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スマートフォン関連などでよく目にするWi-FiとBluetooth。よく似ている存在ですが、なぜか使い分けされています。「Wi-Fiはネットにつなげるもので、Bluetoothは周辺機器をつなげるもの!」と言いたいところなのですが、デジタルカメラ用に「Wi-Fiを内蔵してPCに直接接続できるSDカード」などという製品もあり、混乱が増すばかりです。
今回はそんなWi-FiとBluetoothが、そもそもどんなものであるのか、どういう場面で使われているのかをご紹介したいと思います。
1. Wi-Fiとは?
「Wi-Fi」とは、米Wi-Fi Allianceによって認定された、無線LANの規格です。
無線LANとはワイヤレスでPC等の端末をネットワークに接続する技術のことですが、その中でも一定の標準(IEEE 802.11シリーズ※1)を満たしており、互換性があるとWi-Fi Allianceに保証されているものだけが「Wi-Fi」と名乗ることができます。
この規格はインターネットへの接続だけでなく、端末同士が接続し合う「ワイヤレス・アドホック・ネットワーク」というモードを持っており、携帯ゲーム機にある「アドホック接続」とは、このモードのことを指しています。
電波を用いることで数メートルから数十メートルの距離の高速通信を可能としており、最近では数百メートル離れた場所まで届くものもあります。さらに2014年に制定された「IEEE 802.11ac」では、6.9Gbpsもの高速通信を実現しています。
そのことから、Wi-Fiは、主に次のような場面で利用されています。
・大容量の(高速で)データを転送する必要がある
・十メートル以上離れた場所と通信する必要がある
2. Bluetoothとは?
Bluetoothとは、数mまでの機器間接続に用いられる、短距離無線通信技術です。 Bluetooth SIGが仕様策定や普及を推進しており、IEEE 802.15.1(※1)として規格が標準化されています。
通信速度は最高24MbpsとWi-Fiに比べて低速であり、通信もWi-Fiに比べると狭い範囲でしか行うことができません。 その代りWi-Fiと比べて消費電力が小さく、さらに送受信を行う装置も小型で、かつ製造コストを抑えることができるという特徴があります。
また、少し前の携帯電話で主流だった赤外線通信との違いは、通信に赤外線ではなく電波を利用しているという点です。そのため、障害物があっても通信することが可能になりました。
そのことから、Bluetoothは、主に次のような場面で利用されています。
・消費電力を抑える必要がある
・小型化する必要がある
3. Wi-FiとBluetoothの共通点が干渉を起こす
このような違いのあるWi-FiとBluetoothですが、共通点もあります。そのうちの1つであり大きな問題を引き起こす原因となるのが、「ISMバンド(※2)」と呼ばれる2.4GHz帯の電波を使用して通信を行っているという点です。
このISMバンドは電子レンジなどの家電製品も使用しており、同時に使用すると干渉を起こして通信が途切れてしまう場合があります。例えば、電子レンジで何かを温めている間はインターネットが途切れてしまうなどの経験はないでしょうか。
これはWi-FiとBluetoothも同じで、共に2.4GHz帯を使用しているものだと干渉を起こし、Bluetoothキーボードの入力が不安定になるなどのデメリットが発生する場合もあります。
Bluetooth1.2からは2.4GHz帯Wi-Fiとの干渉対策が規格に盛り込まれていますが、それでも干渉が発生するケースは後を立たないようです。Wi-Fiの方は5GHz帯も追加で利用可能になっていますので、完全に回避したい場合は5GHz帯Wi-Fiを選択することがおすすめです。
4. Wi-FiデザリングとBluetoothデザリングの違い
「デザリング」とは、スマートフォンをモバイルルータのように使用することで、PC等の端末をインターネットに接続できる機能です。かつてはWi-Fiデザリングが主流でしたが、最近ではBluetoothデザリングを利用可能なスマートフォンが増加してきています。
このWi-FiデザリングとBluetoothデザリングにもそれぞれ特徴がありますので、用途に合った方法で使用してみて下さい。
<Wi-Fiデザリング>
・LTE接続を生かした高速通信が可能
・消費電力が大きい
・セキュリティ対策はパスワード入力で対応
<Bluetoothデザリング>
・最大3Mbpsと通信スピードは遅め
・消費電力が小さい(Wi-Fiの約10分の1)
・セキュリティ対策はペアリングで対応
Wi-FiとBluetoothの違いについて、いかがでしたでしょうか。
このような特徴があるため、例えば冒頭のSDカードの場合は「写真転送という大容量データ通信のためにWi-Fiになっているのではないか」と考えることができるかもしれません。
皆さんもWi-FiやBluetoothの製品を見かけた際には、「なぜそっちなのか」を考えてみると面白いのではないでしょうか。
(※1)IEEE(アイ・トリプル・イー:The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)
米国に本部を置く、世界最大規模の電気工学・電子工学技術学会のこと。
(※2)ISMバンド(アイエスエムバンド:Industry Science Medical)
産業・科学・医療の分野で汎用的に使うため、割り当てられた周波数帯域のこと。免許不要で利用できる。