会社を退職しフリーランスエンジニアへの転身を考えている方、既に準備中の方はご一読を!みなさんが疑問に思っている、フリーランスの失業保険について徹底的に調査しました。個人事業主になると失業手当はないの?代わりにもらえる給付は?もし不正受給がバレたら?など、様々な疑問にお答えします。
1. フリーランスは失業保険をもらえるのか
基本的には、残念ながらフリーランスは失業保険をもらえません、というのが実情です。しかし、諦めるのはまだ早い。もらえる条件が全くないというわけではないのです。
これから述べる条件をクリアすれば、失業保険もしくはそれに変わる手当を受給することが可能です。保険に関する仕組みを正しく知ることは、今後フリーランスエンジニアとして働く上でも大いに役立つことでしょう。
1.1 失業保険の受給条件
まずは失業保険の給付対象について解説します。条件は以下の通りです。
・再就職の意思がある
・現在求職活動を行なっている
・離職日以前、2年間の間に12ヶ月以上の被保険者期間がある(自己都合退社の場合)
・離職日以前、1年間の間に6か月以上の被保険者期間がある(会社都合の場合)
病気やケガの治療中、通学している、自営業をはじめようとしているなどの場合は、給付対象に当てはまらないとされます。失業保険は「再就職に向けて求職活動をしており、仕事がなかなか決まらない方に給付されるもの」として定義されているため、すぐに就業できない状態、また就業する意思がない場合は、対象外となるのです。フリーランスは自営業とみなされます。
1.2 求職活動中なら失業保険がもらえる
失業保険は、企業に就職しようという意思を持って求職活動をしていることが受給対象の条件。企業への再就職を目指す中で結果的にフリーランスとして独立した場合は、受給の対象となる場合もあります。
すべてのフリーランスが受給対象外という訳ではないのです。
1.3 独立予定のフリーランスはもらえない?
失業前からフリーランスとして独立予定だった場合は受給対象外となります。しかし、いつから独立を考えていたかなどの判断は第三者にはなかなか難しいもの。どのような判断基準が持たれているのかを下記にまとめました。
◆ どの時点から受給資格を失うのか
独立を決意したときイコール失業保険の受給資格は無くなると言われています。しかし、判断基準が非常に難しく、開業届が独立意思の判断材料とされる場合も。
◆ 事業をまだ始めておらず、報酬が発生していなければ受給資格はある?
基本的に報酬等が発生していなくても、開業の準備をしている段階で失業ではないとみなされ、受給対象外に。
これらのように厳しい判断基準が設けられているため、やはり受給はかなり難しいと言えるでしょう。
1.4 フリーランスを副業としている場合の失業保険
ところで、失業前から副業としてフリーランスを兼業していた場合はどうなるのでしょう?副業を持ちやすいと言われるエンジニアのみなさんだからこそ、疑問に思っている方が多いのではないでしょうか。
この場合、開業状態が続いていれば「失業の状態」ではなく、労働者としてみなされるので受給資格はありません。
本業の失業給付を受けたいときは、副業であるフリーランス活動もやめなければなりません。
その場合には、廃業したのちにハローワークにて求職を申込み、就職活動をしている認定を受けて、失業保険を受け取る資格を得られます。
出典:厚生労働省 雇用保険制度
2. 支給額と手続き方法
様々な条件を満たして失業保険の支給を希望した場合、どのように手続きを行い、いくら支給されるのでしょうか。下記で確認していきましょう。
◆ 手続きの方法
離職後から受給までの流れは以下の通りです。
↓
2. 雇用保険受給者説明会に参加
↓
3. ハローワークにて、失業認定日に求職活動を報告
↓
4. 失業手当受給
【失業保険の受け取りに必要な持ち物】
離職票/雇用保険被保険者証/印鑑/写真二枚/普通預金通帳/本人確認書類/個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のうちどれか)
失業保険を受給するには定期的にハローワークへ通う必要があり、提出する書類もたくさんあります。
日時や忘れ物の確認には注意が必要です。
◆ いつからもえるのか
では実際に手続きをしてからどのくらいで失業手当は受給されるのでしょうか。
【会社都合で離職した場合】
失業手当の申請手続きから1週間の待機期間後に失業状態と認定され、受給
【自己都合の場合】
失業手当の申請手続きから1週間の待機期間後に3か月の給付制限期間があり、受給
(給付制限期間中の失業手当は給付されません)
失業手当の申請に行く際、離職票の提出が求められます。まずは会社から離職証明書をもらい、離職票を受領する手続きを迅速に進めましょう。また、退職理由によって失業手当の受給開始日は大きく変わることも知っておきましょう。
◆ どのくらいもらえるのか
基本手当の金額は下記式より求めることが可能です。
少し複雑ですが、ハローワークにて算出してくれるのでご安心ください。
賃金日額=退職前の6カ月間の給与÷180日
基本手当日額=賃金日額×給付率
失業手当支給総額=基本手当日額×給付日数
※給付率は賃金日額と離職時の年齢によって異なる
※給付日数は会社都合の場合120日、自己都合の場合90日とする
【モデルケース】
30代前半、月収額43万円、勤務期間15年のエンジニアが自己都合で退職した場合
(30代前半エンジニアの平均月収額43万円を参照)
基本手当日額:14,333円×50%※=7,167円
※給付率は、賃金日額と離職時の年齢によって変わり、この場合には50%となります。※実際の給付率は複雑な計算をしますので、ハローワークにて確かめましょう。
※雇用保険に加入していた期間は10年以上20年未満、離職理由が自己都合ですので、給付日数は120日となります。
参照:リクナビnext
3. フリーランスが失業保険をもらうとバレるのか?
