幅広い技術への対応が求められるフルスタックエンジニアは、稼げる職種なのでしょうか。仕事内容は激務かどうか、平均年収や将来性、キャリアパス、求人動向をご紹介します。さらにフルスタックエンジニアをおすすめしたい人物タイプも、紹介しています。
なおフリーランスのフルスタックエンジニアの求人動向やトレンドはこちら。また最新のフリーランス案件一覧は、随時こちらで更新しています。
▶ 最新のフルスタックエンジニアフリーランス案件一覧はこちらから
1. フルスタックエンジニアとは
フルスタックエンジニアとは、ITシステムの開発や運用を行う場面における、複数のスキルを持つエンジニアのことです。開発フェーズにおけるオールラウンダーであり、設計から開発、運用保守まで、マルチな対応が可能です。
例えばWeb開発の場合、フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニア(サーバーサイドエンジニア)の両方を兼務できるエンジニアなどが、フルスタックエンジニアと呼ばれています。1人で両方がこなせるエンジニアがいれば、開発の進捗状況によってどちらのサポートにも入ることが可能です。そのため雇用者側にとって時間的な面や予算的な面などでの節約につながり、採用人気が高まっています。
1.1 フルスタックエンジニアの仕事内容の例
フルスタックエンジニアが行う仕事内容は、大きく分けて「フロントエンド開発」「バックエンド開発(サーバーサイド開発)」「モバイルアプリ開発」「インフラ周り」の4つがあります。それぞれの仕事の詳細は、次表の通りです。
仕事内容 | 主な業務 | 主に使う言語・
フレームワーク |
|
---|---|---|---|
フロントエンド
開発 |
Webサイトのユーザーが直接ふれる部分を開発 | デザイナーが作成したUIデザインをもとに、入力フォームやボタン等の配置や操作結果を実装する | JavaScript、TypeScript、Angular |
バックエンド
開発 |
Webサイトの、ユーザーからは見えないサーバー側で動作する部分を開発 | 画面操作に沿ったデータの処理や登録を行う部分を実装する | Java、PHP、Ruby、Python |
モバイルアプリ
開発 |
iPhoneやAndroidなどのスマホアプリを開発 | モバイルアプリを実装する | Objective-C、Swift、Kotlin、Java |
インフラ周り | ネットワークやサーバーに関するインフラ構築や保守運用、監視 | サーバー構築、バックアップやログの管理、障害時対応などを行う | Shell、BAT、TTL |
近年では、フロントエンド開発のための「JavaScript」の需要が、大規模開発向けに拡張された「TypeScript」や、Webアプリケーションフレームワークである「Angular」などに細分化しています。
またインフラ周りで言語以外に求められる知識としては、「Linux」を扱うスキルや、「AWS」のスキル、コンテナ型の仮想環境を作成する「Docker」のスキルに需要が高まっています。
■ フルスタックエンジニアは激務?
通常であれば、開発には「要件定義」「設計」「開発」「テスト」「リリース(本番稼働)」「運用・保守」といった複数のパートがあり、それぞれに担当者が割り振られます。しかしどのパートもこなせるフルスタックエンジニアの場合は、一人で複数のパートを担当するケースがあります。すると激務になりがちですが、代わりに年収水準が高く、転職市場でもニーズが高い状況です。
2. フリーランスフルスタックエンジニアの案件例
フルスタックエンジニアは、フリーランスとしても人気の職種です。初級フルスタックエンジニアと中~上級のエンジニアとに分けて、それぞれの案件例をご紹介します。
2.1 初級フルスタックエンジニアエンジニアの場合
■ 初級フルスタックエンジニアの案件例
Python、TypeScript、AWSなどを用いてtoB向けWebアプリケーションを開発する、フルスタックエンジニアを募集する案件です。何かしらのWebアプリケーション開発経験(2年以上)、経験がない分野でも進んでキャッチアップできる、Gitでの共同作業が可能なことが求められます。「内容的にはそれほど難しくないので、若手の方でポテンシャルがある方であれば土台に乗ると思います。」とのコメントがあります。報酬の目安は、月額50万円~60万円です。
