ブリッジエンジニアは、オフショア開発では欠かすことのできない存在です。日本企業に代わり海外企業とやり取りをしてくれる強い味方でもあります。本記事ではブリッジエンジニアになるにはどうしたら良いか、また求められる役割やスキル、仕事の魅力を徹底解説しました。
1. ブリッジエンジニア(ブリッジSE)とは
ブリッジエンジニアは、オフショア開発の現場で大きな役割を果たします。ブリッジエンジニアの力量がオフショア開発プロジェクトの成否の鍵とも言えるくらいです。
ブリッジエンジニアとは、海外企業と日本企業の橋渡しをする人、日本企業に代わって海外企業に指示を出し、管理するエンジニアです。BrSEと略されることもあります。システムエンジニア(SE)と比較されることがよくありますが、ブリッジエンジニアの仕事の方がより広範囲に渡ります。
1.1 ブリッジエンジニアの活躍の場であるオフショア開発とは?
ブリッジエンジニアの仕事内容を理解するには、まずはオフショア開発とは何かを知っておく必要があります。
オフショア開発とは、日本企業が海外企業に開発を依頼することです。ちなみにオフショア(off shore)とは沖合を意味する英単語です。
日本のシステム開発現場は、さまざまな問題を抱えています。特に大きいのが、技術者の数が足りない、人件費が高いということです。これらの問題に対するソリューションが、人件費が安く、人材の数が多い海外に開発を依頼するオフショア開発なのです。
一方、似たような言葉で、日本国内で大都市の会社が地方に開発を依頼することをニアショア(near shore)といいます。
1.2 ブリッジエンジニアの役割とは?
ブリッジエンジニアは、日本企業と海外企業の間に入り、双方の調整をします。
日本企業側の指示やシステムの仕様をまちがいなく伝えるのと同時に、海外企業側の進みぐあいや課題を日本側に伝えます。必要に応じて現地エンジニアの技術指導も行うこともあります。
言うなれば、プロジェクトマネージャとシステムエンジニア、開発者たちのメンターを一度に引き受けるといった感じでしょうか。
2. ブリッジエンジニアの仕事内容とは
システム開発全体において、オフショアに開発を依頼するのは、主に開発・テストのフェーズです。よってブリッジエンジニアの仕事内容のベースは、開発やテストが問題なく進むようにフォローすることにあります。
2.1 仕事のやり方、進め方についての説明
通常、プロジェクトが発足したときはプロジェクト実施要領を作ります。この要領の中には、問題発生時のエスカレーションルートや会議体(開催周期や出席者)、課題管理の方法などが書いてあります。各ステークホルダー(利害関係者)は、それを守りつつプロジェクトを進めます。
オフショア開発でも同じなのですが、ブリッジエンジニアはさらに相手国の文化や特性などを理解した上で要領を作成・展開し、メンバーに伝えます。
2.2 プロジェクトの計画・設計書についての説明
プロジェクトのスケジュールとマイルストーンを伝えて、いつまでに何をすべきかを詳細に伝えます。
設計書の実物を見せて、海外企業側が理解できるかどうか、また理解できない点があればどのように改善すべきなのかを決めます。
2.3 進捗・納品物の確認などのスケジュール管理
計画と実績を見てプロジェクトが問題なく進んでいるかを確認し、問題があるなら改善対応をします。成果物を見て品質上の問題がないかを確認するといった品質管理もブリッジエンジニアの重要な仕事です。
2.4 日本企業への業務報告・相談
依頼元である日本企業へ、進捗や品質、発生した課題などを報告します。
内容によっては日本企業へ相談することがあれば、逆に日本企業からの指示や要望を海外企業へ伝えることもあります。このあたり、まさしく「ブリッジ」的な仕事といえますね。
3. ブリッジエンジニアに求められるスキル
これまでに、オフショア開発とはなにか、そしてブリッジエンジニアの仕事内容を見てきました。では、ブリッジエンジニアが仕事を進めるために、どのようなスキルが求められるのかを見ていきましょう。
3.1 高い語学力 ~英語は必須
海外企業と仕事をする以上、英語は必須です。
ブリッジエンジニアはさまざまな国の企業と仕事をします。国ごとに話す言語は異なりますが、英語はやはり世界共通語です。母国語とともに英語を公用語とする国は多数あります。英語さえできれば、多数の言語を学ぶ必要はないのです。
3.2 コミュニケーションスキル
ブリッジエンジニアは、コミュニケーションスキルが大事です。
育った国や文化の違うエンジニアに対し、指示を伝えて理解させて、プロジェクト開発を円滑に進めなくてはなりません。場合によっては、聞き手に徹して現場課題をヒアリングすることもあります。
