IT関連のシステムや製品について、利用者がわからないことや困ったことがあった際にサポートを担う「ヘルプデスク」という職種について、具体的な仕事イメージから、必要なスキル、求人の実態まで、ヘルプデスクについて解説します。
1.ヘルプデスクとは
ヘルプデスクとは、システムに対する問い合わせ、またはトラブルが発生している状態を正確に把握し、原因を特定して解決する仕事です。
自社の社員や、サービスを提供している法人からの問い合わせのほか、製品を利用しているユーザーサポートなど業務内容は幅広く、お問い合わせ窓口として顧客とのファーストコンタクトとなるポジションです。
2.ヘルプデスクの業務内容
利用者から寄せられるIT関連の問合せに対応し、解決に導くのが、ヘルプデスクの主な業務内容です。
ヘルプデスクの業務は、大きく分けて社内ヘルプデスクと、社外ヘルプデスクの2種類に分けることができます。
2.1 社内ヘルプデスク
まず、社内の情報システム部において、自社の社員からの問い合わせ対応を行う社内ヘルプデスクです。
社内システムの使い方、画面の操作方法、各Officeの使い方に関するサポートなど、社員からのあらゆる問い合わせ対応を行います。 その他、社内OA機器の管理メンテナンス、システムのユーザーアカウント管理、PCのセットアップやOSインストール、サーバーやネットワーク等のインフラ管理など、企業や担当する部署によって初歩的なものから専門的なものまで、業務内容も多岐にわたります。
2.2 社外ヘルプデスク
続いて、社外ヘルプデスク業務です。自社が提供するサービスを利用している一般ユーザからの問い合わせ対応が主な業務となります。
コールセンターの立ち位置として、電話口でお問い合わせ窓口として対応するほか、問い合わせ内容をデータベースに登録したり、その場では対応しきれない大きな問題は関連部署にエスカレーションして対策を講じるなど、問い合わせ受付から解決までの、一連の業務を担当します。
2.3 社内ヘルプデスクと社内SEの違い
社内ヘルプデスクと社内SEの主な違いは、社員からのとっさのトラブル対応を行うか否かの違いが挙げられると思います。 ただし、企業によっては両者は厳密に分かれておらず、ヘルプデスク業務を社内SEが受け持つ場合もあるようです。
種類 | ユーザー | 業務内容 |
---|---|---|
社内ヘルプデスク | 自社の社員 | 社内システムや社内インフラの問い合わせ対応 |
社内SE | 自社の社員 | 社内システムや社内インフラの構築から運用保守までを担当 |
社外ヘルプデスク | 社外の一般ユーザー | 自社が提供する製品やサービスに寄せられる、電話やメールでの問い合わせに対応、関連部署との連携による顧客サポート |
社内ヘルプデスクとして、システム関連の社員サポートを通して自社に貢献するか。もしくは社外ヘルプデスクとして、顧客サポートを通して自社のシステムの運営・発展に貢献するか。自分のなりたいヘルプデスク像によって、選ぶべき求人情報も変わってきます。
社内SEについての詳細は、以下の記事で紹介しています。こちらも合わせてご覧ください。
3.ヘルプデスクに必要なスキル
3.1 PCの基本操作
まず必要なのは、WordやExcelなどPCの基本操作スキルです。
PCセットアップやネットワークへの接続のほか、Web制作に必要なHTMLの基礎知識などがあると仕事の幅も広がります。
3.2 製品やサービスの深い知識
当然のことではありますが、担当する製品やサービスに付随する業務知識が必要です。
問い合わせ内容を解決する仕事であるがゆえ、担当するシステムや製品に対してどんな質問であっても真摯に対応することが求められます。
細かい仕様や使い方など、担当するシステムについて熟知しておく必要があります。
ヘルプデスクとして仕事をするためには、担当するそのシステムについて、自分がいかに興味を持って臨めるかが大前提です。
お問い合わせ内容は、ある程度マニュアル化されている場合がほとんどですが、中には特殊なケースだったり、その場では解決できない場合もあるでしょう。その都度自分で調べたり、他のメンバーに意見を仰ぐことも必要となります。
3.3 コミュニケーションスキル
相手が伝えようとしていることを電話口(メール)だけで正確に聞き取ることが必要となります。
対面の場合だと、身振りや図を用いた説明も可能ですが、電話もしくはメールの文面だけで、相手の要件を聞き取る、こちらの要件を伝えるという、言葉のみでのコミュニケーションスキルが欠かせません。
ありとあらゆる顧客の要望に対し、まずは「はい、〇〇をご希望ですね」「かしこまりました、〇〇の件でお困りですね」と相手の要件を端的にまとめ、自分が理解していることを最初に伝えることで、顧客は「自分の意志がしっかり伝わっているな」と安心し、話をスムーズに進めることができます。
