IT系の資格には、公的な資格だけでなく様々なベンダー資格が存在します。今回は世界中で最も普及しているMicrosoft製品について、必要な知識と技術を取得していると証明できる資格「MCP」をピックアップしてご紹介したいと思います。
1. Microsoft認定資格プログラムとは?
1.1 全世界に通用する共通資格
マイクロソフト認定資格プログラム(MCP:Microsoft Certification Program)は、米Microsoft Corporation(日本法人・日本マイクロソフト社)が実施する、マイクロソフト製品に対する知識と技能をレベル別に認定する試験です。
受験者数や合格者数は非公開ですが、2003年時点の有資格者数は全世界で180万人、日本国内でも12万人を超える、大人気資格となっています。
また企業情報に資格取得者数を掲載する企業も多く、重要視されていることが分かります。
1.2 2021年度より新資格体系に移行
2019年より、Microsoft製品に関するITエンジニア向け認定資格体系は大幅に刷新されました。なお2012年以前の旧MCPは「Microsoft認定プロフェッショナル(Microsoft Certified Professional)」の略称でしたが、それ以降のMCPは「Microsoft認定資格プログラム」の略称となっています。
1.3 資格取得のメリット
■ 未経験から就職の場合
取得=即戦力という判定を受けるのは難しいですが、IT技術に対する学習意欲の高さは多くの企業で評価対象になります。
■ 実務経験ありから転職の場合
取得した試験の内容が自分の業務経験の内容に沿っていれば、経験を裏付ける資料のひとつとして評価対象になります。沿っていない場合は「なぜその資格を取ったのか」についてしっかりと説明できなければ、実のない資格として評価対象とされないケースもあるようです。
■ その他のメリット
MCPは製品や職場でのロール(役割)ごとに細かく分類されており、漠然と取るには向かない資格です。自分が「何をやっているのか」「これから何をやりたいのか」それらをしっかりとと考えた上で試験対策を行うことにより、自分の知識体系の整理を行うことができ、さらに足りなかった知識の補足を行えるというメリットがあります。
2. 試験の種類(グレード)と難易度
MCPのグレードは、簡単な方から「Fundamentals」「Associate」「Expert」の3つのレベルに分類されています。
Fundamentalsは勉強を始めた方向けの初級レベル、Associateは実務で扱っている方向けの中級レベル、Expertはより専門性の高い上級レベルという位置づけです。
以前はMCPの入門レベルといえる「Microsoft Technology Associate(MTA)」試験も実施されていましたが、2022年3月31日をもって終了しました。
またマイクロソフト社の有名な資格としてはMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)がありますが、こちらもMCPとは別体系の資格であり、Microsoft Office製品に特化した資格となっています。
3. 各グレードの試験時間・出題数・合格ライン
MCPでは、受験者それぞれの職務や技術的な役割(ロール)によって、より効果的な資格取得のフローが設定されています。提示された主なロールは、次の9つです。
• 開発者
• 管理者
• ソリューションアーキテクト
• データエンジニア
• データサイエンティスト
• AIエンジニア
• DevOpsエンジニア
• セキュリティエンジニア
• 機能コンサルタント
9つのロールは、さらに使用する製品によって細分化されています。ロール毎にどの資格を取得すべきか知りたい方は、次の公式ページを参照してください。
▶ 参考:Microsoft の認定資格|Microsoft Docs
なお各レベルごとに用意された試験には、次のようなものがあります。
3.1 Microsoft Certified Fundamentals
Microsoft社製品について学び始めた方におすすめのレベルの試験です。試験は製品やロール別に、計8種類用意されています。
対象試験 |
【Azure管理者・開発者向け】
【AIエンジニア向け】
【データエンジニア向け】
【セキュリティエンジニア向け】
【Power Platform開発者向け】
【Microsoft 365開発者向け】
【Dynamics365開発者向け】
|
---|---|
試験時間 | 45分 |
出題数 | 35~50問前後(試験により変動あり) |
