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2016年10月4日(火)から7日(金)の4日間、CEATEC JAPAN 2016(https://www.ceatec.com/ja/)が幕張メッセにて開催されました。こちらのイベントは、情報通信ネットワーク産業協会と電子情報技術産業協会、コンピュータソフトウェア協会によって構成されたCEATE JAPAN実施協議会主催によるものです。始まりは2000年に遡り、元々は「エレクトロニクスショー」と「COM JAPAN」を統合することによって誕生。IT技術の国際展示会としてはアジア最大級規模といわれています。
今年は出展者数648社、来場者数145,180人と、前年比9.1%増となり、大きな盛り上がりをみせました。
2016年のテーマは「つながる社会、共創する未来」。
そして今回は、「社会」「家」「街」「CPS/IoTを支えるテクノロジ・ソフトウェア」という4つのエリアと特別企画エリアによって構成されていました。
特に注目だったのが「CPS(Cyber Physical System)」と「Iot(Internet of Things)」。CPSはデバイスや機械といった物理的なものがITと繋がることによって生み出される高度システム、Iotはものがインターネットを介してつながり情報を処理・統合することを意味するといわれています。
では、CPSとIotのサービスとは、そしてそれによって生み出される新しい仕組みや価値とはどの様なものなのか、イベント当日の模様とともにお伝えしていきます。
CPS/IoTで広がる産業、生まれる新システム・サービス
ITに関連する様々なブースが会場を埋め尽くした本イベント。それぞれ分野にわけて、ご紹介していきます。
人型ロボット
有限会社海馬(https://www.caiba.net/)の遠隔ロボット「caiba」。こちらのロボットには、人の五感をデジタル化して伝達することができるテレイグジスタンス(Telexistance/遠隔臨場感)という技術が採用されています。
特徴は、人自身がロボットを操作するということ。ヘッドマウントディスプレイを装着することで、ロボットからの視点で物を見ることができ、端末を利用することでロボットを操縦することができます。マイクを使って音声を聞き取り、スピーカーを通してこちらからの声を伝えることも可能です。そして五感を体感できるので、ロボットを通して触覚までも体感することができます。今後、空港やイベントでの案内支援、介護の現場への導入などが計画されているといいます。
現在、同社はDALEK(ダーレク)(https://dalek-roborobo.blogspot.jp/p/index.html)という人形ロボットを広めていくことを目指すプロジェクトを立ち上げ、積極的な活動を展開しています。
シャープのロボホン(https://robohon.com/)。ロボット型の携帯で、コンセプトは「ココロ、動く電話。」。ロボホンを通して、電話やメール、そして写真撮影や検索などをすることができます。
富士通のAIロボット「RoboPin(ロボピン)」。地図アプリのピンをイメージして作られたこちらのロボットは、感情表現をするにあたってシンプルさを追求したデザインともなっています。シンプルながら、豊かな感情表現ができるということと、複数のロボットやIotと提携している点が特徴だといいます。
クラウドと連携することで、人々に適切なサービスを案内するメディエータ(仲介者)としての役割が期待されています。
TOYOTAのKIROBO mini(https://toyota.jp/kirobo_mini/)。「あなたのそばに、ココロのそばに。」がコンセプトのコミュニケーションパートナーということで、サイズは10センチ、体重は180グラムとコンパクトです。展示では、KIROBO miniからの「ともだちだから一緒に喜んだり、悲しんだりするよ。でも他に何かしてあげられるわけじゃないんだけどね。」というメッセージボードも。
シャープのロボット家電「COCOROBO」(http://www.sharp.co.jp/cocorobo/)。
掃除機能がグレードアップしただけでなく、これまであった簡単な会話機能にプラスして、ユーザーの気分や状態を会話の音声から把握して、おすすめの歌を再生します。人工知能が搭載されている為、ユーザー好みに進化していくそうです。歌を歌う女の子のキャラクターの声には、ヤマハ株式会社が開発したボーカロイドというコンピューターで音声を合成する技術が使われています。
産業用ロボット、ドローン
株式会社Preferred Networksのロボット(上)とドローン(下)
