契約書を作成しておくことは、フリーランスとして仕事する上でもとても重要です。
今回はフリーランスエンジニアのための契約書の作り方について、ご紹介したいと思います。
目次
1.フリーランスエンジニアに必要な契約書とは?
1.1 契約書とは
契約書とは、契約内容を明文化した書面のことです。作業の内容や期間、金額、支払い方法などの基本的なものから作業後のアフターケアについての取り決めなどをあらかじめ文章に書きだすことで、後出しで揉め事になることを防ぐ役割があります。
1.2 契約書を作成するメリット
契約書を作成するために改めて契約内容を文章に起こすことによって、お互いが認識している内容を再確認し、認識の齟齬を解消することができます。
またきちんとした契約を締結することで、その内容に法的拘束力が発生します。契約に違反した場合には、裁判にて損害賠償を請求することができる場合もあります。
1.3 契約書なしでも大丈夫?
契約書作成は法的な義務ではありません。しかし契約書で確認を行わなかった場合、委託者と受託者の双方に「思っていたのと違った」という事態が降りかかってくる可能性があります。
筆者の知人のWebデザイナーのケースでは、納品物の数量についてのみを取り決めた状態で作業を開始したところ何度もイメージ違いによる修正依頼が重なり、当初の予定よりも大幅に作業時間がかかってしまったという事例がありました。
このような事態を防ぐためにも、契約内容の明文化は重要です。
2.契約書のフォーマット
業務委託契約を結ぶ企業によっては、あらかじめ契約書のフォーマットが準備されている場合がありますので、そちらを利用します。クライアントが個人や小規模な会社であるなどで指定されたフォーマットがない場合には、次のような項目を用意しておくと便利です。
(1)帳票タイトル
「業務委託契約書」などのタイトルを記載します。具体的な業務内容をタイトルに盛り込む場合もあります。
(2)作業内容についての詳細
具体的に請け負う作業内容や業務範囲を細かく決めておくだけでなく、作業の進捗報告の方法や、成果物の納品方法についても記載しておきます。
作業内容の詳細をしっかりと定めておくことによって、後から作業がどんどん増えてしまうことを防ぐことができます。
(3)契約金額(報酬)、着手金について
契約金額を記載します。消費税分の支払いの有無も併せて記載します。
またフリーランスの場合、契約金額の一部を着手金として前払いしてもらうケースもあります。着手金を設定する場合は、その金額を記載します。
(4)支払先、支払期限など
報酬の支払い方法や支払先金融機関情報、支払期日などを記載します。
振込手数料をどちらが負担するかについても、併記する場合もあります。
(5)契約形態
業務委託の形態が、「請負契約」か「準委任契約」かを記載します。請負契約と準委任契約の違いについては、以下の記事をご覧下さい。
(6)契約期間
契約開始と終了の日付を記載します。
(7)契約更新について
契約更新の有無や、その条件などがあれば記載します。
(8)契約解除について
契約に違反する行為があったなど、契約解除が行える条件について記載します。
(9)損害賠償や瑕疵担保責任、アフターケアについて
納期の遅延や契約違反、また契約のキャンセルなど、委託者側と受託者側がそれぞれお互いに損害を与えた場合の賠償内容について記載します。着手金が支払われている場合は、その扱いについても記載します。
また納品後や検収中に問題(瑕疵)が発覚した場合の対応や、修正に応じる場合はその期限などについても記載しておくと安心です。
(10)知的所有権や成果物の権利について
業務中やその結果で発生した知的所有物や成果物の権利がどちらに帰属するかを記載します。何も取り決めを行っていない場合、基本的に著作権などの知的財産権は制作者側に帰順しますが、トラブル防止のためにも明確にしておくことが大切です。
(11)機密保持義務について
業務中に知り得た秘密を第三者に渡さないことについて記載します。
機密保持契約書を単体で交わす場合もあります。
(12)署名捺印など
最後に双方が契約内容に同意したことを示すため、署名捺印を行います。
2.2 収入印紙の準備
請負契約の場合、契約金額が一万円を超える契約書には印紙税を納める義務が生じます。具体的には、収入印紙を購入して契約書に貼付します。納税額については契約金額や期間により変動し、大きく分けて2号文書と7号文書があります。
詳しい区分や収入印紙の金額については変動がありますので、最新の情報は国税庁のホームページでご確認下さい。
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【国税庁 - 印紙税の手引き】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/01.htm
なお準委任契約の場合、収入印紙は不要です。
3.業務委託関連の契約書見本やひな形配布サイトを紹介
業務委託契約書のサンプルや、中身を編集して使用できるテンプレートを配布しているサイトをご紹介します。
■ bizocean(ビズオーシャン) - 「業務委託契約書」の書式テンプレート
https://www.bizocean.jp/doc/category/132/
多様な委託契約書のサンプルが掲載されています。
業務委託だけでなく、ホームページ制作委託契約書などの具体的なサンプルもあります。
■ 書き方のポイントが分かる!労働契約書書き方見本ダウンロード - 例文フォーマット
http://rkkmr.com/rkdl/
多様な労働契約書のサンプルが掲載されています。
業務委託やフリーランス向けのサンプルもあります。
■ [契約書―業務委託契約書]テンプレートの無料ダウンロード
https://template.k-solution.info/17010708504/
Word, Excel版の業務委託契約書テンプレートがあり、通常の契約書の書式のほか表形式のタイプもあります。
4.契約書を提示する際の注意点
契約書が完成しいよいよ合意というという場面では、次のような点に注意して下さい。
4.1 収入印紙にも押印する
収入印紙を貼付したら、書類と印紙に半分ずつかかるように印鑑を押し、再利用できないようにする必要があります。
4.2 契約書が複数ページある場合は
ページ番号を振るなど複数枚あることが分かるように作成した上で、他のものと混ざらないように一冊に綴じておきます。
さらに収入印紙と同じくページにわたるように割印を押すことによって、契約書の改ざんを防ぎます。
5.まとめ
収入印紙の添付が必要だったり詳細な条件の書き出しが必要な契約書を作るのは、とても面倒に思えます。ゆえにちょっとした依頼や何度も受注したことのある取引先からの依頼となると、信頼関係があれば契約書なんていらない!と思いたい場合もあるかもしれません。しかし自分の利益だけでなく取引相手のためにも、契約書は交わしておくことがおすすめです。