求人情報などで見かける「マネジメント経験」とは、どのような経験を指すのでしょうか。マネジメント経験ありを名乗るために必要な実績やスキル、またマネジメント経験ありの方に求められる仕事内容などを、詳しく解説します。
1. マネジメント経験とは
マネジメント経験とは、主として管理職の経験を指します。その他には、プロジェクト管理などのチームをまとめた経験、または部下や後輩の教育経験なども、マネジメント経験に数えられることもあります。近年で事業の多様化によりマネジメント経験のある人材の求人案件が増え、高額な報酬が提示されるケースも増えています。
1.1「マネジメント経験有り」と言える主な役職
課長、部長など管理職の経験は、もちろんマネジメント経験に相当します。また、プロジェクトのマネージャーやリーダー、ディレクターといった、メンバーの管理やプロジェクトの進行管理などを担った経験も、マネジメント経験に相当します。
■ 「マネジメント経験有り」と言える部下の人数は何人から?
マネジメントを行った部下の人数は、1人から「マネジメント経験有り」と言うことができます。マネジメント経験とは上役として部下やメンバーの管理を行った経験のことであり、必ずしも多数を対象にしていなければならないものではありません。マネジメントを行ったチームの規模などを問われた際には、正しい人数を答えることが大切です。
1.2「マネジメント経験」に該当する3つの要件
ここまでマネジメント経験についてご紹介しましたが、該当する要件を端的にまとめると、「管理職経験」「プロジェクトマネジメント経験」「部下の教育経験」の3つに分類することができます。
■ 管理職経験
管理職経験とは、主に課員や部員などにあたる従業員の労務管理や育成、評価などの経験を指します。また支出予算や収入予算の管理も行い、部署の業績にも責任を持つ立場です。またそれぞれの部下が置かれている状況を把握し、チームが円滑に進んでいくよう、必要に応じてフォローを行うことなども求められています。
■ プロジェクトマネジメント経験
プロジェクトマネジメント経験とは、プロジェクトや事業などの管理経験を指す言葉です。基本的な従業員の管理を行うだけでなく、該当する業務の内容に精通していることが求められます。プロジェクトの立ち上げや、それを成功へ導くまでの経験などがそれに該当します。
■ 部下の教育経験
部下の教育経験とは、人材の育成を行った経験のことを指します。直接的な指導を行うほか、育成のカリキュラムを組んだ経験なども、教育経験となります。部下や後輩の指導を行ったという経験のほか、人事担当者として人材開発を行った経験などがそれに該当します。
2. 企業が「マネジメント経験」を人材に求める理由
企業が「マネジメント経験」を人材に求める理由には、次のようなものが挙げられます。
背景 | 概要 |
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中小企業やベンチャー企業の管理人材不足 | 人材の層の厚い大企業と違い、中小企業やベンチャー企業では管理人材が不足しやすいため |
事業の拡大や転換期を担えるリーダー人材不足 | 事業の拡大や、事業構造の再編・再生を担うことのできる人材は稀有であるため |
第二創業を迎える企業のマネージャー人材需要の増加 | 事業承継ニーズの高まりに伴い、次期社長やマネージャー人材の候補者が求められているため |
2.1 マネジメント経験者の市場価値は高い
管理職としてのスキルだけでなく、マネジメント経験者全般の市場価値が高まっています。例えばエンジニア職種であれば、優秀なマネージャーの有無がプロジェクトの成否を分ける事例が多く報告されています。
システム開発のリーダーには、多様なスキルを持つエンジニアを見極めて適切に配置し、QCD(品質・コスト・納期)を満たすことが求められているからです。昨今ではプロジェクトの大規模化も進んでおり、大所帯を上手に切り盛りできるスキルに需要が高まっているのです。
3. 職務経歴書や面接で「マネジメント経験」を尋ねられた際の答え方
では求人への応募先で「マネジメント経験」を尋ねられた際には、どのように答えればいいのでしょうか、職務経歴書と面接に分けて、ポイントをご紹介します。
3.1 職務経歴書に「マネジメント経験」を記載する際のポイント
マネジメント経験をアピールした職務経歴書を書く際には、次のようなポイントを意識しておくことがおすすめです。
• マネジメントした範囲(具体的な内容)を明示する
• マネジメントした規模(人数や予算など)を明示する
• マネジメントした期間を明示する
