データベースに関する資格といえば、ベンダー系試験である「オラクルマスター」と国家試験である「データベーススペシャリスト試験」が有名です。今回はデータベーススペシャリスト試験について、試験の難易度や一般的に必要とされる勉強時間、オラクルマスターとの相違点など、詳しくご紹介していきたいと思います。
1. データベーススペシャリスト試験とは
「情報処理技術者試験」とは、情報処理推進機構(IPA)が運営する国家試験です。「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省によって認定されており、「レベル4」として8つの高度区分試験が設けられています。データベーススペシャリスト試験は、その「レベル4」のうちの1つの試験になります。
公式サイトで提示されている対象者像では、次のように述べられています。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、データベースに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者
引用元:データベーススペシャリスト試験|IPA
2. データベーススペシャリスト試験の合格点と合格率
2.1 合格点
他の高度区分試験と同様に、午前1/午前2/午後1/午後2の4つの試験を受験する必要があります。それらの試験全てで100点満点中60点以上取得すれば合格ですが、うち午前1試験のみ、条件により免除される場合があります。
【午前1試験が免除となる条件】
• 応用情報技術者試験に合格後、2年以内であること
• その他高度区分試験に合格後、2年以内であること
• 午前1試験部分合格後、2年以内であること
合格点だけ見ると低いため簡単そうに見えますが、逆に高得点の取りづらい、高難度の問題が出題されています。
2.2 合格率の推移
現行の試験制度が始まった平成21年度以降の、合格率推移を表にまとめました。
IPA公式から発表されている合格率は10%台後半ですが、これは受験者数に対する合格者数の比率です。実際には応募者数に対する受験者数の比率は6割強なので、応募者数に対する合格者数から合格率を算出すると、10%程度になります。
この値は合格率がヒトケタ続出である他の高度区分試験と比べると少し高めではありますが、一般的な資格試験と比較して見ると、かなり低い数字となっています。
年度 | 応募者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 (受験者比) |
合格率 (応募者比) |
---|---|---|---|---|---|
平成21年春期 | 18,538人 | 11,887人 | 1,912人 | 16.1% | 10.3% |
平成22年春期 | 20,529人 | 13,523人 | 2,142人 | 15.8% | 10.4% |
平成23年春期 | 20,207人 | 12,689人 | 2,304人 | 18.2% | 11.4% |
平成24年春期 | 18,799人 | 12,187人 | 1,963人 | 16.1% | 10.4% |
平成25年春期 | 17,489人 | 11,342人 | 1,845人 | 16.3% | 10.5% |
平成26年春期 | 15,807人 | 10,016人 | 1,671人 | 16.7% | 10.6% |
平成27年春期 | 15,355人 | 10,049人 | 1,767人 | 17.6% | 11.5% |
平成28年春期 | 13,980人 | 9,238人 | 1,620人 | 17.5% | 11.6% |
平成29年春期 | 17,706人 | 11,775人 | 1,709人 | 14.5% | 9.7% |
平成30年春期 | 17,165人 | 11,116人 | 1,548人 | 13.9% | 9.0% |
平成31年春期 | 16,831人 | 11,066人 | 1,591人 | 14.4% | 9.5% |
令和2年10月 | 9,468人 | 6,536人 | 1,031人 | 15.8% | 10.9% |
令和3年秋期 | 10,648人 | 7,409人 | 1,268人 | 17.1% | 11.9% |
令和2年から受験者数を大幅に減らしているのは、新型コロナウイルスの流行により試験がイレギュラーな状況で実施された影響と考えられます。
