「RPAという言葉をよく耳にするけど、どんなものなのかわからない」という方も多いでしょう。この記事では、「RPAとは何か?」をわかりやすく解説します。また、AIとの違いやRPAの導入事例も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1. 【初心者向け】RPAとは?
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、人間がパソコン上で行う作業を代わりに行う「業務自動化」を指します。
今回は、RPAでできること・できないことやメリット・デメリットを解説します。RPAに興味がある方はぜひ参考にしてください。
1.1 RPAの定義
RPAとは、今まで人間のみが行えた手作業やある程度高度な判断が必要な作業を、人間に代わってロボットが代行することです。
総務省によると大手都市銀行でRPAを導入したところ、年間8,000時間相当の事務処理削減効果が達成されたとのこと。単純作業のRPAへの置き換えは業種を問わず、多くの事業者の間で広がりつつあります。
RPAが行える機能としては次の機能があります。
• コンピューターの画面操作を自動化
• コンピューターのディスプレイに表示された画面の文字や図形・色の判別
• 他システムとのデータ連携
• 業務に合わせた柔軟なカスタマイズ
• 条件分岐設定やAIなどによるエラー判定と自動応答
• アプリケーションの起動・終了
• 処理にスケジュールを設定でき、設定通りに自動実行
• 大量データの整理や分析
• プログラミングをせずに業務手順を設定
参照:RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)|総務省
1.1.1 RPAのクラス
RPAで自動化する業務は3つのレベルに分類されます。
クラス | 主な業務範囲 | 具体的な作業範囲 |
---|---|---|
クラス1 | 定型業務の自動化 | 情報取得や入力作業、検証作業などの定型的な作業 |
クラス2 | 一部非定型業務の自動化 | RPAとAIの技術を用いることにより非定型作業の自動化 |
クラス3 | 高度な自律化 | プロセスの分析や改善、意思決定までを自ら自動化するとともに、意思決定 |
参照:RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)|総務省
クラス2以上の業務を自動化する場合、RPAだけではなく、AI(人工知能)やディープラーニングなどの技術を利用することが不可欠です。
1.1.2 RPAとマクロの違い
業務を自動化するときにExcelのマクロを利用する方も多いでしょう。RPAとExcelのマクロでどのような違いがあるのか、表にまとめました。
RPA | マクロ | |
---|---|---|
データの集計 | ◎ | ◎ |
グラフの作成 | ◎ | ◎ |
グラフや表の印刷 | ◎ | ◎ |
Microsoft Officeを利用した文書の作成 | ◎ | 〇 |
フォルダの作成 | ◎ | 〇 |
メールの受信 | ◎ | 〇 |
Webページからの情報取得 | ◎ | 〇 |
会計ソフトなどの他システム連携 | ◎ | 〇 |
自動化の範囲 | 広い
(パソコン上の操作全般を自動化可能) |
狭い
(Microsoft Office製品のみ自動化可能) |
非定型業務の効率化 | AIなどとの連携により可能 | 不可能 |
大量のデータ処理 | 速い | 遅い |
プログラミングスキル | 不要
(プログラミングの考え方への理解は必要) |
VBAのプログラミングスキルが必要 |
上記の表を見ていただくと、RPAの方が自動化できる範囲が広いことがわかるかと思います。また、RPAはプログラミングの考え方を理解する必要はありますが、マクロとは異なり、プログラミング自体は不要というところが特徴的です。
1.1.3 RPAとAI(人工知能)の違い
RPAとAI(人工知能)は一緒に耳にすることが多く、混乱する方もいるでしょう。結論から言えば、人間の体に例えるとRPAは手足で、AI(人工知能)は頭脳と言えるでしょう。
RPAとは手作業で行っていたパソコン操作を記録しておき、日次や月次など決まったタイミングで記録した操作を自動実行するツールです。一方、AI(人工知能)は人間の代わりに物事を判断するツールです。
1.2 RPAの主な用途
RPAは2017年ごろから金融機関で積極的に導入が進んでいるツールです。
金融機関での導入例には、以下のようなものがあります。
概要 | 内容 | 労働時間の削減効果 |
---|---|---|
地方金融機関での税務調査向け提出書類の自動作成 | 税務署から定期的に税務調査書類の提出が依頼されるため、RPAで提出書類を自動作成
複数のデータベースから口座情報や取引情報を取得し、書類に転記する作業をRPAに置き換えた |
年間15,000時間のスタッフの労働時間の削減効果を実現 |
大手リース会社の融資審査資料のドラフトを自動作成 | 決算書情報や貸出実績などの情報が複数のデータベースにあり、それぞれのデータベースからデータを検索し、融資審査資料にまとめ、社内で承認を得る工程をRPAで自動化 | ・年間3,000~4,000時間ものスタッフの労働時間を削減できた