いくら語学力が優れていて正確な指示を出せたとしても、コミュニケーションスキルが低いと、ブリッジという文字どおりの「単なる橋渡しをするだけの人」になってしまうのです。
3.3 IT技術スキル
ブリッジエンジニアは、当然のことながらエンジニアのスキルが必要です。
システム開発スキルは言うまでもありません。仕様書を理解し、エンジニアのプログラミングスキルにレベルを合わせて説明するには、豊富な開発経験がないとできません。
テストスキルも重要です。効率よくテストを実施しバグを発見する技術、または現場から上がってきたテスト結果から、どのような潜在的な不具合があるかを見抜く洞察力が必要です。
4. ブリッジエンジニアのやりがい
ブリッジエンジニアは「エンジニア」という呼び方はするものの、SEやプログラマ、さらにPLやPMの仕事をします。多数の開発メンバーやステークホルダーをまとめていき、プロジェクトを成功に導くのです。
一方、仕事が広い範囲におよぶということは、それだけ解決すべき問題も広範囲ということです。エンジニアの開発力不足だけでなく、現地エンジニアとのコミュニケーションの問題、予算や進捗などなど、開発に関する問題を一挙に引き受けることになります。
だからこそ、問題を解決しつつプロジェクトが成功したときの喜びはとても大きくなります。成功そのものがうれしいのはもちろん、一緒にやってきたエンジニアの成長を感じる瞬間も最高です。
5. ブリッジエンジニアに求められる人物像
ブリッジエンジニアは、多数の開発メンバーやステークホルダーと一緒に仕事をします。よってコミュニケーション力も重要ですが、さらに「話しやすい人」である必要があります。官僚的な対応、または上から目線的な対応をするような人では務まりません。
問題が発生し原因を追求してみると、原因は根深く広いことがあります。こんなときはブリッジエンジニアが自ら積極的に動き、問題の解決にあたります。よって行動力と責任感が必要です。
海外のエンジニアという以前に外国人とやり取りをする以上、日本人同士のように「思いやり」や「あうんの呼吸」が通じず、さらに日本に馴染みのないその国特有の文化もあるかもしれません。それでもプロジェクトを円滑に進めなくてはなりません。
よって高い語学力だけでなく、海外文化に深い理解が必要です。海外出身者が、自分の生まれ育った国でブリッジエンジニアをすることがあるくらいです。
6.ブリッジエンジニアになるためには
ブリッジエンジニアになるためには、資格よりも実務経験の方が重要です。ブリッジエンジニアは開発者やSEからステップアップした人が多くいることからも分かります。よって、まずは後述するように開発経験とマネジメント経験を積むことが、ブリッジエンジニアになるための王道です。
6.1 システム開発の実務経験を積む
ブリッジエンジニアにとって、実務経験は当たり前ですが重要です。それもシステム開発の上流から下流までの一通りの経験が欲しいところです。
もう少し詳細にいうと、要件定義をもとに機能や仕様の設計、プログラミングやテスト、さらにマネジメント系(進捗管理や課題管理、予算管理など)の経験が必要です。
6.2 プロジェクトマネジメント(PMP)の資格を取得する
プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)という資格をご存知でしょうか?
受験者のプロジェクトマネジメントに関する経験、教育、知識を測り、プロフェッショナルとしての確認を目的として実施されます。
出典:Project Management Institute Japan
この資格を取得すると、プロジェクトマネジメントの知見があることを証明できます。しかもこの資格は国際資格なので、世界を舞台にするブリッジエンジニアにとって最強の武器になります。
ブリッジエンジニアを目指すなら、この資格の取得もぜひ検討なさってください。
6.3 語学力を磨く
当然、ブリッジエンジニアには英語力が必須となります。あまり広く使われていないローカルな言語を持つ国でも、英語を公用語として認めていることがあります。仮にそうでなくても、海外と仕事をする企業ならば、自ずと世界で広く使われている英語を採用します。
ビジネスをする2社間が両方とも英語を公用語としていない、つまり日本の企業と中国語を公用語とする国の企業の間でも、英語でやりとりすることがあります。
以上より、語学力、とりわけ英語が重要なのは言うまでもありません。
7.まとめ
ITエンジニアのキャリアパスはさまざまです。プログラマやテスターからSE、そしてPMやPLへと進みます。
少しでも海外での仕事に興味があったり、語学に自信があったり、またはあなた自身が外国からの帰国子女で、育った国と日本との橋渡しになりたいと思ったのなら、ぜひブリッジエンジニアをキャリアパスの選択肢の1つに加えてください。