詳しくは案件情報ページをご覧ください。
▸ 案件情報:フルスタックエンジニア★toB向けWebアプリケーション開発|プロエンジニア
■ 初級フルスタックエンジニアの案件例
Java、JavaScriptなどを用いて大手求人サイトのリニューアル開発を行う、フルスタックエンジニアを募集する案件です。JavaでのWebサイト開発経験(3年以上)、実装に自信がある方、向上心があり、コミュニケーション能力に優れている方、フロント側に自信のある方(Vue.js/Nuxt.js歓迎)、試験仕様書、エビデンスをきちんと作成してくれる方などが求められます。報酬の目安は、月額60万円~70万円です。
詳しくは案件情報ページをご覧ください。
▸ 案件情報:フルスタックエンジニア★大手求人サイトリニューアル開発|プロエンジニア
2.2 中級~上級フルスタックエンジニアエンジニアの場合
■ 中級~上級フルスタックエンジニアの案件例
Go、TypeScript、HTML、CSS、Pythonなどを用いてアスリート応援プラットフォームを開発する、フルスタックエンジニアを募集する案件です。Goを使ったWebアプリケーション開発経験、RDBを使ったアプリケーション開発経験、Webサービス開発に関する基本的な知識、フレームワークを利用したWebアプリケーションのフロントエンド開発に関する知識、React/TypeScript/Reduxを用いた実務経験など、幅広いスキルが求められます。報酬の目安は、月額100万円以上です。
詳しくは案件情報ページをご覧ください。
▸ 案件情報:アスリート応援プラットフォーム開発|プロエンジニア
■ 中級~上級フルスタックエンジニアの案件例
React、Pythonを用いて放送同時配信Webアプリを開発する、フルスタックエンジニアを募集する案件です。Reactを用いたフロントエンド開発経験や、Pythonを用いたサーバーサイド開発経験、詳細設計からリリースまでの一連の作業を実施した経験が求められます。さらにドキュメント作成経験、チームリーダー経験、円滑なコミュニケーションなどがある場合、優遇されます。報酬の目安は、月額100万円以上です。
詳しくは案件情報ページをご覧ください。
▸ 案件情報:フルスタックエンジニア★放送同時配信Webアプリの開発|プロエンジニア
3. フルスタックエンジニアエンジニアの平均年収と将来性
フルスタックエンジニアの平均年収と将来性、求人動向などは以下の通りです。
3.1 フルスタックエンジニアエンジニアの平均年収
フリーランスエンジニア向けの求人情報サイト「プロエンジニア」にて、月額単価の記載のある案件(50件)を対象に、平均年収を調査しました。結果は、平均月収では「月収82.1万円」、平均年収では「年収985.2万円」でした(提示された金額に幅がある場合は中央値を、最低価格が提示されている場合はその最低価格を計算対象としています)。
なお最も単価の高い案件は、「年収1800万円」。最も単価の低い案件は、「年収480万円」です。
3.2 フルスタックエンジニアの求人動向・案件動向
フロントエンドとバックエンドの垣根を超えた対応を求められるフルスタックエンジニア。
求人動向としては、要件定義から開発、運用に至るまで対応範囲が広いことが前提。特に新規プロダクトの開発案件や、既存サービスの新機能追加開発に関する案件が数多く開示されています。
開発言語は、フロントエンドはTypeScriptやReact。バックエンドはGoやPythonの案件が増加傾向にあります。AWSなどクラウドの利用経験が求められる案件も増加しています。
また必須条件として数年間の実務経験を求めている案件が多い代わりとして、月額の報酬ラインが100万円を超える案件も少なくない状況です。
さらに近年ではスクラム開発を取り入れている企業も多く、自発的な行動が可能であることや、高いコミュニケーション能力も求められています。
4. フルスタックエンジニアの将来性・キャリアパス
フルスタックエンジニアになるために、どのようにスキルを習得して行けばいいかをご紹介します。またフルスタックエンジニアとなった後のキャリアパスもご紹介します。
4.1 フルスタックエンジニアになるには?
