競技プログラミング(プログラミングコンテスト)を開催するAtCoder社は、実践的なプログラミングスキルをはかる検定として「アルゴリズム実技検定」の実施を発表しました。第1回目の検定は12月14日に開催されます。
「アルゴリズムをデザインし、コーディングする」というプログラミングの実践スキルを測る日本初の検定として注目を集めています。
1. アルゴリズム実技検定とは
アルゴリズム実技検定は、アルゴリズムの実力スキル、つまり、1からプログラムを作成する能力が問われ、実践を想定した検定です。
検定の概要に入る前に、まずは、開催元であるAtCoder社について簡単に解説します。
1.1 AtCoder社について
開催元である、AtCoder株式会社は、オンライン参加型のプログラミングコンテスト(競技プログラミング)サイトを運営する企業であり、登録ユーザー数は11万人を超え、毎週開催されるプログラミングコンテストには一度に5000人以上が参加しています。
また同社は、企業の社内試験や採用試験のためのプログラミングスキル判定サービス等へ問題を提供したり、AtCoderランク(コンテスト参加者の成績を8段階にランク付)を利用する転職・求職支援サービスの運営などを行っています。
1.2 アルゴリズム実技検定の目的
AtCoder社は「本検定を通じてIT人材のプログラミングスキルを測る"基準"をつくることで、日本における高度IT人材不足の解消、ならびに高度IT人材活躍の機会創出を図ってまいります。」と述べています。
◆ 日本の高度IT人材不足解消
ITの技術進化によりエンジニアの種類も役割も幅広く増加し、世界中で高度なスキルを持つIT人材の需要が高まっています。
日本においても、経済産業省による2018年「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には先端的なスキルを持つIT人材が日本国内で約55万人不足すると推定されています。
この状況下において、今後重宝されるIT人材とは、プログラミングやツールの知識のみならず、実際の開発現場でその時の状況にあわせて、言語やフレームワークのアップデート、また新しい技術への変化にもすばやく対応できる高度IT人材です。
そのためには、言語やツールの使い方にとどまらず、ロジックを自分で組み立て素早く形にする能力が求められるでしょう。
このアルゴリズムのスキルを強みとするエンジニアは、高度IT人材としても活躍が期待されます。
◆ IT人材のプログラミングスキルを測る"基準"となる
企業が高度IT人材の確保を試みる際に、プログラミングスキルを把握する方法がなく、求職者と企業間で採用のミスマッチ問題も発生しています。
既存のIT関連の検定は、特定分野の知識や、プログラミング言語の文法などプログラミング言語そのものへの理解を問う問題が大半です。
それにより、知識はあるが実践の場で必要となるプログラミングはできないといったことも起こっています。
アルゴリズム実技検定は、このような問題を解消し、実践的なスキルを測る"基準"となることを目指していると言えるでしょう。
2. アルゴリズム実技検定概要
2.1 重視されるのは "実践スキル" !
【3つの特徴】
- 実際にプログラムを書いて実行し、その結果で能力判定が行われる
- C++、C、Java、Go、Python、Kotlinなど40を超える言語から自由に選択可能
- 効率的なロジックを早く正確に記述する思考力が測定される
アルゴリズム実技検定では、プログラムを書いて実行する、知識型ではない実践的なスタイルをとり、特定の言語に限定されず受験者が得意なプログラミング言語を選ぶことができ、根本的なアルゴリズム、つまり、ロジックを組み立ててプログラムを作成する「アルゴリズムの実力」スキルが測れます。
2.2 一度の検定で5段階の評価が受けられる
アルゴリズム実技検定では、成績に応じて、5段階にランク分けされ、AtCoder公式認定の等級となります。
【問題数】:15問・100点満点
【ランク】:エントリー(25~39点)、初級(40~59点)、中級(60~79点)、上級(80~89点)、エキスパート(90~100点)
これに対して、通常のAtCoderのプログラミングコンテストでは、何度もコンテストへの参加を重ねることで、成績に応じてレーティング(評価)が変化し、青・水・緑・茶・灰・黒などの色別に評価される仕組み(AtCoderランク)です。
このAtCoderランクで高スキルを示す色を保持していれば、スキルの証明にもなりますが、レーティングには多少時間がかかることになります。
言い換えれば、アルゴリズム実技検定は一回受ければAtCoderの色と同等の評価が得られる点がメリットであるといえるでしょう。
さらに、レーティングよりも、資格の方が対外的にもわかりやすい面もあります。
2.3 アルゴリズム実技検定の試験対策
競技プログラミング未経験者や、初めてアルゴリズムのスキルを測るような試験を受ける方は、試験対策をどのように進めればいいでしょうか。
今回のアルゴリズム実技検定は第一回目の開催となるため過去問などはありませんが、公式サイトにはサンプル問題が用意されています。
◆ サンプル問題を解く
まずは目を通してみて実際に解いてみるといいでしょう。試験のイメージをつかめるかと思います。
● アルゴリズム実技検定 サンプル問題ページ
https://atcoder.jp/contests/past-sample
◆ 書籍で勉強する
著者:秋葉拓哉, 岩田陽一, 北川宜稔 (著)
出版社:マイナビ
出版日:2012年01月28日
価格:3,608円(税込)
ページ数:368ページ
通称:「蟻本(ありほん)」とも呼ばれる本書は、競技プログラミング参加者の必読書としてもよく知られています。
プログラミングコンテストにて世界トップレベルの成績を誇る著者たちによる、コンテストで得た知識やノウハウが難易度別にまとめられています。
本書のコードはC++で書かれています。解説が簡略化されている部分などは初心者には難しいと感じるかもしれませんが、基本的なアルゴリズムが網羅されており、じっくり考えて理解できるような内容です。
問題を通してアルゴリズムのしくみや考え方を楽しく習得できますので、手に取ってみることをおすすめします。
3. アルゴリズム実技検定実施要項
【アルゴリズム実技検定要項】
● 名称:アルゴリズム実技検定/Practical Algorithm Skill Test (PAST)
● 開催日時:2019年12月14日(土) 13:00~(5時間)
● 受験方法:オンライン受験/AtCoderIDを使用して場所を問わず受験可能
● 受験費用(税込):一般 8800円/人 団体受験(30名以上) 7040円/人 団体受験(100名以上) 6160円/人
● 主催・運営者:株式会社AtCoder https://atcoder.jp
● 申し込み:AtCoder アルゴリズム実技検定サイト https://past.atcoder.jp/
4. まとめ
アルゴリズム実技検定の第1回目の開催日は12月14日。もう間近となりました。
プログラミングコンテスト開催で国内最大のAtCoder社が手掛けた、これまでにない、日本初の"実践スキル"を測る検定ということで、競技プログラミング経験者からもエンジニアからも注目を集めています。
気になる方は自分の"実践スキル"の実力を試すためにも、検定にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?