「独立系SIerって、そもそも何?」 「独立系SIer以外に、どんな種類のSIerがあるの?」 と思うことはありませんか?
そこで今回は、
• 独立系SIerとは?
• 独立系SIerの特徴・強み
• 独立系SIerのデメリット
• 優良な独立系SIerのポイント・見極め方
の流れで、独立系SIerの特徴や強みについて解説します。
記事の最後に「独立系SIerで求められるスキル」についても解説しているので、ぜひ最後までお読みください。
1. 独立系SIerとは?
独立系SIerの特徴について解説します。
1.1 独立系SIerの定義
1.1.1 「システムインテグレーション」を行う事業者
SIerは、「システムインテグレーション」を行う事業者です。システムイングレーションとは、既存の業務にパソコンやインターネットの仕組みを導入し、業務効率化などが実現できるシステムを作ること。
- 業務の課題をヒアリング
- 解決できる案としてシステム開発を提案
- 具体的に開発する要件や機能を設計
- プログラムを作り、テストしてリリース
- 導入後の運用・保守も実施
といった流れで、課題のヒアリングからシステム導入、導入後の運用サポートなども担います。
1.1.2 メーカー系・ユーザー系との違い
SIerには、次の3つの種類があります。
- ユーザ系
- メーカー系
- 独立系
ユーザ系SIerは、大企業の社内システムを扱っていた部署が独立し、社外の開発なども請け負うようになったSIerのこと。代表的なSIerとして、
- みずほ銀行系列(みずほトラストシステムズ)
- 日本生命系列(ニッセイ情報テクノロジー株式会社)
などがあります。
メーカー系SIerは、国内のメーカー企業がSIer事業を行っています。代表的な企業は、
- 日立系列(株式会社日立システムズ)
- 富士通系列(富士通エフサス)
などがあります。
どちらもシステムインテグレーション事業だけでなく、他の業務も行っている(もしくは行っていた)点が特徴です。
一方で独立系SIerは、システムインテグレーション事業を主軸に置いた企業のこと。どこの企業にも属さない点から、独立系SIerと呼ばれています。
1.2 代表的な大手独立系SIer
1.2.1 大塚商会
出典:大塚商会
URL | https://www.otsuka-shokai.co.jp/ |
---|---|
従業員数 | ・連結:9,119名
・単体:7,429名 |
売上高 | 7,504億9,200万円 |
大塚商会は、大手独立系SIerの代表企業の1つ。主に、次の2つの事業を展開しています。
出典:事業紹介|大塚商会
SI(システムインテグレーション)事業で言うと、
• 複数のメーカーから、最適なIT機器やシステムを選定
• PC、複合機などのあらゆるITのご要望に対応
といった2点を強みとしているようです。
1.2.2 日本ユニシス
出典:日本ユニシス
URL | https://www.unisys.co.jp/index.html |
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従業員規模 | 連結: 7,830名
単体: 4,355名 (2020年3月31日現在) |
売上高 | 1,789億6,600万円 |
日本ユニシスは、大手独立系SIerの代表企業の1つ。主に、次の3つの強みがあります。
• 設立以来、60年以上にわたりSI事業を続けており信頼性が高い
• 金融、製造、流通、エネルギー、社会公共などの幅広い経験がある
• AIにも力を入れている
特にAIでは、Rinzaと呼ばれるサービスがあります。課題解決の意思決定を支援することで、企業の課題解決や新しい価値を生み出せるシステムです。
出典:課題解決を支援するデータ+AI Rinza|日本ユニシス
1.2.3 トランスコスモス
出典:トランスコスモス
URL | https://www.trans-cosmos.co.jp/ |
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従業員規模 | グループ:61,773名(国内:42,737名、海外:19,036名)
(2020年9月末現在) |
売上高 | 290億6,596万円 |
トランスコスモスは、大手独立系SIerの代表企業の1つ。トランスコスモスには、次のようなサービスがあります。
ECサイトやデジタルマーケティングなど、コロナ禍で加速する非対面営業の強化などを支援に強みがあります。実際に以下のように、SaaS型のCMS「DEC CMS」を導入し、デジタルマーケティングを支援した事例もありました。
