2016年5月13日(金)と14日(土)の2日間、幕張メッセにて、スタートアップイベント”Slush Asia 2016”が開催されました。元々このスタートアップイベント「SLUSH」は、フィンランドのヘルシキンでスタートしたイベント。そして、そのアジア版が”Slush Asia ”として日本で開催されるようになり、今回のイベントは2015年4月の第1回目に続き、2回目の開催となります。
目次
1. Slush Asia 2016
http://asia.slush.org/
フィンランドのヘルシキンにて2008年よりスタートしたスタートアップイベント「SLUH」のアジア版。フィンランドでのスタート当初は、200から300人規模とごく少数の集まりでしたが、2015年には参加者15,000人、スタートアップ企業1,700社、ヴェンチャーキャピタル及び投資家630人と、巨大イベントへと急成長しており、ヨーロッパを牽引するスタートアップイベントとなっています。
ちなみに、イベントでのスピーチ及びトークは全て英語で行われます。そして、イベントが学生たちによるボランティア主催によって運営されているというのも大きな特徴。元々SLUSHの創業時、開催者が忙しく、その運営を学生に任せたことから学生によるボランティア文化が生まれたということです。
2. 世界から集まった豪華スピーカーたち
「SLUSH」の特徴は、経験豊富なアントレプレナーによるスピーチと、スタートアップ企業によるピッチングコンテストの2つの軸によってイベントが構成されていることです。そして今回、集まったそのスピーカーたちは錚々たるメンバーでした。
まず、オープニングを飾ったのは、ソフトバンクグループ代表取締役副社長のニケシュ・アローラ氏。
“Utility is connectivity and utility is broadband”と、何度も”Utility”を強調していました。これは、現在世界中をつなげ、ブロードバンド化させた仕組みであるインターネットの意味合いと思われ、Google やFacebook、Google map、LINE、Uber、WhatsAppはこのutilityをがあったからこそ成功したのだといいます。そして、今後、ずっと既存のやり方でビジネスを続けていくことは難しいとも。ただ今のこの時代は、このutilityを活用することで、新しいビジネスを生み出せる可能性とチャンスが広がっているといいます。
スピーチの最後には、外に出て、大きなモノ・自分が変えたいと思うモノを見つけ、自分と世の中の人々の為の出来ると信じて取り組んで欲しいとメッセージを送りました。
続いて、日本でのスピーチは初となるアリババグループのChief Technology OfficerであるJIAN WANG氏。同氏も、インターネットは全てを変え、今は人間の歴史において一番ベストな時期だと強調しました。インターネットは新しいインフラとなって私たちが出来ることを広げ、今やデータは資源として活用するものになったといいます。また、インターネットは危険だという人がいるけれども、今後は全てがインターネット上に安全な形で置かれ、利用されるようになるといいました。
その他にも、Head of AI LabのAlon Halevy氏や、海外送金の際に掛かる手数料を、大幅に下げて送金することができるサービスTransferWiseのTaavet Hinrikus氏などが登壇。
日本からは株式会社DeNAの取締役会長である南場智子氏、iemo株式会社の代表取締役CEOである村田マリ氏も参戦。これまで歩んでこられた経歴についてスピーチを行いました。
3. スタートアップ企業によるピッチコンテスト
そして、もう一つの柱であるピッチコンテストでは、約60社のスタートアップ企業が競い合い、この中から選出された5社が、最終選考のPitching Finalに進むことができます。挑戦者は、約5分間のPowerPointを使ってのプレゼントを行い、その後、審査官の質問に回答します。
「Life Style」「Iot/Consumer Electronics」「AI/VR/AR/Big Data」「Social Communication Tools」「E-commerce & Online Market place」「Enterprise Software」といった分野ごとに、スタートアップの代表が自分たちの製品・サービスをアピールしました。