出題形式 | CBT(選択肢形式、ドロップダウンリスト形式、クリック形式、ドラッグ&ドロップ形式) |
合格ライン | 70%程度 |
前提条件 | 特になし |
履歴書の表記例 | Microsoft認定資格Azure Fundamentals 取得 |
■ 正式名称と履歴書の表記例について
履歴書の表記については、正式名称でなくても「相手に伝われば良い」という側面があります。そのため相手に伝わるようであれば「MCP Azure Fundamentals」等と略称で表記しても問題ありません。
■ Azure Fundamentals(AZ-900)の概要
Fundamentalsレベルで一番人気である「Azure Fundamentals(AZ-900)」の、試験範囲と配点をご紹介します。
• クラウドの概念について説明する(25–30%)
• Azure のアーキテクチャとサービスについて説明する(35–40%)
• Azure の管理とガバナンスについて説明する(30–35%)
参照:試験 AZ-900: Microsoft Azure の基礎|Microsoft Docs
3.2 Microsoft Certified Associate
Microsoft社製品を扱い慣れたころにおすすめのレベルの試験です。試験は製品やロール別に、計36種類用意されています。今回は36種の試験のうち、人気のAzureに関する14種の試験と、それによって認定される13種の資格をピックアップしてご紹介します。
※試験の数と資格の数に違いがあるのは、資格のうち1つは試験が2科目あるためです。
他のAssociateレベル試験について詳しくは、次のページをご確認ください。
▶ 参考:認定資格および試験を見る|Microsoft Docs
対象試験 |
【管理者向け】
【開発者向け】
【セキュリティエンジニア向け】
【データサイエンティスト向け】
【データエンジニア向け】
【データベース管理者向け】
【データアナリスト向け】
【ネットワークエンジニア向け】
【AIエンジニア向け】
|
---|---|
試験時間 | 140分 |
出題数 | 40~60問前後(試験により変動あり) |
出題形式 | CBT(選択肢形式、ドロップダウンリスト形式、クリック形式、ドラッグ&ドロップ形式) |
合格ライン | 70%程度 |
前提条件 | 特になし |
履歴書の表記例 | Microsoft認定資格Azure Administrator Associate 取得 |
■ Azure Administrator Associate(AZ-104)の概要
Associateレベルで一番人気である「Azure Administrator Associate(AZ-104)」の、試験範囲と配点をご紹介します。
• Azure ID とガバナンスを管理する(15-20%)
• ストレージの作成と管理(15-20%)
• Azure コンピューティング リソースのデプロイと管理(20-25%)
• 仮想ネットワークの構成と管理(25-30%)
• Azure リソースの監視とバックアップ(10-15%)
参照:試験 AZ-104: Microsoft Azure Administrator|Microsoft Docs
3.3 Microsoft Certified Expert
Microsoft社製品の扱いに長け、さらに専門性を高めたい段階の方に向けた試験です。9種類の試験と、8種類の資格が用意されています。
対象試験 |
【管理者向け】
【ソリューションアーキテクト向け】
【開発者向け】
【DevOpsエンジニア向け】
【機能コンサルタント向け】
|
---|---|
試験時間 | 180分 |
出題数 | 60問前後(試験により変動あり) |
出題形式 | CBT(選択肢形式、ドロップダウンリスト形式、クリック形式、ドラッグ&ドロップ形式) |
合格ライン | 70%程度 |
前提条件 | 特になし |
履歴書の表記例 | Microsoft認定資格Azure Solutions Architect Expert 取得 |
■ Azure Solutions Architect Expert(AZ-305)の概要
Expertレベルで一番人気である「Azure Solutions Architect Expert(AZ-305)」の、試験範囲と配点をご紹介します。
• ID、ガバナンス、および監視ソリューションを設計する(25-30%)
• データ ストレージ ソリューションを設計する(25-30%)
• ビジネス継続性ソリューションを設計する(10-15%)
