AWSは、サーバをはじめとしたインフラ環境に関するサービスを提供するクラウドプロバイダです。クラウドの活用が広がるとともに、AWSを採用する企業や個人も増えています。それに伴い、AWSに関する案件数も増加しています。
本記事ではAWSとは何か、さらに具体的に案件の単価相場はいくらなのか、高単価案件を獲得するにはどうすればよいのかを解説します。
1. AWS案件とは?【種類・単価・需要】
AWSとはAmazon Web Services(アマゾンウェブサービス)のことです。
名前から分かるように、通販でよく知られたAmazonのインフラから生まれたサービスです。
従来はサーバやネットワークなどのインフラを自前で構築・管理するのが普通でした。これをオンプレミスといいます。
AWSは、これらのインフラをブラウザ上からで構築できるサービスなのです。
AWSはインフラ構築だけでなく、機械学習やAIに関連するサービスも豊富に提供しています。
よってインフラエンジニアはもちろん、AIや機械学習に関するエンジニアもAWSを活用しているのです。
参照元:AWS公式
本記事では、AWS案件の種類や単価、需要を解説していきます。
1.1 AWS案件の種類
AWSの主なサービスは、サーバやネットワークなどのインフラの提供です。
AWS案件の内容を大きく分けると、以下のようになります。
オンプレミス環境のリプレイス
オンプレミスで構築したシステムは、稼働し続けるとサーバやネットワーク機器が老朽化します。また機器を設置するスペースや機器の騒音の問題、電気料金や機器のメンテナンス費用などのランニングコストも課題です。
これらの問題を解決できる、有力な技術の1つがAWSなのです。
よって、オンプレミス環境をAWSへ移行する案件があります。
新たなWebアプリケーション開発
Webアプリケーションの環境を、新たにAWS上に構築する案件です。
以下の記事に、フリーランス向けAWS案件の特徴を、さらに詳しく知ることができます。
1.2 AWS案件の単価相場
AWSは、従来はとても大変だったインフラ作業、例えばサーバの起動や停止、ディスクの着脱などがブラウザ上でとても簡単にできます。
今までのインフラ系技術者が持つ技術とは別に、AWS、さらにいうとクラウドならではの技術が必要になるのです。
よって、AWS案件の単価は従来のインフラ系案件より高めです。
弊社の単価相場でもこの傾向は出ており、AWS案件の単価相場は4年以上の経験で月81万円です。
比較して、AWSの技術が必要のないインフラ案件は月65万円です。
さらに詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
1.3 AWS案件の市場動向・需要
アメリカにおける市場動向を見てみましょう。
求人サイトIndeed.comのデータによると、2015~2019年の5年間で、テクニカル系案件におけるAWSのシェアは418%増加しました。2019年のIT系求人全体の14%がAWSの技術を必要としています。
参照元:ZDNet Japan/Indeed Hiring Lab
ここまで案件数が急増した理由は、2つあります。
1.3.1 データサイエンティストへのニーズ
データサイエンティストとは、大量のデータを収集・分析してその結果から新たにビジネスを提案するエンジニアです。
近年、AIや機械学習の活用が広がるとともに、データサイエンティストへのニーズが拡大しています。
AWSは収集したデータの蓄積、機械学習モデルの実装やチューニングといった、データサイエンティストの仕事を支援するサービスが多数あります。
データサイエンティストはこれらのサービスを使い、AWS上で簡単にモデルが構築できるのです。
データサイエンティストへのニーズの増加が、AWSの求人数増加に追い風となりました。
詳しくは、AWSの機械学習のサービス「SageMaker」を参照してください。
1.3.2 DevOpsの広がり
従来はシステムの開発と運用は全く別物という扱いでした。
2. 運用担当でまとめた要件を開発にフィードバック
3. 開発担当は要件に基づく開発を実施、環境へ反映
従来の開発と運用は別という考え方が「運用担当が開発担当へうまく要件を伝えられなかった」「開発担当が作ったものは運用しづらい仕様になった」という問題が生じる原因になりました。
これらの問題を解決するために、開発と運用をより一体的に考えて、素早く品質の高いソフトウェアを提供する、その考え方がDevOpsなのです。
AWSはCloudWatch(モニタリング)やCodePipeline(本番反映の自動化)などのDevOpsを実現するサービスを多く提供しています。DevOpsの考え方が広まるにつれて、AWSの需要が高まるのはある意味自然なことなのです。
DevOpsをもっとよく知りたい方は、AWSの公式ページに分かりやすい説明があるのでご覧ください。
2. AWSの特徴
オンプレミスとAWSを比較すると、AWSは低価格と柔軟性という面で優れているのが分かります。
AWSは、これらの優位性からオンプレミスにない以下の2つの特徴を持っています。AWSの案件を知るためにもこの2つの特徴を押さえておきましょう。
2.1 低価格のためスタートアップでの採用例が多い
AWSは初期費用がゼロです。
利用するためはにユーザ登録が必要ですが、年会費や固定の料金は一切発生しません。
AWSは初期費用ゼロで構築したり、構築後も変更するのが簡単です。
この手軽さが理由で、スモールスタートや柔軟さを求めるスタートアップ企業で多く採用されています。
スマートフォン向けニュース配信サイト「SmartNews」を運営するスマートニュース株式会社は、創業当初からAWSを活用しています。企業規模の拡大に合わせて柔軟に対応できるAWSの特性を最大限に活用しています。
ウェルスナビ株式会社は、金融とITを統合したサービスを提供しています。先進的なサービスを提供するととも、顧客の資産情報を管理するのでセキュリティにも十分配慮が必要な同社は、要求を全て満たすAWSを活用しています。
2.2 インフラをオンプレミスからAWSに置き換える案件も増加
AWSが誕生する前は、自前でインフラを構築するオンプレミスが一般的でした。
オンプレミスで構築すると、全て思い通りに構築できて、稼働後もコントロールしやすいというメリットがありました。
しかし、オンプレミスには以下のようなデメリットもあります。
2. インフラを柔軟に変更できない
3. エンジニアがインフラ管理に労力を奪われる
参照元:既存システムをAWSに載せ替える|IT Leaders
オンプレミスでインフラを運用していた企業も、上記のデメリットを解消するために順次AWSに置き換えています。
よって、AWSへインフラを移行する案件が増加しています。
3. 【詳細】AWS案件の単価相場
AWS案件の単価相場はどれくらいでしょうか?
