プロジェクトマネージャ試験は、応募総数からの合格者数が10%を切る、超難関の国家試験です。一年に一回しか受験機会がなく、なかなか合格できず困っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、プロジェクトマネージャ試験の勉強方法について、参考書やその他の勉強ツールの情報のほか、試験対策のコツをご紹介しています。論述試験の具体的な攻略法も解説していますので、ぜひご覧ください。
プロジェクトマネージャ試験の概要や難易度が知りたい方は、次の記事もおすすめです。
1. 試験合格に向けて、ステップ別勉強法
1.1 午前対策:免除制度と効率的な学習法
■ 午前1対策:免除対象者と免除申請
4つの試験のうち「午前1試験」については、次の3つのうち、いずれかの条件を満たせば受験が免除になります。
• 応用情報技術者試験に合格
• 他の高度区分試験に合格
• 午前I試験の合格基準点を満たす
有効期限は、2年後の同一時期の試験までです。
午前1の問題は高度区分試験全て共通となっており、応用情報技術者試験の午前問題(小問形式)から30問ピックアップされて出題されます。うち60%ほどをテクノロジ系の問題が占めており、残り40%がマネジメント系とストラテジ系から出題されます。プロジェクトマネージャ試験を受けるレベルの方は心配ない方がほとんどかと思いますが、テクノロジ系も避けては通れないので注意して下さい。
また近年ではセキュリティ関係の問題が重要視されていますので、不安がある場合は重点的に学習を行っておくことがおすすめです。
■ 午前2対策:頻出分野と過去問活用
午前2試験は午前1と同じ小問形式で、25問出題されます。午前1とは違い、同じ高度区分でも試験別に出題内容が変わります。出題される範囲は次の通りで、このうちプロジェクトマネジメント分野については最高難度である「レベル4」が割り当てられています。
◎ | プロジェクトマネジメント |
---|---|
◎ | セキュリティ |
○ | システム開発技術 |
○ | ソフトウェア開発管理技術 |
○ | サービスマネジメント |
○ | システム企画 |
○ | 法務 |
出題配分は、プロジェクトマネジメント分野が例年半分以上を占めています。例えば令和2年度秋期試験では、プロジェクトマネジメント分野から25問中14問出題されています。また近年の出題分野改定でセキュリティ分野が重点出題である「◎」に変更になりましたが、令和2年度の出題は3問です。その他分野はそれぞれ1~2問の出題となっており、プロジェクトマネジメント分野の重要度がかなり高いことに変わりはないようです。
プロジェクトマネージャ試験は歴史が古く、平成6年の旧制度から試験名称が変わっていません。そのため過去問が充実しており、例年再出題が6割以上を占めています。令和2年度は、25問中16問が過去問からの再出題でした(ただし前年度に出題された問題は出題されない傾向あり)。
またニーズに合わせて、新しい用語や概念を問う(新傾向の)問題も出題されます。
他の高度区分試験と重なっている分野については、他区分の午前2試験の過去問から出題されることが多々あります。参考書を利用する場合はほとんどの本が高度区分共通として発売されており、参考書の流れに沿って学習していると自然に他区分の過去問にも触れることになりますが、個人で過去問をダウンロード学習している場合は他区分の過去問もチェックしてみてください。
1.2 午後対策:記述式問題の攻略
■ 午後1対策:短文記述のコツと時間配分
午後からは大問形式で出題され、全3問の中から2問を選択して回答します。試験時間90分に対して問題数2と聞くと楽そうですが、実際にはここから文章問題となり、時間が足りなくなる方も増えてくる内容です。
回答は記述式になりますが、午後1については30文字程度の短い一文で回答が可能な問題となっています。参考書や過去問を学習する際には単語を暗記するのではなく、「なぜここでそうするのか」を考えながら解くよう心がけてみて下さい。
また文章題を解く際のセオリーである「先に設問を読んでから問題文を読む」が、この試験でもとても有効です。午後1試験は問題文中に答えを探すタイプの出題もあり、先に何が必要なのかを考えながら問題を解くことがおすすめです。
■ 午後2対策:論文対策のポイントと構成
大問形式2問から、1問を選択して回答します。午後1と同じ記述式ですが回答に必要な文字数が急増し、「定められた文字数で的確に意図を伝えられる文章力」が特に重要になります。
例えば令和6年度秋期試験では、大問1問につき3つの設問があり、それぞれ「800文字以内」「800字以上1600文字以内」「600字以上1200字以内」で回答せよと求められています。つまり制限時間である2時間以内に原稿用紙にしてのべ6枚半~9枚分もの文章を書き上げる必要があり、さらに下書きをしている時間はほとんどないため、考えながら書き続けて論理を破綻させない文章力が必要になります。論述が得意でない場合は不合格の無限ループに陥る場合もあり、日ごろから文章を書く機会があまりないという方は意識して練習しておく必要があります。
