テクニカルサポートとはどういう仕事なのか、求められるスキルや仕事の将来性を知りたい人の悩みを解決します。テクニカルサポートとは、技術的な内容に特化した相談窓口の役割で、顧客の課題を解決する仕事です。今回は、テクニカルサポートの将来性や年収・必要なスキルなどを解説します。
1. テクニカルサポートとは?
テクニカルサポートとはどんな仕事をするのでしょうか。
今回は以下の3点について
・テクニカルサポートの定義
・テクニカルサポートの仕事内容
・テクニカルサポートとヘルプデスクの違い
それぞれ詳しく解説します。
1.1 テクニカルサポートの定義
テクニカルサポートは技術的な内容に特化した相談窓口の役割です。ハードウェアやソフトウェアの操作方法やトラブルなどの技術的な問題の解決に特化しており、パソコンやスマートフォン、組み込み機器などハードウェアを扱う企業やソフトウェアの販売会社に窓口として設けられていることが多いです。
その企業の取り扱っている製品に関する技術的質問であれば、企業ではなく、一般からの質疑応答にも対応しており、役割としてはコールセンターに近いです。電話問い合わせやメール問い合わせのほか、最近はチャット対応も増えています。
1.1.1 テクニカルサポートの業務の具体例
テクニカルサポートの業務の具体例としては以下の通りです。
- ECサイト
→サイト内で購入された商品に対する問い合わせ対応
- インターネットサービスプロバイダ
→インターネット接続に必要な周辺機器に関する設定方法やトラブルなどの問い合わせ対応
- ソフトウェアメーカー
→ソフトウェア製品の使い方やトラブルなどの問い合わせ対応
- 社内SE
→社内SEとは、自社の情報システムの企画や、安定的なシステム運用を担う職業のことで、自社で起こるトラブルなどの問い合わせも業務範囲に含まれる
1.2 テクニカルサポートの仕事内容
テクニカルサポートの仕事内容は以下の通りです。
・技術的な問い合わせへの対応
・顧客が使用する機器やソフトウェアを遠隔操作することも
・出張・訪問が必要なケースもある
・サービス改善
それぞれ詳しく解説します。
1.2.1 技術的な問い合わせへの対応
IT製品を使っていて「使い方がわからない」「マニュアルの通りに作業をしてもうまく機能が使えない」といった際の、問い合わせ窓口として対応します。顧客にエラーログの送付を依頼し、エラーログを確認し、診断ソフトウェアを用いて原因を特定します。それでも原因が特定しきれない場合には、社内SEや技術担当者と技術的なやりとりをすることもあります。
1.2.2 顧客が使用する機器やソフトウェアを遠隔操作することも
インターネット経由で顧客の端末にリモート接続し、機器やソフトウェアを遠隔操作して不具合を解消することもあります。
1.2.3 出張・訪問が必要なケースもある
ハードウェアの機器トラブルやセキュリティ管理の関係上、遠隔サポートも難しい場合には、顧客の元に出張したり訪問したりして、直接現場でサポートを行うこともあります。
1.2.4 サービス改善
トラブルシューティングや顧客からの問い合わせ、社内で出た改善案などを取りまとめてレポートにするなどの業務も含まれます。
1.3 テクニカルサポートとヘルプデスクの違い
ヘルプデスクの方がより対応範囲が広く、更にコールセンターに業務が近いです。例えば、「ソフトウェアがフリーズした」という問い合わせに対して、再起動やログアウトした上での再ログインするように指示を出したり、キャッシュのクリアといった初期対応や、Q&Aにかかれている主な対処法を伝えるのがヘルプデスクの役割です。
解決できない場合や同種の問い合わせが多発している場合に、エスカレーションする先がテクニカルサポートです。テクニカルサポートはエラーログのチェックや診断ソフトウェアによって、原因を特定します。特定しきれない場合は、社内SEとより高いレベルでの原因究明を行います。
ヘルプデスクについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
2. テクニカルサポートに必要なスキル・適正
テクニカルサポートに必要なスキル・適正は以下の通りです。
- ITリテラシー
- コミュニケーションスキル
特にコミュニケーションスキルについては、顧客の課題点を正確にヒアリングし、解決案を提示するので高度なスキルが求められます。
