外注の形態の一つである委任契約とは、どんな契約形態なのでしょうか。準委任契約・請負契約との違いを解説します。またシステム開発の現場でよく利用される準委任契約について、その理由と2種類の型をご紹介します。さらにフリーランスにおすすめの契約形態についても、詳しく解説します。
1. 委任契約とは
委任契約とは業務委託契約の一種であり、当事者の一方が相手方に「法律に関わる業務(法律行為)」を頼んで、それを相手方が承諾することで成立する契約のことです(民法643条)。
1.1 外注の主な契約形態の種類
外注の主な契約形態をまとめると、次のようになります。
業務委託契約 | ||||
---|---|---|---|---|
契約形態 | 委任契約 | 準委任契約 | 請負契約 | |
委託する内容 | 法律行為 | 法律行為以外の業務 | 何かの製作など、成果物が存在する仕事 | |
報酬の対象 | 委任事務の適正処理 | 【履行割合型】
委任事務の適正処理 |
【成果完成型】
成果物 |
成果物 |
完成義務 | なし | なし | あり |
■ 委任契約と準委任契約の違い
委任契約と準委任契約は、共に「依頼された業務をこなす」ものです。両者の違いは「法律に関するもの」かそうではないか。弁護士や行政書士などに法律に関する業務を依頼する場合は「委任契約」。それ以外の業務であれば、全て「準委任契約」です。
一般的に、エンジニアなどのフリーランスが業務委託契約を結ぶ場合は、「準委任契約」になります。
■ 委任契約・準委任契約と請負契約の違い
委任契約や準委任契約と「請負契約」の違いは「何を成果と見なすか」です。委任契約や準委任契約では、時間をかけて作業すること自体に報酬が発生し「完成する義務」はありません。対する請負契約では報酬を受け取るために「依頼された業務を完成させて納品」する必要があります。
請負契約の場合は委任契約より受注した側の責任が重くなりますが、報酬の対象がより明確になるというメリットもあります。
一般的に、エンジニアなどのフリーランスが業務委託契約(SES契約)を結ぶ場合は、「準委任契約」になると説明しましたが、準委任契約は成果物の完成ではなく、その遂行に対して報酬が支払われる契約です。
SES契約を結んで常駐し作業を行っているITエンジニアは、善管注意義務に沿っていれば報酬を得る権利を有します。つまり一定の裁量と責任を持って仕事に取り組んでいれば、業務のやり直しや、成果物の修正依頼を行うことはできません。
とはいえクライアントとの認識の不一致を避けるためにも、業務内容や責任の範囲を契約書に明記しておくことが大切です。
1.2 準委任契約にも2種類ある
前の表のように、準委任契約にも「履行割合型」と「成果完成型」という2種類の形態があります。それぞれの違いをご紹介します。
■ 履行割合型
「履行割合型」は、実際に仕事をこなした時間によって報酬が支払われます
■ 成果完成型
「成果完成型」は、仕事にかけた時間に関わらず、成果物の納品を完了することによって報酬が支払われます。請負契約と似ていますが、あくまで契約上は必ずしも「完成の義務」はないです。
2. システム開発で「準委任契約」のケースが多い理由
準委任契約は、システム開発の現場で多く選択されている契約形態です。ほとんどの場合に法律には関りが無い業務のため「委任契約ではない」のは明らかです。では、なぜ「請負契約」ではないのでしょう。理由は以下の通りです。
2.1 仕様変更への柔軟な対応
システム開発の現場では、急な仕様変更が行われる場合も少なくはありません。そのため完成する義務のある請負契約では、仕様変更の影響で「期限内の完成」が難しくなってしまうことも。また仕様変更が相次いだ場合、業務を請け負っている個人・企業にとっては「どこまでが自社の責任範囲か」が不透明になりやすいです。
その点で準委任契約の方が、柔軟に対応することができます。
2.2 労働力の確保がしやすい
明確な成果物の存在しない労務にも対応できるので、請負契約よりも依頼する作業に幅を持たせることが可能です。また「一時的に人員を増やして戦力アップしたい」など、柔軟に労働力を確保することができます。
3. システム開発における「準委任契約」のデメリットは?
