生産性向上を目的に多くの企業でRPAツール導入の需要が高まっています。それに伴い増加しているRPA求人の年収はどのくらいとなっているのでしょうか。
今回は市場動向・求人データから『RPAエンジニアが売り手市場なのかどうか』『RPAエンジニアの年収・時給目安』などを紹介していきます。
1. RPAエンジニアとは?
近年、RPAツールの導入を検討する企業が増えたことで、RPAエンジニアに注目が集まっています。しかし実際のところ、RPAエンジニアの仕事内容や年収について知っている人は少ないのではないでしょうか。
RPA(Robotic Process Automation)とは、コンピュータを用いて作業を自動化する考え方のひとつです。
詳細な定義はこちらの記事で解説しているので、興味のある方は是非ご覧ください。
今回は、RPAエンジニアの市場動向や求人数、年収相場などについて解説します。
1.1 RPAエンジニアの仕事内容・必要なスキル
RPAエンジニアは主に『RPAツールを導入したい企業へのコンサルティング』と『ロボットの構築・保守・運用』を行います。
コンサルティングでは業務をRPAで自動化するための発想力が問われます。
また、ロボット構築・保守・運用では機能や対象業務の拡張を行うためにプログラミング言語を扱うスキルも必要です。
さらに具体的な仕事内容と求められるスキルについてはこちらの記事で解説しています。
1.2 RPAエンジニアが求められている背景とは
国内では昨今、少子化による人材不足や、育児や介護と両立できる新しい働き方への移行が進む中で『生産性の向上』が求められており、そのための手段のひとつとして、RPA導入による自動化ニーズが高まっています。
たとえばゆうちょ銀行では、これまですべて人手で行っていた口座開設にあたっての情報確認・取得業務をRPAツールを用いて自動化しました。その結果、口座開設業務にかかっていた時間を3分の1まで削減することに成功しました。
また広島銀行では、全営業店に向けた外貨普通預金残高の収益実績の周知業務を人手で行っていました。この業務には異なるシステム間の情報取得・連携が必要で、そのために一日に40分ほどの時間が費やされていましたが、RPA導入によってこの業務に必要な時間を数十秒までに短縮しました。
参照元:広島銀行が将来的な全行適用を目指したロボットによる業務自動化(RPA)の実証実験を富士通と開始|富士通
このほかの銀行でもRPA導入による成功事例は挙がっており、今後さらなる市場拡大を見込むことができます。
2. RPAエンジニアの年収は高い?年収相場・時給相場
多くの企業がRPA導入を求める中、RPAエンジニアの年収はどれほどの水準となっているのでしょうか?
以下では初めにRPAエンジニアの市場動向について解説し、その後実際の求人数や年収・時給の相場を紹介していきます。
2.1 【前提】RPAエンジニアは売り手市場なのか?
帝国データバンクの『人手不足に対する企業の動向調査(2020年4月)』によると、2019年の人手不足による倒産件数は前年度比14.8%増となっており、6年連続で過去最高を更新し続けています。
また、新型コロナウイルスの影響で仕事が急減した企業もある状況の昨今でも、全体の31%の企業が従業員の過不足感について『不足』していると回答しています。
こういった状況の中、業務効率化のニーズが高まっている一方で、業務効率化の担い手であるIT人材もまた不足しています。
そのため「RPAを導入したいが、なかなか思うように計画が進まない」という企業も多いのが現状です。
さらに経済産業省の『IT人材需給に関する調査』によると2025年には36万人、2030年には45万人のIT人材が不足することが予測されています。
昨今では教育機関からのIT人材の供給が以前より増加傾向にあるものの、依然としてIT人材は、市場の伸びに対して不足しています。
こういった状況から、RPAエンジニアは現在のみならず当面の間売り手市場が続くことが予想されます。
参照元:
IT人材需給に関する調査(概要)|経済産業省
IT人材需給に関する調査(報告書本体)|経済産業省
拡大はしたいが人材が不足?最新の『利用動向調査』から見るニューノーマル時代のRPA活用・展開の要諦|UiPath
人手不足に対する企業の動向調査(2020年4月)|帝国データバンク
2.2 RPA関連求人の動向・市場需要調査
