「自分でアプリやWebサービスを開発してみたい」
「エンジニアとして案件を受注したい」
そのような人にとって、どのプログラミング言語を選べばよいかは悩んでしまうポイントと言えるでしょう。
初めてのプログラミング学習において、取り組みやすい難易度のものを選ぶことは挫折せずにスキルを身につける上でとても大切です。一方で需要が継続的にある言語であれば、学習コストが高いとしてもしっかり学ぶべきであるという考え方もあるでしょう。
そこで今回は、2021年版の初心者向けプログラミング言語を難易度別に11個紹介。各見出しごとに難易度を星の数で紹介してます。星の数が多いほど難易度は高め。少ないほど難易度が低めとなります。それぞれのプログラミング言語の特徴や学習の始め方について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1. 【初心者向け】プログラミング言語の難易度の評価基準
今回の初心者向けのプログラミング言語の難易度は、
- プログラミングを行うための環境構築の行いやすさ
- 動的言語か静的言語か
- 文法の記述のしやすさ
- ナレッジやドキュメントなどの学習環境の充実度
- ライブラリの豊富さ
といった基準を設けて選定しました。以下で、それぞれの基準についてより詳しく解説します。
1.1 環境構築の難易度
環境構築はプログラミング初心者がつまずきやすいポイント。プログラミングを始めるための第一歩といえるフェーズですが、環境構築で挫折してしまう人も少なくありません。そのため、この環境構築の難易度も選定基準としました。
本や参考サイトを見ながら、手順通りに環境構築を行ったとしてもエラーが出て進めなくなることもあります。OSやプログラミング言語のバージョンが異なったり、セキュリティソフトが干渉したりといったことが原因として考えられ、初心者にとってこの問題の切り分けは簡単ではないでしょう。
最近では、Cloud 9やGoogle Colabなど、ブラウザから利用できるクラウド上で開発環境を提供しているサービスもあります。しかし、すべてのプログラミング言語がこのようなサービスに対応しているわけではありません。依然として環境構築が必要なプログラミング言語もあります。
環境構築の難易度の低いものは学びやすいプログラミング言語と考え、星の数は少なくしました。
1.2 動的言語か静的言語か
動的言語と静的言語のどちらかであるかも、初心者がプログラミング言語を選ぶ上で重要なポイントです。
動的言語は、変数や式に型を宣言しないため、簡潔で柔軟な記述が可能。それにより、記述するコードも少なくなります。また、コンパイルが不要ですぐにプログラムを実行できるため、結果が確認しやすいです。
静的言語は変数に対して型の宣言を行う必要があるなどの特徴を持ち、動的言語と比較するとコードの記述が多くなります。また、プログラムを実行するためには、コンパイルが必要となるので結果を得るまでに時間がかかり、学習をスピーディーに進めることが難しいです。
一方で、コンパイルを行う際にエラーを確認できるため、プログラムを実行する際の安定性や安全性が高くなるというメリットがあります。
動的言語は静的言語と比較すると、実行速度が遅いことがデメリットと言われてきました。しかし、近年ではハードウェアの性能によってカバーできるケースも出てきています。
今回は学習コストが低く、コンパイル不要でコードの記述が簡潔な動的言語をより初心者向けと評価しました。
1.3 文法
プログラミング言語は文法によって難易度が異なります。プログラミング言語の文法は、おもに手続き型・オブジェクト指向型・関数型の3つに分類が可能。
手続き型は、コンピュータが理解できる機械語を人間にもわかりやすく記述する文法です。プログラムによるコンピュータへの命令を順番に記述して構成します。
オブジェクト指向型は、データやコンピュータへの命令をオブジェクトとしてまとめ、オブジェクト間でやりとりを行ってプログラムを実行します。冗長性をなくして、簡潔なコードの記述が行えることがオブジェクト指向型の特徴です。
関数型は、関数の組み合わせによってコンピュータに計算や処理といった命令を行います。実行するそれぞれの処理内容の把握がしづらいため、チューニングが難しくコードが不自然になりやすいです。そのため、初心者には他の文法と比較すると難易度は高めと言えるでしょう。
関数型の代表的なプログラミング言語としてScalaが挙げられます。Chatworkは、PHPによって開発された大規模システムをScalaを使って作り直すことを決断。しかし、Scalaの採用は決めた当初は開発がまったく進まず、関数型を理解するためにまずHaskellの勉強を行いました。学習コストは高く、Chatworkは長期的な観点で社内のエンジニアの育成に取り組み、将来的なコストの回収を目指しています。このことから、いかに関数型のプログラミング言語の難易度が高いかが理解できるでしょう。
参照:Scala採用を決めて一年たった、CTOの雑感|チャットワーククリエーターズブログ
1.4 学習環境の充実度
