ITエンジニアとして転職を考えている人で、SIerを選択肢として考えている人も多いでしょう。
そこで今回は、待遇を判断する上で参考となるSIer平均年収ランキングベスト15を紹介します。
SIerの大手企業ではどのくらいの年収がもらえるのか、将来的に年収アップが期待できる企業はどこなのか知りたいと考えている人はぜひ参考にしてください。
1. SIerの基礎知識
以下で、SIerとは何かについて、言葉の定義や分類から解説します。
年収の高いSIer企業ランキングを転職の参考情報として活用するために、まずは基礎知識を理解しましょう。
1.1 SIerの定義
まずは、SIerの言葉の定義と、4つの分類について見ていきましょう。
1.1.1 「システムインテグレーション」を行う事業者
SIerとは、システムインテグレーションを行なう事業者を意味します。
システムインテグレーションは、顧客の求める情報システムの要件定義・設計・構築・保守運用まで請け負うサービスのこと。そして、そのようなサービスを提供する企業や専門家がSIer(システムインテグレーター)です。
SIerの中には、コンサルティングを行い、それに基づいたシステム開発によって業務効率化やDXの推進といったソリューションを提供している企業もあります。独自の強みを持ったソリューションを提供している企業は年収が高くなる傾向があるので、優良なSIerを判断する際の1つのポイントと考えるとよいでしょう。
SIerとは何か、また混同してしまう人も多いSESとの違いについて詳しく知りたい人は以下の記事もご覧ください。
1.1.2 SIerの分類は4種に分かれる
SIerは企業の成り立ちによって、以下の4つに大きく分類できます。
- ユーザー系
- メーカー系
- 独立系
- 外資系
ユーザー系SIerは、銀行や保険会社といった大企業の情報システム部門が独立してできたSIerです。代表的なユーザー系SIerは野村総合研究所や伊藤忠テクノソリューションズがあります。
メーカー系SIerは、ハードウェアを製造してるメーカーが運営しているSIer。代表的なメーカー系SIerは富士通があります。富士通はPRIMEQUESTという自社製品であるサーバや、ETERNUSというストレージ製品などと組わせてソリューションを提供しています。
独立系SIerは、メーカーやベンダーに縛られない、システムインテグレーションを目的に設立されたSIer。代表的な独立系SIerは、大塚商会です。独立系SIerならではの自由度の高い提案を強みに、機器販売とSI事業を組み合わせた独自のビジネスモデルを構築しています。
外資系SIerは、世界規模のグローバルなマーケットをターゲットにシステムインテグレーションを提供しているSIer。代表的な外資系SIerは日本オラクルです。日本オラクルはITmediaによると平均年収が1,046万円と高いですが、事業領域が広くSIerに留まらないため、今回のランキングには掲載していません。
後ほどランキングで紹介するNTTデータは、NTTの社外向けのSI事業を担う部門が独立して設立されました。そのため、上記の4つのSIerのどの分類にも該当しません。
2. 【年収編】SIer企業ランキングベスト15
平均年収の高いSIer企業ランキングベスト15を紹介します。
社風・ビジョン・福利厚生など、さまざまな企業を見極めるポイントがありますが、その中でも年収は理想の転職を実現する上で重要な要素。
ぜひ、以下のランキングを優良なSIerを見極める際の参考にしてください。年収については、以下のWebページのデータを参照しています。
【各平均年収の参照元】
IT系上場企業の平均給与を業種別にみてみた 2020年版 パッケージソフトウェア系、SI/システム開発系、クラウド/通信キャリア系|ITmedia NEWS
2.1 【1位】野村総合研究所(ユーザ系SIer)
野村證券から独立して設立されたユーザー系SIerである野村総合研究所(NRI)。現在も野村ホールディングスを最大の顧客として抱えています。
野村総合研究所は、
- コンサルティング
- 金融ITソリューション
- 産業ITソリューション
- IT基盤サービス
の4つの事業を軸に展開。国内最大手のシンクタンクである野村総合研究所はリサーチと分析、そして高い専門性を持つコンサルタントによるコンサルティングが特徴です。企業からの信頼の高さが年収にも反映されていると言えるでしょう。
また、5G・マルチクラウド・xTechといった先進的なテクノロジーを活用したソリューションの提供にも力を入れています。
野村総合研究所の平均年収は1,235万円です。
参照:NRI 野村総合研究所
2.2 【2位】ISID(独立系SIer)
ISIDは、電通とGE(ゼネラルエレクトリック)のジョイントベンチャーとして設立された独立系SIer。
