近年の働き方改革やテレワーク推奨の動きから、フリーランスになりたいと考えているエンジニアの方や、フリーランスという働き方に憧れてエンジニアを目指している方も、年々増加しています。とはいえ「会社」という安定した枠組みを出ることには、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
本記事では特にIT業界のフリーランスエンジニアの年収事情について、実データを用いて詳しくご紹介いたします。
1. フリーランスエンジニアの平均年収はどれくらい?
早速ですが、フリーランスエンジニアの平均年収について、次の6つの視点からご紹介します。
1.1 フリーランスエンジニア全体の平均年収や、最高・最低単価は?
当サイト「プロエンジニア」に登録されているITエンジニアの全フリーランス案件※1 を集計したところ、平均年収は約862万円でした。月給の最低単価は30万円から、最高単価は150万円以上です。
対して国税庁が発表する民間給与実態統計調査※2 によると、R4年度の日本人の平均年収は約458万円です。
※1:2023年6月時点で プロエンジニアに登録されているフリーランス案件情報のうち、月額報酬の下限額および上限額が公開されている2509件より、平均月額×12か月で年収平均を算出
1.2【雇用形態別】フリーランスエンジニアと会社員エンジニアの平均年収を比較
当サイト「プロエンジニア」に登録されている「コーダー・マークアップエンジニア」の案件を集計したところ、平均年収は約588万円※1 でした。
ここから「フロントエンドエンジニア」にスキルアップした場合の平均年収は約888万円※1 にのぼり、年収1000万円以上の案件も豊富です。
また「オープン系SE・プログラマ」の案件を集計したところ、平均年収は約890万円※1 でした。
対して厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査(職種別)によると、R4年度はプログラマー(ソフトウェア作成者)の平均年収が約550万円※2、システムエンジニア(システムコンサルタント・設計者)の平均年収が約660万円※2 です。
※1:2023年6月時点で プロエンジニアに登録されているフリーランス案件情報について、それぞれ月額報酬の下限額および上限額が公開されている案件より、単価平均×12か月で年収平均を算出
※2:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査にて公開されている一般労働者の職種別賃金のうち、「決まって支給する現金給与額」12か月分に「年間賞与その他特別給与額」を加えた値を算出
このデータから、フリーランスエンジニアは会社員エンジニアより高い年収を得られているケースが多いことが伺えます。
ただし収入額が安定している会社員に対して、フリーランスエンジニアには安定性がありません。怪我や病気で仕事ができなくなると、収入がなくなってしまう可能性もあります。 またフリーランスは自分の収入から、年金や各種社会保険料、税金などを別に支払う必要があります。
独立する場合は、ただ見た目の年収総額(年商)が高いかどうかだけでなく、諸費用も計算に入れた上で考える必要があります。
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1.3【年代別】フリーランスエンジニアの年収推移
2023年1月にRelanceが行った「フリーランスエンジニア白書 1000人に聞いた!フリーランスエンジニアの実態調査」によると、専業フリーランスの年収(年商)のボリュームゾーンは、次のように推移しています。
年代 | 年収のボリュームゾーン |
---|---|
20歳代 | 200万円以上300万円未満 |
30歳代 | 300万円以上500万円未満 |
40歳代 | 500万円以上800万円未満 |
このように年齢が上がると共に、年収も増加する傾向にあります。とはいえ、20代で1200万円以上稼いでいる方がいる一方で、40代で200万円未満という方も。
フリーランスエンジニアの収入は年功序列制ではなく、習得しているスキルの種類や実力に大きく左右されます。漫然と年数を重ねるだけでなく、計画的にスキルアップを続けることが大切です。
出典:フリーランスエンジニア白書 1000人に聞いた!フリーランスエンジニアの実態調査|Relance
1.4【経験年数別】フリーランスエンジニアの年収推移
レバテックフリーランスのシミュレーションによると、フリーランスエンジニアの経験年数を軸とした見込み年収の推移は、次の通りです。
このように、どの言語でも経験年数が増えるほど年収は増加傾向にあります。
経験年数 | HTML5 | Java(業務系) | Python | JavaScript(フロント) |
---|---|---|---|---|
1年未満 | 360万円 | 480万円 | 540万円 | 480万円 |
1年~2年 | 420万円 | 600万円 | 600万円 | 600万円 |
2年~3年 | 480万円 | 600万円 | 744万円 | 780万円 |
3年~5年 | 540万円 | 732万円 | 840万円 | 960万円 |
