目次
2. 「小説、音楽、ゲーム、絵…人工知能が『作品』を生み出す日」 松原仁さん
3. 「AI・人工知能でコンテンツ制作はどう変わる?~人工知能とクリエイターが共存共栄する未来~」 徳井直生さん
2016年7月6日(水)から8日(金)の3日間、東京ビックサイトにて「コンテンツ東京2016」(https://www.facebook.com/content.tokyo/)が開催されました。
こちらのは、「第5回クリエイターEXPO」「第4回プロダクションEXPO」「第4回制作・配信ソリューション展」「第6回キャラクター&ブランド ライセンス展」「第2回先端コンテンツ技術展」「第2回コンテンツマーケティングEXPO」と複数の展示会で構成されたイベント。3日間合計の来場者数は40,660人に上り、昨年度と比べ33%の増加となりました。
コンテンツに関わる多様な展示が一同に集まった中、弊社が注目し、取材した情報をお伝えします。
1. AI・人工知能は、小説などのコンテンツを作れるのか
3日間の期間中、複数の専門セミナーも開催されており、その中に「AI・人工知能」をテーマにした特別公演がありました。登壇者は、公立はこだて未来大学教授で人工知能研究者である松原仁さんと、株式会社Qosmo代表取締役CEO徳井直生さん。
2. 「小説、音楽、ゲーム、絵…人工知能が『作品』を生み出す日」 松原仁さん
松原さんはまず、人工知能は現在、1950年・1980年のブームに続いて第3次ブームの段階だと話を始めました。今、世の中の普通の人たちは人工知能の機能を日常の中で使うようになり、更に、研究者の間では、コンピューターに「創造性」を持たせようとする研究が試みらるようになっているといいます。
人工知能は、既に将棋・囲碁の世界で創造性を発揮している
実際、人工知能は創造性を発揮することはできるのでしょうか。
松原さんは、将棋・囲碁の世界では、既に人工知能は創造性を発揮し、人間が全く思いつかないような新手を生み出しているといいます。例えばGPS新手やponanza新手といわれるものがそれで、コンピューターは対戦する人間が予想できない手を生み出しているといいます。
現在、24時間、コンピューター同士が対戦しているサイトもあり、プロの棋士たちはそれらを利用しながらコンピューターが作り出した新手を勉強するようになっているということです。
この様に、人間を凌駕する事態は将棋界と同様に囲碁界でも起こっており、Google DeepMindが作ったAlphaGoというコンピューター囲碁プログラムが、世界最強棋士といわれるイ・セドルを4勝1敗で打ち破り、業界を震撼させました。
今や思考ゲームにおいては、人工知能が人間を上回っているのです。
では、他の分野ではどうでしょうか。
現在、絵画や音楽、俳句、和歌、パズル、ゲーム、散文といった分野では、人工知能に作品を創造させる試みが行われているといいます。
そして松原さんは、「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」(http://www.fun.ac.jp/~kimagure_ai/)というプロジェクトを、チームの中心となって進めて
います。こちらのプロジェクトは、「ショートショートの神様」といわれる星新一さんの作品を分析し、人工知能にも面白いショートショートを創作させることを目指すもの。
まずは、人間がコンピューターに複数のストーリーを与え、コンピューターはその与えられたストーリーをもとに自ら作品を作っていきます。これまでに、作品の1部が1次審査を突破する実績も残しており、最終審査通過を目指して現在も取り組みが続いています。
現在は、初めのストーリーを考えるのは「人間:コンピューター=8:2」ですが、今後はコンピューター自身にストーリーを考えさえるようにしていきたいといいます。
こちらのプロジェクトは、人工知能の専門家からは絶対無理と言われているそうです。ただ松原さんは、かつてはチェスや将棋も囲碁も、人間の様に考えて対戦するのは絶対に無理だと言われていたけれど、今は目覚ましい成長を遂げている事実に目を向け、小説を書くことも同じように可能になるよう、これからも挑戦を続けていくと締めくくりました。
3. 「AI・人工知能でコンテンツ制作はどう変わる?~人工知能とクリエイターが共存共栄する未来~」 徳井直生さん
3.1 AIとは 人間の「知能の模倣」ではなく、「別の知能」
次に登壇された徳井さんは、今回の話のテーマは「未知との遭遇 -AIとの付き合い方-」だとして話をスタートしました。 徳井さんいわく、AIとは時代によって定義が変わるものであり、「賢そうに見える行いを、もうちょっとで実現できそうな仕込み」ではないか、といいます。そしてそれは、単なる人間の知能の模倣ではなく、全く別の知能なのであり、例えば「Alternative Intelligence(代替知能)」や「Alien Intelligence(異世界知能)」と捉えられるのではないかと提案しました。