・融資判断に必要な分析に専念でき、質の高い融資判断ができるようになった ・書類作成時間が短縮できたことで、融資決定までの期間が短くなった |
1.2.1 RPAと働き方改革の関係
RPAは働き方改革を促進するツールとして注目されています。
従来のRPAの導入目的は人が足りないため、業務を自動化し、残業抑制することにありました。また、スタッフの労働時間が削減されることで、スタッフにかかっていたコストを1台のRPAのコストに圧縮する、コスト削減と自動化の実現を目指すことが多かったです。
しかし、最近ではコスト削減よりも人手不足の解消を目的とした自動化に重きを置いた導入事例が目立ってきました。RPAやAIを使い、人にかわりテクノロジーが働き手となり、業務を行うデジタルレイバーという考え方が広まりつつあります。
2. RPAでできること・できないこと
ここまでの説明で、RPAは便利で何でもできそうに感じている方もいるでしょう。しかし、RPAもまだまだ不完全なツールのため、できることとできないことがあります。
ここでは、RPAができること・できないことに焦点を当てて解説します。
2.1 【できること】生産性向上
RPAはスピーディーで正確に作業を行えるため、スタッフは判断やクリエイティブな付加価値の高い仕事に集中できます。
また、作業に時間がかかるなどの理由から余りできなかった業務を頻繁に行えたり、属人的になっていた業務をRPA化することで引継ぎにかかる時間を短縮したりすることが可能です。
2.2 【できること】労働環境改善・コスト削減
労働環境改善やコスト削減です。RPAが業務を代わりに行うことでスタッフの労働時間が削減でき、時間外・休日労働を削減できます。
また、単純作業はRPAに任せることで単純作業にかかっていた人件費やアウトソーシング費を押さえられます。ひいては、将来見込まれる労働力の減少に対応していくことも可能でしょう。
2.3 【できること】人的ミス防止
単純作業や繰り返し作業で起こりがちなヒューマンエラーを撲滅できることです。RPAは機械のため、ツールや設定に不備がない限り、ミスを起こしません。
そのため、人的ミスを防止することが可能です。また、RPAに単純作業や繰り返し作業を任せることで、担当者の作業の正確性や締め切りといった精神的なストレスからも解放できます。
2.4 【できること】テレワーク促進
RPAに社内でしかアクセスできない情報を収集・記入を任せ、スタッフは必要な箇所の記入をするときだけ出社するといった業務の分担を行うことで、RPAを活用したテレワーク推進が可能です。
2.5 【できないこと】非定型業務
RPAはルール化されていない業務に不向きです。
ルール化されていない業務とは次の業務をいいます。
• 作業を進める際に複雑な判断が必要な業務
• デザイン変更が頻繁に起こるWebサイトを利用した業務
• 画面構成が複雑なアプリケーションを利用した業務
上記のような業務はさまざまな判断が必要となり、RPAでは複数の判断を下しながら作業を進められないため、できないこととなります。
2.6 【できないこと】人間の頭脳の代替
次にRPAができないことは人間の頭脳の代替です。RPAはあくまで決められた作業を自動化するツールのため、人間のような非定型作業への柔軟な対応や高度な判断はできません。
人間のように判断するにはAI(人工知能)が必要です。RPAはAI(人工知能)と組合せることで、AI(人工知能)が高度な判断を行い、RPAを手足のように動かすことは可能です。
3. RPAの導入メリット・デメリット
RPAを導入した場合のメリットとデメリットについて解説します。
3.1 【メリット】従来のマクロよりも自動化の範囲が広い
まずRPAにはExcelのマクロに比べて、自動化できる範囲が広いというメリットがあります。
Excelのマクロが自動化できる範囲はMicrosoft Office製品と限定的でしたが、RPAではパソコン上の操作全般を自動化することが可能です。
また、Excelのマクロに比べて、大量データの処理をパソコンのスペックに関わらず、高速で処理することが可能です。
3.2 【メリット】非エンジニアでも業務自動化を行いやすい
次にRPAは非エンジニアでも業務の自動化が行いやすいというメリットがあります。RPAによる業務の自動化にはプログラミングは不要です。変数や繰り返し処理などのプログラミングの知識は必要ですが、業務の自動化は設定だけで実現できます。
また、プログラミング不要で業務を自動化できるというメリットは、内製化するハードルが低いともいえます。
3.3 【デメリット】シナリオ作成やデバッグにエンジニアの稼働が必要となることも多い
RPA製品の多くは変数や繰り返し処理といったプログラミング知識が必要とされます。プログラミング知識がないまま、RPAに作業を自動で行わせるシナリオの作成で複雑な作業はできません。
また、作成したシナリオがうまく動作しなかった場合、シナリオをデバックして正常に動作するように変更する必要があります。デバック作業を非エンジニアが行うことは非常に難しいです。