フルスタックエンジニアの案件で求められることの多いスキルを、次表にまとめました。
UI/UX | ・デザインの基本知識
・UIの基本知識 ・UXの基本知識 |
---|---|
フロントエンド | ・HTML/CSS
・JavaScript ・TypeScript ・フレームワークやライブラリの知識 (Angular、React.jsなど) |
バックエンド | ・Java
・PHP ・Ruby ・Python ・Go |
データベース | ・MySQL
・SQLite ・Oracle |
その他 | ・Linux
・AWS ・Docker ・セキュリティの基本知識 |
とはいえ、これら全てのスキルの「マスター」になることが期待されているわけではありません。様々な案件に携わる中で、徐々に複数の専門分野を持てるように、成長を続けることが求められています。
■ フルスタックエンジニアのキャリアパス
フルスタックエンジニアは「開発のスペシャリスト」として技術を極める道もありますが、その知識の幅広さを活かしてマネジメントに進むなど道は豊富に存在します。フルスタックエンジニアからのキャリアパスとして人気の職種には、例えば次の4つが挙げられます。
職種 | 仕事内容 | 必要なスキル |
---|---|---|
プロジェクトマネージャ | 開発プロジェクトの総括を行い、品質・コスト・納期に責任を持つ。開発スケジュールの管理やクライアントとの折衝、予算の配分や管理などを行う |
・リーダーシップ ・スケジュール管理能力 ・予算管理能力 ・危機管理・対応能力 ・コミュニケーション能力 |
ITコンサルタント | クライアントが持つ要望や問題点を上手に聞き出し、課題を分析してそれを解決するために最適なシステムを提案する |
・課題分析能力 ・ヒアリング(コミュニケーション)能力 |
ITアーキテクト | システム開発の上流工程を主導する立場のエンジニア。クライアントから要件の聞き取りを行い、アーキテクチャを設計する |
・課題分析能力 ・ヒアリング(コミュニケーション)能力 |
CTO | 企業の最高技術責任者であり、社内に導入する技術や機器の選定などを行う |
・IT技術に関する誰よりも豊富な知識 ・経営的視点 |
5. フルスタックエンジニアに関するよくある質問
フルスタックエンジニアに興味を持つ方からの、よくある疑問にお答えします。
5.1 フルスタックエンジニアになるのは現実的に難しく器用貧乏になるだけでは?
「何でもできる人材が求められるのは予算の厳しい現場であり、つまり中途半端な人材しか集まらないのではないか」という、フルスタックエンジニアに対する厳しい見方もIT業界の一部にはあります。
予算が十分なプロジェクトでは、各工程に適した専門性の高い人材をそれぞれ雇うことができるため、フルスタックエンジニアを必要とすることは稀であることもまた事実です。
またそもそも一人のエンジニアが「どの技術にも精通する」というのは難しいものです。フロントエンドもサーバーサイドも学習には時間がかかります。よってフルスタックエンジニアはただの「器用貧乏」ではないかという意見もあります。
ここでポイントとなるのは、フルスタックエンジニアに求められているのは「全ての技術を完璧にマスターしていることではない」という点。例えばフロントエンドから入った場合、最初のうちはサーバーサイドのメンバーと「サーバーサイドの技術について会話ができる」レベルからでも問題ありません。
フルスタックエンジニアに期待されているのは、サーバーサイドからフロントエンドまで垣根なく、スピード感を持った開発に携わることができる人材像です。もし途中で困難を感じた場合は、幅広い業務知識を活かしてマネジメントに転向することも可能です。
5.2 フルスタックエンジニアを目指すべき人と他のスキルの習得を優先すべき人は?
「フルスタックエンジニアをおすすめしたいタイプの人」と「他のスキル習得をおすすめしたいタイプの人」、それぞれのタイプを確認していきましょう。
■ フルスタックエンジニアを目指すのがおすすめの人
フルスタックエンジニアを目指すことをおすすめしたい人は、やはり「フロントエンドからサーバーサイドまで、全部ひとりで作れるようになりたい人」です。例えば将来的に会社を立ち上げたり、フリーランスでいちからのアプリ開発等を考えている人が挙げられます。
他には、とにかく開発が好きでスペシャリストを目指している人です。新しい技術の習得と実践に目がない人などにとって一つの事を極めるよりも新しい発見を得られやすいので、楽しむことができます。
■ その他のスキル習得を優先するのがおすすめの人
現場で手を動かすよりも、いずれは経営の意思決定やコンサルにまわっていきたいという人には、目標としているキャリアに向けたスキル習得を優先することがおすすめです。
6. まとめ
今回はフルスタックエンジニアの仕事内容や、実際の案件例、平均年収、キャリアパス、フルスタックエンジニアをおすすめしたいタイプの人の特徴などをご紹介しました。
全分野を習得したエンジニアと聞くとハードルが高く感じられますが、始めから完全にマスターしていることを求められるわけではありません。チーム開発を通して自然と学ぶことも多くあり、後からマネジメント分野へ転向することも難しくはない職種です。
今後も需要は見込まれるフルスタックエンジニアを、この機会に目指してみてはいかがでしょうか。