電通グループを始め、金融・製造業界の企業を中心にソリューションを提供しています。
また、平均年収が高いだけでなく、待遇面に満足しているという評判も多く見られます。社員同士の関係性がフラットで風通しがよく、最先端のテクノロジーにチャレンジする風土があることがそのような満足につながっていると考えられるでしょう。
ISIDの平均年収は993万円です。
2.3 【3位】オービック(独立系SIer)
オービックは基幹業務ソフト「奉行シリーズ」や統合業務ソフトウェア「OBIC7」で知られる独立系SIerです。
企業として50年以上の歴史を持ち、250業種20,000社以上にシステム導入を行ってきた豊富な実績がオービックの強み。そのような知識とノウハウを生かして、多様な業界の企業に幅広いソリューションを提供しています。
コンサルティングからシステム導入後のサポートまで、自社で一貫して提供するワンストップ・ソリューション・サービスの提供にこだわりを持っていることが、オービックの事業の特徴です。それにより、安定した経営基盤を築けていることが高い平均年収にも反映されています。
オービックの平均年収は921万円です。
参照:オービック
2.4 【4位】伊藤忠テクノソリューションズ(ユーザ系SIer)
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、伊藤忠グループに属する商社系のユーザー系SIerです。
1979年に設立された大手SIerで、企業や官公庁を中心に経営課題解決のためのソリューションを提供。その中でも、特にITインフラ構築に関する分野に強みを持っています。
また、近年では新規事業の開拓やグローバル展開にも意欲的に取り組んでおり、高い年収だけでなく、将来性も期待できる企業と言えるでしょう。
伊藤忠テクノソリューションズの平均年収は896万円です。
2.5 【5位】大塚商会(独立系SIer)
通販サイトの運営で知られる大塚商会は、独立系SIerとしてSI事業も展開しています。
大塚商会の事業の柱は、
- たのめーる:カタログ通販サービス
- たよれーる:アウトソーシング事業
- SI事業:コンピューターやネットワーク関連のソリューションを提供
の3つです。独立系SIerの強みである柔軟な提案力を生かし、顧客の課題を解決するシステムソリューションと導入後の運用支援をワンストップで提供しています。
大塚商会の平均年収は851万円です。
参照:大塚商会
2.6 【6位】日鉄ソリューションズ(ユーザ系SIer)
世界最大規模を誇る製鉄メーカーの日本製鉄の情報システム部門が基となり設立されたユーザー系SIer「日鉄ソリューションズ」。日鉄ソリューションズは、製造業界・流通業界・金融業界を中心に事業を展開しています。
AIやクラウドサービスといった最先端のテクノロジーを活用したDXを推進するソリューションの提供にも意欲的です。幅広い顧客に対して、経営課題解決を実現するソリューションを提供しています。
日鉄ソリューションズの平均年収は845万円です。
参照:日鉄ソリューションズ
2.7 【7位】ネットワンシステムズ(独立系SIer)
ネットワンシステムズは、ネットワーク機器の分野において世界トップクラスのシェアを誇るシスコシステムズの製品を豊富に取り扱う大手独立系SIerです。
クラウドを活用した企業の課題解決に最適なシステムアーキテクチャの創造に、ネットワンシステムズ強みを持っています。
また、アメリカやシンガポールに現地法人を設立し、事業のグローバル展開にも力を入れるなど新規事業の開拓にも意欲的。
ネットワンシステムズの平均年収は837万円です。
参照:ネットワンシステムズ
2.8 【7位】日本ユニシス(独立系SIer)
1958年に設立された日本ユニシスは、60年以上の歴史を持つ独立系SIer。
- 金融
- 官公庁
- 医療
- 製造
- 小売
- 電力
- 教育
といった幅広い業界に対して、コンサルティングから保守運用まで担う総合的なソリューションを提供しています。
日本ユニシスは平均年収が高いだけでなく、社員育成のための研修制度を整えるなど福利厚生も充実。長期的に働きやすい企業と言えるでしょう。
日本ユニシスの平均年収は837万円です。
参照:日本ユニシス
2.9 【9位】NTTデータ
野村総合研究所と並ぶSIer業界を代表する企業「NTTデータ」。NTTグループの中核を担う企業の1つで、グループとしてのシナジーを発揮するためにITソリューション企業の変革にも意欲的に取り組んでいます。
NTTデータは、官公庁・自治体・金融機関を始めとしたさまざまな業種の企業にソリューションを提供。
- ビッグデータやBI
- AI
- IoT
- ロボティクス
- クラウド