具体的には、参考書の説明や解説はただ読むだけでなく、自分なりの文章で要約する練習をしておくことがおすすめです。要約した文章は部品としてノートに書きためておきます。当日はプログラミングと同様に、適切な部品を組み合わせて一つの流れに整えるようにします。その場で一から文章を組み立てるよりは、いくぶん楽に長文を作成することができます。
また過去問を解く場合は可能な限り第三者に回答を読んでもらうことが、文章作成の上達にはとても効果的です。自分では十分問題の意図に沿っているつもりでも、相手には伝わっていないという場合があります。相互チェックできる仲間や先輩がいることが理想ですが、難しい場合は先生に添削してもらえるスクールなどと併用することもおすすめです。
2. 試験対策におすすめの参考書・問題集
前述の勉強法内でも少し触れましたが、プロジェクトマネージャ試験対策におすすめの参考書を、次の4種類の観点でピックアップしてご紹介したいと思います。
2.1 午前午後全体を一冊でカバーする基本の教科書
■ 情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2024年版
著者:ITのプロ46、三好康之
出版社:翔泳社
発売日:2024年3月22日
ページ数:744ページ
サイズ:A5
価格:3,278円
一部で「みよちゃん本」と呼ばれている、人気の参考書です。「試験に受かるため」という視点を意識した上で非常によくまとまっており、試験範囲が十分に網羅された内容となっています。午前午後通して、これだけで合格している方も多い一冊です。
このシリーズは過去問のWebダウンロード期限があり、2024年版は2025年12月までなので、早めにダウンロードしておくことがおすすめです。なお2025年版は、2025年3月21日に発売予定です。
なお翔泳社の書籍は、公式サイトを利用するとPDF版を購入することができます。744ページもあると持ち運ぶにも一苦労なので、タブレット等を使って学習できる方にはPDF版がおすすめです。たまに大幅なポイント還元セールなども行っているので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
▶ 情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2024年版|翔泳社
2.2 午前対策に特化したおすすめの参考書
■ 情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ 2025年版
著者:松原 敬二
出版社:翔泳社
発売日:2024年9月25日
ページ数:664ページ
サイズ:A5
価格:3,278円
全高度区分の午前試験と、応用情報技術者試験にも対応した教科書です。
とにかく網羅性が高い上に問題の背景知識も紹介しているので、応用力が身に着きます。さらに年度別に出題される可能性の高い問題を厳選して過去問を収録しているので、分厚いですが効率的に勉強を進めることができます。
さらに書籍に収録されている過去問全500問を収録したWebアプリが付録しているので、外出先でスキマ時間に勉強することもできる、おすすめの一冊です。
こちらも翔泳社の公式サイトで、PDF版を購入することができます。
▶ 情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ 2025年版【PDF版】|翔泳社
2.3 論述対策に特化したおすすめの参考書
■ プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第6版
著者:岡山昌二、落合和雄、
佐々木章二、長嶋仁、
満川一彦
出版社:アイテック
発売日:2020年8月21日
ページ数:357ページ
サイズ:B5
価格:3,300円
「時間内に問題文の趣旨に沿う論文を設計する」ことに重点を置いた、論文対策本です。前半の第一部に書き方の指南があり、後半の第二部では専門家による論文例が30本収録されています。
時間内に論文を仕上げるための論述マイルストーンが紹介されており、時間内に書き上げることが難しいという方におすすめの一冊です。
▶ プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第6版|amazon
2.4 おまけ:PMBOK入門におすすめの参考書
■ 図解即戦力 PMBOK第7版の知識と手法がこれ1冊でしっかりわかる教科書
著者:前田和哉
出版社:アイテック
発売日:2024年9月20日
ページ数:224ページ
サイズ:A5
価格:2,200円
PMBOK(読み方:ピンボック、Project Management Body of Knowledge)といえば以前はPMP試験のために学ぶものでしたが、最近はプロジェクトマネージャ試験もPMBOKに関連する出題が増加しています。
原書では気軽に読めるボリュームではないPMBOKガイドが、体系的かつ分かりやすく要約されています。プロジェクトマネージャの実務にも役立つ内容ですので、この際一通り読んでおくことがおすすめです。
▶ 図解即戦力 PMBOK第7版の知識と手法がこれ1冊でしっかりわかる教科書|Amazon
