目次
2016年6月17日、ダイソン株式会社の半蔵門オフィスにて、「2013年JDA国際準優秀賞受賞のexiiiメンバーがあなたの応募をサポートします!~デザインエンジニアのキャリアに興味のある人集まれ!!~」と題したイベントが開催されました(https://www.facebook.com/events/286227801722176/)。
こちらのイベントは、一般財団法人ジェームズ ダイソン財団ジャパン(http://www.jamesdysonfoundation.jp/)の主催によるものです。ジェームズ ダイソン財団は、ダイソン株式会社が提携する、次世代のエンジニアの育成を目的とした活動をする教育慈善団体で、日本では2006年より活動をしていて、同年3月に一般財団法人として設立されました。 財団では、プロダクトデザインやエンジニアリングを学ぶ学生や若手を対象とした「ジェームズ ダイソン アワード」(James Dyson Award,JDA)という、問題発見と問題解決を革新的なアイディアで表現することをテーマとした国際エンジニアリングアワードを開催しており、今では日本を含めた世界22ヶ国で展開され、世界中から約1,000の作品が集まります。
今回のイベントの目的は、アワードの締切りが7月19日に迫った中、アワードへのエントリーを計画中の方や作品のブラッシュアップをしたいと思っている方、いつかアワードにエントリーをしたいと思っている方に、2013年JDA国際準優秀賞を受賞し、JDA 2016オフィシャルアンバサダーでもあるexiii(イクシ―)(http://exiii.jp/index.html)のメンバーや、国内審査委員であるフリージャーナリスト・コンサルタントの林信行さん、財団の方々が相談やアドバイスといったサポートをするというもの。 ダイソンの半蔵門のオフィスには、熱い想いを持った若手の方々が、数多く集まっていました。
1. exiiiの想い 大切なのは「問題設定をどうするか」
まずオープニングにて、英国本社でジェームズ ダイソン アワードを統括しているRobyn Skeltonさんより、TV電話を通して参加者の皆さんにメッセージが送られました。 これまで過去にエントリーのあった作品を紹介しつつ、話されたことは、まずは「何が問題なのかを明確にすること」。そしてそれを解決する「デザインをVisable(実現可能)にすること」。また「周りの環境に与えるインパクトを考えること」も重要だといいます。 最後に、そのデザインが形になったら、初めから完璧なものでなくていいので、写真やビデオを使って是非見せてほしいとエールを送りました。
次に、JDA 2016オフィシャルアンバサダーのexiiiの近藤 玄大さんよりexiiiについて、そして「JDA応募の魅力」についてのプレゼンが行われました。
exiiiは、2014年に近藤さん、山浦さん、小西さんの3名のメンバーによって設立され、残された腕の筋肉の電気信号によって直感的に操作できる筋電義手の開発に取り組んでいます。義手は、従来の物であれば150万円以上するのが普通であり、普及率も1%程度と大変低いのが現状でした。その様な中、exiiiはそれを10分の1程の低価格で販売することを目指しています。また、低価格ということだけでなく、注目すべきはそのコンセプト。「気軽な選択肢」というコンセプトで作られた義手は、ユーザーがファッションアイテムの様に身に付け、また3Dプリンターを使って気軽に作れ、好みでカスタマイズをしたりすることができるようになっています。
近藤さんはまず冒頭で、問題解決力というのも大事だけれとも、それと同じように「問題設定力」が大事だと話を始めました。今回のイベントの参加者の学生と話しをする中で、近藤さんは皆が社会の大きな問題を解決しようとすることに意識を向けすぎているのではないかと感じたといいます。でも、いきなり大きなことに取り組もうとするのではなくて、問題には当事者が必ずいるのであり、「まずは当事者の話を素直に聞いて、心のままに感じて解決する」ということが重要なのではないかと伝えました。そしてexiiiは、問題設定を手がないことを障害として隠すのではなく、一つの個性として捉えて、義手によって積極的に表現していくことができるようにする、というものにしたといいます。