といった最先端のテクノロジーを活用したソリューションの提供がNTTデータの特徴です。
また、国内のSIerへの需要縮小を受けて、海外進出も積極的。年収は野村総合研究所などと比較するとやや低めですが、ワークライフバランスの実現のしやすさや福利厚生の充実から待遇への従業員からの満足度は高くなっています。
NTTデータの平均年収は834万円です。
参照:NTTデータ
2.10 【10位】NEC(メーカー系SIer)
NECは国内最大手のメーカー系SIerで、SI事業の中核としてNECネッツエスアイを運営しています。
NECネッツエスアイは、ICTシステムの企画から保守運用、アウトソーシングサービスまでワンストップで提供。
公的機関やインフラ産業に対するソリューションの提供に強みを持っており、安定した事業基盤を確立しています。そのような堅実な事業展開が平均年収の高さにも反映されていると考えられるでしょう。
近年では、
- 働き方改革への取り組みのサポート
- IoTやAI
- サイバーセキュリティ
- ロボット活用
といった需要が拡大している分野へのソリューションも積極的に行っています。
NECの平均年収は815万円です。
参照:
• NEC
• NECネッツエスアイ
2.11 【11位】ビジネスエンジニアリング(独立系SIer)
ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は、プラントエンジニアリング分野を中心に事業を展開する東洋エンジニアリングのIT事業部から設立された独立系SIerです。
東洋エンジニアリングからのつながりから、製造業界を中心にソリューションを提供。自社開発による製造業向けデジタルプラットフォーム「mcframe」は、豊富な導入実績を誇るビジネスエンジニアリングの代表的なソリューションです。
ビジネスエンジニアリングの平均年収は813万円です。
2.12 【12位】富士通(メーカー系SIer)
NECと同様に国内最大手のメーカー系SIerと知られる富士通。スーパーコンピューター「富岳」を理化学研究所と共同で開発するなど、日本トップクラスのエレクトロニクスメーカーであり、総合ITベンダーでもあります。
富士通で、SI事業を担っているのが富士通エフサス。富士通の企業としての信頼を生かし、製造・金融・流通業界や官公庁を中心に幅広いソリューションを提供しています。
富士通の平均年収は804万円です。
参照:富士通
2.13 【13位】テクマトリックス(独立系SIer)
双日株式会社の営業部門の戦略子会社として設立された独立系SIer「テクマトリックス」。
テクマトリックスは、大きく情報基盤事業とアプリケーション・サービス事業の2つを軸に事業を展開。
情報基盤事業では、
- ネットワーク
- セキュリティ
アプリケーション・サービス事業では、
- コンタクトセンターCRM
- 医療
- 教育
- 金融
- インターネットサービス
- ソフトウェア品質保証
の分野のソリューションをおもに提供しています。
テクマトリックスの平均年収は778万円です。
参照:テクマトリックス
2.14 【14位】SCSK(ユーザ系SIer)
SCSKは、住商情報システムとCSKが2011年に合併して設立されたユーザー系SIerです。
住友商事の子会社として安定した事業基盤を築いており、グループ会社のIT支援も行っています。
ただし、SCSKのSI事業の対象は、グループ会社のみに留まりません。
- 金融業界
- 製造業界
- 流通業界
- 建設業界
- 医療業界
など、幅広い業界の顧客を抱えています。そのようなさまざまな企業向けに、アプリケーション開発やサービス提供を最適化する基盤サービス「S-Cred+プラットフォーム」を始めとした現代のビジネスに求められる多様なソリューションを提供しています。
SCCKの平均年収は736万円です。
参照:SCSK
2.15 【15位】アイティフォー(独立系SIer)
アイティフォーは、債権の督促のための「オートコールシステム」を開発し、金融機関で圧倒的なシェアを獲得している独立系SIerです。
金融業界向けのソリューション提供に強みを持っています。その他にも、小売業向けの基幹システム「RITS」、ECサイト構築のためのパッケージ「ITFOReC」など、現代のビジネスにマッチした多様なソリューションを提供。
アイティフォーの平均年収は704万円です。
参照:アイティフォー
3. SIerの選び方についてよくある質問
- 売上高ランキングと年収ランキングが大きく異なる理由
- 自分に向いているSIerの分類を知るには
- 将来性が低いブラックなSIerを見極める方法
と言ったSIerの選び方に対する疑問について、以下でわかりやすく解説します。
3.1 売上高ランキングと年収ランキングで上位の企業が大きく異なるのはなぜ?