また、顧客と直接やり取りをするヘルプデスクは、その企業の顔となります。
電話口での対応一つによっては、企業に対する印象を左右しかねると言っても過言ではないでしょう。話し方や、メールの書き方一つをとっても、人によって受け取り方も異なりますので、顧客に寄り添った親切な対応が求められます。
中にはクレーム対応となる場合もあるので、ITのスキルだけでなく、接客業としてのスキルも必要と言えるでしょう。
3.4 英語のスキル
顧客、またはユーザーが日本人であるとは限りませんので、場合によって英語スキルが必要となります。
これからのITエンジニアに英語が必要となりつつあることは様々なところで言われていますが、ヘルプデスクにとっても例外ではなく、英語力はあるに越したことはありません。英語のスキルがあれば、求人の選択肢も増え、キャリアの幅も広がるでしょう。
言語は習得に時間がかかるだけでなく継続することが求められます。そのため、英語のスキルはヘルプデスクだから必要というよりも、ITエンジニアである以上、もはやどの職種であっても必要であると捉えて学んでいくべきなのかもしれません。
4.ヘルプデスクのキャリアパス
ヘルプデスクは、顧客やユーザーからの声が直接届く場所となります。
そのため、ヘルプデスクで抱える問題点は、顧客にとってはもちろんのこと、そのシステム自体が抱える問題、ひいては企業が抱える問題であるとも言えます。
ヘルプデスクとして経験を積んだリーダーやマネージャーともなれば、より良いシステムへ更改するための提案、顧客ニーズのデータ分析のほか、問題解決のために新規システム構築を企画していく業務などが加わることもあります。
業務で得た経験や知識を生かして、システムエンジニアやネットワークエンジニア、インフラエンジニアにキャリアチェンジするなど、その後のキャリアパスも様々です。
また、ヘルプデスクとしてフリーランスになるというキャリアパスも可能です。詳しくは次の章、5.ヘルプデスクとしてフリーランスになるには を参考にしてみるのも良いでしょう。
5. ヘルプデスクとしてフリーランスになるには
5.1 フリーランスに必要なスキル
フリーランスでは会社員とは違い仕事を自ら獲得する必要があるため、仕事を探す、獲得するというスキルが必要になります。加えて、社会保険や健康保険など税金に関することや経費の計算や支払いも自分で行う必要があります。また、時間の管理や継続して仕事を獲得するためのプランニングなども会社員以上に必要になると言えるでしょう。
これらをまとめるとフリーランスとして必要なスキルは以下の4つになります。
- 仕事を獲得するための営業力、交渉力
- 体調管理を含めた自分を律する事ができるセルフマネジメント力
- 確定申告・社会保険の知識や手続き
- 常に新しい社会の需要や供給にアンテナを張るといった情報収集力
5.2 ヘルプデスクのフリーランス案件内容と単価相場
派遣形態でも雇用が多いヘルプデスクですが、ヘルプデスクでフリーランサーになる最大のメリットは手取り額が上がるということです。 実際、自社で所有しているヘルプデスクのフリーランス案件の単価相場はおよそ30万円~50万円となっています。
下記に一部の案件の内容と単価を抜粋しました。月額単価の違いでプラスされる業務内容、必須スキルの違いがあることが分かります。
単価 | 業務内容 | 必須スキル |
---|---|---|
~30万円 | ・保守受付・作業手配・工事調整・進捗管理 ・電話応対・メール処理・業務資料の収集や作成 ・製品の問い合わせ(メーカー窓口) ・各種調整(導入時、保守対応、手配) ・リモート作業 ・監視業務 ・導入後の顧客課題管理 ・顧客利用マニュアル作成 ・社内利用マニュアル作成…など |
・ヘルプデスク業務経験 ・ITパスポートなど初級資格 ・手順書、マニュアル作成経験 ・ドキュメント作成経験 ・Word、Excel、PowerPointを使いこなせる方 ・几帳面な方(ミスの無いタイプの方) ・素直な方 ・サポート業務実務経験のある方 ・キッティング経験のある方 |
40万円~60万円 またはそれ以上の場合 |
※上記の内容にプラスして ・開発担当へのエスカレーション、打ち合わせ参加 ・機能追加や改修対応(※スキルに応じて) ・海外メンバーとのやり取り ・企画立案・開発、運用保守・改善 ・社内、社外からの仕様確認対応‥など ・OS、HW故障時の対応 ・L2SW、L3SWの障害対応経験、コマンドラインでの操作 |
・VLOOKを用いた実務経験 ・Windowsサーバーの運用保守経 ・日常会話程度の英会話能力(TOEIC600点目安) ・ビジネスレベルでの英会話力 ・議事録、報告書化が出来る方 ・IT環境の構築と運用 ・マルチタスクの処理能力が高い方 ・NW運用保守経験 ・プロジェクトリーダー経験 ・データベース言語の現場での実務経験(※現場はLAMP環境) ・Linuxコマンドの理解 ・WindowsOSの知識 |