• インフラストラクチャ ソリューションを設計する(25-30%)
参照:試験 AZ-305: Microsoft Azure Infrastructure Solutions の設計|Microsoft Docs
4. 試験の申し込み・日程・会場と受験料
「マイクロソフト認定資格プログラム」は試験日程や試験会場の指定はなく、自分にとって「都合のいい日」に「都合のいい場所」で、いつでも受験することが可能です(ただし選択した会場が営業日でなければ指定不可)。
4.1 試験日・試験会場・合格発表
申し込み受付期間 | 試験の数か月前~当日 ※選択した試験会場による |
---|---|
試験日 | 随時 ※選択した試験会場による |
試験会場 |
会場試験:全国のピアソンVUE公認試験会場 【試験会場(テストセンター)一覧】 |
合格発表 | 試験終了後 即時 |
申し込みは、ピアソンVUE社の以下のページから行います。
▶ マイクロソフト認定資格|ピアソンVUE
4.2 受験料(受験バウチャー料金)
受験料は下表の通りで、同じ金額の科目のバウチャーは共通です。かつてMCPは全て同額でしたが、新体系のFundamentalsには安価な料金が設定され、より受験しやすくなりました。学生の方であれば、よりお得に受験可能な学割も用意されています。
試験レベル | 受験料(一般) | 受験料(学割) |
---|---|---|
Fundamentals | 12,500円(税抜) | 7,000円(税抜) |
Associate
Expert |
21,103円(税抜) | 11,607円(税抜) |
受験料は1科目ぶんの料金です。認定に複数科目の試験に合格する必要がある場合、必要な科目ぶんの受験バウチャー購入が必要です。例えば2科目の試験合格で認定される資格の場合、認定に要する費用は42,206円です。
5. 受験料節約にバウチャー割引制度を活用しよう
資格体系の変更により、初級レベルのFundamentalsについては1科目12,500円と、以前よりも少し安価に受験することができるようになりました。とはいえ高額なことに変わりはなく、よほど自信がなければ受験に二の足を踏んでしまう方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが、受験バウチャーの割引、および不合格の場合でも再受験可能となる「Exam Replay」の活用です。
5.1 受験バウチャーの割引
MCPの受験バウチャーは、通常21,103円ですが、マイクロソフト社のラーニングパートナーサイトなどから割引価格で受験バウチャーを購入することが可能です。
また、企業によっては、有効期限が近いチケット限定で、さらに割引して販売している場合もあるので、バウチャー購入の際に一度チェックしてみると、よりお得に購入できるかもしれません。
なおラーニングパートナーは、次の公式ページから探すことができます。2022年6月時点で、日本国内のラーニングパートナーは6社です。
▶ 参考:ラーニング パートナーを探す|Microsoft Docs
5.2 再受験分もセットになった「Exam Replay」
出典:Exam Replay|Microsoft Learning
MCPは自分で試験日を設定できるのが利点でもありますが、もし不合格となった場合を想定し始めてしまうと、もう少し勉強してからにしよう…と、予約そのものを躊躇してしまうことも多々あると思います。
もし不合格となった場合でも、改めてバウチャーを購入することなく再受験することが可能となった、「Exam Replay」というバウチャーがあります。
ただし料金が少し高めに設定されており、料金は3割程アップの「27,500円(税抜)」ですが、キャンペーンでさらに割引になる場合もあります。
例えば2022年6月時点で実施されているキャンペーンでは、25,000円(税抜)で販売しているサイトがありました。上記Microsoft公式ページからExam Replayを販売しているラーニングパートナーのサイトへリンクされているので、バウチャーを購入する際にはチェックしてみてはいかがでしょうか。
6. MCP受験で自分のスキル指標づくりを
ベンダー試験であるMCPは受験料が高額で、気軽な力試しとして使うのは難しい試験です。しかし試験勉強を通して実務の中で身に着けてきた技術の棚卸しを行うことで、新たな発見や長年の疑問の解決にもつながるかもしれません。
井の中の蛙にならないスキル指標づくりのためにも、試しに参考書など一読してみてはいかがでしょうか。
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