参加する度に、ますます勢いの加速を感じるスタートアップイベントがあります。
それは、フィンランド生まれ・Slushというチームによるスタートアップの祭典で、彼らはこれまでに、本国フィンランドのヘルシキンを皮切りに、東京、シンガポール、香港と、世界をまたいで次々とスタートアップを集めたイベントを開催してきました。
そして、イベントの開催地は再び東京へ。
会場は東京ビックサイト。2017年3月29日・30日の2日間にわたったイベントには、世界中から5,000人の参加者、500のスタートアップ、200人の投資家、250人のジャーナリストが参戦しました。
Slushの思いは、次世代の可能性を持った人たちの前進をサポートすること。当日は、情熱を持ったスタートアップたちが、自分たちの製品やサービスを熱く語り、更に、業界の第一線で活躍する現役のアントレプレナーたちが、参加者を奮い立たせるスピーチを行いました。
勢いはもちろん、クールさも加速しているSlush。その様子をみなさんにお伝えします!
目次
1. カルロス・ゴーン氏、仲暁子氏、孫泰蔵氏など、豪華スピーカーたちによるメインステージ
毎回、メインステージには豪華スピーカーが登壇することで知られるSlushですが、今回の一番の目玉として注目されていたのが日産の会長でありCEOでもあるカルロス・ゴーン氏。
イベント2日目のトップ飾ったカルロス・ゴーン氏ですが、当日は多くの人たちが彼の話を聞こうとステージ周辺を埋め尽くしていました。
そして、カルロス・ゴーン氏と同じ様に多くの人を会場に集めたWantedlyのCEOの仲暁子氏。
今回は、同じくステージに登壇された両氏以降の方々をピックアップしてご紹介したいと思います!
Visedo(https://visedo.com/)のCEOであるKimmo Rauma氏。
Visedoは2009年に設立されたフィンランドの会社で、船や産業用トラック向けの、ハイブリッドかつ電動の車両システムを開発しています。この製品によって、稼働力を強めつつ、燃料消費を抑えることが能なのだといいます。
こちらは、2017年3月に運行を始めた同社の製品が搭載されたアジア発のハイブリッド型フェリー「Ferry Happiness」。台湾・高尾市の港を運行するフェリーで、元々このエリアは台湾の他のエリアに比べて2倍もの大気汚染が観測されているということで、Visedoのテクノロジーが使われたこのフェリーには、汚染問題の解決が期待されています。
彼らは、ハイブリッドと電気の技術によって、最終的には地球の大気汚染を終わらせることをミッションとして掲げています。
Fresco Capital(http://fresco.vc/)のManaging PartnerであるAllison Bauman氏。
Fresco Capitalは、サンフランシスコやニューヨーク、ロンドン、北米やアジアに拠点を持ち、グローバル展開をしているベンチャーキャピタルです。
Allison氏は、ゴールドマン・サックスでアナリストとして活躍されたり、General Assemblyの初期メンバーとして、ニューヨークと香港にてビジネスを展開したりと、世界を舞台に活動されてきている方。
Allison氏は、スタートアップに向け、グローバルにビジネスを展開することの重要性と、それにあたって求められるスキルについてスピーチを行いました。
bitFlyer(https://bitflyer.jp/)のCEOであるYuzo Kano氏。
Money Forward(http://corp.moneyforward.com/)のBoard DirectorであるToshio Taki氏。
MUFG Fintech AcceleratorのOpen Innovation ManagerであるTatsuto Fujii氏。
Kano氏はゴールドマン・サックス、Taki氏は野村ホールディングス、Fujii氏はマイクロソフトとIBMで金融関係のプロジェクトを担当されてきたという、いずれも金融分野のスペシャリスト。
3人によるステージのテーマは『ブロックチェーン』。Fujii氏が司会進行を務めながら、ブロックチェーンについてのそれぞれの考えと、今後の展望についてのトークセッションが行われました。
Rapyuta Robotics(http://www.rapyuta-robotics.com/ja/)のChief Executive OfficerであるGajan Mohanarajah氏。
Rapyuta Roboticsは、チューリッヒ工科大学Institute for Dynamic Systems and Control 研究所の出身で、欧州のトッププロジェクトである「RoboEarth」(http://roboearth.ethz.ch/index.html)をリードしてきた若手研究者で構成されているのだそうです。
同社が取り組んでいるのはクラウド技術を利用したマルチロボットシステムの開発。クラウド上の情報を元に自主的に行動し、情報と経験を蓄積していくことでロボット自体が成長し、私たちの生活を支援します。
SendGrid(https://sendgrid.com/?ver=b)のChief Marketing OfficerであるScott Heimes氏。
送信するメールの21%は正当な物であるにも関わらず届いていないのだといいます。SendGridでは、送信ドメインの認証や自動バウンス処理といった機能によって、確実にメールを配信するシステムを開発しています。
Mistletoe株式会社(http://mistletoe.co/)の代表取締役社長かつCEOである孫泰蔵氏と 500 Startups(http://500startups.jp/)のベンチャーキャピタリストかつ共同設立者のDave McClure氏のトークセッション。
