前回の記事、基本情報技術者試験は就職に有利?配点から午前免除方法まで徹底解説では試験の概要についてご説明しました。今回は試験の難易度について、合格率から勉強時間の目安まで詳しくご紹介していきたいと思います。
なお基本情報技術者試験は、2023年4月より試験制度の大幅改訂が予定されています。 2023年度以降の受験を検討している方は、次の記事をご確認ください。
1. 基本情報技術者試験の受験者数と合格率の推移
現行の試験制度となった平成21年以降の推移を表にまとめました。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成21年春期 | 65,407人 | 17,685人 | 27.4% |
平成21年秋期 | 79,829人 | 28,270人 | 35.4% |
平成22年春期 | 65,407人 | 14,489人 | 22.2% |
平成22年秋期 | 73,242人 | 17,129人 | 23.4% |
平成23年春期 | 58,993人 | 14,579人 | 24.7% |
平成23年秋期 | 59,505人 | 15,569人 | 26.2% |
平成24年春期 | 52,582人 | 12,437人 | 23.7% |
平成24年秋期 | 58,905人 | 15,987人 | 27.1% |
平成25年春期 | 46,416人 | 10,674人 | 23.0% |
平成25年秋期 | 55,426人 | 12,274人 | 22.1% |
平成26年春期 | 46,005人 | 11,003人 | 23.9% |
平成26年秋期 | 54,874人 | 12,950人 | 23.6% |
平成27年春期 | 46,874人 | 12,174人 | 26.0% |
平成27年秋期 | 54,347人 | 13,935人 | 25.6% |
平成28年春期 | 44,184人 | 13,418人 | 30.4% |
平成28年秋期 | 55,815人 | 13,173人 | 23.6% |
平成29年春期 | 48,875人 | 10,975人 | 22.5% |
平成29年秋期 | 56,377人 | 12,313人 | 21.8% |
平成30年春期 | 51,377人 | 14,829人 | 28.9% |
平成30年秋期 | 60,004人 | 13,723人 | 22.9% |
平成31年春期 | 54,686人 | 12,155人 | 22.2% |
令和元年度秋期 | 66,870人 | 19,069人 | 28.5% |
令和2年度春期 | 中止 | ||
令和2年度10月 | 52,993人 | 25,499人 | 48.1% |
令和3年度春期 | 32,549人 | 13,544人 | 41.6% |
※平成21年秋期試験は出題ミスによる加点措置あり
ここ数年の受験数は、だいたい5万人前後に落ち着いています。
合格率については10%台だった旧制度時よりアップしており、20~30%程度となっています。
令和2年度春期の中止は、新型コロナウイルス流行の影響です。それ以降の試験については全てCBT方式(試験会場に設置されたPCで解答する)で実施されています。CBT方式となった後の試験については、合格率が40~50%程度に上昇しています。
2. 基本情報技術者試験の難易度と勉強時間
2.1 情報系未経験者の方には少し難しい
難易度はやや高めですが、情報系の勉強が未経験の方でも独学での合格が可能です。 筆者が新人SEの頃、基本情報未合格の同期全員で春期試験を受験しましたが、情報系以外の学科出身者のうち約半数が合格しました。(期間1か月、定時後の自習時間と休日に勉強)
ただしこのケースは、SEになるほど情報系に興味を持っていたメンバーの数字になります。情報系の知識が全くないという方は、3か月~半年以上の勉強時間が必要になるケースが多いようです。
その場合は、手始めにITパスポート試験を受験してみることもおすすめです。ストラテジ系やマネジメント系などはITパスポートの知識がほぼ流用できます。テクノロジ系についてはより深い知識や応用力が必要になりますが、基本情報合格への準備運動に適した内容となっています。
2.2 情報系の勉強をしている方は技術系以外の分野に注意
