関連記事:フリーランスに開業届は必要?いつ出すの?メリットはあるの?では、フリーランスが個人事業主として開業することのメリットと、開業方法についてご紹介しました。今回は順調に売り上げが上がってきたフリーランスが法人化するメリット&デメリットについて、ご紹介していきたいと思います。
目次
1.1 法人成り(ほうじんなり)とは
1.2 フリーエンジニアが法人化するタイミング
2.1 経費計上面のメリット
2.2 税負担面のメリット
2.3 信用面のメリット
1.個人事業主が法人化する「法人成り」とは?
1.1 法人成り(ほうじんなり)とは
法人化(法人成り)個人事業主が法人(株式会社や有限会社)になることを指します。個人商店経営者もフリーランスのエンジニアも、設立手続きの内容は同じです。
1.2 フリーエンジニアが法人化するタイミング
一般的に所得が900万円を超えると、税制面で所得税よりも法人税の方がお得になると言われています。特に消費税8%の納付が必要になる売上1000万円を超えたあたりから、法人化を考え始めるフリーランスの方が多いようです。
2.法人化のメリット
法人化のメリットには、大きく分けて「経費計上面のメリット」「税制面のメリット」「信用面のメリット」などがあります。
2.1 経費計上面のメリット
法人化すると、「経費」として支出を計上できる費用の範囲が大幅に広がります。
■社長の給与を経費計上できる
社長、つまり自分自身への給与を、役員報酬として経費に計上することがでるようになります。さらに役員報酬から給与所得控除分も差し引くことができるため、大きな節税効果を期待することができます。
■家族を従業員にして、給与を支払える
例えば配偶者を従業員として雇うことで、その分の給与を経費に計上することができるようになります。社長の報酬をアップすればいいのでは?と思われるかもしれませんが、一人当たりの金額を抑えて分散させることで、最終的な所得税の負担を軽くすることができます。
ただし勤務実態が全くない場合、税務署から否認されることもあります。事務処理を任せるなど、何等かの作業を実際に行っておく必要があります。
なお個人事業主であっても所得税の分散は可能でしたが、対象には「生計を一にする親族であること」や「6か月以上従事していること」などの条件があります。
■社長や従業員の退職金を経費計上できる
社長や従業員が退職する場合に、退職金を経費に計上して支払うことができます。
■会社を契約者とすると保険料を全額経費計上できる
個人事業主の場合、生命保険や介護保険などの各種保険については、最大12万円までしか控除の対象になりませんでした。それに対して会社が契約者になることで、条件はありますが保険料が半額または全額経費に計上できるようになります。
■福利厚生費が経費計上できる
例えば家族を従業員としていた場合「1人あたりの旅費が10万円以下」などの条件はありますが、家族旅行を慰安旅行とすることで経費計上が可能になります。
2.2 税負担面のメリット
事業所得、つまり事業による利益がある一定を超えると、個人の所得税よりも法人税の方が税率が低くなります。
■法人税は税率が固定されている
個人事業主は累進課税制度を採用している「所得税」に基づいて税金を納めることになるため、収入が増えるほどに所得税の負担が大きくのしかかってきます。それに対し、法人化すれば一律税率である「法人税(法人所得税)」に基づいて税金を納めることになり、節税効果が期待できます。
■2年間消費税の納付が免除される
売上が1000万円を超えている場合、個人事業主であっても消費税を支払う必要があります。その消費税が、法人を設立した後2年間は免除になります。消費税が8%となった今、2年間の消費税免除は大きなメリットです。
2.3 信用面のメリット
法人であれば、一般的に個人事業主よりも信用度が大幅にアップします。
■取引先からの信用がアップする(受注しやすくなる)
■金融機関からの信用がアップする(融資を受けやすくなる)
具体的にはこれらの場面で有利になりますが、フリーランスのエンジニアにはあまり影響のない事項かもしれません。
3.法人化のデメリット
一方で法人化のデメリットには、次のようなものが挙げられます。
■手続きや財務関連の処理が複雑化する
法人化すると公的な提出書類数が増加し、事務処理が大幅に複雑化します。これまで独力で全て行っていた作業を、専門の事務スタッフや税理士に依頼する必要が出てくる可能性もあります。財務や会計に関する知識も、個人事業主よりも必要になります。
■登記の手続きが煩雑で、専門家に頼むと費用がかさむ
登記には若干の専門知識と、煩雑な手続きが必要です。これから法人化しようという方には多忙な方も多く、法人化の手続きは負担になるケースがしばしばあります。その場合は司法書士等に手続きの代行を依頼することになりますが、手数料が予想外にかさむ場合もあります。
サポート内容にもよりますが、書類作成だけなど簡単なサポートは数万円から、各種申請まで含む手厚いものでは30万円程度の依頼料が必要になる事務所が多いようです。
■個人事業を廃業する年の確定申告が複雑化する
一回限りのことではありますが、事業税の経費計上など翌年の確定申告の中で行っていたことを、最終の確定申告の中で忘れないように逆算して行っておく必要があります。これを忘れていた場合は、さらに煩雑な更生の請求という処理を行うことになります。
■法人の設立費用がかかる
法人の設立登記を行うに際し、定款印紙代や登録免許税などの登記費用が発生します。
株式会社設立であれば24万円程度、合同会社であれば10万円程度の実費が必要です。
■社会保険への加入が義務付けられる
法人化すると従業員を含め社会保険への加入が義務化されます。一般的に所得が同じであれば、保険料は「健康保険組合+厚生年金」>「国民健康保険+国民年金」となります。ただし保障内容も同じく「健康保険組合+厚生年金」>「国民健康保険+国民年金」なのは確かなので、メリットと考えることもできます。(個人事業主では厚生年金に入りたくても入れないため)
■接待交際費を無条件で経費計上できなくなる
個人事業主であれば、交際費に計上できる金額に上限はありません。それに対して法人には、時限立法により費用の上限が設定されることがあります。ただし小規模の会社であればそれほど厳しい制約が課されるケースはないようです。
■赤字でも支払う税金がある
法人が支払う税金には、地方自治体に支払う「法人住民税」というものがあります。仮に売上が赤字になった場合でも、法人住民税の均等割は毎年支払う必要があります。この均等割は資本金から一律で計算されますが、最低でも年額7万円程度必要になります。
4.法人化は一見メリットが大きいが…
1000万円以上の売り上げがあればかなりお得感のある法人化ですが、完全に一人で作業していると事務処理が煩雑になりすぎ、本業を圧迫してしまうこともあります。半面、家族を役員にして事務を手伝って貰えるなどのケースでは、大きなメリットにもつながります。状況により大きくメリットとデメリットが変わってくるのが法人化ですので、十分な試算の上で検討してみて下さいね。