5年以上 | 540万円 | 780万円 | 960万円 | 1020万円 |
出典:フリーランスの収入見込みをチェック|レバテックフリーランス
ただしこの「経験年数」はエンジニア経験全体の年数ではなく、各種言語などの必要スキルにおける実務経験の年数です。必要スキルが変わると丸ごと評価してもらえることはまずありませんので、注意してください。
1.5【職種別】フリーランスエンジニアの月額単価と平均年収ランキング
ここまでのデータからも分かるように、フリーランスエンジニアの単価は職種や言語に大きく影響を受けます。当サイト「プロエンジニア」に登録されている案件を職種別に12種類ピックアップして集計した平均年収の値は、次の通りです。
職種 | 平均月額単価 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
1 | プロジェクトマネージャー | 88万円 | 1056万円 |
2 | データサイエンティスト | 85万円 | 1020万円 |
3 | スマホアプリエンジニア | 78万円 | 936万円 |
4 | フルスタックエンジニア | 77万円 | 924万円 |
5 | ネットワークエンジニア | 76万円 | 912万円 |
6 | フロントエンドエンジニア | 74万円 | 888万円 |
7 | インフラエンジニア | 71万円 | 852万円 |
8 | 制御・組み込みエンジニア | 70万円 | 840万円 |
9 | Webディレクター | 59万円 | 708万円 |
10 | QA/テストエンジニア | 56万円 | 672万円 |
11 | ヘルプデスク | 52万円 | 624万円 |
12 | コーダー/マークアップエンジニア | 49万円 | 588万円 |
出典:案件情報|プロエンジニア
このように、求人数が多い(人材が不足している)職種や、プロジェクトマネージャーなどの管理職、データサイエンティストなどの高度な技術が必要な職種が高い傾向にあります。
▶ 参考記事:エンジニアは実際に稼げるの?他業種との比較|エンベーダ―
1.6【言語別】フリーランスエンジニアの月額単価と平均年収ランキング
当サイト「プロエンジニア」に登録されている案件を言語別に12種類をピックアップして集計した平均年収の値は、次の通りです。
言語 | 平均月額単価 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
1 | Go | 82万円 | 984万円 |
2 | TypeScript | 81万円 | 972万円 |
3 | Swift | 81万円 | 972万円 |
4 | Ruby | 80万円 | 960万円 |
5 | Scala | 79万円 | 948万円 |
6 | Python | 78万円 | 936万円 |
7 | Java | 76万円 | 912万円 |
8 | JavaScript | 73万円 | 876万円 |
9 | PHP | 73万円 | 876万円 |
10 | C | 69万円 | 828万円 |
11 | HTML・CSS | 68万円 | 816万円 |
12 | COBOL | 58万円 | 696万円 |
出典:案件情報|プロエンジニア
この言語別の金額は職種を問わないため、その言語を扱うPM案件なども含まれます。そのため言語の習得難度だけでなく、言語の人気(需要)が大きく反映された結果となっています。
2. フリーランスエンジニアの年収が決まる要因は?
フリーランスエンジニアの年収が決まる要因には、次のようなものが挙げられます。
2.1 スキルシートの充実度や経験年数の長さ
ここまでご紹介した平均年収データから分かるように、フリーランスエンジニアの平均年収にはスキル(使用言語やツールなど)と、その経験年数が大きく影響します。
ここで注意が必要なのは、「経験年数」とは全体の年数ではなく、「必要とされているスキルの経験年数」という点です。Javaで5年の実務経験があってもPythonが未経験であれば、Pythonの経験が5年の方と同等の評価を受けることはできません。
またスキルの経験年数が同じでも、「経験の内容」で評価が変わります。自分の実績を正しく評価してもらうためにも、フリーランスとして案件を受注する際には、できるだけ詳細なスキルシートを準備しておきましょう。
2.2 職種や参画するプロジェクトの規模
同じ言語を扱うプロジェクトのメンバーでも、コーダーとプロジェクトマネージャーでは単価が大幅に異なります。また同じ職種であっても、プロジェクトの規模でも単価が変わります。ただしプロジェクトの規模が大きければ単価が高いとは限りませんので、案件を受注する際に確認してください。
2.3 地域による賃金水準の違い
経済産業省と内閣府が提供する「RESAS(地域経済分析システム)」の産業構造マップより、情報通信業に従事する方の一人当たり賃金(年収額)を比較すると、全国平均に比べて東京都は高いことが分かります。
この賃金水準の違いは、首都圏の物価が高いからだけでなく、情報通信業の仕事が東京を中心とした首都圏に集中していることも原因に挙げられます。そのため、フリーランスエンジニアの単価にも大きく影響しています。
3. フリーランスエンジニアの年収を上げるコツや方法は?
