SIerで働いている、面白くない、コーディングができなくてつまらないと感じているSE(システムエンジニア)の人の悩みを解決します。SIerはプロジェクトが分業化・外注化されており、場合によってはエンジニアとしてのキャリアパスを描きづらいケースがあります。今回は、SIerが「面白くない」「つまらない」という原因や、解決するための対処法を解説します。
1. SIer業界が「つまらない」「面白くない」と言われる理由
SIer業界が「つまらない」「面白くない」と言われる理由は様々な原因があります。
例えば、
・コーディングの機会が少ない
・メイン業務がExcel・PowerPointのドキュメント作成になりがち
・自社サービス開発をしない
・社内文化が「減点主義」であるケースが多い
・「エンジニア」「プログラマー」としてのキャリアパスが描きづらい
・新しいプログラミング言語やフレームワークを導入しづらい
それぞれ詳しく解説します。
1.1 コーディングの機会が少ない
SIerではコーディングの機会が少ないです。
Slerでは、ウォーターフォール開発が主流で、工程・役割ごとにプロジェクトメンバーをアサインします。例えば中規模~大規模案件であれば、要件定義は2名~3名、基本設計は5名、詳細設計は10名、実装・開発は50名といった形で分業化・専業化を行うのが一般的です。セキュリティのみの担当、進捗管理のみの担当というケースもあるため、自分が担当する分野によってはコーディングの機会が少なくなる可能性があります。
SIerでプログラミングができないことによる危険性・問題点については、こちらの記事もどうぞ。
1.2 メイン業務がExcel・PowerPointのドキュメント作成になりがち
SIerでは要件定義・設計をはじめとする上流工程を実施した後、コーディング作業は下請けに外注するケースもあります。上流工程~下流工程まで自社内で一貫して担当するケースは大規模案件では特に少ないです。結果として、経験を積むごとに関わるフェーズが上流に近づき、実際にコーディングする機会は減りやすいと言えます。
入社直後など経験が浅い時期に、下流工程のコーディングの機会は与えられるケースがありますが、だんだんと開発に直接的に携わる機会は減る傾向にあります。よってメイン業務は、上流工程寄りのExcel・パワポのドキュメント作成になりがちになり、プログラミングをやりたいエンジニアにとっては退屈しやすい環境になることは少なくありません。
1.3 自社サービス開発をしない
SIerは官公庁や医療機関、金融機関など堅牢性が要求され、なおかつ開発規模が大きい案件を安定的に受注しているケースが多いです。実際の開発は分業かつウォーターフォール開発のため、自社サービス開発は基本的に行わず、アジャイルのようなPDCAサイクルやスピーディーなリリースも行いません。新たなサービスのアイデアを出して、実装し、実際のユーザーの反応を見て改善するといったプロセスを経験することがしづらいです。
1.4 社内文化が「減点主義」であるケースが多い
ウォーターフォール開発の場合、作業が分業かつ一方通行的に進み、外注を交えることもあるため要件変更が発生すると手戻りが大きいです。よって仕事は「新たなアイデアや技術を積極的に評価する」というよりは「ミスや抜け漏れなく、正確に作業すること」が求められます。前例や実績重視で、人事評価も減点主義的になりやすいです。
1.5 「エンジニア」「プログラマー」としてのキャリアパスが描きづらい
SIerで上流工程を担当するエンジニアはソリューションアーキテクトの役割も担うケースがあります。具体的には営業担当に同行して、技術課題のヒアリングや解決策の提案、各種質疑応答を担当するなどが挙げられます。
したがって開発経験が積みづらく、最新の技術にキャッチアップする機会がなくなっていくため、結果としてエンジニアとしての転職・キャリアアップはだんだん難しくなっていきます。
1.6 新しいプログラミング言語やフレームワークを導入しづらい
採用実績が少ない新たなプログラミング言語やフレームワークは、官公庁・インフラ・大企業などの案件で採用されることが比較的少ないです。なぜなら、セキュリティ上の欠陥が発見されたり、バグが起きた際の影響範囲が大きいためなどがあります。
似たような理由で、スクリプト言語も採用されることが少ないです。逆に採用機会が多い言語は、コンパイラ言語。例えば、C、C++、Java、C#などがコンパイラ言語に当たります。コンパイルする際にコンパイラがエラーチェックなどを行ってくれることが、コンパイラ言語の大きなメリットです。Javaはもっとも採用される機会が多い言語の1つになります。
一方でRubyやPythonなどのスクリプト言語は、ベンチャーやスタートアップでは採用されることが多いです。スピーディーな開発ができて、ライブラリも日々増えています。SIerではこれらのベンチャーやスタートアップで人気の言語やフレームワークを使用しづらいため、エンジニアにとっては「面白くない」と感じてしまう場面も多いです。
2. SIerで働くことで「面白い」「やりがいがある」と感じる人もいる