失業保険は大前提として「企業への再就職を支援するための制度」です。
冒頭で述べたように、原則としてフリーランスは失業保険をもらえない実情を忘れないでください。バレなければ大丈夫と思っている方、その考えは捨ててしまいましょう!失業状態にないと判断されるような行為はペナルティを受ける場合があります。
3.1 こんな行為はペナルティ!
フリーランスの不正受給がバレる理由で最も多いのは、クライアントの確定申告と言われています。また、SNSなどが不正の証拠となるケースや、次のような事例も考えられます。
・開業届を出した
・虚偽の就職活動の申請をした
・アルバイトなどの仕事を申告しなかった
・フリーランスになるための準備を申告しなかった...など
振り込みを遅らせてもらえば大丈夫…などといった安易な考えはやめましょう。退職した会社の従業員や関係企業による密告、マイナンバーによる納税履歴、ハローワーク職員の訪問など、あらゆる場面で不正受給は簡単に判明します。
参考資料:厚生労働省
3.2 不正受給の厳しい罰則
不正受給をすると下記のような非常に厳しい罰則が課せられますので、受給を考えている方はフリーランス稼業と重複しないよう、細心の注意が必要です。
・失業保険の支給停止
・不正受給した失業保険の全額返還命令
・不正受給した金額の2倍に相当する額の罰金
・返金・罰金の延滞金(年率5%)が不正受給翌日から課せられる
・返金・罰金の支払いを怠ると財産の差し押さえが行われる
・悪質な不正受給は詐欺罪などで処罰されることがある
参考資料:雇用保険法
参考:国税庁 第47条関係 差押えの要件
4. フリーランスがもらえるのは再就職手当
「再就職手当」とは、基本手当の受給者が安定した職業に就いた時に受け取れる手当で、一定の条件を満たしていれば、フリーランスでも受給が可能です。
厳しいペナルティに危険を感じてまで、失業保険の受給に奮闘するのはオススメできませんし、失業保険をもらうために仕事をセーブするのは、独立を目指すエンジニアにとっては本末転倒。
失業保険より金額は下がりますが、再就職手当をもらって仕事に邁進する方が、今後のフリーランス人生を豊かにするのではないでしょうか。
◆ 再就職の祝い金として一括で支払われる「再就職手当」について詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
5. フリーランス向け失業保険に代わる補償制度を紹介
フリーランスが受給できる失業保険はまだないものの、政府がフリーランス向けの失業保険を検討するなど、働く環境は徐々に整いつつあります。しかし、まだ補償制度が確率していないのが現実。まずは社会保険に加入し、次項でご紹介する制度や保険をうまく利用し、万が一のためにしっかり備えましょう。
5.1 フリーランスのための退職金制度
フリーランスになると企業で勤めていた頃とは違い、退職金などの制度がなくなります。そこで、多くのフリーランスが「小規模企業共済」を活用しています。
節税対策や資金繰り対策もできる、個人事業主のための積み立て退職金制度といったところでしょうか。
加入条件は開業届を出している個人事業者(フリーランス)であることが大前提。退職後の生活保証だけでなく、現役で働いている時にもサポートがあることが特徴です。
出典:中小機構
5.2 フリーランス賠償責任保険
フリーランスによる非営利団体、フリーランス協会による保険「賠償責任保険」。
業務遂行中の対物・対人の事故だけでなく、情報漏えいや納品物の瑕疵、著作権侵害や納期遅延など、フリーランスにありがちなリスクに備えた幅広い保証が魅力です。
大手保険会社4社による共同保険で、一般会員はもちろん発注主も補償対象となるため、加入していることでクライアントに安心感を抱いてもらえます。
出典:フリーランス協会
5.3 フリーランス所得補償制度
同じくフリーランス協会による保険「所得補償制度」。
国内初のフリーランス向け休業補償で、病気や怪我で働けなくなったときに保険金が支払われる『所得保障プラン』、外来による事故で怪我をした際、状況に応じて保険金を支払う『傷害補償プラン』、親を介護する子が負担する介護費用を補償する『親孝行サポートプラン・介護サポートプラン』の3つの保険が1つになった制度です。
病気や不慮の事故にあう可能性は誰しもありますので、万が一のために入っておいて損はないでしょう。
出典:フリーランス協会
6. 手当に頼らずどんどん仕事を探そう!
~クラウドソーシングやエージェントのすすめ~
フリーランスとして今後活躍したいのであれば、失業保険をあてにせず、仕事を増やす努力をしましょう。
そこでオススメしたいのが、求人情報サイト(エージェント)やクラウドソーシングの活用です。
フリーランスエンジニア向けの求人情報サイトでは、案件情報の提供はもちろん、価格交渉や営業的な役割をエージェントがすべてやってくれるので、独立直後などはとても便利。
また、クラウドソーシングは応募したクライアントと信頼関係が築けると、今後の仕事の受注にも繋がります。どちらも仕事獲得に向けての有効な手段としてどんどん活用していきましょう。
7. まとめ
フリーランスの失業保険について調べてきましたが、何をもって独立とするかの判断も難しく、受給は極めて難しいことが分かりました。
もらえるものはもらっておきたいという気持ちはあるでしょう。ですが、失業保険の受給がフリーのエンジニアとして夢を持って起業するみなさんの足枷とならないよう、再就職手当や新しい仕事の獲得でお金を生み出していくことを個人的にはオススメしたいと思います。
それぞれに最良の選択をして、新しい道を切り開いていきましょう!