人々の価値観の多様化やグローバル化によって、常に変化、進化し続けるビジネス市場の中で、変化に適応しながらスピーディーかつユーザーの要求に応じた柔軟性を持つ商品を提供することは大切です。
今回は生産性を大幅にあげるアジャイル開発の解説と、その知識を深めるために現場に活かせるおすすめの資格を4選ご紹介します。
本記事を読むことで、どのような資格を取るべきか、資格を取得するための勉強の仕方などを理解することができるでしょう。
1. アジャイル開発関連のおすすめ資格まとめ
1.1 アジャイル開発とは
アジャイル開発のアジャイルとは「素早い」、「俊敏な」という意味で、大きな単位でシステムを分けることなく、小さな単位で実装とテストを繰り返していく手法のことです。
アジャイル開発は、「往来の開発方法に比べて開発期間が短縮できる」「顧客が実際に動く画面や機能を試すことができる」「修正の影響が最低限で済む」などさまざまなメリットがあります。アジャイルで期待される効果をより高めるために、考え方や原則を理解することを重要とした「アジャイルソフトウェア開発宣言」というガイドラインも作成されました。
出典:アジャイルソフトウェア開発宣言の読みとき方|IPA情報処理推進機構
このなかにはソフトウェア開発の向上を目指すには、変化に適応しなければならないと記載されています。このように、時代の急激な進化とともに、たくさんの仕様書作成に時間をかけるのではなく、顧客の反応や様子を見ながら変化にできるだけ柔軟な対応を可能にして生産性の効率を高めようというのがアジャイルの特徴です。
往来の開発方法とどのように違うのかはこちらの記事を参照ください。
1.2 アジャイル関連のおすすめ資格選定基準
アジャイル関連の資格選定基準としては「体系的にアジャイル開発のスキルが身につく内容か」「実用的な資格か」が重視されます。
1.2.1 体系的にアジャイル開発のスキルが身につく内容か
資格取得の意義は「専門分野において深い知識を得ること」です。
試験にかかるアジャイル開発に関する内容を体系的に学べる学習書やチュートリアルサイト、もしくは研修などが用意されているか、例えばこれまで個人開発やウォーターフォール開発の経験しかないエンジニアでも、資格の勉強を通じてアジャイル開発の思想や、イテレーションの回し方、ベロシティの計測の方法などを学び、実践に活かせるような内容になっているかというものが重要になっています。
1.2.2 実用的な資格か
資格の勉強内容がいかに「実用的か」ということも重要です。結論から言えば、認定スクラムマスター(Certified ScrumMaster®:CSM®) かLSM(Licensed Scrum Master)を取得するのが2020年現在は一番おすすめです。
いずれも数日にわたる研修・トレーニングに参加した上で、試験を受験するもの。実戦形式の演習をこなすことで、これまでにスクラムのプロジェクトを経験したことがない人も小さな・短期的なスクラムのプロジェクトを追体験できるので実践的です。アジャイル、ないしはスクラム開発には経験主義的な側面もあるため、実践重視の研修・資格がもっとも実用的と言えます。
CSMは最もメジャーと言われている認定資格で、CSMを取得するとさらに上位資格へとステップアップ可能です。ただし研修が厳しく、トレーナーに資質がないと判断された場合は研修終了後に試験を受けられません。トレーナーが受講者に極めて厳しく接するのが研修の特徴で、精神的に弱い人にはおすすめしないとの声があります。
LSMはKDDIなどが参加した合弁会社の主催で、ワークショップが「楽しい」「面白い」という声が多いです。好みや目的に合わせて、どちらを受験するか選ぶと良いでしょう。
2. アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験
出典:Agile
アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験は、アジャイル開発のスキルを客観的に計測する試験です。試験はLv.1とLv.2に分かれており、試験内容や難易度、合格率などが変わってきます。
資格名 | アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験 |
---|---|
試験開催時期 | 特になし |
受験方法 | HPから申し込み |
料金 | (1)10,000円(税抜) (2)15,000円(税抜)※ |
公式HP | Agile |
※(1)アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験Lv.1
(2)アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験Lv.2
