「Spring Bootを使うと何ができるんだろう」「Spring Bootを使った実際のサービスが知りたい」と感じていませんか。
近年、人気が高まっているSpring Boot。しかし、具体的にどんなことができるのかわからないという方もいるでしょう。
そこで今回は、
• Spring Bootとは
• Spring Bootでできること
• Spring Boot案件の求人動向・案件動向
という流れで、これからSpring Bootで開発したいエンジニアに役立つ情報をまとめて解説します。
Spring Bootの学習法や学習がおすすめの人についても解説しています。「記事を読んでさっそくSpring Bootの学習を始めたい」という方は、ぜひ最後までお読みください。
1. Spring Bootとは
Spring Bootは、JavaでのWebアプリケーション開発を効率化できるフレームワークです。フレームワークとは、開発に必要な機能をまとめて提供してくれる仕組みを意味します。
Spring Bootは、JavaフレームワークであるSpring Frameworkをベースとしています。Spring Frameworkも人気が高いのですが、初期設定が大変だったり、コードの実行結果の確認方法がわからなかったりと、初心者にはつまづくポイントも多くありました。
ですが、Spring Bootはこういった悩みを解決すべくシンプルなつくりとなっており、最初に選ぶJavaのフレームワークとして最適です。
Javaの代替言語として作成されたKotlinにも対応しています。
1.1 Spring Bootでできることの例
Spring Bootでできることの例として次の3つをご紹介します。
• Springの肥大化への対応
• Tomcatの内包
• xmlファイルの記述不要
1.1.1 Springの肥大化への対応
Spring Bootは、Springの肥大化への対応を可能にしています。
Springが提供する機能は数が多すぎるあまり、Springを本業とするエンジニアでもすべてのプロジェクトを使用したことがある人はなかなかいません。
Spring Bootは、Springの機能を汎用性のある形でパッケージ化し、誰でもシンプルに活用できるようにしたフレームワークです。
Spring Bootを活用することで、肥大化したSpringを効率よく使いこなせます。
1.1.2 Tomcatの内包
Spring Bootでは、はじめからTomcatが組み込まれています。
Tomcat(トムキャット)とは、Java Servlet(Javaで作成されたWebサーバー上で動くプログラム)を動かすときに使うソフトウェアです。一般的なJavaでのWeb開発では、Webアプリケーションをパッケージ化したファイルを、Tomcatなどのアプリケーションサーバーに配置します。しかし、毎回Tomcatを入れるのは手間がかかり、効率が良くありません。
Spring BootはTomcatが内包されているため、この手間を省けます。自動で起動してWebアプリケーションがサーバーに配置され、動作できます。
1.1.3 xmlファイルの記述不要
Spring Bootではxmlファイルの記述が不要です。
通常、Springの多種多様な機能を使うには、必要なプロジェクト・ライブラリや適切な設定をxmlファイルに記述する必要があります。一文字でも間違えるとプロジェクトが起動できないため、記述量が多い大規模開発では多大な工数がかかりました。
Spring Bootなら、統合開発環境のSTS(Spring Tool Suite)を利用してプロジェクトを選択し、必要なライブラリを選んでスタートするだけで自動でxmlファイルに記述ができます。
1.2 Spring BootとSpring Frameworkの違い
Spring BootとSpring Frameworkの違いは、次の通りです。
• Spring Framework:Javaのアプリ開発のために作られたフレームワークの集合体
• Spring Boot:集合体となった機能を使いやすくするフレームワーク
Spring Bootは、Spring Frameworkを簡単に活用できるようにするものと覚えておけば問題ありません。
1.3 Spring Bootを実際に使っている企業・サービスの例
Spring Bootを実際に使っている企業・サービスの例として、株式会社LINEの事例をご紹介します。
株式会社LINEでは、LINEのファミリーサービスの一つである「LINEキャリア」のWebアプリケーションフレームワークにSpring Bootを採用しています。LINEキャリアへのSpring Bootの採用理由は主に以下の3点。
• DIコンテナが優秀である
• AOP(アスペクト指向プログラミング)が可能
• ほかのWebアプリケーションフレームワークより柔軟に実装できる場合がある
DIは「Dependency Injection(依存性の注入)」の略で、クラス間にある依存関係を、コードに書くのではなく、実行時に解決していくデザインパターンのことです。
AOPは「Aspect Oriented Programming(アスペクト指向プログラミング)」というプログラミング手法の一つで、依存性を下げて変更修正のコストを抑えられるメリットがあります。
2. Spring Boot案件の平均年収と将来性
Spring Boot案件の平均年収と将来性について、当サイト「プロエンジニア」の掲載案件のデータなどをもとに解説します。
2.1 Spring Boot案件の平均年収
プロエンジニアの掲載案件(※筆者調べ)によると、Spring Boot案件の平均年収は890万円でした。月額単価としては70万円~80万円が多いです。
月額単価の最高値は100万円、最低値は50万円でした。Java、Spring Boot、Apache+Tomcat、PostgreSQLなどを用いてゼロからWebサーバーシステムを開発する経験があると、より高年収を目指せます。
開発リーダーなど管理職に近いポジションを担えるスキルや経験があるとより良いでしょう。
Javaの開発経験とともにSpring Bootを使ったWebアプリケーション開発経験、Webサーバーシステムの開発経験を積み重ねることが大切です。
2.2 Spring Boot関連の求人動向・案件動向
Javaのフレームワークとして、Spring BootはPlay Frameworkと並び安定した人気があります。