2. 独立系SIerの特徴・強み
独立系SIerの特徴・強みを4つ解説します。
2.1 開発の自由度が高い
独立系SIerは、メーカー系・ユーザー系と異なり親会社などがありません。そのため、
• 親会社の製品を使用した業務を行う
• 親会社からの案件に業務範囲を制限される
といったことはありません。親会社とのしがらみがない点は、独立系SIerならではの魅力と言えます。
自由度が高いということは、案件に合わせて最適なやり方ができるという強みもあります。具体的に言うと、
• 使用するハードウェア
• 採用するプログラミング言語やフレームワーク
などの選定を自由にできることもあるため、新たな技術も取り入れやすいでしょう。
2.2 コーディングスキルが比較的高い
親会社の規程等に合わせる必要がないため、開発の自由度や採用する技術の幅が広いです。そのためエンジニアとして働く視点で見ると、やりがいを感じやすいのが特徴です。
やりがいを感じやすい環境が作れる
↓
優秀な人材が集まりやすい
↓
開発のレベルが高く、自身も成長しやすい
といった好循環が生まれやすいため、おすすめです。
また下流工程を外注に頼らず、自社で行う企業もあります。上流工程から下流工程まで一気通貫で対応し、コーディングスキルも伸ばしたい方には、最適な環境かもしれません。
2.3 営業スキルが高い
メーカー系SIerの場合は、親会社から仕事がおりてくることもあります。一方独立系SIerの場合は、こういった伝手がありません。
独自に営業を行う必要があるため、
• 他のSIerとの差別化する強み
• 広報戦略・営業戦略の構築を高いレベルで行う
といった特徴があり、SIerとしての生存戦略を学べる点も特徴です。
2.4 キャリアパスの柔軟性が高い
SIerのキャリアパスは、プロジェクトマネージャに昇進していくのが一般的でした。一方で独立系SIerは、SIerの中では自由度が高い環境のためスキルを伸ばしやすく、キャリアパスの柔軟性が高いのが特徴です。
• コーディングを重視してスペシャリストを目指す
• 営業や広報などを重視してキャリアを積む
といった方向性も目指せるのは、メリットと言えるのではないでしょうか。
3. 独立系SIerのデメリット
続いて、独立系SIerのデメリットを解説します。
3.1 プロジェクトの下流工程を担当することも多い
さきほど「コーディングできる」といった点をメリットに挙げましたが、人によってはデメリットに感じるケースもあります。たとえば独立系SIerは自社で営業をする必要があるため、営業が弱いとメーカー系・ユーザー系SIerの下請け業者として案件を進める形となります。
下請け業者として案件を受けた場合は、上流工程ではなく下流工程のみ(つまりプログラミングがメイン)となってしまうため、「実際はプログラマーと変わらない」といったことも。
そのためプログラミングをメインに仕事する可能性もある点には、注意が必要です。
3.2 高い営業努力が常に求められる
独立系SIerは、メーカー系SIerなどと比べて親会社から仕事がおりてくることはありません。そのため、必然的に高い営業力が求められます。
具体的に言うと、
- 顧客から頂いたRFP(提案依頼書)を確認したり、ヒアリングする
- 課題解決につなげる導線や提案を考え、資料を作成する
- 実際に商談し、提案を通して初めて案件化する
といった流れで案件がスタートするので、これらの業務を進めるスキルが必要です。
受注が途切れると自社で抱えているエンジニアのリソースが浮いてしまうため、営業へのプレッシャーは高めである点に注意しましょう。
3.3 離職率が高まることもある
これまでお伝えした、
• プログラマーのように下流工程がメインになる場合
• 高い営業スキルが求められる場合
など、独立系SIer企業と一口に言っても、企業によって求められるスキルや業務内容が大きく変わります。
そのためいざ転職してみると、
「開発の自由度が高いと思っていたのに、下流工程しか担当できない」
「納期に余裕がなく、残業も多い」
など現場の負担が大きくなりやすいです。その結果、離職率が高くなることもあります。
SIerの経験がない場合は、メーカー系・ユーザー系のSIerも視野に入れつつ、転職活動を進めると良いかもしれません。
4. 優良な独立系SIerのポイント・見極め方
優良な独立系SIerを見極めるポイントを3つ解説します。
4.1 クライアントの業種・職種の幅が広い
独立系SIerは、自社で営業をかけて案件を受注します。営業に成功している企業の場合は、幅広い業種・職種の案件を手掛けていることが多いので、注意してみると良いでしょう。