求人検索エンジン『スタンバイ』の求人動向調査によると、『RPA』の単語が含まれる求人数は前年同月比6.4倍、『RPA エンジニア』が含まれる求人数は9.1倍に増加しています。
求人に含まれる単語 | 前年比(求人数) | 求人件数 | 最高提示年収 |
---|---|---|---|
RPA | 6.4倍 | 1,961件 | 3,000万円 |
RPA エンジニア | 9.1倍 | 556件 | 2,000万円 |
RPA コンサルタント | 6.0倍 | 698件 | 3,000万円 |
RPA BPO | 5.3倍 | 192件 | 3,000万円 |
また、株式会社富士キメラ総研が2019年に実施した国内市場調査によると、RPAツールの市場規模は2023年に535億円になると予測しています。
2018年時点の同調査では『2022年に315億円』になると予測されていたことを踏まえると、この1年で当初の予測を上回るペースでRPA市場が拡大したことが見て取れます。
これらの市場拡大により、今後さらなるRPA関連求人の増加が予見されます。
参照元:
求人検索エンジン『スタンバイ』による求人動向調査
『ソフトウェアビジネス新市場 2019年版』まとまる(2019/10/24発表 第19088号)|富士キメラ総研
『ソフトウェアビジネス新市場 2018年版』まとまる(2018/7/30発表 第18066号)|富士キメラ総研
2.3 RPAエンジニアの求人数目安
『RPA エンジニア』を含むいくつかのキーワードについて『Indeed』『求人ボックス』での求人数を調べました。
検索キーワード | Indeed | 求人ボックス |
---|---|---|
RPA エンジニア | 3,083件 | 2,680件 |
Android エンジニア | 8,530件 | 10,580件 |
iOS エンジニア | 6,765件 | 8,477件 |
Laravel エンジニア | 1,802件 | 2,089件 |
Vue エンジニア | 2,535件 | 3,230件 |
TypeScript エンジニア | 1,006件 | 1,870件 |
2020年7月13日時点の『RPA エンジニア』を含む求人数はIndeedで3,083件、求人ボックスで2,680件です。この数字は『Android エンジニア』などの大きな分野の求人数と比べるとやや低い水準にありますが、『Vue エンジニア』や『Laravel エンジニア』などライブラリ・フレームワーク単位の求人数と比べると高い水準にあります。
VueやLaravelのような昨今注目されているライブラリ・フレームワークより案件数が多いことから、RPAの需要の高まりを見て取れます。
2.4 RPAエンジニアの年収目安
正社員・業務委託のRPAエンジニアの年収目安はおよそ450万円~750万円です。
全体の平均RPAに関する仕事はコンサルタントから小規模なロボットの改修まで幅広いので、求められる業務内容によって提示される年収額の水準が異なります。
例えばRPAツールを用いたロボットの開発や機能の拡張、テストなどを中心とした仕事では、450万円~600万円の求人が主です。
しかしRPAコンサルタントやAIの活用を行う仕事では、600万円~750万円が多いです。
さらにRPA導入に伴い全社的な業務そのものの見直しや改革を目指す求人では、800万円~900万円の年収が提示されている場合もあります。
2.4.1 RPAエンジニアの時給目安
派遣社員のRPAエンジニアの時給目安はおよそ1500円~2500円となります。
時給単位で報酬が発生する派遣RPA求人の多くでは、RPAの導入支援やシナリオ作成の仕事が中心です。
しかし一部の求人では要件定義や自動化する業務の選定、ユーザへのヒアリングなども求められます。
こういった求人の場合、時給の水準はやや高く、およおよそ2400円~2800円となります。
3. まとめ
少子化による人材不足などの影響により多くの企業で業務自動化・効率化が求められる中、RPAツールを専門的に扱うエンジニアの需要が高まっています。
2023年に535億円の市場規模へ成長することも予測されているRPA市場では、現在、正社員で450万円~750万円の年収を提示する求人が多いです。
またAIやRPAコンサルタントのスキルがあれば、比較的高水準の求人に応募することもできます。そのため年収アップを狙う人はこれらのスキルを身に付けるのがおすすめです。