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2016年10月2日(日)と3日(月)にMTRL KYOTO(http://mtrl.net/kyoto/)にて、Kyoto VRが手掛ける最新VRの体験イベントが開催されました。
会場となったMTRL KYOTO。渋谷を拠点とするクリエイティブ・エージェンシー株式会社ロフトワーク(http://www.loftwork.jp/home.aspx)が2015年11月にオープンしたクリエイター向けの小ワーキング施設です。
イベントのテーマは『リリア・スレイビー × Kyoto VR 体験展示&トークセッション』
Kyoto VR CEOのシムズさん
Kyoto VR(https://kyoto-vr.com/)は、2016年6月に設立されたVRプロダクションスタジオ。京都の魅力をVRで再現すると同時に、京都の伝統と文化を保存すること、さらに京都でVRアートコミュニティを作ることを目的に活動をスタートしました。
会場内のディスプレイに展示されていた美しい作品
1. 360°と3D映像 五感で体験する京都の伝統
今回の最新VRの舞台は、京都の瑞峯院と安楽寺。瑞峯院は枯山水の名園、安楽寺は紅葉の名所として名を馳せる、ともに京都を代表するお寺です。
瑞峯院と安楽寺の映像の中に、生まれ育ちともに日本である写真家Reylia Slabyさん(https://reyliaslaby.com/)の作品が融合されており、独特の雰囲気が醸し出される中、不思議な世界感が展開されていきます。Reyliaさんは奈良を拠点に活躍しており、2014年に発売されたMr.Childrenの「足音 ~Be Strong」のジャケットを担当した実績をお持ちの方です。
Oculus RiftのVRヘッドセットを使用します
お寺の一室から映像がスタート
いつの間にか1人の女性が出現。こちらは実在する女性をモデルにしているそう
光に照らされた美しい境内が広がります
こちらの作品は、フォトグラメトリー(Photogrammetry)という技術を使ってKYOTO VRが作り上げた京都の世界に、Reylia Slabyさんの作品を3Dスキャンして取り組むことによって生まれました。フォトグラメトリーとは、複数の方面から撮影した写真の視差情報(目の向いている角度と位置)を元に、大きさや形を測量し、そのデータを使って対象物を3D化することができる技術です。低コストでも高品質な作品を作れるというのが特徴で、地図製作や建築、気象学、そして現在では海外のインディー開発者を中心に、ゲーム制作にもこの手法が使われるようになってきているといいます。
更に、京都を拠点に活躍する書道家の上田普さん(http://www.uetahiroshi.com/index.html)の作品や、こちらも京都を拠点に活躍するサウンド・アーティスト&プロデューサーのアリー・モッブズさんのオリジナルサウンドトラックとサウンドデザインも取り組まれ、その独特の世界を五感で楽しめる作品となっています。
2. VRで京都の伝統と文化を発信する
こちらのプロジェクトは、作成を始めてから完成するまで約2ヶ月程かかったといいます。作品を作る為に、安楽寺で約2,500枚、瑞峯院では約1,000枚もの写真撮影を行ったそうです。
お寺の撮影で許可を取るのは大変だったのではないですかと質問したところ、意外にも協力的だったとのこと。安楽寺の住職は80代なのだそうすが、とても元気で面白い方で、撮影にも快く応じてくれたそうです。
前列:左から藤井ルークさん、クリーン・グラントさん
後列:左からシムズ・アティカスさん、アレサンドロ・デベレガルドさん
そして、驚きだったのが、KYOTO VRのみなさんのご経歴でした。KYOTO VRのメンバーは現在4人。クリーンさんは元々プログラマーとして活躍されてきたそうですが、他の3人はITとは違う分野のご出身。CEOのシムズさんは、10年近く京都に住みながら日本で長年英語講師として働き、その傍ら合気道にも励んでこられた方。共同創設者でありクリエイティブディレクターのアレサンドロさんはニューヨークで映画監督として活躍されていたといいます。生まれ育ちがともに京都の藤井さんは10年間イギリスの学校で学んだ後、広報・宣伝としてKyoto VRにジョイン。ですので、みなさん元々VRについては専門的な知識や技術は無かった為、自分たちで一から勉強したそうです。シムズさんは「完成するまでの工程はどれも大変でした。」と笑いながら答えてくれました。
でも、共通して京都が好きという思いを持っており、その思いがVRで京都を実現する、という現在のプロジェクトに至ったといいます。
会場には、VRに出演している女性を3Dで再現した作品も。当日は、作品の中に出てくる石の灯籠の制作が、右の写真の3D機器にて実際に行われていました
3. 祇園祭りの世界を体験 ドローンでの空撮も
KYOTO VRが目指すのは、「美しいバーチャル京都を生み出す」「歴史的な京都の景観を守る」「京都の観光を支える」「360°と3D映像を使って京都の伝統と文化財を体験」「普段アクセスできない場所や古物を体験」。
今回のイベントの様に、写真家のReylia Slabyさんの作品をVRの世界で展開したり、これまでには書道家の上田普さんとコラボレーションもして、クリエイティブの可能性を開くプVRアートのプロジェクトを実行するなど、次々と新しい試みを展開しています。
京都の祇園祭りを360°で体験できるVRも。現在更にリアリティを高めているといいます。
更には4Kドローンを使って京都の風景を撮影し、ビデオグラフィー作品として展開もしています。
いかがでしたでしょうか。
日本の観光事業の向上が求められている今、KYOTO VRのプロジェクトは日本の観光をVRという最新技術を使って盛り上げていく、可能性を秘めたものだと感じました。
KYOTO VRはこれまでに、5月に京都で約500人を集めたVR体験会を開催し、7月には祇園祭の函谷鉾の3Dスキャンを実現。8月には「LIMITS Digital Art Battle」のライブVRアートバトルにも参戦しました。そして10月にはパリ発祥のアート展で京都で開催されたニュイ・ブランシェへの出展も果たすなど、スタートしてまだ間もないながら意欲的に活動をしています。
次はどんな展開をして私たちを驚かせくれるのか、今後の彼らにワクワクします。
KYOTO VRの作品は下のサイトから見ることができます。是非一度、チェックしてみてください!
https://kyoto-vr.com/media/