近年需要を増しているSESですが、その営業とは、どのようなことを行っているのでしょうか。仕事内容に市場動向やエンジニアがSESとして働くメリットなどをからめて、詳しくご紹介したいと思います。
1. SESとは
SESとはシステムエンジニアリングサービスの略であり、書面上では「準委任契約」と記される契約形態の一種です。SESのエンジニアは基本的にクライアント先に常駐(※常駐先によってはリモートワークを許可していることもあります)し、技術的なサービスを提供します。
労働者派遣とは似ている面もありますが、別物です。具体的には派遣契約では作業指示を直接クライアント先の上長が行うのに対して、SES契約では自社の上長が行うという違いがあります。この作業指示をSES契約にも関わらずクライアント先の上長が直接行うと、偽装請負とみなされることがありますので、注意が必要です。
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2. SESの「営業」とは
SESの営業職はこの「技術的なサービス」を求めているクライアントを探し、適切なスキルを持つエンジニアを紹介することが主な業務です。
ちなみに同業他社であるSES企業と連携し、他社が急いで必要としている人材を紹介したり、逆に自社がが必要としている人材を紹介してもらうなど、SES企業同士で案件や人材を融通し合うこともあります。
2.1 仕事内容
それでは、SES営業の具体的な仕事の流れを順に見ていきましょう。
2.1.1 リード(見込み顧客)の獲得
リード(見込み顧客)とは、自社のサービスに興味を持っている見込みのクライアントのことです。この場合のクライアントは、基本的にはエンジニア紹介を希望している企業を指します。
ただし他のSES企業との連携を推し進めているフェーズでは、エンジニアや案件を互いに融通しあえるような「提携先のSES企業」が「クライアント」に相当します。
2.1.2 商談
クライアントの担当者に、希望する条件をヒアリングします。確認する事項には、次のようなものが挙げられます。
• 開発プロジェクトの概要
• サービスを提供する期間
• 希望するエンジニアのスキル
• 必要なエンジニアの人数
2.1.3 エンジニアの紹介・マッチング
ヒアリングした結果と自社で抱えている人材の情報をマッチングし、適した人材をクライアントに紹介します。なおこのマッチングをスムーズに行うために、稼働可能な人材の経歴書やポートフォリオなどを随時メンテナンスしておくことも、営業の重要な役割です。
2.1.4 エンジニアのフォロー
クライアント先で稼働を始めたエンジニアに対して、状況を確認するなどのフォローを行います。何か問題が発生していないか適宜確認し、エンジニアが安心して業務に取り組むことができるよう、必要に応じてじっくり話を聞いたり、問題の対処などを行います。
3. SESが紹介するエンジニアの種類
SESが紹介するエンジニアには、次のような種類があります。
• 自社に直属のエンジニア
• 自社に登録しているフリーランスエンジニア
• 他社に所属するSES契約可能なエンジニア
自社に直接所属しているエンジニアだけでなく、前述のように必要に応じて他社に所属しているエンジニアを紹介する場合もあります。また自社にフリーランスとして登録しているエンジニアにも、同様に案件を紹介します。
4. SESの営業先の種類
次にSESのクライアントとなる営業先について、より詳しくご紹介します。
4.1 プロジェクト先の新規開拓営業
Webなどに広告を出す場面も増えていますが、やはり営業の定番は、エンジニアが不足している可能性のある会社へ直接電話やメールで提案を行っていくことです。
さらに名刺交換会や各種の交流会に参加して自社の存在を知ってもらったり、また知り合いのエンジニアづてに人材が不足している案件がないかの情報を提供してもらったりして、新しい取引先を増やしていくのです。
4.2 エンジニアの紹介会社の開拓
せっかく良い案件があるのに、自社には今ちょうど稼働できるエンジニアがいない!という場面も、多く存在します。そんな時のために「エンジニアを紹介してもらえる会社」を開拓することも重要です。
特に同業のSES企業と提携することは、有力な選択肢の1つです。SES企業同士でエンジニアや案件を融通しあうことで、ビジネスチャンスを失う機会が減ります。
4.2.1 プログラミングスクール卒業生を採用するケースもある
また、プログラミングスクールの卒業生をSESが採用するケースもあります。日本は受託開発の市場規模が大きいことが大きな理由。企業の業務システム開発でよく利用されるJavaなどの言語を学習したプログラミングスクールの卒業生であれば、スキルセット的にマッチングしやすいのです。さらに社会人経験のあるプログラミングスクール卒業生の場合は、ビジネスマナーが既に身についていることも、大きな利点と言えます。
5. エンジニアがSESを利用するメリットは?