学習環境が充実しているプログラミング言語は学びやすいため、難易度は低いと判断しました。歴史が長い需要の高いプログラミング言語は、本やインターネット上の情報もとても豊富。予期しないエラーが発生するなどして学習が行き詰まった場合にも、解決するためのヒントが得やすいからです。
それとは逆に、任天堂やオンラインブックメーカーであるbet365が採用しているErlangのようなマイナーな言語は情報が少ないため、学びづらい難易度の高い言語と言えるでしょう。
1.5 ライブラリの豊富さ
ライブラリが豊富なプログラミング言語は複雑な処理も簡潔に記述できるため、難易度が低くなります。ライブラリとは、汎用性の高いコードの集まりをプログラムに盛り込んで機能を追加できるパーツのようなものです。
ライブラリが豊富なプログラミング言語の例として、Pythonが挙げられます。Pythonには、デフォルトで搭載されているjson・random・math・pip・pandaといった標準ライブラリが用意されています。これだけでなく、TensorFlowなどの外部ライブラリをインストールして利用することも可能です。
▶ 【卒業生が選んだ】おすすめプログラミングスクール比較|プロリア プログラミング
2. 【初心者向け・難易度別】プログラミング言語11選
上記の選定基準を踏まえて、以下でプログラミング言語を11個紹介します。
星の数が多いほど難易度が高く、少ないものほど難易度は低いです。これから、プログラミングの学習を始めようと考えている人は、自分がプログラミングを学びたい目的と難易度を加味して、最適な言語を選ぶ上でぜひ参考にしてください。
2.1 C++(難易度★★★★★)
出典:Standard C++
C++とは、コンピュータの高速な処理を目的にCを拡張して開発されたプログラミング言語。C言語と比較すると、コードの記述は少ないです。ただし、静的言語でオブジェクト指向に対する理解も必要となるため、習得の難易度が高いプログラミング言語と言えるでしょう。
おもにロボットやIoTといった組み込み系の開発で採用される機会が多く見られます。それだけでなく、ゲームエンジンであるUnreal Engineの開発にも使用。代表的なWebブラウザであるGoogle Chromeにも、C++が使われています。
このようにC++は汎用性がとても高いため、C++を習得できれば、他のプログラミング言語の学習もスムーズに行えるでしょう。
C++はプログラミングを始めるための環境構築が必要。初心者には無料で利用できるCとC++の開発環境であるMingw-w64がおすすめです。ただし、対応しているのはWindowsのみなので注意してください。下記の公式サイトにアクセスし、「Downloads」をクリックするとMingw-w64のインストーラーがダウンロードできます。
✅ おすすめサイト
2.2 C(難易度★★★★★)
Cはコンパイルが必要な静的言語。人が理解しやすい高級言語に分類されますが、低級言語に近いため記述された内容の解釈の難易度は高め。OSに関連したシステム開発や組み込み系の開発におもに用いられます。また、データの高速な処理が必要となるAI(人工知能)やVR(仮想現実)の分野においても、Cに関する知識やスキルは求められます。
ソフトウェアだけでなくハードウェアも視野に入れた開発が求められるため、プログラミングだけでなくコンピュータ・サイエンスにも興味がある人におすすめのプログラミング言語です。
1972年に開発されたCは、歴史の長い知名度の高いプログラミング言語です。そのため、出版されている書籍やWeb上の情報も豊富。しかし、静的言語で記述も複雑であるため、初心者にとっては難易度が高いプログラミング言語と言えるでしょう。
Cの開発環境を構築する際は、GCCのインストールが行えるMinGWを利用する方法がおすすめです。Mingw-w64と同様に、MinGWもWindowsのみ対応しています。
▶ MinGW - Minimalist GNU for Windows download|SourceForge.net
2.3 Scala(難易度★★★★)
出典:The Scala Programming Language
Scalaは2003年頃に開発されたオブジェクト指向と関数型の両方の特徴を持ったプログラミング言語。Javaと互換性があり、JVM(Java Virtual Machine)上でScalaは動作します。そのため、ScalaはJavaのライブラリやフレームワークも利用可能です。
- ビズリーチ
- Chatwork
など、さまざまな有名企業がScalaを開発言語として採用しています。
ハイブリッドな言語であるScalaは汎用性が高く、コードの記述は少なめなので効率的な開発が行えます。しかし、そのScalaの利点を活かすためには、オブジェクト指向と関数型の両方を理解する必要があるため、初心者にとって難易度の高いプログラミング言語と言えるでしょう。
Scalaは以下の公式サイトにからインストールが可能です。 Languageで日本語を選択すると、スムーズに環境構築が進められます。
▶ Getting Started|Scala Documentation