プロエンジニアに掲載されている実際の求人について見てみましょう。
出典:【Java/Spring Boot】バックエンドエンジニア★ファイル共有・転送サービスのリプレイス|プロエンジニア
受託開発からコンサルティング、自社サービスなど幅広く事業展開している企業です。業務は、ファイル共有/転送サービスのシステムリプレイスにおけるバックエンド開発となっています。月額単価70万円~80万円の案件です。
出典:【Java/Spring Boot/Apache+Tomcat/PostgreSQL/AWS】システムエンジニア★中小製造業向け受発注マッチングプラットフォーム開発|プロエンジニア
「製造業向け受発注マッチングプラットフォーム」を実現するためのWebシステムを構築する業務です。要件定義・基本設計から総合試験・保守までを担当します。月額単価は70万円~100万円です。
2.3 Spring Bootが扱えるエンジニアの将来性
Spring Bootが扱えるエンジニアの将来性は高いです。
Javaは静的型付け言語のため堅牢性が求められる開発に使用されるほか、Android開発との相性も良好。近年はKotlinとの相互運用も盛んで、エンジニアの総数も増えています。Javaフレームワークを効果的に活用できるSpring Bootも将来的に安定しているでしょう。
次のグラフは世界での検索事情です。Spring Bootは2015年から2020年にかけて人気が高まりました。
出典:GoogleTrends
現在はやや停滞しているものの、Spring FrameworkやPlay Frameworkと比較すると検索数は非常に多いです。
JavaでWebアプリケーション開発をする場合、Spring Bootが扱えることは重要になります。将来的にも安定した需要はある見込みです。
3. Spring Bootの学習法
Spring Bootの学習法として次がおすすめです。
• 勉強会の資料
• 書籍
• 学習サイト
QiitaにはSpring初心者向けの勉強会の資料が公開されています。動画とスライド資料があり、最初に学んでおくと理解がしやすいです。書籍も紹介されているので参考になるでしょう。
学習サイトは、Spring Boot入門講座の「springtoolsuite」や世界中の講座をオンラインで受講できる「Udemy」をおすすめします。
springtoolsuiteは、手を動かして作りながら学べる学習サイトです。難易度も易しく、初心者向けとなっています。
UdemyでSpring Bootを学ぶなら、次の講座がおすすめです。
1つ目は英語ですが高品質なので、英語が苦手でなければぜひ活用してみてください。2つ目は日本語で評価が高い講座です。
4. Spring Bootに関するよくある質問
Spring Bootに関するよくある質問とその回答について、2つご紹介します。
• Spring BootとPlay frameworkの違いは?
• Spring Bootを学習すべき人と他の言語の習得を優先すべき人は?
それでは、順番に見ていきましょう。
4.1 Spring BootとPlay frameworkの違いは?
Spring BootとPlay frameworkの違いは次の通りです。
Spring Boot
•「開発者が本来やるべき仕事に集中してもらうこと」を重視して開発された
• MVCモデルは実装されていないため、Spring Boot特有の考え方が必要
• STSというSpring専用のIDEが存在するため拡張性が高い
Play framework
•「従来のJavaフレームワークよりもシンプルに開発できる独自性の高いフレームワーク」として開発された
• MVCモデルを使用しているため理解がしやすく、Javaの言語知識がなくても一定の開発がしやすい
• セキュリティレベルはSpring Bootより高いが、プラグインの種類が少なく拡張性は低い
4.2 Spring Bootを学習すべき人と他の言語の習得を優先すべき人は?
Spring Bootを学習すべき人とほかの言語の習得を優先すべき人について解説します。
「自分はSpring Bootを学習すべきだろうか」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
それぞれの特徴について見ていきましょう。
4.2.1 Spring Bootの学習がおすすめの人
JavaやSpringの知識があり、高機能なWebアプリケーション開発をするならSpring Bootをおすすめします。なかでもセキュリティやネイティブアプリケーション開発に重点を置いた開発で役立つでしょう。
Spring Boot以外にもさまざまなプラグインや別のフレームワークが存在します。すべてと互換性を持つため、開発の幅が広いことがメリットです。
特に、
• Javaの言語知識に優れている
• 複数のプラグインやフレームワークを組み合わせて高機能なWebアプリケーションを開発したい
という場合はSpring Bootの学習が適しています。
Spring Bootを学習して、高機能なWebアプリケーション開発に活用しましょう。
4.2.2 Spring Boot以外の学習を優先するのがおすすめの人
フレームワークでとりあえずWebアプリケーションを開発したいという人にはPlayFrameworkの学習がおすすめです。
拡張性が低く多機能ではないものの、Webアプリケーション開発に特化しているため使いやすいでしょう。
特に、
• Ruby on RailsやDjangoなどに慣れていてMVCモデルに親しんでいる
• スピード感のある開発をしたい
という場合はSpring BootよりもPlayFrameworkの学習が適しています。
あなたのいまの状態やどのようなWebアプリケーション開発をしたいのかによって、学習すべきフレームワークを判断してみてくださいね。
5. まとめ
今回は、
• Spring Bootとは
• Spring Bootでできること
• Spring Boot案件の求人動向・案件動向
という流れで、Spring Bootについてお伝えしました。
Spring Bootは、JavaのフレームワークのなかでもSpringを活用するための有益なフレームワークです。
Spring Bootの求人や案件は世界、国内において増加傾向にあり、今後さらに需要が高まる言語といえるでしょう。
今回ご紹介した内容を参考に、Spring Bootでできることや特徴を理解して、今後のキャリアに活かしてくださいね。