会社員からフリーランス(個人事業主)になると、働き方や制度においてさまざまな面で変化があります。自由なイメージが強いフリーランスですが、これまで会社に頼っていた面倒な部分、例えば健康保険、年金、税金、契約などについてはすべて自分で引き受けなければなりません。本記事ではフリーランスになって加入できる社会保険についてどのような種類があるのかを紹介します。
1. フリーランスが加入できる社会保険
フリーランス(個人事業主)が加入できる主な社会保険についてご紹介します。
1.1 健康保険
フリーランスが加入できる健康保険には大きく3つの選択肢があります。
1.1.1 国民健康保険に加入する
国民健康保険はフリーランスなど会社員として企業勤めをしていない人が一般的に加入を義務付けられている健康保険です。国民健康保険の保険料は前年度の所得によって計算されるので、サラリーマンから独立した人や昨年の所得が多かった人は高額な保険料となってしまうのが懸念材料ともいえます。
1.1.2 任意継続保険制度を利用する
任意継続保険制度とは勤めていた会社の加入する健康保険をそのまま継続する方法で、退職時に契約を延長する形になります。条件として退職日までに2ヶ月以上継続して社会保険に加入していた人が適用出来ますが、任意継続に加入できるのは2年間です。また、会社では折半していた保険料ですがフリーランスでは全額を負担することとなります。
1.1.3 健康保険の被扶養家族になる
フリーランスとしての収入が少ないときは、社会保険に加入している家族の扶養になることが出来ます。下記の条件を満たし扶養家族となればその場合の保険料の負担はゼロです。
【扶養に入れる基準】
・被保険者と三親等以内
・年収が130万円未満、かつ被保険者の年収の約2分の1未満
・健康保険の被保険者と生計を共にしていること。
・退職日の翌日から5日以内に加入すること。
1.2 国民年金
国民年金は「基礎年金」とも呼ばれるものであり、20歳以上60歳未満の国民全員が必ず加入することになっている年金です。個人事業主になると強制的に国民年金へ強制的に加入することになる為、フリーランスへ転身するときには会社員が加入する厚生年金からの切り替え手続きが必要です。会社員の厚生年金であれば、扶養家族がいても金額は変わりませんが、フリーランスの国民年金であれば扶養する家族分の保険料が必要になります。
1.3国民年金基金
国民年金基金とは通常の国民年金に加えて、任意で加入できる年金制度です。国民年金に対して、将来の年金額をさらに上乗せすることができますが、原則、途中解約や途中脱退をする事が出来ません。フリーランスになっても将来の年金額を増やしたいという方には検討をおすすめいたします。
2. フリーランス(個人事業主)が加入できない社会保険
会社員の時には当然のようにあった社会保険ですが、フリーランスは労働者ではなく、個人事業主となるので加入できない保険があります。
2.1 雇用保険 (失業保険)
フリーランスの場合、雇用保険に加入することはできません。また失業保険をもらいながらフリーランスとして働くこともできませんので、注意しましょう。
2.3 厚生年金保険
厚生年金保険は、基礎年金となっている国民年金に上乗せされて給付される年金です。厚生年金保険の対象者は、主に会社員やサラリーマンなどが挙げられ、保険料の半分を会社が支払ってくれています。フリーランスの場合はこれに代わり国民年金への加入が義務となっています。
3. フリーランスがリスクに備える保険
フリーランスは労災保険や雇用保険には加入できません。つまり会社員のように仕事中にケガをしたり、育児のために休業をしたり、仕事を辞めたとしても、給付を受けることができません。なので、いざというときのために手元にお金をいくらか残しておくことが大事といえるでしょう。リスクが多いフリーランスが備えるべき保険についても確認しておきましょう。
3.1 フリーランス協会保険