2. 世界各国から集まった500のスタートアップ
場内には、今回のイベントに集まったスタートアップたちがブースを出し、多くのブースで自分たちの製品・サービスを熱く語る姿を見ることができました。
こちらは「STARTUP FUKUOKA」ブースに出展していた株式会社トルビズオン(http://www.truebizon.com/)の『ドローン航行のための「所有地上空」シェアリングビジネス』。
今後、ドローンの活用が活性化していくことを見越している中で、第三者の所有地の上空は、その土地の所有者の許可が無いと飛ばすことが出来ないという問題に着目。そこで同社では、ドローン運航者と土地所有者いわば飛行空間の所有者の間で、シェアリングビジネスを行う為のサポートを発案。ドローン運航者と飛行空間所有者が、ドローンを自由に飛ばす為の空間通過料を売買するというビジネスモデルです。
このビジネスモデルを展開する為に、ツール等を開発中だといいます。
ちなみに福岡市では、スタートアップをバックアップする取り組みを精力的に行っており、今回のような、海外のスタートアップイベントへの参加支援も積極的に行っているのだそうです。
こちらは株式会社Temari(https://www.temarii.com/)の「しゃかしゃかぶらし」。
実は、日本は先進国の中で、歯の残存数がワースト2位。予防歯科の意識が低いことが原因だと考えられていて、歯周病も増加傾向にあるのだそうです。しかも、口内に菌がたまると、心臓病、呼吸器疾患、糖尿病、心筋梗塞といった、様々な病気を引き起こす可能性があるともいわれているのだそう。
そこで同社では、子供の頃かの歯科教育が重要であると考え、この「しゃかしゃかぶらし」を開発。これは、同社が開発したくまのキャラクターの器具を歯ブラシにつけ、専用のゲームアプリを起動させます。アプリのゲームをする為の動きが歯磨きをする動きと連動されており、ゲームをクリアする為に歯ブラシを動かすことで、自然と楽しく歯磨きができるようになっています。
こちらは株式会社 no new folk studio(http://no-new-folk.com/)の「Orphe」。
両足に搭載された約100の制御LEDによって、光の色やデザイン、動きを自由にデザインしながら、独自のダンスやアートなどのパフォーマンスが可能だということで、それだけでなく、対応アプリケーションによって楽器やコントローラーなどとしても使えるそう。
Orphe対応のアプリ開発の為にSDKが公開されている為、利用シーンが制限されることなく、どんどん拡張していくことが期待されています。
こちらはomicsis,inc.(http://www.omicsis.co.kr/)の一般家庭向けの菜園セットである「Seedmo」。 omicsis,inc.は韓国を拠点とする生命情報学を強みとする会社で、特に種子産業に特化し、植物工場や苗床園、一般菜園向けに独自のバイオテクノロジーによる種子のパッキング製品を展開しています。
こちらも韓国の会社であるwindamp(http://windamp.co.kr/?ckattempt=2)の「AF02」。
同社が独自に開発した送風機で、ケガをしないよう安全なデザインとなっています。また、従来の物と比べて、電気消費量が40~60%程カットできるようになっているのだといいます。
近く、東京にも新しく拠点を出すそうです。
会場には、スウェーデン大使館のバックアップによる「INNOVATIVE SWEDEN」ブースが。
スウェーデンは、ノーベル賞の生みの親である発明家 アルフレッド・ノーベルが生まれた国。世界で最もイノベーティブな国として、国連が発表するグローバル・イノベーション・インデックス2016では128ヶ国中2位にランキングしているんです。(ちなみに1位はスイス。アジアの上位は11位の韓国で、日本は16位となっています。) そんなスイスからは、エリクソンやスカイプ、スポティファイ、マインクラフトといったグローバルブランドが生まれています。
イベント当日は、スウェーデンのスタートアップ6社が参加。ネオンで飾られたロゴがかわいらしかったです。
こちらはHERO Consultingが開発真っ最中だという代筆ロボット。挨拶の際、はがきを送る際に一言添えて書く作業が変だということに着目。そこで、ロボットがユーザーの書き癖を真似して、あたかもユーザーが手書きで書いたように代筆してくれるというものです。現在は、まだまだロボットが文字をうまく書きすぎているので、いかに人の手書きのように見せるかを開発中だということです。
QOOQ inc.(http://qooq.co.jp/index.html)の「ARCandle」。
こちらは2台でワンセットになったキャンドル。距離が離れた二組が、それぞれの場所からキャンドルをネットに接続すると、自分の動きがキャンドルの炎に投影され、お互いの存在を感じることができるというもの。世界でただ一つの「存在感」を伝えるデバイスだということです。
他には、東京工業大学のみなさんの出展も。
こちらはHapbeat合同会社(http://hapbeat.com/)の「hapbeat」。
hapbeatは東京工業大学発のベンチャー企業。hapbeatは、音楽を聴く時の体験に、臨場感と迫力を与える装着タイプのウェアラブルデバイスです。体に巻いた糸で音の振動を直接お腹に伝え、お腹から背中まで、体全体を音で包み込みます。また、パワフルなだけでなく、繊細な音の動きも体現することが可能なのだといいます
3. スタートアップ4社によるファイナルピッチ!!