たとえば大塚商会では、以下のように様々な業種・職種の事例が豊富です。
【大塚商会の導入事例の業種例】
• 建設業
• 不動産業
• 金融・保険業
• 製造業
• 卸売・小売業・飲食店
• サービス業
• 運輸・通信業
• 官公庁・自治体
• 学校
出典:導入事例|大塚商会
実際にソリューションを見てみると、幅広い課題解決につなげるノウハウ・実績があることが伺えます。
【大塚商会のソリューション例】
• 経営基盤強化・リスク対策
• ITの運用・保守の負荷軽減
• 営業・業務プロセス効率化
• 紙文書の管理・活用
• ネットワーク環境の構築・改善
• 機密漏えい・外部侵入対策
• コスト削減・売り上げ向上
• 社員育成・人材開発
• 業務データの活用
• LED照明で節電対策
独立系SIerについて企業分析をする際は、このように「幅広い業種・職種に対応できるか」といった点は確認しておくのがおすすめです。
4.2 営業力が高い
独立系SIerは、営業力が高くないと仕事が受注できません。そのため営業力が低いと、下請け業者としての案件がメインとなってしまい、プログラマーのような働き方が多くなってしまうことも。
当然上から来る指示に従って開発を行うため、自由度もあまり高くなく、スキルも身につきづらい可能性も。営業力については、特に詳しく見ておきましょう。
4.3 明確な技術面での強みがある
独立系SIerの魅力は、「親会社からの指示などの縛りが少なく、自社の方針に合わせて技術面を自由に選択できる」といった点です。その点から言うと、明確な技術面で強みがある企業であれば、技術面でも成長できる企業と言えるのではないでしょうか。
ベンチャー・スタートアップの中には大手SIerのようなウォーターフォール開発ではなく、アジャイル開発で受注している企業も。また下請けに出さず、自社内で開発を完結させる企業もあります。
たとえば、
• アルサーガパートナーズ
• ソニックガーデン
などが、その例です。
• 今後技術面を強化していきたい人
• 柔軟に開発を進めるスキルを身につけたい人
にとっては、おすすめの環境なのではないでしょうか。
5. 独立系SIerで求められるスキル
独立系SIerで求められるスキルを3つご紹介します。
5.1 コミュニケーション能力
SIer全般に言えることですが、
- 顧客の悩みを引き出して、経営課題を明確化する
- 顧客と打ち合わせして要件を固めていく
といったコミュニケーションを取る業務も多いので、コミュニケーション能力は必須です。
とはいえ、お笑い芸人のような盛り上げる力などが必要というわけではありません。適切に求めていることを確認し、意思疎通ができる能力があれば十分です。
5.2 ドキュメント作成能力
顧客と打ち合わせする際は、アウトプットとなる成果物がついて回ります。そのため、ドキュメントを作成する能力についても、コミュニケーション能力とセットで必要となるでしょう。
特に話した内容を要約し、文章でまとめる能力が求められます。具体的なツールで言うと、
- Excel
- Word
- PowerPoint
などのツールを駆使し、資料作成ができるよう訓練しておきましょう。
既に自信がない方は、MOSなどを受験して基礎を身につけるのもおすすめです。
5.3 最新の技術へのキャッチアップ
昔ながらのウォーターフォール開発を行っているSIer企業は、現状も多いです。しかし、独立系SIerによっては最新技術を取り入れた開発を重視している企業もあります。
また顧客との打ち合わせで、「今後のメンテナンス性なども考慮して、最新のフレームワークで開発を進めたい」といったことを言われる可能性も。このとき技術を知らなければ会話にならないのはもちろん、具体的な提案ができません。
独立系SIerは提案をして案件を受注する必要があるため、営業力にも直結してしまいます。よって最新の技術にキャッチアップして、提案できる能力も重要です。
6. まとめ
今回は、
• 独立系SIerとは?
• 独立系SIerの特徴・強み
• 独立系SIerのデメリット
• 優良な独立系SIerのポイント・見極め方
の流れで、独立系SIerの特徴や強みについて解説しました。
独立系SIerは親会社からの縛りなどがなく自由に進めやすい一方で、営業力によっては極端に業務がプログラマー寄りになってしまうことも。
逆に言えば、しっかり企業を見極めて転職すればキャリアの選択肢が広がる強みがあります。高い営業力、プログラミングスキルなどを求められる現場も多いので、その点も含めて転職活動をするのがおすすめです。
今回の記事が、SIerを目指している人の参考になれば幸いです。