プロジェクトマネージャ試験は、高度IT人材の登竜門として知られています。しかしその難易度の高さから、多くの方が不安を感じているのではないでしょうか。
この記事では、プロジェクトマネージャ試験の難易度を合格率や他のIT試験との比較で分析し、合格に必要な勉強時間をご紹介します。論述試験の具体的な学習戦略のポイントも解説していますので、ぜひご覧ください。
おすすめの参考書を始めとした勉強方法を詳しく知りたい方は、次の記事もおすすめです。
1. プロジェクトマネージャ試験の難易度を測る:合格点と合格率の推移
1.1 合格点
午前に2つ、午後に2つの計4つの試験がありますが、全ての試験で満点の60%以上の点数が取得できれば合格となります。
合格点は60%以上ですが、これは満点を目指す必要がないという意味ではありません。高度な知識と応用力が求められるため、基礎を徹底的に固めた上で、過去問や模試で実践力を養うことが重要です。
1.2 合格率の推移と分析
現行の試験制度が始まった平成21年度以降の統計情報を元に、推移を表にしてみました。
IPA公式から発表されている合格率は12.7%~15.1%です。これだけでもかなり低い数字であるということが分かりますが、さらにこの数字は受験者数に対する合格者数の比率です。実際には応募者数に対する受験率は6割強程度ですから、応募者数に対する合格者数から合格率を算出すると平均8.4%となり、かなりの難関であることが分かります。
年度 | 応募者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 (受験者比) |
合格率 (応募者比) |
---|---|---|---|---|---|
平成21年春期 | 16,241人 | 9,372人 | 1,187人 | 12.7% | 7.3% |
平成22年春期 | 19,877人 | 12,463人 | 1,613人 | 12.9% | 8.1% |
平成23年春期 | 20,459人 | 12,340人 | 1,637人 | 13.3% | 8.0% |
平成24年春期
19,680人 |
12,458人 |
1,628人 |
13.1% |
8.3% |
|
平成25年春期 | 18,571人 | 11,850人 | 1,485人 | 12.5% | 8.0% |
平成26年春期 | 17,584人 | 10,927人 | 1,385人 | 12.7% | 7.9% |
平成27年春期 | 17,360人 | 11,050人 | 1,485人 | 13.4% | 8.6% |
平成28年春期 | 16,173人 | 10,263人 | 1,491人 | 14.5% | 9.2% |
平成29年春期 | 18,291人 | 11,596人 | 1,521人 | 13.1% | 8.3% |
平成30年春期 | 18,212人 | 11,338人 | 1,496人 | 13.2% | 8.2% |
平成31年春期 | 17,588人 | 10,909人 | 1,541人 | 14.1% | 8.8% |
令和02年秋期 | 9,672人 | 6,276人 | 948人 | 15.1% | 10.2% |
令和03年秋期 | 10,184人 | 6,680人 | 959人 | 14.4% | 10.6% |
令和04年秋期 | 11,745人 | 7,382人 | 1,042人 | 14.1% | 6.0% |
令和05年秋期 | 12,197人 | 7,888人 | 1,066人 | 14.1% | 8.7% |
令和06年秋期 | 13,481人 | 8,627人 | 1,195人 | 13.9% | 8.9% |
令和2年度から試験が春期から秋期に変更になっているのは、新型コロナウイルス流行への対応のためです。受験者数の激減と合格率の増加も、その影響と考えられます。令和2年度以降は、毎年順調に受験者数が回復しています。
2. プロジェクトマネージャ試験の難易度を徹底解説
2.1 試験の難易度は「高」である理由
経済産業省が認定するITスキル標準(ITSS)によると、プロジェクトマネージャ試験はレベル4に設定されています。その他の情報技術者試験やPM関連試験は、次のようなレベル区分になっています。
難易度 | 試験区分 |
---|---|
レベル1 | ITパスポート試験、ITIL® 4 ファンデーション |
レベル2 | 基本情報技術者試験 |
レベル3 | 応用情報技術者試験、ITIL® 4 スペシャリスト、PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル) |
レベル4 | 9種類の高度試験(プロジェクトマネージャ試験、情報処理安全確保支援士試験など)、CCIE、ORACLE MASTER Platinum |
このレベル4は、高度IT人材としてのスキルを有していると評価される段階です。レベル4に該当する他のIT関連資格には、同じ情報処理技術者の高度試験のほか、「CCIE」や「ORACLE MASTER Platinum」が挙げられています。
実際に、前出の表のように応募者に対する合格率は10%を切る状況となっており、その他職種向けの国家試験群と比べても、かなり低い水準です。
特に高度区分試験を受験する層は経験を積んだエンジニアがほとんどであり、それにも関わらず合格率が低いということからも、難度の高さがうかがえます。