3.2 AIとの付き合い方
では、その様な視点から、どの様にAIと付き合っていくのがいいのか。
例えばQosmoのプロジェクトの一つに、アンビエント・ミュージックのパイオニアといわれるBrian Eno(ブライアン・イーノ)のミュージック映像の制作があります。こちらのプロジェクトでは、AIにイメージを与え、第三者目線でAIに映像を選んでこさせるというもの。この時、AIは人間が与えたイメージとは違う、思いがけないものを選ぶことがあったそうですが、それを間違えとするのではなく、新しい気付きとして制作に活かしたといいます。
もう一つの例が、歌詞の自動生成のプロジェクト。こちらは、レーザーディスクカラオケの映像をAIに分析させ、それに合う歌詞を自動で生成させたといいます。歌詞は毎回違うものになるとのことで、それを人間がカラオケで歌うという面白おかしいイベントつきです。
このように、人とAIとのインタラクションには面白さがあり、プロジェクトを通して新しい視点や気づきを得ることができるといいます。そしてそれは、「人 or AI」ではなく、「人 and AI」の考え方であり、人がAIの間違いに合わせていき、AIがそれに歩みよっていく形だと提案しました。
そしてAIとクリエイティブに付き合う為の3つのヒントとして、「既知を未知とする/コントロールを手放す=移譲する」「AIの間違えを許容し、人のロジックとの異質を大切にする」「量が質となる」の視点を伝え締めくくりました。
4. 技術が進むVR ゲームや3Dを体験
そして、東京ビックサイト会場には多くのブースが出展されており、参加者の方々は実際に製品・サービスを体験していました。
株式会社しのびや.com(http://shinobiya.in/)のVRライドシュミレータ。イベント向けに制作されており、VRアトラクションやVRシュミレーションを実現します。
株式会社ダイナモアミューズメント(http://dynapix.jp/amusement/)のVR「伝説の巨大鮫 メガロドン」。
株式会社サナリス(http://snaris.com/index.html)のVR BOX。今回はジェットコースターに乗っているような体験ができました。
有限会社プロトタイプ(http://proto-type.jp/)のバイクランディングシシュミレーター「GodSpeed FreeRide+」。視覚、音響、震動をリアルに感じながら、あたかもバイクで疾走しているような体験をすることができます。
株式会社キャドセンター(http://www.cadcenter.co.jp/)の「HMDウォーキング」。自分の足で歩きながら、バーチャル空間を体験できるVRです。
キャドセンターが展開する「三重津タイムクルーズ」「カイセキカメラ」「Mirror Vision×Beauty Palette」。幕末へタイムスリップする体験や、顧客情報をインタラクティブに取得したり、SNSで発信された情報をデジタルサイネージに表示することができます。
5. デジタル、ロボットも進化中
もちろんVRだけでなく、様々な最先端のコンテンツが出展されていましたので、ご紹介していきます。
+Ring(http://ringer.tokyo/)の「ilodoli」。行きかう人の衣装の色や模様が宝石の様に投影されるデジタルインスタレーションです。店舗広告や屋外広告、集客イベント、空間アートなど、多様な利用方法を提案しています。
AIRO(http://www.airo.kr/)による観賞魚ロボット。同社は鑑賞魚ロボットに特化した韓国発のベンチャーです。
オムニバス・ジャパン(http://www.omnibusjp.com/)の「コロコロ球体」。球体のディスプレイとモーションセンサーが融合されており、手をかざすことで球体を回しているような体験ができます。
パナソニックの「ballooncam」。ヘリウムガスで膨らませた風船型のドローンです。
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(http://www.crypton.co.jp/)の「リアルタイム3DCGコントロールシステム(R3)」。キャラクターがバンドやオーケストラに合わせて歌って踊り、パフォーマンスを行います。
最先端の技術だけでなく、同会場では「キャラクター&ブランドライセンス展」も展開されており、日本のキャラクターやブランドが多数出展していました。「ライセンス取引の専門展」である同展では、ライセンス交渉をすることが可能です。
目を引いて注目を集めていたのはVRでしたが、ロボットやビジュアルコンテンツ、アプリや管理システムなど、ITサービスが進化しつつ、より私たちの生活に身近で取り入れやすい形になっているということが感じられました。
これからもどんどん成長していくであろうIT分野。引き続き、いち早く情報をキャッチアップし、みなさんにお伝えしていきます。