5.3 ヘルプデスクのフリーランス案件の探し方
ヘルプデスクのフリーランス案件を探す確実な方法として、フリーランス案件を多く取り扱っているエージェントに依頼するという手段があります。 会社員とは違いフリーランスでは、仕事がなければ報酬もゼロとなってしまうため、案件を探す、仕事を獲得するということは非常に大切なポイントとなります。
エージェントに依頼するメリットとして、営業を任せることができるという他にも企業の需要やヘルプデスクの将来性についてなどを知ることが出来たり、スキルシートの書き方や見せ方、面談の練習などをしてもらえるなどの多くのメリットがあります。
大半のエージェントはwebに掲載していない案を多く所有していることがほとんどです。 興味や気になる案件、希望の案件があれば一度応募または質問をしてみても良いでしょう。
6.ヘルプデスクで取得しておきたい資格
まずPCの基本操作と、ITの基礎知識が必要となります。
6.1 マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
マイクロソフトOfficeの製品操作のスキルを証明する資格です。
オデッセイコミュニケーションズ主催で、Word、Excel、PowerPoint、Access、Outlookの4製品について、スペシャリストレベルとエキスパートレベルに分かれ、それぞれのバージョンごとに試験が分かれています。
これまで何となく利用していたOfficeの操作であっても、改めて勉強することで目から鱗な部分もあるかと思います。「PCの基本操作」というスキルを客観的に証明する資格としてオススメです。
(参考URL)マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
6.2 ITパスポート/基本情報処理技術者
IPAが主催しているITパスポートは、エンジニアだけでなく全ての社会人が必要とするIT知識を問うものとなっており、ITの基礎知識を得ることができます。
詳細はこちらの記事で紹介していますので、参考にしてください。
また、より深い知識を学びたい場合は、同じくIPA主催の基本情報処理技術者の試験があります。
こちらはSE(システムエンジニア)の登竜門とも言われ、多くのIT企業で取得が推奨されています。ITエンジニアとして活躍するためにはまさに必須であり、キャリパスを考える上でも役立つ資格です。
詳細はこちらの記事で紹介していますので、参考にしてください。
6.3 ITILファンデーション
ヘルプデスクで取得する資格として、ITシステム運用のノウハウ集とされるITILファンデーションもおすすめです。
2018年3月時点では、ITIL(シラバス2011)の試験が最新で、PeopleCert認定の試験となります。システム運用の体系的な知識を現場へフィードバックすることで、作業効率をUPしたり、ノウハウを蓄積するなど業務の改善にも役立ちます。
詳細はこちらの記事で紹介していますので、参考にしてください。
7.ヘルプデスクには未経験可の求人もある
ヘルプデスク=システムに精通している人というイメージから、実務経験を要すると思いがちですが、転職活動においては、未経験で応募できる会社もあります。
未経験者を採用する企業の多くは、ビジネスマナーからIT研修まで万全な研修体制をもった会社がほとんどです。第二新卒や異業種からの転職であっても、ヘルプデスクとしてIT業界へのジョブチェンジを果たし、スキルを磨いてエンジニアとして活躍していくことも可能です。派遣やフリーランスでの案件もありますので、キャリアパスの選択肢も広がるでしょう。
基本的なPC操作に関連したヘルプデスクの求人や、サーバーやネットワークに関する専門的なヘルプデスクの求人など、企業によって求人内容も様々です。
また、社内SEとヘルプデスクの兼任だったり、システム運用の求人だったりと、「ヘルプデスク」という言葉自体も企業によって捉え方が異なっているようです。
幅広くゼネラリストとして成長したいのか、特定の分野でのエキスパートを目指すのか、自分がどのように活躍したいかを予め決めておくと、求人チェックもスムーズかと思います。
8.まとめ
いかがでしたでしょうか。
ヘルプデスクは、企業にとっての問い合わせ窓口となります。
あらゆる問い合わせにも対応できるだけの知識やスキルが必要なため、成長を感じられるだけでなく、やりがいも多い職種でしょう。常にユーザーとのやり取りが発生するので、ITに興味があり、人と話すことが好きな方にもオススメの職種です。ぜひヘルプデスクの求人にチャレンジしてみてください。