※ただし民間資格であるITILファンデーションは、受験料が 67,793円と高額です。さらにITILスペシャリストは講習費含めて20万円ほどかかるため、費用を抑えたい方は7,500円で受験できる国家資格がおすすめです。
2.2 論述試験が難関である理由と対策
プロジェクトマネージャ試験は、試験範囲の十分な知識を持っていても不合格になるケースがあります。それは、「自身の経験や考えを論理的にまとめ、文章で表現する能力」を求められるためです。
午後2試験だけでも、のべ原稿用紙6枚半~9枚分もの文章を書く必要があります。しかも制限時間は2時間と短いため、考えながら書き続けて論理を破綻させない文章構成力が必要です。作文が得意でない場合は不合格の無限ループに陥る可能性が高く、日常的に文章を書く機会がない方は注意が必要です。
論述試験の対策として、具体的な学習戦略のポイントを次の項で解説します。
3. 独学で合格は不可能なのか:効率的な学習戦略
このようにプロジェクトマネージャ試験はかなり高難度の試験となっており、独学での合格が難しい方のための講座や通信教育が多数開講されています。しかし独学合格が無理というわけではなく、多くの方がSEの業務に携わる傍ら、独学で受験しています。
さらに参考書で試験勉強する際に、単元ごとに要約ノートを作ることがおすすめです。参考書の内容を自分の文章に直して短くまとめる作業をすることで、知識をつけつつ、文章をまとめる練習になります。その際には、例えば「800文字以内でまとめる」など文字数を意識して書くことで、文章のボリューム感をつかむことにつながります。
4. プロジェクトマネージャ合格までの勉強時間の目安
4.1 勉強時間の目安:独学の場合
独学の場合、一般的には半年から1年以上の勉強期間が必要となります。
ただ次のいずれかに当てはまる方の場合、勉強時間が短くなる傾向にあります。
• 午前I試験が免除されている
• PMまたはSEとして、充分な実務経験がある
• 論述(文章を書くこと)が得意
まず午前I試験の免除があるかどうかで、必要な勉強時間が20時間ほど変わります。
さらに充分なSEの実務経験があれば、午後の論述対策に必要な知識を暗記する時間が短縮できます。
最後の論述について、筆者が実際に見た事例をご紹介します。文系出身からSEになって3年目の同僚が、業務をこなしながら3か月の勉強期間で合格しました。これは特殊な事例ですが、初期の文章作成能力の高さは、勉強時間に大きく影響しそうです。
ただ、これらの時間はあくまで目安です。個人の経験やスキル、学習状況によって大きく異なります。
4.2 勉強時間の目安:講座を受講する場合
スクールによりまちまちですが、通信の場合は受講期間2~4か月、サポート期間12か月が目安とされている講座が多いようです。例えば、某有名資格スクールの通学講座は、150分×全10回の授業と模試で構成されています。
講座を受講することで、専門講師の指導を受けながら効率的に学習を進めることができます。また通学するタイプの講義であれば、他の受講生と交流することでモチベーション維持にもつながるのでおすすめです。
5. プロジェクトマネージャ試験合格後、あなたのキャリアはどう変わる?
プロジェクトマネージャーとして働くために資格は必須ではないため、合格したからといって待遇がガラッと変わることはありません。
しかし一部の企業では、合格祝いや資格手当を支給するなど、資格取得を重視している企業もあります。例えば官公庁案件などで「PM試験の合格者がチームに含まれていること」が入札条件になっていることがあるためです。
他にもプロジェクトマネージャ試験に合格することで、キャリアアップや年収アップのチャンスが広がります。
例えば年収アップを目指してフリーランスのPMになる場合、プロジェクトマネージャ試験への合格は、採用する側にとって分かりやすい指標となります。
厚生労働省の運営する職業紹介サイト「Job tag」では、プロジェクトマネージャーの平均年収は「684.9万円」です。
それに対して、プロエンジニアに掲載されているフリーランスPMの単価相場は、月額単価「90万円~100万円」、つまり「年収1000万円強」です。
プロジェクトマネージャ試験に合格することで、受注できる案件の幅が広がります。年収アップを考えているプロジェクトマネージャーの方は、ぜひフリーランスとしての働き方も検討してみてください。
フリーランスのプロジェクトマネージャー市場の需要や、PMがフリーランスとなるメリットについて、詳しくは次の記事をご覧ください。
6. まとめ:PMの難易度は文章力で決まるのか?|成功の鍵
プロジェクトマネージャ試験では、文章力が非常に重要な要素です。文章力を鍛えるためには、日常的に文章を書く練習をすることが大切です。SNSやブログで発信するのも良いでしょう。また、他人の文章を読んだり、添削を受けたりすることで、より効果的に文章力を向上させることができます。
もちろん、文章力だけが全てではありません。論理的思考力、問題解決能力、マネジメント能力など、合格には様々な能力が求められます。
このようにプロジェクトマネージャ試験は難関ですが、適切な対策を立てれば必ず合格できます。この記事を参考に、ぜひ合格を目指して頑張ってください。
フリーランスのプロジェクトマネージャーという働き方に興味のある方や、PMとしての今後のキャリアプランについて相談したいという方は、ぜひプロエンジニアへお気軽にお問い合わせください。経験豊富なエージェントが、あなたの疑問や悩みに丁寧にお答えします。
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