初心者はScalaのIDEとして人気が高いIntellijの利用がおすすめです。まずは、Java8JDKが自分のパソコンにインストールされているか確認し、必要があればインストールを行いましょう。次に無料のIntellij Community Editionをインストールしてください。
2.4 Erlang(難易度★★★★)
出典:Erlang Programming Language
Erlangは、1986年に通信機器メーカーのエリクソンが開発したプログラミング言語です。「アーラン」と読みます。さまざまな用途に利用される汎用性の高さ、並行処理や分散処理、障害に対する耐性の高さがErlangの特徴。関数型プログラミング言語ですので、初心者にとって難易度が高い言語と言えるでしょう。
もともとErlangは通信制御ソフトの開発のために利用されていました。オープンソースとして公開されてからは、
- Amazon
- Line
- Bet365
など有名企業のサービスにも使われています。
ErlangのライブラリやコンパイラがセットになったOTPは、以下の公式サイトからダウンロード可能です。
以下に各OS向けのインストーラーが用意されていますので、初心者で環境構築に不安を覚える人は利用するとよいでしょう。
▶ Erlang and Elixir Packages Download - Erlang Solutios
2.5 Java(難易度★★★)
オブジェクト指向の代表的なプログラミング言語である「Java」。コンパイルが必要な静的言語で、初心者にはやや難易度は高めです。OSに依存せずデータ処理が高速なため、アプリ開発から大規模なシステム開発にまで使われる汎用性の高い人気のプログラミング言語。楽天市場・Evernote・Android OSなどは、開発にJavaが使われています。
Cと同様に歴史が長く、世界的に安定した需要があるため、ナレッジはとても豊富です。学習環境の充実度は高めと言えるでしょう。動的言語よりも学習コストは高いですが、フレームワークも充実しているため、C++やCといったプログラミング言語と比較すると難易度は下がります。
Javaの開発環境を構築する際は、JDK(Java SE Development Kit)を利用します。Javaの開発元であるOracleが提供するJDKのインストーラーは、以下の公式サイトからダウンロードが可能です。
▶ Java SE - Downloads|Oracle Technology Network|Oracle 日本
2.6 C#(難易度★★★)
出典:C# docs - get started, tutorials, reference.|Microsoft Docs
C#は、サーバーサイド・アプリ開発・ゲーム開発などで人気の高いマイクロソフトが開発したオブジェクト指向のプログラミング言語。Javaと似た文法で記述する静的言語ですので、初心者にはハードルはやや高めと言えるでしょう。ただし、マイクロソフトのVisual Studioが利用できるため、開発環境の構築の難易度は低めです。
Windows向けのアプリ開発に利用する言語として認知されていますが、それだけではなく幅広いOS向けのアプリの開発が行えます。
C#は、
- Bing
- MSN Japan
- 価格.com
- ヤマダウェブコム
- ニッセン
- トレンドマイクロ
- サンワサプライ
などの企業のサービスに利用されています。
また世界的に高いシェアを誇るゲームエンジンであるUnityでもC#は利用可能です。
C#の開発環境としておすすめのVisual Studioは以下の公式サイトからダウンロード可能です。各OS向けのインストーラーをダウンロードし、Microsoftアカウントでログインすることで利用できます。
▶ Visual Studio Express|今すぐ Visual Studio Community
2.7 Go(難易度★★)
出典:The Go Programming Language
Googleがプログラミング環境の改善を目的に開発したプログラミング言語。構文がシンプルで可読性が高く、チームで開発を行う際にも統一された記述で進められます。
安定性が高く、並行処理が行いやすいという特徴があり、高速かつ軽量であることがGoを利用するメリット。Webサービス・アプリ・大規模システムの開発などに用いられるケースが多いです。
- YouTube
- メルカリ
- ぐるなび
- mofur
- Ownd
といったサービスでGoは利用されています。
公式サイトから各OS向けのインストーラーをダウンロードすることで、開発環境の構築はスムーズに行えるでしょう。
2.8 Python(難易度★★)
Pythonは、1991年に開発された世界的に需要が高まっている人気のプログラミング言語。少ないコードでシンプルに記述できることが特徴の動的言語であるため、初心者にも取り組みやすいプログラミング言語と言えるでしょう。