同社は、「情報検索技術・レコメンド技術」「機械学習技術」「自然言語処理技術」「分散処理技術」の研究開発とサービスの提供をしているPreferred Infrastructure (PFI)のメンバーがスピンオフし、ビジネスにおけるリアルタイム機械学習技術の活用を目的として、2014年に設立された会社です。
展示のロボットは、「棚から多様な物体を取出しできるロボット」。こちらはAmazon Picking Challenge 2016(https://www.amazonrobotics.com/#/pickingchallenge)という倉庫内ピッキングの大会において優秀な成績をおさめたシステムを更に改良したものだということです。
ドローンは「深層強化学習に基づくドローン」。こちらには強化学習によって制御を行う深層強化学習(Deep Learning)が採用されており、ドローン自身が学習して飛行をするというもの。この深層強化学習は、自動運転や工場用ロボットに応用されており、そして今回のドローンの様な複雑な対象にも適用できるのだといいます。
DJIのドローン(https://www.dji.com/jp)。中国の会社である同社は、商用ドローンにおいて世界最大手であり、業界シェア70%を誇ります。同社の製品はアメリカ小売最大手のウォルマート・ストアーズの宅配便サービスに適用される予定となっています。
当日のブースには、最新ドローンである「MAVIC PRO」が展示されていました。こちらの価格は119,800円になります。
IoTによって変わる生活・空間・体験
パナソニックによる展示「少し先の暮らし提案:Better Living Tomorrow」。
こちらは「新コンセプトフラットクッカー」。加熱調理器がテーブルに組込まれており、どこででも加熱・調理をすることができるようになっています。
こちらもパナソニック主体の展示「Open Innovation Challenge」。
同社とパートナーである
QUANTUM(https://www.quantum.ne.jp/)
CEREVO(https://www.cerevo.com/ja/index.html)
NTTコミュニケーションズ(https://www.ntt.com/index.html)
Blue Puddle(https://blue-puddle.com/)
Karakuri products(https://krkrpro.com/)
面白法人カヤック(https://www.kayac.com/)
siro(http://shinyamatsuyama.com/)
テクノコスプレ研究会(http://technocosplay.com/)
が共同開発した新技術が体験できるようになっていました。
(左)「メイクアップシート」非接触肌センサと特殊印刷技術を利用。これまでの様に肌に化粧品を付けるのではなく、1人1人に合った極薄シートを肌に貼るというメイクアップ方法です。
(右)「デザインフリータッチセンサ」新技術によって生まれたタッチセンサで、これまで形状的に難しかった大画面や曲面に使用することができます。
(左)「電池レス無線スイッチ」電池と配線を必要としないて、椅子に座るといった日常の動作によるタッチ一つで発電と通信を可能とします。
(右)「3Dアクチュエータ」進化したブレの補正機能と被写体を自動で追跡する追尾機能で、これによって臨場感のある、ダイナミックな映像の撮影を実現させる技術です。
(左)「人体通信応用デバイス」レコードやCDに触れるとコンテンツを視聴できるなど、手をかざすのではなく、手でモノに触れることによって認証・通信ができる通信モジュール。
(右)「WHILL」一回の充電で24キロ走ることができる鉛蓄電池を搭載した次世代の車イス。こちらはWHILL株式会社(https://whill.jp/)の製品でグッドデザイン賞も受賞しています。
「ウィンドウARプロジェクション」映像投影を可能とした透明フィルムをショウウィンドウに活用し、映像を投影することで新しい空間を演出します
三菱電気の「しゃべり描きUI」(https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2016/0209.html)。
話した言葉をタブレットやスマートフォンといった端末に指でなぞると、指でなぞった軌跡にその言葉を表示できるというもの。聴覚障がい者の方や、そして他言語翻訳機能もあるので外国人の方とのコミュニケーションも可能にするといいます。
楽天の出展ブース。
(左)「KiTeMiROOM」ファッションコーディネートを高速に確認出来るシステムで、今回はユーザーのファッション属性を読み取り、コーディネートを提案するデモンストレーションが展開されていました。
