かつ明瞭にし、保険の管理を最適化できるモバイルアプリを開発。
こちらは前でも紹介したBIOLINKS
SONATE(http://sonate.technology/)
サウジアラビアのKing Abdullah University of Science & Technology(キング・アブドゥッラー科学技術大学)から派生し、特殊なアルミ膜と金属性のナノワイヤーを開発。
Parcel Perform Pte. Ltd.(https://www.parcelperform.com/)
シンガポールとベトナムの拠点を構えるスタートアップで、データ分析によって顧客のeコマースをビジネスをサポートするプラットフォームを開発。
Spalk(https://www.spalk.co/)
ニュージーランドのスタートアップで、スポーツのライブメディアを開発・運営。スポーツを観戦しながら、自分のコメントを発信できたり、ファン同士でその場を共有することを可能にするということです。
5. Slush Singapore 2016 ファイナリストが決定
6名のファイナリストによるスピーチも終わり、参加者が見守る中、ついに勝者が選ばれることに。
そして今回、200のスタートアップの頂点に輝いたのは、勝者に輝いたのはBIOLINKS!
そして次の開催に向け、Slushはすでに動き始めています。
次回の舞台は、こちらも初となる上海。2016年10月31日に開催予定です。(https://shanghai.slush.org/)
そして今回のSlush Singaporeの立役者であるボランティアのみなさん。Slushの特徴なのですが、イベントは全てボランティアによって運営されており、本イベントでは約200人の方が志願し参加したということです。
イベントの最後には、こちらもまたまたSlushの特徴であるアフターパーティーが行われました。「Suprise aftere party」と名づけられたこちらのパーティーは、夜が明けるまで続けられ、世界中から集まった人々が、最後の最後までこのシンガポールの地で開催されたスタートアップの祭典を堪能していました。
早いスピードで、そして国を広げながら、次々と開催されていくSlushのスタートアップイベント。参加人数も毎回大幅に拡大し、その成長していく姿には目を見張るものがあります。
今後も彼らと、そして世界中から集まるスタートアップに注目し、みなさんにお伝えしていきます。