AI技術の急発展とは裏腹に、2030年にIT人材が最大79万人不足するというシナリオは1つの大きな社会問題となっています。「なぜIT人材は不足しているのか」「エンジニア不足について解決策はないのか?」といった疑問や悩みを持っている方も少なくないのではないでしょうか。今回は、プロエンジニアのキャリアコンサルタントとプログラマカレッジ(未経験者向けプログラミングスクール)キャリアアドバイザーがITエンジニア不足の実情と解決手段についてわかりやすく解説します。
プロエンジニア
コンサルタント 菊池文
企業様とエンジニアの方のマッチング作業とフォローがメイン業務です。エンジニアの方に対しては、採用面談の練習やアドバイスはもちろん、採用後も密なフォローを心掛け、普段からコミュニケーションを取っています。 どのエージェントよりもあなたの年収を上げる自信があります。人生に大きく関わる自覚を持ち、長期的な目線で親密で良好な関係を築けるよう精いっぱい努めて参ります!
プログラマカレッジ
キャリアアドバイザー 山口 良
人材紹介事業部のリクルーティングアドバイザー(RA)として、クライアントの採用コンサルや、キャリアアドバイザー(CA)として、求職者の支援も行っております。就職・転職は人生の分岐点だと思いますので、皆様の挑戦・第一歩の後押しができればと思っています。
ITエンジニアはそもそも何故「不足し続ける」のか
菊池(プロエンジニア):
経済産業省が2019年に発表した「2030年には最大でIT人材が79万人」不足するという予測シナリオがありますよね。あくまで一個人として、以前はこのシナリオに対して懐疑的でした。「AIも発達するだろうし、そもそも2030年までに自助努力で各社が何らかの形でエンジニア不足を解消するだろう」と考えていたので。しかしシナリオの発表から4年が過ぎても、企業のエンジニア不足が解消されていない現状に驚いています。未経験からエンジニアになりたいという人も、やはり変わらず多いのではないでしょうか?
山口(プログラマカレッジ):
多いですね。また、未経験者層に対する企業側の採用ニーズも比較的旺盛な状態が続いていると思います。もっともコロナ禍では、プログラマカレッジの受講生は激減しましたし、比例して採用数も激減してしまいましたが、ウィズコロナ~アフターコロナに移行して需要は回復していますね。
菊池(プロエンジニア):
未経験者層に対する採用ニーズが比較的現在でも高い理由は、何だと考えていますか?
山口(プログラマカレッジ):
「ミドルクラスのエンジニア不足」を先回りして予防したいという企業が多いのだと思います。極論を言うようですが、日本の多くの企業が悩む「エンジニア不足」とは未経験者層の不足でも、中高年の不足でもなく、20代後半から30代前半の「ミドルクラス不足」なのではないでしょうか。
2023年現在、20代後半~30代前半の層は、リーマンショック~東日本大震災の影響で多くの企業が採用を絞っていた世代に該当します。特に東日本大震災の影響は、震災後数年以上色濃く残り続けました。
この世代で「システムエンジニアとして就職し、なおかつその後10年以上、安定したキャリアを築いている人」が意外と少ないのかもしれません。
だからこそ、よほどのことが無い限り「特定の世代の採用を大幅に絞るのは避けたい」「若手採用はどんな形であれ続けていきたい」と考える企業が増えているのではないでしょうか。
菊池(プロエンジニア):
たしかにミドルクラスのエンジニアが足りないという課題は、経験者層のマッチングを手掛ける中でも強く感じます。逆に言えば中高年層や未経験者層はエージェント側から見ると「足りないは足りないが、ミドルクラスに比べれば足りている」感覚が強いです。
山口(プログラマカレッジ):
「エンジニア不足」と一口に言っても、厳密には「どの層のエンジニアが足りないのか」という視点も大切ですよね。20代後半~30代前半のエンジニアが少なく、だからこそ各社がミドルクラスのエンジニアやマネジメント層の採用に困っているというのが現状かもしれないですね。
フリーランスか社内育成か?エンジニア不足の解消手段
山口(プログラマカレッジ):
2030年に「IT人材が79万人不足する」というのは、非IT業種でもDX化が進む今、IT業界に限らず社会問題になり得るトピックだと思います。企業がIT人材不足を解消するには、どのようなことが必要だと思いますか?
菊池(プロエンジニア):
IT業界では、50代~60代のエンジニアが現役で活躍されている例も意外と多いですよね。特に業務システム等の分野で、こうしたケースはとても目立ちます。今後、上の世代が引退する分、やはり基本的には若手の台頭が期待されます。そうなった場合、大学生や第二新卒、フリーターといった層に対するエンジニア就職/転職の支援が果たす役割は大きいと思います。
山口(プログラマカレッジ):
ありがとうございます。実際に、フリーランスエージェント側から見て「スクール受講生/卒業生」はどのような採用課題を解消できる人材に見えていますか?
菊池(プロエンジニア):
「若手人材を採用したい」が「採用コストや教育コストを抑えたい企業」にとっては、貴重な採用手段の1つだと思います。また、スクール受講生は「入社前から能動的にプログラミングを勉強している若手人材」です。社内の若返りや雰囲気の活性化を担う役割としても、十分に期待ができると思います。一方で「即戦力か」と言われればそうではなく、20代後半~30代前半の即戦力を期待する企業に対しては別のソリューションが必要ではないでしょうか。
逆にプログラミングスクールにとって、フリーランスエンジニアはどんな採用課題を解消できる人材に見えますか?