なお職務経歴の説明に企業独自の用語を含む場合は、客観的に分かりやすい用語へ置き換えしておくことが重要です。例えば「主任技術者」という役職があったとして、一般的に「課長」に相当する役職であるという場合には、その旨を記載します。
また携わったマネジメント業務の内容も、独自の用語や表現が含まれていないか気を付けておきましょう。誰が読んでも分かるように書くことが重要です。
3.2 面接で「マネジメント経験」を尋ねられた際のポイント
面接で「マネジメント経験」を問われるケースについて、よくある質問と回答のポイントを表にまとめました。
よくある質問 | ポイント&回答例 |
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マネジメントの経験年数と、部下の人数を教えて下さい | 【回答のポイント】
• 具体的な年数と内容を正確に伝える力が問われる 【回答例】マネージャー歴は8年です。まず5年間、パッケージ開発のチームリーダーとして、6人程度のエンジニアチームの工程管理を行いました。その後3年間、30人規模で行う開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、予算の管理や、全体の進行管理を行っています。 |
あなたのマネジメントスタイルを教えて下さい | 【回答のポイント】
• 自分を客観的に見る力が問われる • 求人元の求める人材と合っているかが問われる 【回答例】メンバーに振り分けた後の業務については、マネージャーとしては殆ど関与しません。メンバーの自立性を重んじていますが、進捗に遅れが出る等の問題が発生した場合は早めに状況を確認します。またメンバーが問題を感じたときは、いつでも解決策を相談できる雰囲気作りを重視しています。 |
マネージャーとしての経験を積むとともに、あなたのマネジメントスタイルはどのように変化しましたか? | 【回答のポイント】
• マネージャーとして成長していく意欲が問われる • これまでどのように成長してきたかが問われる 【回答例】以前はメンバーへ振り分けた後の業務にも干渉を行っており、きめの細かいフォローこそがマネージャーの仕事だと考えていました。しかしフィードバックを受けるうちに、たとえ失敗しても自分で考えて進めることが、メンバーの成長につながるのだと気付かされました。 |
マネージャーにありがちな失敗には、どのようなものが考えられますか? | 【回答のポイント】
• 自分の経験した範囲だけでなく、大きな視点でマネジメントを考えているかを問われる 【回答例】マネージャーがやりがちな失敗としては、自身の成功体験をメンバーに押し付けてしまうことだと考えます。「自分がメンバーの時にはこうしたら成功したから、同じようにやれ」と押し付けてしまっては、メンバーの実力を十分に引き出せないまま不満ばかりが溜まってしまいます。 |
失敗した場合、あなたはどのように対処しますか?
または、対処しましたか? |
【回答のポイント】
• 自分の失敗を認め、責任を取っているかを問われる • 失敗をどうリカバリーしているかを問われる 【回答例】プロジェクトの進捗に遅れが発生した際、その原因をメンバー個人のものとせず、自身のマネジメントを見直す機会としました。「自分ならばできるから」と考えるのではなく、メンバー各自の特性を再評価した上で、割り振りの調整を行いました。 |
マネージャーとして、職場にどのような面で貢献できると考えますか? | 【回答のポイント】
• 職場にどのように貢献しようと考えているかを問われる • マネージャーの社内での役割を理解しているかを問われる 【回答例】メンバーを始めとした社員の士気を高め、業務に対するモチベーションの維持が重要な役割だと考えています。また会社の窓口として顧客のニーズに応え、つながりを作っていくという面でも貢献できると考えます。 |
4. マネジメントに必要なスキル
マネジメントに必要なスキルには「コミュニケーション能力」「目標設定能力」「分析能力」「判断能力」「結果の評価能力」などが挙げられます。それぞれの詳細を、表にまとめました。
スキル | 概要 |
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コミュニケーション能力 | マネジメントを成功させるには、メンバーの能力や進捗状況をしっかりと把握しておく必要があります。そのためには、高いコミュニケーション能力が必要です。 |
目標設定能力 | チームの、ひいては企業の目標を達成するためには、短期・中期・長期それぞれの目標を設定し、それをメンバーにしっかりと共有する必要があります。また達成可能な範囲で高すぎず、かといってモチベーションを落とさない程度に低すぎない目標を設定することが必要です。 |