では次にエンジニア側の視点に立った場合、SESを利用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。いくつかご紹介したいと思います。
5.1 未経験からでもエンジニアに転職しやすい
IT未経験の状態からITエンジニアへの転職を希望している方の場合、SES企業であればエンジニアとして採用される確率が高まります。
IT業界が慢性的に人手不足ということに加え、SES企業の場合は自社で手厚い研修制度を持っている企業も多く、積極的に人材を集めて育てようとしていることが多いためです。
5.2 SES営業は「エンジニアのビジネスパートナー」
SES企業などを利用しない場合、案件を探しているエンジニアは自力で転職活動をするか、もしくはフリーランスとして業務委託案件を探し、採用される必要があります。中には、技術力はあるのに営業が苦手というエンジニアの方もいるのではないでしょうか。
その点、SES企業を利用すると、営業担当者がそのエンジニアに適した案件のマッチングを代わりに行ってくれます。よって、自力で営業を行う場合よりも効率的に次の案件を探すことが可能です。エンジニアは開発そのものに専念しやすくなり、案件と案件の間に空白期間も開きづらくなるのです。
エンジニアが自身で案件を獲得した場合と比較すると手数料分だけ単価が下がるのはデメリットですが、IT人材が取り合いとなっている現状から、還元率が高いSESも増えつつあります。
5.3 高齢のエンジニアでもマッチング機会を得られるケースがある
転職やフリーランス向け案件の場合、年齢制限が設定されている求人も少なくありません。
しかしSESでは年齢制限がない求人案件も多く取り扱われており、募集要項とマッチしている人材であれば、40代や50代でもマッチング機会を失うことがありません。年齢が高めであっても、スキルセット次第で案件を得られるチャンスが十分にあるのです。
6. SESの市場動向と将来性
ここからはSESの市場動向と将来性について考察します。SES企業の主なトレンドは以下の2つに分類されます。
• フリーランスエージェント化するSESの増加
• 商流制限の厳格化
6.1 フリーランスエージェント化するSESの増加
自社で正社員エンジニアを抱えたうえで、それらの人材をプロジェクト先に紹介するのではなく「フリーランスエンジニアをプロジェクト先にアサインする」SES企業が増えています。
自社で社員を抱える必要がなく、固定費の削減が可能なことが大きな理由です。
一方で大量のフリーランスを広告で集客する必要があり、フリーランスの報酬額やそもそもの広告費は上昇傾向にあります。
6.2 商流制限の厳格化
商流とは、エンジニアとエンド企業との間に挟まる、委託や再委託などの契約の流れのことです。つまり、多重下請け構造の中で「どういう契約の流れで発注されているか」を表します。
実際の契約の中では商流制限があり、クライアントから「御社1社先まで」と指定されるなど、四次請け、五次請けなどの深い商流に対する制限が与えられることがあります。
つまり2021年現在、SES企業にとっては、浅い商流で単価の良い案件をどれだけ確保できるかが重要となっています。
逆に言えば、「深い商流の企業や個人に案件が流れない」ということです。小規模事業者や個人のエンジニアがゼロから単価の良い案件を探すことのハードルは高くなりつつあります。
浅い商流の案件を獲得できるSES企業と、技術力があるフリーランスエンジニアや小規模事業者をマッチングすることの重要性は高まっていると言えるのではないでしょうか。
7. おすすめのSESの求人案件
参考まで、現在プロエンジニアに掲載されているフリーランスエンジニア向けのおすすめ常駐案件を、いくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
■ フロントエンドエンジニア向けの案件
React.jsを用いて開発するオンライン学習サービスの、フロントエンドエンジニアを募集する案件です。
詳しくは案件情報ページをご覧下さい。
▸ フロントエンドエンジニア★オンライン学習サービス開発|プロエンジニア
■ サーバーサイドエンジニア向けの案件
BtoB向けのWebアプリケーション開発をPHP/MySQL/Linuxを用いて行う、サーバーサイドエンジニア(ばkを募集する案件です。
詳しくは案件情報ページをご覧下さい。
▸ バックエンドエンジニア★BtoB向け大規模案件開発|プロエンジニア
■ インフラエンジニア向けの案件
AWSを用いた新サービス向けクラウド基盤を設計する、インフラエンジニアを募集する案件です。
詳しくは案件情報ページをご覧下さい。
▸ インフラエンジニア★旅行会社向けクラウド基盤構築・要件定義|プロエンジニア
■ 組み込みエンジニア向けの案件
C++を用いてIoT機器のファームウェア開発を担当する、組み込みエンジニアを募集する案件です。
詳しくは案件情報ページをご覧下さい。
▸ 組み込みエンジニア★IoT無線通信機器の組込開発|プロエンジニア
8. まとめ
今回はSES企業の営業について、その仕事内容や市場の動向を中心にご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。ひとことでSESと言っても以前のような社員を送るものからフリーランス向けのエージェント中心に変化しつつある企業も多いなど、この業界は刻々と変化しています。本記事での紹介が、SESという選択に興味を持つきっかけとなりましたら幸いです。