テクノロジ系については簡単といえる内容ですが、ストラテジ系やマネジメント系などは情報系の学校でも学ばない場合が多いため注意して下さい。
筆者が新人SEの頃同期全員で受験した際には、期間約1か月・定時後と休日の学習で、情報系学科出身者は全員合格しました。就職活動に有効であることから学生のうちに取得する方も多い資格ですので、積極的にチャレンジしてみて下さい。
3. どんな問題が出題されるのか
午前試験の過去問から、8問抜粋してご紹介します。詳細な解説は省略していますが、試験の力試しとイメージ作りにご利用下さい。
【問1】(H24春期 問1)
次の10進小数のうち、8進数に変換したときに有限小数になるものはどれか。
ア:0.3 イ:0.4 ウ:0.5 エ:0.8
【問2】(H27春期 問5)
キューに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア:最後に格納されたデータが最初に取り出される。
イ:最初に格納されたデータが最初に取り出される。
ウ:添字を用いて特定のデータを参照する。
エ:二つ以上のポインタを用いてデータの階層関係を表現する。
【問3】(H25春期 問15)
MTBFが45時間でMTTRが5時間の装置がある。この装置を二つ直列に接続したシステムの稼働率は幾らか。
ア:0.81 イ:0.90 ウ:0.95 エ:0.99
【問4】(H27秋期 問33)
IPv4にはなく、IPv6で追加・変更された仕様はどれか。
ア:アドレス空間として128ビットを割り当てた。
イ:サブネットマスクの導入によって,アドレス空間の有効利用を図った。
ウ:ネットワークアドレスとサブネットマスクの対によってIPアドレスを表現した。
エ:プライベートアドレスの導入によって,IPアドレスの有効利用を図った。
【問5】(H28春期 問39)
公開鍵暗号方式を採用した電子商取引において、認証局(CA)の役割はどれか。
ア:取引当事者間で共有する秘密鍵を管理する。
イ:取引当事者の公開鍵に対するディジタル証明書を発行する。
ウ:取引当事者のディジタル署名を管理する。
エ:取引当事者のパスワードを管理する。
【問6】(H21秋期 問52)
あるシステムを開発するための工数を見積もったところ150人月であった。現在までの投入工数は60人月で、出来高は全体の3割であり、進捗に遅れが生じている。今後も同じ生産性が続くと想定したとき、このシステムの開発を完了させるためには何人月の工数が超過するか。
ア:50 イ:90 ウ:105 エ:140
【問7】(H22春期 問66)
要件定義の段階で行う作業はどれか。
ア:新たに構築する業務とシステムの仕様を明確化し、システム化範囲を明示する。
イ:顧客が記述したニーズに合ったソフトウェアを開発する。
ウ:事業の目的、目標を達成するために必要なシステム化の方針を立案する。
エ:ソフトウェア製品の運用及び利用者に対する運用支援を行う。
【問8】(H26春秋期 問79)
著作権法によるソフトウェアの保護範囲に関する記述のうち、適切なものはどれか。
ア:アプリケーションプログラムは著作権法によって保護されるが、OSなどの基本プログラムは権利の対価がハードウェアの料金に含まれるので、保護されない。
イ:アルゴリズムやプログラム言語は、著作権法によって保護される。
ウ:アルゴリズムを記述した文書は著作権法で保護されるが、プログラムは保護されない。
エ:ソースプログラムとオブジェクトプログラムの両方とも著作権法によって保護される。
【解答】
問1:ウ、問2:イ、問3:ア、問4:ア、問5:イ、問6:ア、問7:ア、問8:エ
4. 基本情報はITエンジニアのスタート地点
基本情報技術者試験の対象者像は「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者(IPA公式より引用)」とされており、ITエンジニアとしてのキャリアのスタートラインに位置づけられた試験です。これからITエンジニアを目指す方はITパスポート試験に留まらず、ぜひ基本情報技術者までの取得を目標としてみて下さい。
次回は基本情報技術者試験の勉強方法について、詳しくご紹介したいと思います。
よければ合わせてご覧下さい。
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