またこれまでは春期試験で実施されていましたが、令和3年度より秋期試験に変更になりましたので、受験の予定を立てる際にはご注意ください。
3. データベーススペシャリスト試験の難易度
3.1 試験の難易度は「難度:高」
前述の通り、データベーススペシャリスト試験は「情報処理技術者試験」の中でも最高難度である「レベル4」を冠する高度区分試験のうちの1つです。
さらに前出の表のように合格率は1割程度と、その他職種向けの国家試験群と比べてもかなりの狭き門であるということが分かります。
特にデータベーススペシャリスト試験の受験者は中堅以上のエンジニアが多くを占めており、その難度の高さがうかがえます。
3.2 文章読解力に自信がなければさらに難度アップ
現場では腕ききのエンジニアであっても、データベーススペシャリスト試験ではつまづきやすいポイントがあります。それは「長文を読み解き、何が要求されているのか理解できるだけの文章読解力」です。
プロジェクトマネージャ試験ほどは論述に左右されませんが、午後2試験では10ページにわたる試験問題を読み理解した上で、適切な回答を記述する必要があります。
3.3 オラクルマスター試験との違い
オラクルマスター試験は、ORACLEのスキルを証明する試験です。ORACLEデータベースの管理や操作方法など、オラクル社製品の取り扱いに関する知識が問われています。
それに対してデータベーススペシャリスト試験では、情報分析、プロジェクト管理などの業務知識や、正規化、ER図など、特定の製品に依存しない一般的なDBに関する知識を問われます。
そのため単純な難易度の比較は難しいですが、強いてあげるならば一般的に次のように感じる方が多いようです。
ORACLE MASTER Bronze < Silver < Gold < データベーススペシャリスト < Platinum
ただ個人的な感想では、オラクルマスターのゴールドはそれなりの実務経験がなければ対応が難しいことや、超高額な講習会を受講する必要があることから、数千円で机上の勉強だけでも受かるデータベーススペシャリストの方が、実質的な受験ハードルは低く感じます。さらにオラクルマスターは国家試験のような資格の永続性はなく、数年後に再認定試験を受験しなければ失効してしまうというデメリットもあります。
逆に実践を重視する内容と資格に有効期限があることから、難易度の割に実務能力に直結していると評価される傾向もあります。オラクルを業務等で日常的に扱う機会のある方は、まずオラクルマスターのシルバーまで取得を目指してみてはいかがでしょうか。
4. 独学で合格は不可能なのか
前述のようにデータベーススペシャリスト試験はかなり高難度の試験となっているためか、独学での合格が難しい方のための講座や通信教育が多数開講されています。
しかし仕事をしながら独学で合格することが無理というわけではなく、ある程度データベース設計などの経験があるシステムエンジニアであれば、業務の傍らで合格している方も多数いらっしゃいます。
5. データベーススペシャリスト合格までの勉強時間
5.1 独学で勉強する場合
午前1免除、実務経験あり、かつ長文読解が得意な方の場合は40時間程度で受かるケースもありますが、一般的には半年~1年以上かかるケースもよく見られます。
さらに午前1免除がない場合は、20時間程度の勉強時間を別途確保する必要があります。
5.2 講座を受講する場合
講座によりまちまちですが、通信の場合は受講期間3~5か月、サポート(質問受付)期間12か月を目安されている所が多いようです。
某有名資格スクールの通学講座のケースでは、1コマ150分/全11回の授業と、模擬試験で構成されているようです。独学では難しいと感じる方は、講座を利用してみるのも良いのではないでしょうか。
6. DBの種類を問わない設計者向けの国家資格
データベーススペシャリスト試験は情報処理技術者試験の中で高難度のレベル4に分類されているだけでなく、その他カテゴリの理系国家資格と比較する場合にも高難度とされている試験です。データベースの勉強し始めで、理論よりも実践(特にORACLE)を重視したいという場合は、オラクルマスター試験も検討してみてはいかがでしょうか。
次回はデータベーススペシャリスト試験のおすすめ参考書や勉強方法について、詳しくご紹介したいと思います。 よければ合わせてご覧下さい。 関連記事: データベーススペシャリスト試験対策に!勉強法とおすすめ参考書を紹介