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ただピッとかざすだけで一瞬にして改札を通過できるSuicaやPASMOといった交通系ICカード(IC乗車券)の登場で、路線図から料金を探して切符を買う手間を省いたり、通勤ラッシュ時の大混雑を緩和したりと、電車に乗る際にとても便利になりました。
特に2013年からは全国の他社カードとの相互利用も始まり、旅行先や出張先といった初めての土地でも慌てずにいつものカードで電車やバスに乗れるようになりました。さらにはコンビニや自動販売機での支払いまで、一枚でできるようになっています。
ただのプラスチック製の薄い板に見えるカードをかざすだけで、一体どうやって膨大な情報を管理し、瞬時に判断しているのでしょうか。今回は、この交通系ICカードをメインに非接触ICカードの仕組みをご紹介します。
1. 非接触ICカードとは
従来の接触型ICカードと違う非接触ICカードの特徴は、その名のとおり「触らずに」読み取りが可能であるということです。これにはRFID(Radio Frequency Identification)という技術が使用されています。
RFIDとは、ID情報が埋め込まれたごく小さなICタグから、電磁界や電波などを用いた近距離無線通信で情報をやりとりする技術です。裏表関係なく近づけるだけで読み取り可能なので、定期入れから取り出すこともなく読み取りが可能です。
電池を内蔵していないタイプのカードには、パッシブタグと呼ばれるタイプのタグが利用されています。カードリーダ本体にタグを近づけると、電磁誘導やマイクロ波を用いて電源が供給される仕組みです。それによって、電池切れの心配もなくなっています。
2. 磁気カードと何が違うのか
ICカードは磁気カードと比べると、記憶容量が増大し、また不正読み取りに対するセキュリティレベルが高いという特徴があります。
無線通信を行っている以上は傍受のリスクがあるのに、セキュリティレベルが高いとはなぜ?と思われるかもしれません。非接触ICカードではデータの漏えいや改ざんを防ぐために暗号化通信を行っており、乱数を使用して鍵を変化させるなどの対策を行っています。
ただし近年進んできているキャッシュカードやクレジットカードのICカード化は、傍受のリスクがより少ない接触型が主流になっています。より短時間で処理を終えたいという目的のある交通系カードについては、非接触が利用されています。
また磁気カードと違い、ICカードには自身の中にデータを保存できるという特徴があります。そのためオンラインでの情報のやりとりが少なくすむという利点もあるようです。
3. 日本はICカードも独自路線
非接触ICカードの規格には、世界標準規格である「Type A」と「Type B」、そしてほぼ日本独自の規格である「FeliCa(フェリカ)」の3種類があります。多くの交通系ICカードやおサイフケータイなどは、このFeliCaを利用しています。
■Type A
オランダのフィリップス社で開発された「Mifare」など、欧米を中心に広く使用されています。
コストを抑えて作ることができ、日本では社員証に埋め込み、企業の入退室管理などに利用されています。
■Type B
アメリカのモトローラ社で開発されました。
セキュリティレベルが高く、運転免許証や住基カード、キャッシュカードなどに利用されています。
■FeliCa
ソニー社によって開発され、処理速度の速さには海外でも定評があります。
Suicaへ採用する方式の決定時に出された条件「処理速度0.1秒以内」をクリアすることができたのは、FeliCaだけだったらしいという逸話も。
- 参考: 非接触ICカードとFeliCa技術 (http://www.sony.co.jp/Products/felica/about/scheme.html)
4. 交通系ICカード共通利用の仕組み
このような非接触ICカードの技術が使用されている交通系のICカードですが、どのように相互利用を実現しているのでしょうか。一見データを共有しているように見えるのでどこかに中央集積サーバを持ち一か所にアクセスしているのではないかと思われがちですが、実は各カードの管理会社が、それぞれ個別に自社カードのデータのみを管理しています。
ではどうやって共有しているかというと、まず端末機がカードの情報を読み取った瞬間、自社のカードか、他社のカードか、規格外のカードかを判定します。規格外の場合はエラーを返し、自社カードの場合は処理を行います。ここで規格の合う他社カードの場合は、専用のネットワークを介して該当するカードのサーバへ情報を投げます。サーバでの処理が終わったら、また元の端末機に結果を投げ返すという仕組みです。
交通系ICカードの相互利用は全国に広がっており、2012年12月の発表時点で、日本全国の半分近くである電車4275駅とバス2万1450台が同じカードで乗れるようになったようです。
さらには電車やバスの運賃だけでなく、自動販売機や駅の売店、コンビニから、さらに街中の飲食店など、利用可能な店舗は今もどんどん増加しています。
また交通系ICカードが持つID情報を用いたソリューションを一般のオフィス向けに提供している企業もあり、例えば次のようなシステムの構築を行っているようです。
・入退室管理(ドアのロック解除)
・勤怠/出席管理(タイムカードの記録)
・企業の食堂や売店での利用
・コピー機の個人認証
磁気テープからの移行が続々と進みつつあるICカードを利用したシステムは、これからも導入される場面が増加していくと考えられます。今後私たちの生活のどんな場面でかかわってくるのか、これからも注目が必要になりそうです。
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