弊社の案件情報から、経験年数別の単価相場をまとめました。
3.1 経験年数別単価相場詳細
弊社のAWS案件から経験年数別の単価相場をまとめてみると、次の通りとなります。
0年経験(1年生) | ~45万前後 |
---|---|
1年経験(2年生) | 50万~55万 |
2年経験(3年生) | 55万~60万 |
3年経験(4年生) | 60万~65万 |
4年以上 | 60万以上 |
参照元:フリーランス向けAWS案件の単価相場|プロエンジニア
経験が浅いと単価が安いのはどの職種でもそうなのですが、AWS特有の理由があります。
先ほど述べたとおり、AWS案件はオンプレミスからの置き換えが多いです。
置き換えの時には、以下の作業が発生します。
・利用状況を分析する
・どのAWSのサービスを採用するかを決定する
さらに置き換えの作業をする時、システム停止時間を最短にするにはどのような作業手順にするべきかを検討しなければいけません。
AWS運用の経験が少ないと、これらに対応することができないケースが少なくありません。
よって経験値が少ないうちは、案件単価も低めになりやすいです。
4. AWS案件の今後の動向
株式会社MM総研の「2019年国内クラウドサービス需要動向調査」によると、クラウド全体に以下のような動向があります。
・パブリッククラウド(※2)の成長率が加速
(※1)企業内クラウド環境。オンプレミスで構築した企業内インフラ環境ともいえる。
(※2)多数の利用ユーザが同居するオープンなクラウド環境。AWSはこちらに該当。
参照元:2019年国内クラウドサービス需要動向調査|MMRI
この2点から分かるのは、今後もオンプレミスからクラウドへ移行する傾向が続くということです。
さらに同調査によると、この傾向は2023年までは続きます。
PaaS/IaaS(※3)全体では、約半数の利用者がAWSを選択しています。
(※3)参考:クラウドコンピューティングのタイプ|AWS公式
以上を総括してみると、今後AWSの利用者数はまだまだ伸びることが予想されます。
この影響を受けて、AWS案件は当面増加するといえるでしょう。
5. AWS案件で高単価案件を獲得するには?
従来のインフラ技術だけでは、AWS案件で高単価の案件を獲得するのは困難です。
今まで見てきたAWS案件の傾向や、AWSとオンプレミスの違いを意識しましょう。
すると、従来の技術に加えてどのような知識や技術があれば高単価案件が獲得できるのかが見えてきます。
大きく分けて、以下の2つです。
5.1 AWSに関する専門的なスキル
AWSの専門的なスキルを習得するには、ただやみくもに学習し続けるだけでなく、体系的に学習した方が効率的です。そのためには、AWS認定試験に挑戦することをお勧めします。
AWS認定試験は、難易度的に簡単な方から以下のレベルがあります。
(半年程度の基礎的なAWS経験者レベル)
2. アソシエイトレベル
(1年程度のAWS経験レベル)
3. プロフェッショナルレベル
(2年程度のAWS経験レベル)
当面はまずプロフェッショナルレベルを目指すとよいでしょう。そこに到達すると、さらに専門知識が問われる5種類の専門分野があります。高単価案件を獲得するために、ぜひチャレンジしてください。
AWS認定試験の詳細は、以下をご覧ください。
5.2 オンプレミスを含むITインフラ全般の知識
先ほど述べたとおり、AWS案件の多くはオンプレミスからAWSへの移行です。
移行するということは、移行前のサーバやハードウェアの状態を詳しく調べて、構成や状態を知る必要があります。
そのためには、サーバに関する以下の知識が必要です。
・サーバのハードウェア(CPUやストレージなど)の知識
・サーバのパフォーマンスを解析する知識やノウハウ
加えて、ITインフラ全体(Webやデータベース、セキュリティの知識など)の知識や技術を全て持っていると、現状を詳しく知り、AWSのサービスを適切に選択することができます。
5.3 ネットワーク技術に関する知識
上記 5.2 に加えて、さらにネットワークの技術が必要です。
具体的にいうと、ルーティングやNAT、ネットワーク設計、セキュリティ関連知識となります。
ネットワーク技術を駆使して現状と課題を調査することにより、AWS上にどのようなネットワーク構成を構築するのかが設計できます。
6. まとめ
元々はAmazonのインフラエンジニアの負担を軽減するために生まれたAWSが、現在はIT業界の大きな流れの一つになっています。この流れは今後さらに大きくなるでしょう。
AWSはインフラの提供だけでなく、AIや機械学習も提供しています。よってインフラエンジニアだけでなく、アプリエンジニアも注目しておく必要があります。
AWSがさらに発展すれば、当然案件数も増えます。今のうちにAWSとは何かを知り、学習を始めておきましょう。