山口(プログラマカレッジ):
即戦力を紹介でき、なおかつ採用側にとって人件費を変動費に計上できるというのは大きいですよね。たとえばスタートアップが「ローンチ前のサービスの機能設計や実装面を、経験豊かなエンジニアに任せたい」という場合、育成を前提に未経験者層を採用するより、フリーランスエンジニアを活用した方がはるかに効率的だと思います。一方でフリーランスは「社員」ではないので、作業の内製化はできないのがデメリットですよね。企業にとっては、将来の幹部候補などは別の方法で確保することが必要ではないでしょうか。
菊池(プロエンジニア):
少し話が横にずれますが、IT業界は「歴史が浅い業界」でもあります。先にも述べた通り、今後は年齢的に引退する人も増えるでしょう。新卒世代の就職支援や、フリーランスエンジニアのマッチングだけで「79万人の不足」を補い切れるかと言えば、不安が無いわけではありません。
一例としては「非エンジニアのIT人材」の活用方法は、今後もっと議論されても良いトピックだと思っています。
たとえば、プロエンジニアではヘルプデスクなど「豊富なIT知識があるもののエンジニアではない層」向けの案件も部分的には取り揃えていますが、こうした層の方々の実力をフルに引き出すことができているのかという点は常に自問自答しています。
将来的にノーコードツールやジェネレ―ティブAIが普及してきたら、そうしたツールの力も借りながら「IT知識が豊富な方々」が従来のエンジニアの仕事を部分的にでも肩代わりしていくということが起きるのではないかとも期待しています。
エンジニア不足の理由は「ドキュメント作成」?業務効率化による改善の余地も大きい
菊池(プロエンジニア):
ちなみに、実際に企業の担当者の方とお話すると「エンジニアがなし崩し的に必要になってしまった」ケースも無いわけではないと感じるのです。
たとえばWebアプリケーション開発の場合、エンジニア採用の目的は大きく二分されます。
そしてしばしば起こるのが、①の段階ではWebサービスのローンチを最優先した言語選定やフレームワーク選定を行い、開発に携わるエンジニアもスポットで参加する人が中心。そして②の段階に進むと、増え続けるユーザーへの対策などを進めるうちに全面的な作り直しが必要になり、かつ①で参加していたエンジニアも現場を離れていて、GitHubだけはあるけど引き継ぎはあまり行われておらず……というケースです。
①から②への移行タイミングを事前に正確に見繕い、スケジュール立てができていれば「エンジニア不足」が深刻な課題になることはあまりないでしょうし、そもそも①の段階で培ったナレッジが社内できちんと共有されていれば「作り直し」まではすぐには必要ないかもしれないですよね。
つまり「その後の運用」も見越したドキュメント作成や、メンバーフォローが行われていれば「ここまで急ぎでエンジニアが必要という状況にはならなかったかもしれない」と思うケースが結構多いのです。
山口(プログラマカレッジ):
「エンジニアが不足している」からといってつぎはぎ的にエンジニアを採用することによって生じた弊害という気がしますね。「ドキュメント作成」や「引き継ぎ」を綺麗に行うことは、簡単なようで意外に難しいのでしょうね。どの企業にも実務があり、実務と並行してそれらを進める必要があるので。
菊池(プロエンジニア):
ドキュメント作成や引き継ぎは、優秀なPMやディレクターが参画していれば、すぐに問題を解決できるトピックでもあります。広義の「業務効率化の一環」でできることです。こうした「企業の採用課題を正確に見抜いたうえでの紹介」は、プロエンジニアでも今後中長期的に取り組んでいきたいトピックです。
企業がエンジニア不足を解消するために大事なこと
山口(プログラマカレッジ):
2030年にIT人材が最大79万人不足するというのは、1つの大きな社会問題です。だからこそ企業がエンジニア不足に対応する際には、将来の幹部候補への育成への取り組みがとても大事だと思います。
たとえばフリーランスに案件を発注するとしても、社内に幹部候補クラスのITの知見がある人材がいなければ、どの業務をどのような要件で切り出し、どんな条件で発注するべきか判断できなくなります。広義のベンダーコントロールができる人材は社内に最低でも1人は必要だと思いますし、そうした人材の育成に早期から取り組むのは2030年以降の未来を見越したときに大事です。
菊池(プロエンジニア):
一口にエンジニア不足と言っても、実際に不足しているのはPMやテックリード、ミドルクラスのエンジニアというケースが多いです。こうした層を確保するには、2023年現在では「フリーランスエンジニアの活用」が一番有効かつ手早い方法かと思います。
プロエンジニアの場合、いま必要な人材を最短で紹介することができます。
たとえば「プロジェクトの納期は決まっているが人がいなくてプロジェクト進行に影響が出ている企業」や「自社内サービスやシステムの拡張をしたい企業」などには自信をもって、プロエンジニアのサービスをご提案させていただきます。
一方でスポットでフリーランスエンジニアを登用したとして、社内人材の育成の重要性がゼロになったわけではありません。ぜひ中長期的な人材育成と、フリーランスの活用はセットで考えてみてはいかがでしょうか。
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