(右)「zapzap」zapzapの上に本を置くと、本中に多く登場する単語が画面に表示され、その単語に触れると更に単語を含む文章が表示されるようになっており、本の中身をちらっと覗けるというシステム。
IoTによって変わる社会・産業
TDKの展示ブース。テーマは「人と未来をつなぐ、Io”X”テクノロジー」。6つの”X”に関わる展示が展開されおり、6つのXとはそれぞれ「IoM=Medical」「IoV=Vehicle」「IoS=Sports」「IoR=Robot」「IoH=Human」「IoA=Agriculture」を意味します。
(中央左)産業用ロボット「NEXTAGE」(http://nextage.kawada.jp/)。周りの環境や作業対象を認識しながら作業ができ、高い汎用性を備えています。コンセプトは「人と共存できる」。グッドデザイン金賞にも輝いた実績も持っています。
(中央右)生体センサ「Silmee」。リストバンド型活動量計で、食事や睡眠、活動量などを計り管理することが可能です。
(下)養蜂業向けシステム「Bee Sensing」(http://bee-sensing.com/)。養蜂家が自分たちで入力する作業履歴にプラスして巣箱に設置したセンサーが温度や湿度といった情報を取得しデータとして蓄積していき、そして搭載されているAIが学習をしていくことで、養蜂家に適切な情報を通知していくというシステムです。
こちらは東京航空計器株式会社(https://www.tkk-air.co.jp/)と日本遠隔制御株式会社(http://www.jrpropo.co.jp/jpn/)の共同出展ブース。ブースには産業用多目的無人ヘリコプター「EARTH ONE」が展示されていました。
2社はフライトコントローラーの共同開発を行っており、純国産のドローン開発に取り組んでいます。バッテリー式ではなくガソリンを燃料とするエンジン駆動の為、長時間の運用が可能。そしてドローンは、測量や観測、更に農業の肥料散布や医療物資の運搬など、多様な場面での活用の可能性が期待されているといいます。
三菱UFJファイナンシャル・グループの出展ブース。写真はAIによる「未来シミュレーション」。コンピューターの自動プログラムが資産運用のアドバイスをする「ロボアドバイザー」といわれるもので、これにより、希望に見合った投資信託を提案してくれるといいます。
TOYOTAの出展ブース。TOYOTAでは水素社会の実現に向けて取り組みを進めており、現在、京浜臨海部で準備が進められている「低炭素水素活用実証プロジェクト」にも参加しています。このプロジェクトはTOYOTAと神奈川県、横浜市、川崎市、岩谷産業、東芝によるもので、横浜市の風力発電所の電力で水素をつくり、燃料電池フォークリフトの燃料に活用するというもの。燃料電池フォークリフトは、ガソリン車や電動式のものと比べ、80%以上のCO2の削減が可能になるそうです。
左上は燃料電池自動車のMIRAI(https://toyota.jp/mirai/)です。
地方・海外
そして今回のイベントでは、地方ブース、海外からのブースの出展も。
地方からは、青森県、千葉県、静岡県、岐阜県、長野県、東広島市などが出展し、それぞれの魅力をアピール。
今回、ビジネスマッチングイベント「Global Connection」に参加した海外からの企業が出展をしており、その数は応募総数164社の中から選ばれた30社。国は、ASEAN、インド、イスラエルのからとなっていました。(https://iotlab.jp/common/pdf/gc_company_list.pdf?date=1609211954)
その他の注目製品・サービス・活動
東海光学(http://www.tokaiopt.co.jp/index.html)の「視覚評価用脳波計システム」。脳活動から取得した脳波によって個人の好み可視化し、個人に合わせた製品の提供を目指す脳波計システム。これによって、視覚だけではなく、聴覚、味覚、触覚、嗅覚も測定可能だということです。
(左)慶應義塾大学 ハプティクス研究センター(http://www.katsura.sd.keio.ac.jp/)の「路面力触覚を伝達するIoTハンドル」。遠隔からでもハンドルを通し、路面情報を触覚として伝達できるというもの。 (右)株式会社アイオイ・システム(https://www.hello-aioi.com/jp/)のデジタルピッキングシテム。物を集めるピッキング作業を効率的にコントロールするシステムです。