2.1 アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験の難易度
アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験はアジャイル開発の基礎知識を問うものです。
Lv.1はアジャイル開発に「参加」するために必要な知識を問います。Lv.2はチームメンバーとして実践的に動くために必要な知識を問います。Lv.1は開発業務(コーディングなど)自体は未経験でも、ウェブサイト制作やアプリ開発のディレクションやプランニング、コンサル寄りの業務経験があれば数冊程度参考書を読めば合格できるレベルとなっています。
2.2 アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験の料金
料金に関しては、Lv.1は10000円(税抜)、Lv.2は15000円(税抜)と分けられています。
2.3 アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験の勉強方法
LV.1は「アジャイル検定公式テキスト アジャイルソフトウエア開発技術者検定試験 レベル1対応」が公式テキストとして発売されており、アジャイル開発に関して基礎的な知識が一通り網羅されています。
アジャイルは専門用語も多いので、単語集としても後々便利です。
読み終わったら「わかりやすいアジャイル開発の教科書」「アジャイルサムライ 達人開発者への道」がおすすめです。Lv.1は理解度チェックという意味合いが強いので、本の内容をしっかり理解でいていればそれほど難しくない。実務に参加するようになったら、Lv.2へと進むと良いです。
3. 認定スクラムマスター(Certified ScrumMaster®:CSM®)
出典:Odd-e Japan
認定スクラムマスターは数あるスクラムマスターの中で最もメジャーと言われるのがこの資格で、初めにこの資格を習得し、上位の資格にステップアップしていく人が多いです。
資格名 | Certified Scrum Master(CSM) |
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試験開催時期 | 研修終了後 |
受験方法 | HPから申し込み |
料金 | 30万円(税込) |
公式HP | Odd-e Japan |
3.1 認定スクラムマスターの難易度
Certified Scrum Master(CSM)の研修を受講し、研修+テキスト+演習をこなします。研修を途中で離脱したり、トレーナーから適性がないと判断された人物は資格試験の受験自体ができなくなります。
特に演習パートは非常にハードで、スクラム未経験・未学習の場合は気合を入れて研修の受講と復習をする必要があります。合格率は非公表です。試験そのものの難しさ以上に、研修全体のハードルが高めに設定されており、トレーナーは論理的に弱い箇所や穴がある箇所を演習を通じて徹底的に指摘します。
特にグループによる演習を重視しており、初日に課題が出され、課題解決の方法を話し合い、グループワークで「全員が合意する」状態に導き、ステークホルダー(研修においてはトレーナー)に内容を判断してもらうのが一連の流れです。
講師は基本的に厳しいスタンスを取り、わざと意見出しや、ファシリテーションのための雰囲気づくりを難しくする態度をするので、スクラムマスターとしてそのような状況下でどう動くべきか徹底的に考え抜く必要があります。
3.2 認定スクラムマスターの料金
料金は30万円(税込)です。
3.3 認定スクラムマスターの勉強方法
スクラムに対する基礎知識はあることが前提です。スクラムガイドでは、スクラムとは以下のように定義されています。「スクラムとは、以下のようなものであります。– 軽量 – 理解が容易 – 習得は困難である」。
スクラム未経験・未学習の場合にはCSMではなくとも、アジャイルソフトウェア開発技術者認定試験を受け、基礎固めすることで知識自体は早い段階で身につきます。多少なりとも実務経験や知識が伴ってきたら、研修に参加すると良いです。
認定スクラムマスター(CSM)は、スクラムマスターとはどのような存在であるのか、マインドセットを徹底的に固めるもの。チームの誰よりも論理的に物事を考えられなければならない存在で、なおかつチームの合意を得られる存在でなくてはならないためスクラムマスターとしての在り方を極めていきたい人におすすめです。
4. PSM(Professional Scrum Master™)
出典:Scrum.org
PSM(Professional Scrum Master™)は、Scrum Org. によるスクラムマスターの認定資格です。圧倒的に低コストです。