分析能力 | 設定した目標を達成するため具体的な計画を立てるには、分析能力が必要です。 |
判断能力 | 上記で分析した結果をもとに、必要な行動を決定するためには判断能力が必要です。 |
評価能力 | 適切に評価が行われることで、メンバーのモチベーションがアップします。評価とは給与や役職が上がるだけではなく、業務における責任や権限の向上なども挙げられます。 |
5. マネジメント経験を身につけるコツ
マネジメント経験を身につけるコツとして、「傾聴」と「ポジションチェンジ」が挙げられます。
まず「傾聴」とは、相手の言葉にしっかりと耳を傾けることを指します。相手の話を遮ったり否定したりせず真摯に聞くことで、相手は心の奥にある本音を話しやすくなり、意見を引き出しやすくなります。この傾聴は、マネジメントにおけるコミュニケーション能力の向上にも役立ちます。
次に「ポジションチェンジ」とは、「自分の立場を相手、もしくは第三者に置き換えてみること」です。常に第三者的な視点から確認することで多角的に物事を見ることができるようになり、見落としがちだった問題点やその解決策などを見つけることができるようになるのです。
6. マネジメントスキルに関連する主な資格
マネジメントスキルに関連する資格には、「プロジェクトマネージャ試験」「ビジネスマネジャー検定」「中小企業診断士」の3つが主に挙げられます。
6.1 プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、情報処理技術者試験の高度区分にあたる国家試験です。IT関連における、プロジェクトマネジメントの手法に関する深い知識を問われます。官公庁案件の入札要件に設定されていることもあり、関係の深い企業では資格手当を支給しているケースも見られます。
正式名称 | プロジェクトマネージャ試験 |
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受験日程 | 毎年秋(10月頃) |
受験費用 | 7,500円(税込) |
主な対象者 | 経験を積み開発プロジェクトのリーダーを任されたエンジニア |
受験資格の有無 | 特になし |
合格率 | 14.4%(令和3年 秋期試験) |
公式サイト | https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/pm.html |
6.2 ビジネスマネジャー検定
ビジネスマネジャー検定は、東京商工会議所が運営する中間管理職のための民間資格です。マネジメントに関する総合的な知識が問われるほか、コミュニケーションの取り方や、マーケティングなどの経営に関する知識も試験範囲でカバーされています。
正式名称 | ビジネスマネジャー検定 |
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受験日程 | 10月14日(木)~11月8日(月)(第14回) |
受験費用 | 7,700円(税込) |
主な対象者 | 組織の中間管理職を担う人 |
受験資格の有無 | 特になし |
合格率 | 62.6%(第13回) |
公式サイト | https://www.kentei.org/bijimane/ |
6.3 中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業が抱えがちな問題点を洗い出し、経営に関する助言ができる人材育成のための国家資格です。経営コンサルタントにあたるもので、経営理論、運営管理、経営法務、財務会計、経済学など、企業の経営に必要な知識を一通り身につける必要があります。
正式名称 | 中小企業診断士試験 |
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受験日程 | 8月21日(土)・8月22日(日)(令和3年 第1次試験) |
受験費用 | 1次試験:13,000円(税込)、2次試験:17,200円(税込) |
主な対象者 | 経営コンサルタントに求められる各種知識を付けたい人 |
受験資格の有無 | 特になし |
合格率 | 36.4%(令和3年 第1次試験) |
公式サイト | https://www.j-smeca.jp/contents/007_shiken.html |
7. まとめ
マネジメント経験について、いかがでしたでしょうか。一言でマネジメント経験と言っても、実際の管理職経験だけでなく、プロジェクトでリーダーをこなした経験や、部下や後輩の指導経験なども「マネジメント経験」に相当します。マネジメント経験ありの人材を募集している案件を検討している方や、これからマネジメント経験を積んでいきたいという方へ、参考になれば幸いです。