「Web系に人気が集まっていそうだけど、SIerに未来はあるの?」 「SIerは今後どのように働き方が変化していくんだろう......」 と思うことはありませんか?
そこで今回は、
• SIerが「ヤバい」「オワコン」と言われる理由
• SIerが「本当になくなる」ことは考えづらい
• SIer業界に起こり得る今後の変化
の流れで、SIerの未来や将来性について解説します。
記事の後半で「未来のSIerの形を4パターン」も解説しているので、ぜひ最後までお読みください。
1. SIerに未来はある?将来性はない?今後の動向を分析
「SIerに未来はある?」といった疑問について、
- SIerが「ヤバい」「オワコン」と言われる理由
- SIerが「本当になくなる」ことは考えづらい
- SIer業界に起こり得る今後の変化
の3点から解説します。
1.1 SIerが「ヤバい」「オワコン」と言われる理由
SIerが「ヤバい」「オワコン」と言われる理由を2つご紹介します。
1.1.1 コスト削減が恒常化しやすい構造的問題
日本最大の電子掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」の設立者であるひろゆき氏は、次のようにSIerについて語っています。
はっきり言って、SIerで働いているエンジニアは今すぐ逃げた方がいい。
他社にものを納品するビジネスモデルの会社は、同じような企業がたくさんある中での競争になるから、その競争に勝つためにはどうしたってコストを削減せざるを得ない。コストを削減すれば、当然給料も安くなる。それをしなければ競争に負けて潰れるだけ。
自社でものを作っている会社にはまれに「当たる」ということがある。すると「社員にもボーナス出すわ」ってことにもなりますよね。でも、他社の仕事を請け負っているだけのSIerは、受注する仕事を増やして会社の規模が大きくなることはあるかもしれないけど、一件あたりの利益の幅が上がることは基本的にはない。だからひたすらに疲弊していくということです。
出典:SIerって本当にヤバいの? ひろゆきが語る、業界ごと沈まないためのキャリア戦略|エンジニアtype
まとめると、
• 他社に納品するビジネスモデルは、同じような企業がたくさんある
• その中での競争になるため、競争に勝つためにコストが下がりがち
• コストを削減すれば、当然給料も安くなってしまう
といった問題があり、疲弊していく可能性が高いことを懸念されています。
1.1.2 人月単価×単価のビジネスモデルの限界
BASE株式会社 取締役CTO、「えふしん」こと藤川真一氏は、次のようにSIerについて語っています。
特に受託は「人月単価×人数」が売上になるので、作れる人が減れば受注可能なシステムの規模は小さくなっていく。つまり、人の流れがSIerからWeb系企業に変わると、序列が変わるんです。もはや生き残るか否かという話ではありません。
出典:SIer崩壊説って本当? えふしんさんの未来予測に納得感がありすぎた【エンジニア転職ウワサの真相】|エンジニアtype
つまりSIerは、
• Web系に人が流れて受託開発する人が減れば、受注案件の規模も縮小していく
• 「人月単価×人数」が売り上げとなるため、SIerの売上も減少してしまう
といったビジネスモデル上の課題を抱えているのが実情です。
ここまで、SIerのマイナス面をピックアップしてきました。では、本当にオワコンになるのでしょうか。
結論から言うと、そうとは言い切れないと思っています。その理由については次項で解説します。
1.2 SIerが「本当になくなる」ことは考えづらい
「SIerが『本当になくなる』ことは考えづらい」と言える理由は、主に次の2つです。
• 情報サービス業の大きな割合を占めるのはSIerを中心とする請負構造
• 官公庁や大企業の開発案件は継続的に発生する
先ほどご紹介したBASE株式会社 取締役CTO「えふしん」こと藤川真一氏も、次のように語っています。
もう一つ考えられるのは、代替となるプラットフォームサービスが出てきた時ですが、エンタープライズのシステムは独自の文化に紐づいているので、SIerが生き残る道は普通にあるでしょう。
出典:SIer崩壊説って本当? えふしんさんの未来予測に納得感がありすぎた【エンジニア転職ウワサの真相】|エンジニアtype
1.2.1 情報サービス業の大きな割合を占めるのはSIerを中心とする請負構造
与信管理サービスを提供しているリスクモンスター株式会社の業界レポート(情報サービス業)によると、以下のように情報がまとめられています。
情報サービス業は、IT 業界のうち、「ソフトウェア業」と「情報処理・提供サービス業」の2つを含み、市場規模は約 17 兆円である。
情報サービス業の売上高構成は、受託開発ソフトウェア業が約 50%を占め、次いで情報処理サービス業が20%超を占めている。
業界の構造は、元請けとしてシステムインテグレーション(SI)を行う業者である SIer(上流工程)→下請けのベンダー・ソフト開発企業(中流工程)→孫請けのソフト開発企業(下流工程)のように、多重下請け構造となっている。
出典:情報サービス業|リスクモンスター株式会社
これを見ると、
• ソフトウェア業と情報処理・提供サービス業の市場規模は、約17兆円
• そのうち、70%程度はSIerに関する開発となっている
といったことがわかります。
このことから、いきなりSIerの仕事がなくなることは考えにくいと言えます。
1.2.2 官公庁や大企業の開発案件は継続的に発生する
SIerの開発案件には、
- 高い堅牢性
