• 機械学習・AIエンジニアの年収は高い?安い?国際的な水準と比較分析

    公開日:2020年11月02日 最終更新日:2021年12月18日

    AI開発の最先端を先導するアメリカや中国では、きわめて高額の年収が支払われているAIエンジニア。AIを活用したプロダクトの開発にあたっては、AI技術者をいかに確保するかが多くの企業の課題になっています。
    今回は、機械学習によるAI開発の技能を有するエンジニアの平均年収について紹介していきます。

    1. AI開発者・AIエンジニアの平均年収

    各企業がこぞってAIを活用したプロダクトを開発する中で、AI開発者の需要が高まっています。この状況の中、現在AI開発者の平均年収はどのような水準となっているのでしょうか。

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    1.1 AI開発者・AIエンジニアの年代別平均年収

    有価証券報告書や人事院の民間給与実態調査、国税庁の民間給与実態調査などをもとに、平均年収の調査を行っている『平均年収.jp』の分析によると、AIエンジニアの年代別の平均年収の予測値は以下の通りです。


    20代 570万円~710万円
    30代 680万円~890万円
    40代 879万円~1120万円
    50代 1090万円~1190万円

    出典:AIエンジニアの年収給料20~65歳の年収推移・役職別年収|平均年収.jp

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    2. 日本のAI開発者・AIエンジニアの年収は安すぎる?

    日本における30代のAIエンジニアの平均年収は約780万と言われています。近年、日本のエンジニアの年収は、海外と比較すると安いのではないかと問題視されることも多くなりました。

    以下で、世界のAIに関する状況を整理しながら、AI人材の年収について紹介します。

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    2.1 アメリカのAI開発者・AIエンジニアの年収・給与相場

    Forbesによると、アメリカのAI人材の年収は10万~12万ドル、日本円に換算すると1000万円を超えることが最も多いそうです。その中でも、特に優れた技術や統率力を持つ技術者は、年収26万ドルを超すこともあると言われています。

    高額な年収の背景には、AI人材が足りないという問題があります。技術分野のグローバル企業が密集し、世界中からIT人材が集まるシリコンバレーでさえ、AIに詳しい人材は希少です。

    そのため企業は、貴重なAI人材確保のため、年収30万~50万ドル(約3300万~5500万円)以上に加え、会社の株式を報酬として与えるなどといった、かなり好待遇の条件を提示することも珍しくありません。

    参照:The Best AI Companies To Work For In 2018 Based On Glassdoor|Forbes

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    2.1.1 Google(グーグル)のAI開発者・AIエンジニアの年収

    アメリカの代表的なIT企業グーグルは、AIの需要の高まりを受け、2014年にディープマインドというAI研究所を推定6億5000万ドルで買収しました。この研究所では現在約400人が勤務しており、1年間の人件費は1人あたり34万5000ドル、合計1億3800万ドル(約152億円)にも上るとされています。

    The New York Timesによると複雑なAI研究に取り組むことができる人材は、世界全体で見ても1万人を下回ると言われています。グーグルの件は、AI人材不足という深刻な事態に危機感を抱き、人件費に莫大な予算をかけて人材確保を急ぐ大手企業の代表例と言えるでしょう。

    参照:年収5000万円もザラ、米AI人材のヤバい報酬|The New York Times

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    2.2 中国のAI開発者・AIエンジニアの年収・給与相場

    ロイターによると、中国でのIT人材の年収相場は、本場シリコンバレーの水準に近付いているとのことです。

    テクノロジー系の求人サイトが公表した情報によると、中国のAI関連企業に就職が決まった学生の年収は、30万~50万元(約520万~1000万円)が平均的です。一方で、AIに関して実務経験を持つチームリーダーの場合は、年収150万元(約2600万円)にも上ります。これは、ITやロボット工学などの分野を重点的に強化し、経済を押し上げようとする中国の政策を表したものと言えるでしょう。

    また、トランプ米政権が移民政策に厳しい姿勢を取り、ビザを維持することができなくなるという不安が、在米中国人エンジニアを襲っています。彼らにとっては、中国企業の給与水準が上昇している状況は、帰国して就職するという選択を後押ししています。

    参照:焦点:中国でIT人材の争奪戦、給与水準シリコンバレーに迫る|ロイター

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    2.2.1 ファーウェイのAI開発者・AIエンジニアの年収

    中国の通信機器大手であるファーウェイは、最大年俸約200万元(約3000万円)で、博士号を持つ新卒者を採用するという求人方針を打ち出しています。

    トランプ米政権による禁輸措置で、アメリカ企業との取引が難しくなった中国では、半導体やスマートフォンOSなどの調達に関して、外国企業への依存度を減らし、自国内での確保と開発を推進するという動きが見えつつあります。中国のIT業界は、今後ますます競争が激しくなっていくと予想されています。

    ファーウェイの求人方針は、そんな国内状況に対応したものと言えるでしょう。同社の社員の平均年収は68万8900元(約1170万円)であることを踏まえると、かなり高額な年俸を提示して、優秀なAI人材を自社に引き入れようとしていることがわかります。

    実際、2019年には、AIなどの分野で博士号を持つ8人の学生を、年俸90万~200万元で採用しています。

    参照:新卒「天才少年」に200万元 ファーウェイ、若手人材確保へ|SankeiBiz

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    3. AI開発者・AIエンジニアに高給を支払う日本企業の例

    AIの需要の高まりや、海外のAI人材確保に関する動きを受けて、日本でも優秀なAI人材を確保しようと、高めの年収を提示する企業が増えています。本章では、日本企業におけるエンジニア確保の動きについて見ていきます。