健康保険や年金に加え、さらに手厚い保障を付けたい場合はフリーランス協会への加盟もおすすめです。年会費が1万円発生しますが、賠償責任がおきた場合の保険や、最長1年の所得補償制度が割安で利用可能なので、さらに保険を手厚くすることができます。そのほかにも会計サービス、法務税務相談のサービス優待や、福利厚生サービスの利用、コワーキングスペースの割引などが受けられるといった特徴があります。詳しい保障内容はフリーランス協会のベネフィットプランから確認できます。
- (参照元:ベネフィットプラン - フリーランス協会)
また、フリーランスの失業保険として政府が組成を検討している「所得補償保険」が実現した場合は、フリーランス協会に加入していることが条件になるとのことです。近年、政府はフリーランスの働き方改革を進めており、フリーランス協会はその動きに呼応した形で発足しています。
3.2 民間保険(任意保険)
フリーランスの場合、公的保険だけでは不安なことも多く社会保障が薄いフリーランスにとって民間保険は大きな助けとなるでしょう。民間保険は大きく分けると下記のようなものが挙げられます。加入するかしないかは個人の任意ですので任意保険とも呼ばれています。
・生命保険:遺族補償や生活保障、個人年金
・損害保険:災害補償、車等の事故補償
・第三分野医療保険:介護保険、傷害保険、がん保険
フリーランス向けの民間保険として代表的な商品をご紹介しますので参考にしてみてください。
◆ ライフネット生命
フリーランス向けに保険加入機会を提供する機関として日本で初めてインターネットを通じて保険の販売を開始したライフネット生命が、フリーランスで働く人向けに保険の販売を開始
4. フリーランスに人気の文芸美術国民健康保険組合とは
◆収入に関わらず一定の保険料。高収入(目安は所得300万円以上)になればなるほどお得になる。
フリーランスとして働く場合、文芸美術国民健康保険組合が人気です。文芸美術国民健康保険組合は、文芸や美術、著作活動に従事していて、組合加盟団体に入っている人とその家族が加入できる国民健康保険制度です。一番の特徴は収入が多い少ないにかかわらず保険料は一定額で良く継続して加入できることです。収入が低いときは国民健康保険より高い金額を負担することになりますが、高収入になればなるほどお得感は増します。
【令和元年度 文芸美術国民健康保険組合の保険料】
・組合員 1人月額 19,600円 (医療分 16,000円 後期高齢者支援金分 3,600円)
・家族 1人月額 10,300円 (医療分 6,700円 後期高齢者支援金分 3,600円)
・介護保険料 (満40歳から64歳までの被保険者)
・1人月額 4,000円
目安として、所得がおよそ300万円を超えるなら国民健康保険より文芸美術国民健康保険組合への加入を検討すると良いでしょう。文芸美術国民健康保険組合の加入資格は以下のように定められています。他の健康保険と異なり、その業種で働いていることを証明できる書類の提出が必要になります。
【文芸美術国民健康保険組合への加入資格】
日本国内に住所を有し、文芸、美術及び著作活動に従事し、かつ、 組合加盟の各団体の会員である者とその家族。
◆ 組合加盟の各団体一覧はこちら
例えば、フリーランスのWebデザイナーの場合、まず日本イラストレーション協会(JILLA) や、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)の会員になる必要があります。詳しくは各協会のホームページをご参照ください。
その他、文芸美術国民健康保険への加入には、所得税の確定申告書B控や作品例などの提出も求められます。
詳しくは下記をご確認ください。
◆ HP:文芸美術国民健康保険組合
5. まとめ
「将来フリーランスになりたい」「今は無理でもいつかは・・・」と、様々な理由で自分らしさを大切にした働き方として、フリーランスを希望する方は意外と多いのではないでしょうか。フリーランスを目指した場合、会社員の時とは違う保険制度となることを心得ましょう。病気やケガ、将来の年金についてなど、万が一に備えて保険について理解しておくことは重要です。フリーランスの社会保険について知るためにも本記事の内容をぜひ参考にしてみて下さい。