- セキュアなコーディング
などが求められる、官公庁や大企業の開発案件が多いです。
仮にセキュリティホール(セキュリティ上の弱点)が見つかってしまうと、
• 個人情報の深刻な流出
• インフラに多大な影響を与える
などの事故を起こしてしまいます。さらにこういった問題が起きたとしても、システム停止が許されないものがほとんど。
こういった背景により、「開発速度」よりも「堅牢性やセキュリティ」などを重視されます。ベンチャー・スタートアップの文化とは異なるため、ウォーターフォール型で詳細を詰めてから開発を進めるSierの仕事は、なくなりづらいと言えるでしょう。
1.3 SIer業界に起こり得る今後の変化
「SIer業界に起こり得る変化」を3つ解説します。
1.3.1 海外アウトソーシング
開発費用を抑えるために、より単価の安く質の高い海外の人材活用も進められています。具体的に言うと、技術力を高めている新興国に業務を委託する「オフショア開発」などです。
日本の企業から受けたIT開発を、そのままベトナムやインド、中国などにある開発拠点に発注するのがオフショア開発です。メリットは、ある程度のスキルを持つエンジニアを人件費を抑えて活用できるという点です。
ベトナムが主流になっており、月給が約10万円以下でエンジニアを採用できます。
デメリットとして、言語の壁や文化の違いなどがあります。もしもオフショア開発するなら、日本のエンジニアと海外のエンジニアをつなぐ「ブリッジSE」と呼ばれるポジションも必須となるでしょう。
1.3.2 他業種とのコラボレーション
SIerの経験を活かしてコンサルティング会社を選ぶケースが、増えてきています。SIerは既に悩みや解決したい課題がある顧客がターゲットなので、課題を前提としてシステム開発などの提案を行うのが最初のステップです。
しかしコンサルティング会社になると、さらに上流工程の「経営課題を分析し、解決すべき課題の優先度なども含めて提案をするところ」から仕事がスタートします。経営課題の分析以降、システム開発および導入周りの業務はSIerと同じような仕事内容なこともあり、経験を活かして転職がしやすいというわけです。
逆に、コンサル出身者がセカンドキャリアにSIerを選ぶ未来も、考えられます。SIer会社が経営課題を解決できるようになれば、価値が上がり仕事をより受けやすくなるため、採用活動が進むことが予想できるからです。
こういった経験を活かしてSIerと他業種のコラボレーションは増えて来るのではないでしょうか。
1.3.3 技術投資の拡大
SIerは、「人月単価×人数」で売上が決まります。実際にかかる人件費を除いた部分が利益となるため、業務効率化・自動化をするほど利益を残しやすいというのが特徴です。
こういった背景により、RPAやAIなどの「工数削減につながる施策」に興味が集まっています。効率化、自動化が得意な人材の新規雇用、従業員への教育などが加速していくのではないでしょうか。
それに伴い、業務効率化に繋がるSaaS(サース)の活用も加速していくかもしれません。
2. 未来のSIerの形を4パターンに分類
今後考えられるSIerの形を4パターン解説します。
2.1 従来型
読んで字のごとく、従来型のSIerは今後も継続して残ると予想できます。なぜならいきなり開発手法や体勢を大きく変えることは、負荷がかかるばかりで利益が上がりづらい(むしろ最初は下がる)こともあり、大きく動けないからです。
また既に大規模案件の運用などを行っている場合は、「そもそも新しい働き方を実現するためのリソースがない」といったこともあるかもしれません。いずれにせよ、従来型のSIerは残ることが予想されます。
2.2 海外アウトソーシング型
先ほどお伝えした通り、オフショア開発が今後加速していくことが予想されます。そのため、海外の低コストな人材を活用した、海外アウトソーシング型が増えてくるのではないでしょうか。
特に、ベトナムなどでのアウトソーシング増えると思われます。
その点で言えば、英語に長けていると海外と日本のエンジニアをつなぐ「ブリッジSE」として活躍できるかもしれません。
2.3 コンサルティング会社型
課題ありきではなく、今後は経営課題をヒアリングして具体化する「コンサルティング」を含めた働き方が増えてくることが予想されます。特に官公庁や大企業などの大型案件では、課題の特定をする「コンサルティング」の需要が高まるのではないでしょうか。
SIerの経験、コンサルティングの経験どちらも活かせる働き方なので、優秀な人材も集まりやすくなるかもしれません。
2.4 AI活用型
これまでの働き方を最適化するような、AIやRPAを活用した新しい働き方となる可能性もあります。
• 今まで無駄だった定型業務
• 手作業でやらなくてもよい業務
などの自動化できるものはAIやRPAに任せて、課題のヒアリングなどの複雑な業務を中心に仕事を進めていくようなイメージです。
少ない開発人員で、高い生産性をキープ出来る働き方なので利益率も上がります。
3. まとめ
今回は、
• SIerが「ヤバい」「オワコン」と言われる理由
• SIerが「本当になくなる」ことは考えづらい
• SIer業界に起こり得る今後の変化
の流れで、SIerの未来や将来性について解説しました。
ただ、本記事で解説したように、SIerは
• 従来型
• 海外アウトソーシング型
• コンサルティング会社型
• AI活用型
の4つのパターンの働き方が増えてくることが予想されます。
こういった未来を予想しつつ、自分がどんなスキルを学んでいくべきか、どういったキャリアを築いていくべきか考えていくのがおすすめです。