協力者のお一人である、事故で腕を失った森川さん。
義手を見た周りの人が話しかけてくれるので、コミュニケーションも生まれるようになったそうです。
もうお一人の協力者である歌手のビュースノ(beautyANDsnow)さん。
生まれつき右手が手首しなかなく、表現に大きな制約を受けていると感じていたそうですが、義手によってパフォーマンスによる豊かな表現が可能になったといいます。
初めに作成した作品は、完成度としてはまだまだだったそうです。ただ、そこから何度もプロトタイプを進化させ、国内審査確定後、国際審査の日まで*最後の最後までブラッシュアップに取り組んだといいます。(*当時のアワード運営方法による)
そして、ジェームズ ダイソン アワードは、彼らにとってきっかけを与えてくれたといいます。そのご縁で、国内審査員である田川欣哉さんや林信行さんが、起業する前も後も相談に乗ってくれ、近藤さんたちが起業するかどうかを考える為にアメリカに渡った際には、Evernoteといった現地のスタートアップを紹介してくれるなどして、サポートをしてくれたといいます。
試行錯誤を繰り返しながら進んでいるexiiiのお話は、イベントに参加した方々に届き、気持を力強く後押ししてくれるものになったのではないかと感じました。
2. 審査で大事なのは「どれ位検証をしているのか」
そして最後に、国内審査員のお一人である林信行さんより、審査で重要となるポイントが伝えられました。林さんいわく、大事なのは「どれ位検証をしているのかどうか」。
まずはしっかりと課題設定をして、そこから技術検証を重ね、裏付けとなる、説得力のある判断材料をどれだけ提出できるかがポイントになってくるといいます。
また、課題を設定するということを、初めから行うことは難しいので、いきなり課題ありきでそこから考えて行動しようとするのではなく、まずは1人でも多くの人たちと話すということをして、そこから課題を見つけてみるといいのではないか、とアドバイスを送りました。
3. 熱い想いを持って、行動を起こす若手の方々
孫 小軍さん
華中科技大学出身の孫さんは、交換留学で日本に来日されたことをきっかけに、修士終了後ソニーに就職。
しかし、孫さん自身が義足をつけていらっしゃるのですが、もっと使いやすい義足を開発したいという想いから、ソニーを退職して東京大学大学院に進学し、現在は情報システム工学研究室にてロボット義足の研究に取り組まれています。これまでの義足は、膝を曲げる際に力が入らない為、交互に階段を上がれない、立ち上がれないという問題があり、孫さんはモーターを含むアクチュエータを義足に組み込むことによって解決しようとしているということです。
現在は義足の開発とブラッシュアップに取り組みつつ、近く特許も申請予定だといいます。
JIANRUNGSANG JIRAPAさん
タイのご出身でご実家が農家であるJIANRUNGSANGさんは、食品廃棄物の問題解決を目指したいといいます。ご実家の農家ではキャベツを作っているとのことなのですが、見栄えの良い形のきれいなものしか出荷しない為、年に約5,000トンものキャベツを廃棄しているといいます。
そこで考えたのが、廃棄される予定だったキャベツを使った「FARM TO PAPER(食べられる紙)」。紙を作る方法と同じように、キャベツをすくことで乾物にし、食材として利用するという方法を生み出しました。この「食べられる紙」は」コニカミノルタ主催のソーシャルデザインアワードで2015のアート部門で見事グランプリを獲得しています。
FARM TO PAPER(食べられる紙)
https://jibjib-design.com/2015/02/04/farm-to-paperedible-paper-design/
ジェームズ ダイソン アワードには、学生、院生、または卒業してから4年以内の若手の方々が応募することができます。賞金もそうですが、何より国際的なアワードである為、世界で評価を得られる可能性があるということと、そこで活躍する人たちと繋がるチャンスがあるということが、一番の魅力ではないかと思います。
アワードに挑戦してみたいと思っている方や、新しいアイディアに興味を持っている方に向け、今後もジェームズ ダイソン アワードと財団のみなさんの取り組みに注目し、その模様を伝えていきたいと思います。