(左)エイコム株式会社(http://aecom.co.jp/)の「BeeSign」。顔認識マーケティングツールで、広告を見た人の属性や人数を正確に認識することができ、コンテンツの効果測定を可能とします。
(右)旭化成(https://www.asahi-kasei.co.jp/)の「ロボ電気(ROBODEN)」。こちらは伸縮可能な電線で、現在は多関節ロボットの配線などとして使われていますが、それ以外にもイヤフォンや映像ケーブルへの試作も行われているようです。
(左)オムロン株式会社の卓球ロボット「FORPHEUS」(https://www.omron.co.jp/innovation/forpheus.html)。ラリーを続けることで卓球を上達させてくれるロボットで、AIの搭載によってロボット自身も学び、一緒に成長していきます。2016年1月には「最初の卓球トレーニングロボットとしてギネスにも認定されました。
(右)セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社(https://sevendreamers.com/)の「ランドロイド」。画像解析技術、A.I. (人工知能)、ロボティクス技術による世界初の全自動衣類折りたたみ機とのことで、2017年3月から予約販売開始となっています。
株式会社ミライセンス(http://www.miraisens.com/ja/index.html)の「指先型でバイス」。装着することで、指先だけで3Dを触覚として体感できるとのことで、操作感を得られたり、ヴァーチャルな物に触れることができるとのこと。現在、研究開発中で、2017年3月に発売予定となっています。
スタンレー電気株式会社(https://www.stanley-components.com/jp/)の「HIKARI MOJI」。 LED光源やセンサ技術による「未来の光で暮らしを豊かにする」をテーマとした展示のうちの一つです。
Lenovo(https://www.lenovojp.com/business/campaign/ceatecjapan2016/#contents01)の展示ブース。
(上)「YOGA Book(ヨガブック)」(https://shopap.lenovo.com/jp/landingpage/yoga/book/)セットされた紙にペンで描き込んだ内容をデジタル化することができます。こちらは今回のイベントの「暮らしと家でつながるイノベーション部門」において準グランプリも受賞しています。
(下)「CPlus」曲げることができるスマートフォンで、ブレスレットとして装着することができます。
超人スポーツ協会(https://superhuman-sports.org/)の出展ブース。現代のテクノロジーによって、これまでの身体能力を超える力を生み出し、また、年齢や障碍によって生じる「人と人とのバリア」を超えた先で、超人同士が競い合う新たなスポーツの創造を目的としています。そして、2020年の東京オリンピックを見据え、既存のスポーツの拡張と、新しいスポーツの発明にも取り組んでいるといいます。
2016年11月23日(水・祝)には、「第一回超人スポーツゲームズ」(https://superhuman-sports.org/news/20161007215535)が東京タワーメディアスタジオにて開催される予定です。
こちらはIotタウンという特別企画エリアの一部。ITを使っての面白い発想が提案されていました。
(左上)「記憶追体験システム」”ときめき体験”特有の「高揚感・ふわふわしている感覚」を感知して保存・蓄積し、ヘッドマウントデイスプレイや空間投影などでいつでも追体験できるようにする。
(右上)「ふたりごと」多様な音が共存する世の中で、「もし、その多様な音の中から、聴く音を選ぶことができたら?」。音を選択する未来を実現するプロダクト。
(左下)「Hesoco」腸内環境を記録・管理し、適切な食事や生活習慣を提案する腸内環境デバイス。
(右下)「Io-Tシャツ」目には見えない雰囲気を感知ることができ、コミュニケーションをスムーズにすることができる空気を読む次世代Tシャツ。
いかがでしたでしょうか?
これまでのシステムや日常生活の場面が更にIT化され、効率アップやコスト削減が進んでいく勢いを益々感じるとともに、人工知能やビッグデータの性能や活用方法の向上により、一人一人の嗜好に合った提案・選択が可能になっていくことを感じることができました。
一方で、ロボットに代表されているような、「こころ」というキーワードが目立ち、世の中のシステム化が進むのに合わせて、人と人とのつながりが求められているようになっている様にも感じました。
これからもITとそれにともなう変化に注目し、みなさんにお伝えしていきます。