2.1 ITリテラシー
ヘルプデスクの業務よりも専門性が高く、自社製品全般に関する知識+ITリテラシーが必要です。ITソリューションの多くは、OS・アプリケーション・ハードウェアの組合せで稼働しているため、これらに関する技術的な知識も必要です。WindowsやLinuxなどのOSや、サーバー・ネットワークの知識を必須としている求人もあります。
またヘルプデスクの段階で、再起動など基礎的な対応は行っており、それでも解消できないトラブルがメインになります。よってログ解析や診断ソフトウェアを使いこなす能力、不具合の箇所を特定する論理的思考能力なども必要です。テクニカルサポートで対応できない場合は、社内SEとの連携が必要で、その際に技術的な側面からエラーの詳細を正確に伝えるための「基礎知識」としてのリテラシーも必要です。
2.1.1 ITパスポートの取得がおすすめ
現時点でプログラミング経験やOS知識、ハードウェアの知識などがない場合は、ITパスポートの取得がおすすめです。IT系の国家資格の入門編に当たる内容で、基礎知識を網羅的に身につけられます。
ITパスポートとは、IT系国家資格の代表格であり、「情報処理技術者試験」のうち最も簡単な難易度の試験になります。IT系資格の登竜門的な位置付けであるため、平成28年の時点で応募者数は77万人を超える人気資格になっています。
ITパスポート試験について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
2.2 コミュニケーションスキル
トラブルシューティングの際、顧客は技術面に詳しいとは限りません。よって電話やメールで報告を受けた際は、丁寧かつ正確に、エラーを再現できるだけの情報をヒアリングする必要があります。なおかつ「クレーム対応力」が必要になることが多い仕事でもあり、顧客はストレスを溜めているケースも多いです。よって忍耐力を持って、丁寧に接し続け、なおかつ必要な情報を聞き出すスキルが必要です。
3. テクニカルサポートはきつい?「やめとけ」と言われる理由
テクニカルサポートはきつい?「やめとけ」と言われる理由は以下の通りです。
・顧客のクレームを浴びる仕事
・社内SEや技術担当者との橋渡しに高いスキルが必要
・働き方が不規則になりやすい
それぞれ詳しく解説します。
3.1 顧客のクレームを浴びる仕事
顧客にとってサービスは「動いているのが当たり前」であり、エラーが発生すると強くフラストレーションを感じます。エラーを早い段階で解消したとしても、時には「おかげで仕事が進まない」などクレームの対象になってしまうこともあります。そうした顧客ばかりではなく、感謝を示されたり、ねぎらってもらえることももちろんありますが、メンタルが弱い人にとっては顧客のフラストレーションをダイレクトにぶつけられると精神的に辛くなることがあります。
3.1.1 電話が苦手な人にはきつい
新社会人の電話の利用頻度は「ほとんど使わない」が21.3%で最多で、そもそも現在の若者は電話よりも、LINEなどのチャットを利用していることが多いです。
そのため電話に慣れていない、耐性がない人が多いでしょう。テクニカルサポートは電話でのやり取りが多く発生するため、慣れていない人やそもそも電話が好きでない人は、電話応対そのものがストレスになりやすいです。
参照:新社会人の電話の利用頻度「ほとんど使わない」が21.3%で最多 「友人とは基本LINE」【新社会人白書2017】|マイナビ
3.2 社内SEや技術担当者との橋渡しに高いスキルが必要
ヘルプデスクでもテクニカルサポートでもエラーを解消できない場合、社内SEや技術担当者とやりとりをすることになります。その際にはテクニカルサポートが、不具合の原因をどのように切り分け、どのようなロジックに基づきどこまで検証したのか伝える必要があります。
なおかつその内容は正確な技術的知見に基づいている必要があり、自社製品の技術的な面について深く理解しておく必要があります。そのため、学習量が必要になるでしょう。
3.3 働き方が不規則になりやすい
働き方はコールセンターに近いため、中には24時間・365日対応の会社もあります。シフトで夜勤が必要になったり、緊急性が高いトラブルでは残業を余儀なくされることもあるでしょう。
4. テクニカルサポートのやりがいは何?