汎用性の高いPythonは、さまざまな用途に利用されています。その中でも、Webアプリケーション・AI(人工知能)・機械学習の分野で特に人気が高いです。Djangoを始めとするWebフレームワークやライブラリが豊富ですので、効率的に開発が進められることも魅力。
Pythonは、
- YouTube
- Dropbox
などのサービスで利用されています。
Pythonの環境構築を行う際は、公式サイトの環境構築ガイドを参照するととてもスムーズに行えます。Windowsの場合には、インストーラーが用意されているため、とても簡単に行えるでしょう。
2.9 PHP(難易度★★)
出典:PHP
Web開発におけるサーバーサイドで使用されるプログラミング言語です。文法が記述しやすく、動的言語でプログラムを実行した際の結果が見えやすいため、初めて学習するプログラミング言語として人気が高いです。また、プログラミング言語が開発されてからの歴史も長いため、ナレッジも豊富で学習環境も充実しています。
世界的に高いシェアを誇るCMSであるWordpressやぐるなびで使用されるなど、安定した需要が見込めるプログラミング言語です。
PHPの学習のための開発環境を構築する際は、PHPと合わせてWebサーバーとしてApacheを利用することが一般的です。以下の公式サイトからPHPのダウンロードとインストールが完了しましたら、Apacheの設定もしっかり行いましょう。
2.10 Ruby(難易度★★)
RUbyは、まつもとゆきひろ氏が開発した国産のオブジェクト指向の動的言語です。Perl・Smalltalk・Eiffel・Ada・Lispといったプログラミング言語のよいところをミックスして、自然な形で利用できるように調整されています。
そのため、シンプルな文法で少ないコードで記述できるため、初心者でもとてもわかりやすいです。また、Webアプリケーションフレームワーク「Ruby on Rails」を利用すれば、効率的にWebサービスを開発できる点もプログラミング初心者におすすめのポイント。
Rubyは汎用性の高いプログラミング言語で、おもにWebサービスやWebアプリケーションの開発に用いられます。
- クックパッド
- Airbnb
- クラウドワークス
- 食べログ
などが、Rubyが使われている代表的なサービスです。
Rubyのインストールはやや複雑ですので、以下の公式サイトのインストールの手順を参照し、やりやすい方法で行ってください。
2.11 JavaScript(難易度★)
出典:ECMA-262 - Ecma International
JavaScriptは、Web開発のフロントエンドで使用される動的言語。開発環境の構築が不要でブラウザ上で動作させられます。また、コードの記述も少なくて済むため、初めて学習するプログラミング言語としてとても取り組みやすいです。
じつはJavaScriptはとても身近なプログラミング言語で、普段目にする多くのWebサイトで使われています。ポップアップを表示させたり、動きによって画像などを見やすくしたりといったこともJavaScriptによって実現可能です。
それだけではなく、JavaScriptを利用することでWebアプリ・スマホアプリ・ゲームの開発も可能。また、Node.jsなどのライブラリを使用すれば、サーバーサイドでもJavaScriptは動作します。そして、JavaScriptをベースとしたGAS(Google Apps Script)に応用が効くことも大きな魅力です。
JavaScriptを使用している代表的なサービスとして、
- メルカリ
- グノシー
- CAMPFIRE
などが挙げられます。
- AngularJS
- React
- Vue.js
- Node.js
といったライブラリやフレームワークが充実していることも、Javascriptを選ぶ上で重要なポイントと言えるでしょう。
JavaScriptのプログラムを実際に実行してみたい人は、以下のコードをメモ帳などに貼り付けてhtmlで保存してください。
<html>
<body>
<script type="text/javascript">
document.write("Hello,World!");
</script>
</body>
</html>
ブラウザ上で実行すると「Hello,World!」という文字列が表示されます。
3. まとめ
プログラミング言語には文法・環境構築の行いやすさ・ナレッジの豊富さなどに大きく違い、学習の難易度もそれぞれで異なります。また、向いている用途も異なるため、どのような目的のためにプログラミングを学習したいのかという観点で選ぶことも大切です。
エンジニアに転職するためにプログラミングを学習するのであれば、市場の需要が継続して高いCやJavaを選択するのもよいでしょう。明確な目的はなくまずはプログラミングに触れてみたいのであれば、難易度の低いJavaScriptやRubyがおすすめです。
どのプログラミング言語を選ぶべきか迷ったときには、気になったものの環境構築を行って実際にプログラミングに触れてみましょう。ずっと悩んでいるよりも、実際に手を動かすことがプログラミングを身につけるための第一歩になります。