一方で、仕事の「完成義務」がないということは、業務の発注者側にとってはデメリットにもなります。見込んでいた納期までに成果物が完成しなくても、受注者側に責任はなく、報酬が発生します。つまり「確実に予定通り」とはいかないリスクがあるのです。
また受注者側にとっても、契約内容(求められている業務の内容)があいまいなものになりがちです。後で「期待していたものと違う!」とトラブルとならないよう、あらかじめ契約内容をしっかりと確認しておくことが重要です。
4. システム開発の工程ごとの契約形態例
この完成義務の有無は、業務によってメリットにもデメリットにも働きます。つまり業務のタイプにより使い分けることで、有効に活用することができます。例えばシステム開発現場の場合、各工程ごとに適した契約形態は、次表のとおりです。
開発の工程 | 適している契約形態 |
---|---|
要件定義 | 準委任契約 |
基本設計 | 請負契約 |
詳細設計 | |
製造 | |
テスト | 準委任契約 |
運用・保守 |
基本的にドキュメントやソースコードなどの明確な「成果物」が存在する設計や製造の工程においては、請負契約が便利です。対してゴールが変動しやすいテストや保守などは、準委任契約が便利です。
5. 委任契約・準委任契約・請負契約についてよくある質問
委任契約・準委任契約・請負契約などそれぞれの契約形態について、よくある質問をまとめました。
5.1「これからフリーランスになりたい」場合のおすすめの契約形態は?
これからフリーランスとして働きたいという方の場合、おすすめの契約形態は「準委任契約」です。請負契約の場合は成果物の納品が必須となりますが、慣れないうちはスキルや経験の不足で作業の見積もりが難しく、予想以上に時間がかかってしまって納品が間に合わないというケースもあり得るためです。
さらに請負契約には「契約不適合責任」があります。これは以前「瑕疵担保責任」と呼ばれていたもので、成果物に品質の不良や数量の不足などがあった場合、修正の義務が発生するというものです。そのため見込んでいた以上の対応が発生することもあるため、この「契約不適合責任」がない準委任契約を選択することがおすすめです。
5.2 準委任契約で契約した後、システム開発が中断した場合はどのような形で請求できる?
民法648条3項によると、発注者側の都合でシステム開発が中断し契約終了となった場合、受注者側に責任のない状態であれば、すでに業務を行った割合に応じて報酬を請求することが可能です。
5.3 準委任契約でも「成果に応じた報酬支払」にすることは可能?
「成果完成型」とすることで、成果に応じた報酬支払にすることが可能です。なお完成義務はありません。
6. IT関連のフリーランス案件の求人動向
システム開発における準委任契約について様々な観点で開設を行いました。ここからは参考までに、現在プロエンジニアに掲載されているIT関連のフリーランスエンジニア向けおすすめ案件を、「ヘルプデスク系」「コーダー系」「フロントエンドエンジニア系」「サーバーサイドエンジニア系」に分類してご紹介します。
6.1 ヘルプデスク系
ショッピングサイト運営会社内の情報システム部門で、稼働中エンジニアの補佐ヘルプデスクを募集する案件です。コミュニケーション能力や社内ヘルプデスクの業務経験、キッティングの業務経験などのスキルが求められます。報酬の目安は、50万円~60万円です。
詳しくは案件情報ページをご覧ください。
▸ 案件情報:【ヘルプデスク】某企業向け情報システム支援
6.2 コーダー系
HRTechや医療Techなどで活躍をしている企業にて、LPのコーディングやフォーム修正、WP組込の制作などを行うエンジニアを募集する案件です。JavaScript、CSS、HTMLでの開発経験や、LP作成の経験が求められます。報酬の目安は、40万円~50万円です。
詳しくは案件情報ページをご覧ください。
▸ 案件情報:【JavaScript/CSS/HTML】マークアップエンジニア/コーダー★HR企業でのLPコーディング
6.3 フロントエンドエンジニア系
TypeScriptやVue.jsを用いて版権の契約管理システムを開発する、フロントエンドエンジニアを募集する案件です。フレームワーク(Vue.js)を用いた2年以上の実務経験や、Dockerを利用した開発経験が求められます。報酬の目安は、60万円~70万円です。
詳しくは案件情報ページをご覧ください。
▸ 案件情報:【TypeScript/Vue.js】フロントエンドエンジニア★商品の版権の契約管理システム開発
6.4 サーバーサイドエンジニア系
Java/Kotlinを用いてtoB向けノーコードデータ連携サービスを開発する、サーバーサイドエンジニアを募集する案件です。Javaを用いた開発経験や、JUnitを用いたテストコードを書いた経験、APIの設計・開発経験が求められます。報酬の目安は、70万円~80万円です。
詳しくは案件情報ページをご覧ください。
▸ 案件情報:【Java/Kotlin】サーバーサイドエンジニア★toB向けノーコードデータ連携サービスの開発
7. まとめ
今回は委任契約とその他の契約形態との違いを中心に、システム開発の現場で多用される準委任契約などを例にとってメリットやデメリットをご紹介しました。同じ業務委託契約でも形態によって負う責任などが大違いなので、フリーランスなどで慣れないうちは受注する前にしっかりチェックしてくださいね。
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