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    3.1 ソニー

    ソニーは、これまで手掛けてきた事業領域を変革していくことに加え、新たな事業分野を創出し、将来的には世界規模の課題解決に貢献することを目標としています。そのためにはAIは重要な分野であるとし、AIの研究開発をますます推進していく方針を打ち出しています。

    AIに関連するプロジェクトを具体化し、研究開発を進めていくために、ソニーは2019年、日米欧に拠点を置く新組織「Sony AI」の設立を発表しました。

    「Sony AI」での組織運営は、「多様な人材でチームを構成することで革新的なイノベーションが創出される」という考えが基本となります。世界中から優秀な人材を確保するため、世界水準の待遇を提示していくことが予想されます。

    参照:人類のクリエイティビティの拡張に向けて 人工知能(AI)の研究開発を加速する「Sony AI」を新設|SONY

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    3.2 DeNA

    DeNAでは2017年、高度なAI知識を習得している学生向けに、「エンジニア職AIスペシャリストコース」という採用枠を設けました。サービスづくりに関して情熱を持っており、プロジェクトを牽引していくことができる、即戦力の確保を目的としたものです。

    この採用枠で採用する学生に適用する年俸の目安は、600万~1000万としています。学生時代に国際会議に論文を通していることが最低条件になるなど、非常に厳しい条件での募集となる分、能力に見合った金額を提示することを約束しています。同社の新卒エンジニアの年俸は500万円が基本であることを踏まえると、かなり高額な年俸を提示していることがわかるでしょう。

    参照:2021年度 新卒採用 AIスペシャリスト|DeNA

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    3.3 NEC

    NECは2019年10月から、社員の技術レベルに応じた等級制度をもとに給与を決定するという、新たな賃金制度を導入しました。「年功序列」という言葉に代表されるような従来の日本型雇用とはかなり異なる、実力主義の評価体制となります。

    この制度導入の背景には、企業同士の激しい人材確保競争があります。海外のトップ企業と同水準の給与を提示しなければ、優秀な人材を外資系企業やスタートアップ企業に奪われてしまいます。また、社員のモチベーションも下がり、離職率上昇に繋がることも考えられます。

    NECは世界7ヵ国に研究拠点を持っていますが、海外と日本で給与水準に差があることは、以前から課題となっていました。評価体制の転換は、これらの状況を総合的に踏まえて、実現されたものです。

    参照:NECが「新卒でも年収1000万円」制度を導入した真意 NEC西原基夫CTO(最高技術責任者)インタビュー|日経ビジネス

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    4. そもそもなぜAI開発者・AIエンジニアの年収は高いのか

    そもそも、なぜAI人材の年収は、普通のITエンジニアと比較して高くなることが多いのでしょうか。本章では、その理由についての考察を記載します。

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    4.1 シンギュラリティ(技術的特異点)の到来

    シンギュラリティとは、「AIの能力が人間の脳を超える」転換点のことです。人工知能研究の世界的権威、レイ・カーツワイル氏は、2045年にはシンギュラリティに到達すると提唱しています。

    同氏はシンギュラリティ到達後、何が起こるかは予測できないと述べています。例えば、人工知能がより優れた人工知能を作り出したり、人工知能で自動化された武器が戦闘で使われたりなど、これまでの社会では考えられないような大きな変化が起きる可能性もあるとしています。

    経済においても戦闘においても、機械の意思決定は高速且つ正確であり、便利な一方、人間社会を脅かす可能性も否めません。

    技術進歩は不可逆であり、2020年代にはコンピュータの集積度が人間の脳を超えることは間違いないだろうと言われています。日本のコンピュータ開発の第一人者である齊藤元章氏は、著書の中で、そのポイントを「プレ・シンギュラリティ」(前特異点)と呼んでいます。世界各国はその転換点に向けて、AIの開発競争を強めている最中です。その進歩を支えるエンジニアの年収が高くなることは、当然とも言えるでしょう。

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    4.1.1 労働人口の約 49%の職業はAI・ロボットが台頭する可能性

    野村総研とオックスフォード大学の共同研究によると、日本の労働人口の49%が就いている仕事が、今後コンピュータ技術によって代替可能になります。

    必ずしも特別な知識やスキルが求められない職業や、データ分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、AI・ロボットで代替できる可能性が高いとされています。一方で、AIでの代替は難しい職業については、芸術や歴史学、哲学など、抽象的な概念を整理し創出するための知識が必要となったり、職業や他社との協調や説得、ネゴシエーション、サービス志向などが求められる職業が挙げられます。

    すでにAIの可能性はあらゆる分野に広がっており、AIの開発競争は激しさを増しています。

    参照:日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に|野村総合研究所

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    4.2 慢性的なIT人材不足

    ビッグデータの活用などIT業界の進歩が著しい昨今では、IT業界の市場規模も拡大しています。矢野経済研究所の調査によると、IT市場は2021年度に13兆3,200億円となることが予測されています。

    その一方で少子高齢化が進み、新卒採用人数が減少傾向にあることから、IT業界では人材の需要と供給の乖離が生じています。

    特にAI開発など先端技術の分野では、技術進展に対応できる高度IT人材が限られているために、より一層の需給ギャップが進んでいます。

    IT企業はなんとか優秀な人材を確保し、離職率を抑制するために、待遇や評価制度の見直しを図ることで、企業としての競争力を高めようとしているのです。

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    5. まとめ

    止まることなく進化を続けるAIは、今後需要がさらに高まっていく分野であることは明らかです。このような状況を受けて、日本でも、給与水準を上げて、AI人材を確保しようとする動きも大きくなりつつあります。
    いかに優秀な人材を保持し、企業としての競争力を高めていくかが、日本のIT企業においては、ますます重要なテーマになっていくでしょう。

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