運用段階で発生したエラーには、エラーが非常に限られた条件同士の組み合わせや特定の条件下でしか発生しないなど予測できないもののこともあります。例えば「自社環境ではバグが再現できないが、顧客の環境では発生する。自社と顧客の環境の違いは何か」「(動的言語で実装している場合)一見正しく動いているように見えるだけで、静的言語でコンパイルするとエラーと判定されるようなコードが紛れ込んでいないか」など様々な仮説立てをする、思考の深さを味わえます。
トラブルシューティングをしている間は体力的・精神的にかなりきついですが、独特の魅力がある業務ではあります。また「困った人を直接的に助けられる」仕事でもあります。 またテクニカルサポートを置くサービスは、中規模~大規模サービスであることも多いです。
例えば社内で検証しているときは気づかなかったようなUIの分かりづらさが原因で、「ITリテラシーのない高齢のユーザーが思いもよらないところで操作方法がわからなくなり、問い合わせをしてくる」など意外な観点を得るきっかけにもなります。
様々な視点のユーザーの生の声に触れる機会は貴重で、ゆくゆく自分でもサービス開発してみたいなどと考えているならば参考になることも多いです。
4.1 テクニカルサポートの将来性
テクニカルサポートからキャリアパスを始め、管理職としてマネジメントを担当し、チームリーダーや部門の管理職へと就くのが一般的なキャリアです。またサービスエンジニアとしてインフラやハードウェア/ソフトウェア両面の豊富な知識を身につけ、なおかつ顧客とのコミュニケーションを豊富に行い、高い顧客満足度を得た人材であればITコンサルタントの道もあります。ソフト、ハード、インフラの知識とコミュニケーション能力、マネジメント力を併せ持つ人材は多くないため、市場価値は高くなるでしょう。
一方、テクニカルサポート職自体の将来性はそれほど高くないです(求められるスキルが初歩のITリテラシー+コミュニケーション能力のみのため)。類似した業務のコールセンター業務は東南アジアへの移転が続いております。例えば、セブ島から日本のコールセンターの対応をするというケースもあります。開発も簡単なものであれば海外アウトソーシングが盛んで、将来的にはテクニカルサポートの移転もあり得るでしょう。
5. テクニカルサポートの給与の目安
テクニカルサポートの給与の目安を年齢別にご紹介します。
25~29歳 | 30~34歳 | 35~39歳 | |
---|---|---|---|
平均年収 | 368万円 | 429万円 | 485万円 |
全体平均比 | -30万円 | -33万円 | -41万円 |
最高額 | 700万円 | 1,100万円 | 1,000万円 |
テクニカルサポートは、未経験からITエンジニアを目指す場合の登竜門的な位置付けの存在なので、平均年収は高くはありませんが、一方で最高は1100万円ももらっている方も存在しており、担当する業務範囲次第だと言えるでしょう。
6. テクニカルサポートになるには
自社製品の知識+ITリテラシーがあり、忍耐強いコミュニケーション力がある人ならば未経験からでも十分になれます。一方でテクニカルサポート職のみを続けるというよりは、そのさきのマネジメント職などキャリアパスを見据えておく方が良いでしょう。その際には、なぜテクニカルサポートになりたいのか、志望理由を明確にしておくと良いです。
7. まとめ
今回はテクニカルサポートの将来性や年収・必要なスキルなどを解説しました。テクニカルサポートは、IT業界の登竜門的な位置付けの職種なため、未経験からでもなりやすいです。人とコミュニケーションを取ることが苦手ではない人ではあれば、おすすめできる職種です。本記事をよく読んで、テクニカルサポートについての理解を深めて頂ければ幸いです。