(左)適性クイズを通して企業と人をマッチングさせる「mitsucari」
(右)クラウド自動化プラットフォームを展開する「mobingi」
(左上)ソーシャルでシェアした写真をイベント会場等で専用端末から印刷できるサービス「♯snspnap」
(右上)衛星や宇宙関連のサービスを展開する「SPACE SHIFT」
(中央左)登山・アウトドア専用の地図アプリを展開する「YAMAP」
(中央右)ソーシャル上で様々なチャレンジをすることで賭けを行うサービス「Eristica」
(下)チャットサービスを展開する「DeeMe」
また別会場では、今アジアで最も有力とされているスタートアップ企業が、スタートアップの代表として登壇を行いました。
(左上)求職者に職業訓練のプラットフォームを提供する「Kalibrry」
(右上)クラウドソーシングによる低価格翻訳サービス「Gengo」
(中央左)iPadによるレストラン向けPOSサービス「iChef」
(中央右)フィットネスクラブやジムを検索できるプラットフォーム「KFit」
(下)スマートフォン向けゲーム開発を手掛ける「Playlab」
4. スタートアップ企業によるショウケース
会場では、スタートアップ企業がブースも出展しており、ここで投資家はスタートアップと直接商談を行うことができます。
(左)Pitching Finalにも選出された「meleap」のスポーツゲーム
(右)人同士が10秒以上触れ合うことによって写真が撮れるHUMAN CAMERA「TOUCHY」
(左)Google主催のSPACE RACEに挑戦する純民間発の月間調査チーム「HAKUTO」
(右)遊びながら、自然と文字に触れられるロボットおもちゃ「wordee」
外国人留学生の留学サポートや交流イベントを展開する「GoGo World」。2015年には1000人以上の留学生を日本語学校に紹介したそうです。日本だけでなく、韓国への留学生の支援も行っています。
また、企業側の出展もあり、NOKIAは「OZO」という360度から映像の撮影が可能なカメラを開発し、そのカメラを組込んだVRを披露(下記左)。富士ソフトが開発したロボットも登場(右)。
イベントに参加して見えた現在の世の中のキーワードは「AI」「ビッグデータ」「ソーシャルコミュニケーション」「クラウド」「VR」、そして「ロボット」「宇宙」。 自分に合うように生活をカスタマイズしたり、顧客に対して本当に求められているモノを提供する。手間の掛かっていた作業をより簡単に、よりデザイン性を持って行う。これまでは物理的にといった制約があって難しかったサービスを気軽に受けられるようになる。そして、仮想現実やロボット、宇宙の更なる実現化など。前は難しいと思っていた現実が、着実に身近になってきているんだということを感じました。
5. スタートアップファイナルバトル「Pitching Final」
そして、イベントの最後、ついに選考を勝ち抜いた5社によるファイバルピッチが行われました。
(左)ヘッドマウントディスプレイやセンサーを使ったスポーツゲームを展開する「meleap」
(右)360度の動画を撮影できるカメラ「Giroptic」
グラフィックデザインのプラットフォームを展開する「Vectr」
Iot製品・サービス向けのクラウド型分析プラットフォームを展開する「MoBagel」
そして、今回のファイナルバトルの栄えある勝利を獲得したのは台湾のスタートアップ「SkyREC」。 BIを駆使したリアル店舗の顧客分析プラットフォームを展開しており、顧客の流れや滞在時間、人気エリアや商品などの分析を行うことで、売上げ増加をサポートします。現在、本国台湾での導入も順調に進んでいるそうです。
6. 最後は参加者全員でAfter Party
スタートアップバトルが終了した後は、全員参加可能なAfter Partyが開催され、DJの音楽の元、最後の盛り上がりをみせていました。今回のこのイベントに集まった多くの人たちが、イベントの余韻が残る中、思い思いの時間を楽しんでいました。
本拠点フィンランドにて、”スタートアップはカッコいい”というイメージを作り上げた「SLUSH」。アジアで2回目となる本イベントも、会場を訪れた多くの人々に、同じ様なイメージを持たせることがでたのではないかと思います。 登壇したスタートアップの活躍はもちろん、これからも続々出てくるであろうスタートアップにも注目し、今後もみなさんにいち早くお伝えしていきたいと思います。