フリーランスエンジニアの年収を上げるためには、次のようなコツや方法があります。
同じ言語でも上流工程(設計や提案)のスキルや経験を積むことで、より単価の高い案件を受注することができます。リーダーやマネージャーへステップアップすると、さらに高単価を目指すことができます。
マネジメントではなく開発のスキルを磨いていきたいという方には、フルスタックエンジニアになることがおすすめです。開発フローのどこでも足りない部分をフォローできるスキルは、現場で重宝されます。
一つずつの案件に使うリソースをセーブして、複数案件を掛け持ちするという方法もあります。案件を掛け持ちしておくと、一つの案件が突然終わっても収入がゼロの期間を作らないですむというメリットもあります。
また、同じ案件でもスキルをアピールして単価を上げてもらったり、確定申告で経費をきっちりと申告して節税対策をすることで、手取りの収入を上げるという方法もあります。
「ずっと同じ案件に入っているし、そろそろ単価を上げて欲しい。でも交渉はやりにくいな……」という方には、フリーランスエージェントの利用がおすすめです。一人一人のスキルにぴったりの案件を代わりに探してもらえるだけでなく、単価の交渉を代行してもらうことも可能です。
3.1 年収1000万円を目指すために必要なスキルセットと狙うべきポジション
年収1000万円を目指しています。必要なスキルセットを教えてください。
年収1000万円はどの職種でも充分狙えますが、例えばフロントエンドエンジニアの場合、TypeScriptに加えReact、Vue.js などのモダンなフレームワークを扱える人材が人気です。それらをメインとして扱った3年以上の実務経験に加えて、関連するツールやチーム開発の経験、コミュニケーション能力なども必要です。
インフラエンジニアの場合は、AWS などクラウドを扱うものに高単価の案件が増加しています。さらに単価を伸ばすには、設計・構築から行った経験や、セキュリティの知識が必要です。
3.2 年収2000万円を目指すために必要なスキルセットと狙うべきポジション
いずれは年収2000万円を目指したいです。どんなキャリアを積んでいくべきでしょうか。
年収2000万円を目指せるポジションとしては、ITコンサルタントやプロジェクトマネージャーなどが挙げられます。そのために必要なスキルセットとしては、5年以上のマネジメント経験や、要件定義など上流工程の経験、顧客折衝・ベンダーコントロールの経験、能動的なコミュニケーション能力などがあると有利です。
4. フリーランスエンジニアのキャリアプランと将来性
これからフリーランスエンジニアになる場合、どんなキャリアプランが考えられるのでしょうか。また将来性はあるのか、ご紹介します。
なおフリーランスエンジニアになる方法については、次の記事も参考にしてください。 フリーランスSE向けの記事ですが、独立の流れや開業に必要な手続きは全職種で共通しています。
4.1 フリーランスエンジニアのキャリアプラン
フリーランスエンジニアのキャリアプランとしては、次のような選択肢があります。
■ フリーランスエンジニアとして継続する
フリーランスエンジニアとして継続する場合は、自分のスキルや経験を常に磨き、市場価値を高めることが重要になります。需要の高い言語や分野に対応できるようにリサーチし、学習を続けることが大切です。
自分の得意分野を見つけて、ブランディングやマーケティングを行うことも有効です。
■ フリーランスエンジニアから起業家になる
フリーランスエンジニアから起業家になるという目標がある場合は、自分が作りたいサービスやプロダクトを明確にしつつ、それに適したスキルを磨ける案件を受注することが大切です。
フリーランスとして自立した技術を持ちつつ、チームやパートナーと協力して事業を拡大するための勉強も合わせて行っておきましょう。
■ フリーランスエンジニアから正社員になる
フリーランスエンジニアとして働いていると、正社員にならないかと勧誘を受けることもあります。その職場の雰囲気が自分に合っているなと感じたら、会社員に戻るのも道の一つです。
4.2 フリーランスエンジニアの将来性
結論から言えば、フリーランスエンジニアには将来性があります。特に現在「20代後半から30代前半」のミドルクラス人材については、リーマンショックから東日本大震災の影響で、多くの企業が採用を絞っていた世代に該当します。そのため安定したキャリアを築いている人材が不足している状況にあり、今後もその世代の即戦力は需要が続くと考えられます。
ミドルクラス以外では、若手の採用は今後も活発に続くことが予想されています。また中高年層からの独立についても、専門性がしっかりとしていれば全く問題ありません。
IT人材の需要や今後の見通しについて詳しく知りたい方は、ITエンジニア専門のフリーランスエージェント「プロエンジニア」のキャリアコンサルタントと、未経験からITエンジニアを目指す「プログラマカレッジ」のキャリアアドバイザーによる、次の対談記事もご覧ください。
30代後半からの独立について詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてください。
5. まとめ
フリーランスエンジニアは会社という枠組みに守られない反面、自分のスキル次第で高い収入を得ることが可能です。実際に弊社「プロエンジニア」で稼働しているプログラマーの方でも、年収1000万円を超えている方は少なくありません。
逆にフリーランスになることで、リモートワークや時短勤務などプライベートと両立した働き方を選んでいる方も数多くいらっしゃいます。本記事が、フリーランスという働き方を考える一助になれば幸いです。
弊社が運営するプロエンジニアでは、ITエンジニア専門のエージェントが、あなたに最適な案件探しを全力でサポートいたします。これからフリーランスへ転身したいと考えている方も、ぜひ一度プロエンジニアにご相談ください。
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• Typescriptやそれに付随するフロントのフレームワークを用いた開発
• AWSやMicrosoftAure,GCPなどパブリッククラウドのサービスを用いたインフラ設計・構築
といった案件で、月額70~80万円くらいが報酬のボリュームゾーンです。
TypeScriptのフロントフレームワークだけでなく、Rubyなどバックエンド言語の経験がある方であれば、フルスタックに活躍することができ、月額報酬はさらに伸びることが期待できます。
とはいえ、この記事でお伝えした年収の平均額は、あくまで参考の値です。
スキルによって個人差が大きいというのが実情です。