CSMの1/20、LSMの1/13程度の費用で認定資格が取得可能で、CSMやLSMでは参加必須のトレーニングへの参加がマストではないです。またPSMには有効期限がなく、CSMは2年で有効期限をむかえるため、2年毎に更新料$100が発生します。
知識の裏付けとなる認定資格は欲しい(腕試ししたいなど)が、スクラムマスターとしての在り方を極めるというよりはゼネラリスト志向の人や、コストを抑えたい人におすすめの資格です。
資格名 | PSM(Professional Scrum Master™) |
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試験開催時期 | 特になし |
受験方法 | HPから申し込み |
料金 | $150(約1.6万) |
公式HP | Scrum.org |
4.1 PSMの難易度
研修・トレーニングへの参加がマストではないため、CSMのような研修そのものの精神的・肉体的なハードさなどは特にないです。
一方で資格試験そのものの難易度はCSMより高く設定されており、CSMが正答率75%と言われているのに対し、PSMは85%以上です。スクラムガイドをしっかり読み込むなど事前対策が必要になります。また英語で受験することになるため、英語力が足りない人にはより難しい試験になります。
4.2 PSMの料金
PSMの料金は150ドルです。日本円に換算すると、約1.6万円になります。CSMやLSMと比較すると圧倒的に低コストで受講できるのが特徴です。
4.3 PSMの勉強方法
Scrum.orgではOpen Assessmentという何度でも受けられるプレテストがあり、問題傾向を把握できます。プラスアルファでスクラムガイドを英語で読み込むなど対策するのがおすすめです。
オンライン講座のひとつであるUdemyの対策コースや、Mikhail LapshinのSCRUM QUIZZESというコーナーで学習するのも良いでしょう。
5. LSM(Licensed Scrum Master)
Scrum Inc によるスクラムマスターの認定資格です。Scrum IncはKDDI株式会社、株式会社永和システムマネジメントとScrum Inc.の3社での合弁会社によるものです。
スクラム経験有無に関係なく、誰でも受講可能なのが特徴で、研修を受けたのちにメールでWebサイトへのログイン情報が届き、サイト上で試験を受けて合格すると資格が得られます。不合格の場合でも25ドルで再度受験可能です。
資格名 | LSM(Licensed Scrum Master) |
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試験開催時期 | 研修終了後 |
受験方法 | HPから申し込み |
料金 | 20万円(税抜) |
公式HP | Scrum Inc. Japan |
5.1 LSMの難易度
研修が終了するとメールでサイトURLが送られ、試験を受けられる。四択問題が30問。全問解答するとすぐに結果が表示されます。
75%以上の正解で合格とされています。不合格の場合でも2回目をすぐに受けられるため、試験そのものの難易度はそれほど高くありません。スクラム未経験者も受講可能の研修で、系統立ててスクラムを学べるため研修の内容が身についていれば1回~2回の受験で合格できる可能性は高いです。
5.2 LSMの料金
料金は20万円(税抜)です。
5.3 LSMの勉強方法
試験内容自体は研修で内容を網羅している&再受験が即時可能なため、研修の内容が定着していれば問題なく解けます。
スクラム開発が完全未経験の場合は、「スクラム実践入門 ── 成果を生み出すアジャイルな開発プロセス」などで予習を推奨します。
また個人開発など小さなことでも構わないので、開発に取り入られる箇所は取り入れてみると良いです。
例えばかんばん方式を個人開発に取り入れ、Trelloでタスク管理をしてみるといったトライをしてみると良いでしょう。
アジャイルやスクラムの経験が半年程度ある人であれば、同程度のキャリアの参加者も多く参加する研修のため、自社のアジャイルやスクラムの取り組みについて意見交換するとより理解が深まるでしょう。グループワークだけでもかなり理解が深まるといえます。
6. まとめ
今回は、アジャイル開発に関連する資格を4つご紹介しました。
資格は習得しなければ業務が出来ないということではないので軽視されがちですが、学習の過程で資格を習得し、それを業務に活かすということは意味のある行為です。資格を習得することで、幅広く深い知見を得る事がてき、マネジメント力の向上にも繋がります。
多くの現場でアジャイル開発を取り入れ、生産性を高めることで顧客も開発者も両方win-winな関係を作り上げていきましょう。