数ある国家資格の中でも難関資格であると言われているプロジェクトマネージャ試験ですが、どんな試験なのか、また取得難度に見合うメリットはあるのかをご紹介したいと思います。
目次
1.1 システム開発プロジェクトのマネジメントスキルを認定する試験
1.2 試験の内容
1.3 受験資格はないが
2.1 SEとして未経験から就職する場合は、動機づけが必要
2.2 キャリアアップ転職では裏付けとして作用する
2.3 転職・就職時の履歴書への書き方
1.プロジェクトマネージャ試験とは
1.1 システム開発プロジェクトのマネジメントスキルを認定する試験
情報処理推進機構(IPA)が運営する国家試験である情報処理技術者試験には、「レベル4」として8つの高度区分試験が設けられています。プロジェクトマネージャ試験はそのうちの1つであり、多くの理系資格の中でも特に難関と言われています。
公式で示されている対象者像では、プロジェクトマネージャとは次のように述べられています。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、システム開発プロジェクトの責任者として、プロジェクト計画を立案し、必要となる要員や資源を確保し、計画した予算、納期、品質の達成について責任をもってプロジェクトを管理・運営する者(IPA公式サイトより引用)
1.2 試験の内容
プロジェクトマネージャ試験では開発の技術的な要素ではなく、プロジェクトのスムーズな進行や、人員のマネジメントについて主に問われます。(午前試験の共通問題は除く)
特に論述が重要視されており、平成28年度春期試験の午後2試験では、3つの設問それぞれ「800文字以内」「800字以上1600文字以内」「600字以上1200字以内」で回答せよと求められています。つまり、最長で原稿用紙のべ9枚分もの文章を、2時間という短い時間で書き上げる必要があるのです。
もちろん下書きをして書き直している暇などなく、考えながら書き続け、論理を破たんさせずに結論まで導かなければなりません。これは日頃から文章を書き慣れていなければ難しい量で、多くの方にとって試験の難度を引き上げている要因となっています。
1.3 受験資格はないが
受験に必要な資格は特になく、実務経験はおろか下位資格に合格している必要もありません。
しかし実際にSEの実務経験がないと、トラブルのケースやその対処法など、参考書の紙面からは想像し難い部分が多々あります。新規での就職に直接有利となりやすい資格でもないため、ある程度実務経験を積んでからのチャレンジがおすすめです。
2.プロジェクトマネージャ試験合格は転職・就職に有利?
個人でも磨ける技術関係の試験とは違い、プロジェクトマネージャ試験はチームで開発業務をこなしていなければ実践は不可能な内容です。そのため新卒での就職活動だったりシステム開発以外からの転職活動では、実践を伴わない「資格のための資格」とみなされてしまうケースが多々あります。しかし記載するとその難度の高さからも目を引く要素となるのは事実ですので、なぜこれを取得しようと思ったのか?という疑問にきちんと答えられれば強い武器となります。
なおプロジェクトマネージャ試験合格者の存在は、官公庁系システムの開発案件では入札条件となっている場合があります。そういった案件に入札する機会は多いけれど資格保持者が少ないという企業では、実務を伴わない資格でも歓迎されるケースがあるかもしれません。
実際に前職でプロジェクトマネージャとして活躍していたり、これからプロジェクトマネージャを目指したいとアピールする場合には、プロジェクトマネージャ試験合格は実力の裏付け資料として役立ちます。仕事をこなすだけでなく学習意欲と向上心の高さを示すことができ、評価に反映される確率は高いでしょう。
また就職時と同様、必要数に対して有資格者数が不足している企業であれば、評価はさらに高まります。例えば、ある官公庁系案件をメインに長年受注しているシステム開発会社では、資格保持者に毎月3万円の資格手当を支給しているケースがありました。この企業の場合は年36万円となり、影響は大きいです。しかし逆に、取得の姿勢だけで肩書としてはほとんど評価されない企業があるのも事実です。このように企業の方針により重要度には結構な差も見られますが、得しこそすれ損になることはない資格と考えられます。
2.3 転職・就職時の履歴書への書き方
プロジェクトマネージャ試験の場合、履歴書には次のように表記できます。
「平成○○年○月 プロジェクトマネージャ試験 合格」
より丁寧に書く場合は「経済産業省認定 プロジェクトマネージャ試験」と記載しますが、履歴書の書き方に決まった制度はなく、相手に正しく伝わるようであればどう表記しても問題ありません。なお情報処理技術者試験は「試験」であり、厳密には公式に「資格」という表現はされていません。そのため、この場合は「取得」ではなく「合格」と記載することがおすすめです。
プロジェクトマネージャ試験は国家試験であり、一度合格すれば失効することなく永久に履歴書に載せることができる点も魅力です。しかし取得後に実務にブランクがあると、有効な資格でないと見なされてしまう可能性があります。
3.合格する価値・評価と平均年収
不況が続く近年では減少傾向にありますが、プロジェクトマネージャ試験の合格者へは前項で述べたように毎月資格手当を支給するケースや一時金が支給されるケースがあります。資格手当の有無を調べれば、ある程度はその企業でどのくらい資格が重視されているかを確認することができます。
ただ最終的には、プロジェクトマネージャの仕事は「マネジメント」です。資格だけあっても実践でのマネジメント力がなければそれ以上の評価にはつながりません。プロジェクトマネージャ試験に合格したからといって、誰でもすぐにプロジェクトマネージャになれるとは限らないのです。資格を生かすためにも、実践していくことが大事になります。
3.2 具体的な年収への影響
毎月の資格手当がある企業であれば、その分の金額が給与にダイレクトに反映されます。資格手当がない場合はプロジェクトマネージャ試験に合格したからといって即給与アップとはなりませんが、リーダーやマネージャーを選ぶ際の、一つの指標となります。
参考まで、一般のSEとプロジェクトマネージャの、年収のボリューム層を比較してみます。
職種 | 年収のボリュームゾーン |
---|---|
プログラマ | 約250~600万円 |
システムエンジニア | 約300~700万円 |
プロジェクトマネージャ | 約500~1000万円 |
4.プロジェクトマネージャには実践力が必要
どの資格にも言えることですが、資格取得イコール即給与アップとはいかないのが現状です。しかし難関試験に合格することで知識だけでなく自信を得ることができ、やがて実力に変化していくのではないでしょうか。