そのため、RPAのシナリオ作成にはエンジニアの稼働が必要になるケーズが多いという現状があります。
3.4 【デメリット】RPAに適した「大量の定型業務」があまりないことも
RPAが得意とする決まったサイクル(日次・月次)の定型業務で大量な処理件数がある業務は多くないケースがあります。どちらかというと、不定期にその都度判断が必要で大量の処理件数の業務を抱える企業が多いです。
RPAのできることを理解せずに導入すると、RPAで自動化できると思ったが出来ず、導入コストのわりに自動化できないという事態になる可能性があります。
RPAの導入を検討する時点で、自動化できる業務はどれくらいあるのか、把握した方がいいでしょう。
4. 【無料・有料】RPAの代表的なツール
RPAの代表的なツールを無料ツールから有料ツールまで紹介します。RPAを構築して、動作を確認してみたい方は、ぜひ参考にしてください。
4.1 【無料】Power Automate Desktop
<概要>
Microsoft社が提供するブラウザやデスクトップアプリの操作自動化、Python スクリプトの実行やAIとの連携などが行えるRPAツールです。日本語にローカライズされておりWindows10ユーザは追加必要なしで利用できます。
<ダウンロードリンク>
▸ ダウンロード(exeファイルのダウンロードが開始します)
<動作環境>
• Windows 10 Home
• Windows 10 Pro
• Windows 10 Enterprise
• Windows Server 2016、または Windows Server 2019 を実行するデバイス
<インストール手順>
インストール手順を知りたい方はこちらのURLよりご確認ください。
▸ ご利用のデバイスに Power Automate Desktop をインストールする
<価格>
Windows10の場合、無料
<問い合わせ>
▸ Contact a Power Automate sales specialist
4.2 【有料】UiPath
出典:UiPath
<概要>
400種類以上のアクティビティ(命令)が用意され、設定でさまざまな業務アプリケーションに対応するシナリオを作成できます。また、アクティビティもカスタマイズ開発可能です。
<ダウンロードリンク>
▸ 無料トライアル
<動作環境>
動作環境を知りたい方はこちらのURLよりご確認ください。
▸ Hardware and Software Requirements
<インストール手順>
インストール手順を知りたい方はこちらのURLよりご確認ください。
▸ UiPath Process Mining インストールガイド v2020.4対応版
<価格>
価格を知りたい方は以下のURLよりお問合せください。
▸ お問い合せ
<問い合わせ>
▸ お問い合せ
4.3 【有料】WinActor
出典:WinActor
<概要>
WinActorは、NTTデータの研究所で開発された国産RPAツールです。Windows端末のあらゆるアプリケーション操作をシナリオとして設定でき、自動実行できます。
GUIが完備されているので、プログラミング不要で直感的に操作可能です。また、国産RPAツールのため、完全日本語対応しています。
<ダウンロードリンク>
▸ WinActor製品価格・資料データダウンロードフォーム
<動作環境>
動作環境を知りたい方はこちらのURLよりご確認ください。
▸ WinActorの価格と製品形態
<インストール手順>
インストール手順を知りたい方はこちらのURLより製造元にお問い合わせください。
▸ お問い合わせ
<価格>
価格を知りたい方はこちらのURLよりご確認ください。
▸ WinActorの価格と製品形態
<問い合わせ>
▸ お問い合わせ
5. 【エンジニア向け】RPA案件の概要・傾向・相場
RPA案件は、導入段階のコンサルティング業務から構築済みのRPAの運用保守などがあります。
RPA案件のフリーランスの相場は月収およそ40~60万円です。導入段階のコンサルティング業務を行う場合単価がやや高くなる傾向がある一方、運用・保守のみを行う場合単価が低くなる傾向があります。
全社的な業務の整理や見直しなどの全体的なコンサルティングを行う場合、月収70万円以上の単価を狙うことも可能です。
RPA市場は、「幻滅期」と呼ばれる期待した結果がでず、関心が薄れる時期に入っており、導入をためらう企業が増える可能性があり、RPAだけで生計を立てるのはリスクのある選択でしょう。
ただし、これから新たなRPAツールが登場することで市場が好転する可能性もあります。
RPA案件についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご参考にしてください。
6. まとめ
RPAとは、人間がパソコン上で行う作業を代わりに行う自動化ツールです。働き方改革の後押しや少子高齢化による人口減少に対応するツールとして期待されています。
RPAは非エンジニアでも業務を自動化しやすい一方で、少し複雑な業務ではエンジニアの稼働がかかることが多く、エンジニアの存在は欠かせません。
RPAには無料のツールもあります。RPAに興味が湧いた方は、ぜひインストールして、動作を確認してみてください。