中にはSIerで働くことで「面白い」「やりがいがある」と感じる人もいます。
例えば、
・金融系・交通系の大規模システム開発のマネジメントに関心がある人
・営業・マネジメント・社内調整が苦にならない人
・自社サービス開発にこだわりがない人
などが挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
2.1 金融系・交通系の大規模システム開発のマネジメントに関心がある人
金融系・交通系の大規模システム開発のマネジメントに関心がある人はSIerに向いていると言えます。SIerは官公庁や医療機関、金融機関など堅牢性が要求され、なおかつ開発規模が大きい案件を安定的に受注しているケースが多いです。分業かつウォーターフォール開発のため、事業会社のようなアジャイル開発のスピード感やPDCAサイクルを回す経験は積みづらいですが、安定的に開発に携われることは経験になるでしょう。
2.2 営業・マネジメント・社内調整が苦にならない人
営業・マネジメント・社内調整が苦にならない人もSIerに向いていると言えます。プロジェクトマネージャ志向が強い人にとっては、プログラミングスキルをベースに、セールスやプレゼンテーション、プロジェクトマネジメント、進捗管理など汎用性の高いビジネススキルを身につけられる環境なため、面白いと感じるでしょう。
「プログラミングは好きだが、プログラミングを生涯の仕事として一生技術を磨き続けたいか」というとそれほどでもない、という人にとってはプログラミング+アルファのスキルを早くから磨ける環境と言えます。
2.3 自社サービス開発にこだわりがない人
自社サービスをスピーディーにPDCAを回しながら開発したい人には退屈な環境ですが、こだわりがないならばインフラなどに深く関わったシステムを安定的に受注し、開発できるという意味でやりがいを感じられるでしょう。
3. SIerで働くことで「つまらない」と感じたらどうすればいい?
SIerで働くことで「つまらない」と感じたらどうすればいいのでしょうか。
例えば、
・つまらないと感じる理由を言語化する
・「今の仕事を面白くすることはできないか」を考える
・「仕事は仕事」と割り切れないかを検討する
・個人開発や副業にチャレンジしてみる
・転職・独立する
このように、さまざまな視点から物事を考えてみることが大切です。
3.1 つまらないと感じる理由を言語化する
仕事がつまらないのは「仕事そのものがつまらない」のか、それとも「自分がスキル不足でやりがいがあるようなポジションの仕事を任せられていないだけなのか」それとも「自分の体調や精神状態に起因しているのか」など1つ1つ考え、理由を言語化することをおすすめします。
言語化しきれないままに勢いでやめたり、転職するとやめた後のキャリア形成で行き詰まったり後悔する原因になるので、まずはつまらないと感じる理由を言語化してみましょう。
3.2 「今の仕事を面白くすることはできないか」を考える
自分のスキル不足が理由で、責任ある仕事を任されていないだけで「退屈な仕事しか任されていないから面白くない」ということも多いです。今の仕事を面白くすることはできないかを検討したり、上司と相談してみると改善する場合もあるので試してみましょう。
3.3 「仕事は仕事」と割り切れないかを検討する
仕事は面白いに越したことはありませんが、一方で退屈だとしても「大規模案件を安定的に受注できる」のはとても価値がある貴重な経験でもあります。仕事は仕事と割り切ることも大切です。この場合、知的好奇心は個人開発や副業で満たしていくのも良いでしょう。
3.4 個人開発や副業にチャレンジしてみる
仕事で使えないスクリプト言語やフレームワークにチャレンジして、それらを活用して副収入を得ることも良いでしょう。現在ではクラウドソーシングの普及により、パソコンがあれば誰でも簡単に副業できるようになりました。クラウドソーシングとは、企業と個人がマッチングするサービスのことで、国が副業を勧めていることもあり、年々利用者が伸びてきているサービスです。
3.5 転職・独立する
SIerでどうしても満足できなければ、転職・独立も検討してみましょう。人には向き不向きがあります。特にプログラミングをたくさんしたい、自社のサービスを育てていきたいなどの理由であればSIerでは実現することは難しいです。その場合は、Web系の自社開発企業に転職したり、独立してフリーランスとして好きな仕事で食べて行くというのも選択肢の一つです。
4. まとめ
今回は、SIerが「面白くない」「つまらない」という原因や、解決するための対処法を解説しました。
人には向き不向きがあります。SIerは、プログラミングをたくさんしたい、スピーディーな開発をしたい、自社のサービスを育てていきたいと考えている人には向いていません。その一方で、マネジメントや営業に興味がある人、金融系・交通系などの大規模なシステム開発に興味がある人にとっては向いていると言えるでしょう。
本記事をよく読んで、自分がどちらに当てはまるのかを整理して、今後どのようにしていくべきかを考えて頂ければ幸いです。