売上高ランキングと年収ランキングの上位の企業が異なるのは、企業によって利益率に差があるためです。
受注する案件が多く売上高が高かったとしても、それに対して人件費などのコストが膨らめば、利益率は下がります。
例えば、
- 下請け構造が顕著
- AIやRPAを活用した自動化や効率化が行われていない
- 人件費の見直しが進んでいない
といった課題を持つSIerは利益率が低くなる傾向が見られます。
上記の例とは逆に、ニッチな市場の開拓を行ってシェアを独占できれば、案件自体を適性な価格で受注できるため、利益率が高くなるといったケースも。
アイティフォーが提供している教育費管理システムはそのよい例で、ややニッチでIT化が遅れている市場に対してソリューションを提供し、大きな売り上げを挙げています。
3.2 SIerの4分類のうち「自分に向いている分類」を知るにはどうしたらいい?
自分に向いているSIerの分類を知りたい人は、自分が何を重要視するかまずは明確にしましょう。
年収が高いといった待遇のよさを重視する人は、営業利益が大きいユーザー系SIer。
規模の大きい仕事がしたい人は、売上高が高い外資系SIerやユーザー系SIerがおすすめです。
将来に対する不安を感じることなく安定して働きたい人には、事業基盤が確立されたメーカー系SIer。
安定性よりも担当するプロジェクトのインパクトの大きさや多様性を重視する人は、高い付加価値の提供により高い営業利益率を実現している独立系SIerを選ぶとよいでしょう。
ただし、上記の選び方はあくまでも基本です。同じ分類にあるSIerであっても、企業ごとに違いがあります。
大きな分類から絞り込みを行い、平均年齢・従業員数・社風・口コミなどさまざまな要素を調べて、自分に合った企業を選ぶことが転職を成功させるコツと言えるでしょう。
3.3 SIerは「将来性がないブラック企業」が多い?
SIer業界には、クラウドサービスへのシステム移行による需要の低下、下請構造による低賃金になりやすい、スピード感に欠ける開発といった課題があることは事実です。
しかし、SIerは、将来性が低いブラック企業ばかりではありません。
そのような厳しい状況を打破するために
- 海外展開による市場の開拓
- 自社開発サービスの提供による経営の多角化
- 下請構造を廃止したワンストップのソリューション提供
など、さまざまな対策を行っている企業もあります。
そして、高い堅牢性が求められる大企業や官公庁からの大規模案件は今後も一定の需要が存在するでしょう。SIerに対するニーズがすぐになくなることはまず考えられません。
SIerは関わる案件によって業務が限定されるため、スタートアップなどでスピーディーな開発に携わるエンジニアを目指す人にとっては「将来性がない」と感じることもあるでしょう。
だからといって、すべてのSIerが将来性がないブラックな企業というわけではありません。
4. まとめ
SIerに対してブラックな将来性のない企業というイメージを持つ人いるでしょう。
しかし、そのようにネガティブなイメージで一括りにして、SIerを転職の選択肢からなくすことはおすすめできません。
実際に今回の年収が高いSIerがどのような企業が理解すると、グローバルな視点や長期的な展望を持って、将来的な発展を目指す企業ばかりであることがよくわかります。
今回紹介した年収ランキングを参考にしていただき、キャリアプランとマッチする企業があるか慎重に判断して、転職の選択肢を増やすとよいでしょう。
広い視野で転職活動を行えば、理想の転職を実現できる可能性は高くなります。