3. 通勤・通学中にスマホアプリやWebアプリで効率学習
通勤や通学のスキマ時間に、スマートフォンアプリを使えば便利に学習を進めることができます。例えば前項で紹介した情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ 2025年版では、過去問を500問収録したWebアプリが付録しています。
しかし他の参考書を使っているという方へ、無料で公開されているスマートフォンアプリやWebアプリをご紹介します。
3.1 iPhone対応のアプリ:プロジェクトマネージャ試験<全問解説付>午前Ⅱ対策
■ プロジェクトマネージャ試験<全問解説付>午前Ⅱ対策
出典:App Store
プロジェクトマネージャ試験の、午前2試験に特化したアプリです。過去10年分の出題傾向を独自に分析し、特に重要な問題にマークが付けられているため、効果的に学習を進めることができます。
なお午前1試験対策には、応用情報技術者試験対策アプリを利用できます。次の記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。
3.2 Android対応のアプリ:プロジェクトマネージャ試験 午前II 過去問
■ プロジェクトマネージャ試験 午前II 過去問
出典:Google Play
オフラインでも利用できるアプリです。こちらも午前2試験に特化し、過去問が無料で令和6年秋期分まで収録されています。解説は付属しませんが、1問ずつメモ書きを残せる機能があり、自分なりの解説を記入していくことで午後対策にもつながります。
Androidでも、午前1試験対策には応用情報技術者試験対策アプリを利用できます。次の記事で紹介していますので、合わせてご覧ください。
3.3 Webアプリ:プロジェクトマネージャ試験ドットコム「過去問道場」
■ プロジェクトマネージャ試験ドットコム「過去問道場」
2024年の夏より解説文の表示が有料化しましたが、プロジェクトマネージャ試験に関する情報がとても丁寧にまとまっているサイトです。
基本情報や応用情報の過去問は解説文まで無料公開されているので、まずそちらを確認し、自分に合っていると感じたら有償利用を検討してみてはいかがでしょうか。
解説文以外の問題と解答は表示されるので、試験前の最終チェックにもおすすめです。
4. アウトプット強化!模擬試験と論文添削サービス
4.1 実力診断に:全国統一公開模試/情報処理技術者試験 公開模試
再三になってしまいますが、午後試験は模範解答から自己採点することが難しく、本当に伝わっているかの確認には第三者にチェックして指摘してもらうことが重要となります。同僚や友人にチェックしてもらえる環境がなく、スクールに通う時間もなかなか取れないという方には、採点時に問題点も具体的に指摘してもらうことができる模擬試験を受けることがおすすめです。
文章の細かい添削までは行ってもらえませんが、個人ごとのチェックポイントを返却してくれる模試がいくつかあります。1万円程度と本試験より高価ですが、不安のある方は試してみてはいかがでしょうか。
4.2 論文の弱点克服:論文添削サービス/対策講座
論文一本2千円程度で、詳細な添削を返してくれるサービスがあるようです。また、論文専用の対策講座も開講されているようですので、不安のある方は探してみてはいかがでしょうか。
5. PM試験の勉強法について:よくある質問
プロジェクトマネージャ試験の対策について、よくある質問にお答えします。
【Q】試験の難易度はどのぐらいですか?
【A】経済産業省が認定するITスキル標準(ITSS)によると、プロジェクトマネージャ試験は「レベル4」に設定されています。同じPM向けの資格と比較すると、「ITIL スペシャリスト」と「PMP」は「レベル3」に設定されています。
各年度の合格率や難関である理由について詳しくは、次の記事も参考にしてみてください。
【Q】独学でも合格できますか?
【A】可能です。実際に何人もの方が、SEとして勤務しながらPM試験に合格しています。
【Q】勉強にかかる時間の目安はどのぐらいですか?
【A】独学の場合、一般的に半年から一年程度かかると言われています。
【Q】おすすめの勉強開始時期はいつですか?
【A】午前対策が必要な方は前年度の試験が終わったぐらいから、午前対策が不要である程度の実務経験がある方は、半年前ぐらいからがおすすめです。
【Q】文系出身でも合格できますか?
【A】プロジェクトマネージャ試験は論述が重要になるため、むしろ文系出身で現役SEをしている方には有利といえます。実際に、何人もの方が文系出身からPMに合格しています。
6. まとめ:午後試験突破の鍵は文章作成力
全3回にわたりプロジェクトマネージャ試験についてご紹介して参りましたが、いかがでしたでしょうか。なんといってもPMの午後試験は、知識があっても要点を伝える文章力がなければ突破できません。本格的に試験対策を始める前にも、日ごろから文章を書く機会づくりを心掛けてみて下さいね。
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