そして、イベントがいよいよ終わりに近づく頃、Slush一番の注目ステージである、ピッチコンテストを勝ち進んできたファイナリストたちによるファイナルピッチが行われました!
今回、ファイナルピッチに勝ち進んだのは4社。4社それぞれの代表が、熱のこもったスピーチを展開しました。
Dot Incorporation(https://dotincorp.com/)
韓国のスタートアップで、視覚に障害がある方をサポートする、世界初のスマートウォッチDot Watchを開発。
スマホからアプリをダウンロードしてDot Watchと連動させることによって、Dot Watchを通して情報やサービスを受け取ったり、日時を確認したり、点字でメッセージを送ることが可能。Dot Watchのディスプレイ上に点字が出現し、ユーザーはその点字を指で触れて読み取ります。ディスプレイに次の点字が出現するまでのスピードは、ユーザーの好みによって調整できるようになっています。
Dotではオープンシステムを採用している為、Dot Watch向けのアプリの開発は誰でも行うことができ、実際、色々なアプリの開発が進んでいるそう。
世界には、視覚に障害がある方が約2億8500万人程いるといわれていますが、サポート環境は進化しておらず、既存のサポート器具はかさばったり、値段が高かったりと、様々な問題があるのだといいます。
その様な問題から人々をサポートする為に作られたDot Watchは、値段は300ドル。現在、同社のサイトでは先行予約をすることが可能です。
Elsius(http://www.elsius.com/index.html)
カナダのスタートアップで、コンパクトで持ち運びのできる血液ポンプおよび酸素供給機が内蔵された機械を開発。緊急医療の現場において、より多くの人命を救うことができ、また、医療スタッフの負担や費用の削減なども期待できるといいます。
Inzpire.me(https://inzpire.me/)
ノルウェーのスタートアップで、インフルエンサーとブランドを繋げるプラットフォームを開発。インフルエンサーという世の中に対して影響力のある人をブランド側がリサーチして選び出し、自分たちの製品を広めてもらうというインフルエンサーマーケティングをサポート。
現在、同社に登録しているインフルエンサーは世界各国に6500人以上、そのフォロワーは299,317,000人に上るといいます。
MacroSpace(http://macros-pace.com/)
2016年に設立された日本のスタートアップで、VR端末で自分の分身のように遠隔操作ができるテレイグジスロボットを開発中。
4. そして、ファイナリスト発表!!!
4つのスタートアップの代表のファイナルピッチも終わり、いよいよファイナリストが決定する瞬間が来ました!
Slush Tokyo 2017のファイナリストは、、、、、!!!
Dot!!!
Dotには、賞金として、スポンサーであるリクルートと投資家から、1000万円が贈呈されました。
そして、毎回イベントの最後には、次回開催されるイベントの告知がされるのもSlushの特徴。
既に次の舞台は決まっています。バトン代わりのヘルメットが、次回イベントのメンバーに受け渡されることに。
次回イベントの開催日時は2017年11月。場所は本国フィンランドのヘルシキンで、チケットの販売もスタートしています。 (http://www.slush.org/)
2日間にわたったイベントの最後には、これもSlushの特徴であるAFTERPARTYが盛大に行われました。最後の最後までクールに盛り上がるのがSlush流のようです。
ますます拡大し、スピードを増しているSlush。参加する度に、その勢いには毎回驚かされます。今後も彼らの動きに注目し、彼らが巻き起こしてくれる驚きとワクワクをみなさんにお伝えしてます。