ネットワークエンジニアは、安定的な需要と人気があるIT関係職種のうちのひとつです。今回はそんなネットワークエンジニアの仕事内容や必要なスキルから、その後のキャリアパスまで、わかりやすく解説します。
1. ネットワークエンジニアの定義
ネットワークエンジニアとは、個々のサーバーやPCなどをつなぐネットワーク環境を設計、そして構築し、さらに完成したネットワークにトラブルが起こらないように保守運用するエンジニアのことです。
クライアントの要望をしっかりと紐解き、必要とされているネットワーク環境を作り上げるためのスキルが必要です。また近年では、セキュリティに関する知識も重要視されています。
ネットワークエンジニアには、ITエンジニアと聞いて思い浮かびがちなプログラミングをする場面はほとんどありません。ケーブル、スイッチ、ルーターといった、ハードウェアの実機を扱う場面が多いという特徴があります。
1.1 ネットワークエンジニアとサーバーエンジニアの違い
ネットワークエンジニアとサーバーエンジニアは、共にインフラエンジニアとも呼ばれています。その仕事内容を比較してみると、次のような違いがあります。
■ ネットワークエンジニア=ネットワークの構築・運用がメイン
サーバーや個々の電子機器をケーブル(無線含む)でつなぐために、ルーターやスイッチといった中継機器を効率よく配置することを考える「ネットワークの設計」。設計をもとに実際にケーブルを配線する「ネットワークの構築」。利用を始めたネットワークをトラブルなく保っていく「ネットワークの運用・保守」が主な業務です。つまりネットワークに関するスキルに特化したITエンジニアと言えるでしょう。
■ サーバーエンジニア=サーバーの構築・運用がメイン
顧客要望を過不足なく満たすために必要なサーバーのスペック計算や、OSやデータベース、ミドルウェアの選定などの「サーバーの設計」。実際にサーバーの設定を行う「サーバーの構築」。そして利用を始めた「サーバーの運用・保守」が主な業務です。つまりサーバーに関するスキルに特化したITエンジニアと言えるでしょう。
2. ネットワークエンジニアの仕事内容
では、ネットワークエンジニアのさらに詳しい仕事内容について確認しましょう。
2.1 上流工程
まず上流工程として、「要件定義」「設計」「構築」の3つのフェーズがあります。これらのフェーズで行う作業には、次のようなものがあります。
要件定義 | • 顧客要望のヒアリング
• 制約条件の確認 • 要求仕様書の作成 |
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設計 | • 論理構成の作成
• 物理構成の作成 • スケジュールの決定 |
構築 | • ハードウェアの発注
• ハードウェアの設置(配線など) • ネットワークの設定 • 動作テスト |
ネットワークエンジニアの上流工程について、より詳しく知りたい方は次の記事も参考にして下さい。
2.2 下流工程
次に下流工程として、「運用」「保守」「監視」の3つのフェーズがあります。これらのフェーズで行う作業には、次のようなものがあります。
運用 | • 設定の更新
• 機器のリプレース検討 • 機器のリプレース作業 |
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監視 | • ログの監視
• アラートの検出 • アラートの原因調査 • アラートの報告 |
保守 | • 障害の原因特定
• 障害発生か所の修正 • 障害発生機器の交換 |
ネットワークエンジニアの下流工程について、より詳しく知りたい方は次の記事も参考にして下さい。
3. ネットワークエンジニアに必要なスキルと適性
では次に、ネットワークエンジニアに必要なスキルと適性について、それぞれ詳しくご紹介します。
3.1 適性編
ネットワークエンジニアに適性がある人の特徴としては、次の3点が挙げられます。
■ 同じ作業の繰り返しを1つ1つこなせる
ネットワークエンジニアは専門性の高い業務ゆえに、同じ作業を繰り返す場面も多くなります。同じフォーマットの設計書をいくつも書き続けたり、一日中構築作業を続けたりすることを苦に感じない方は、ネットワークエンジニアに適性があると言えます。
■ 任された仕事を期日までにこなせる
任された仕事を工程表通りに進め、期日までにこなせることも重要です。ただ、期日に向けて全力で頑張ればそれで良いということではありません。もし期日までに終わることが難しそうな場合は早めに状況を見極めてリーダー等に報告し、本当に遅れてしまう前にリカバーできる柔軟性も必要です。
■ 業務に適したコミュニケーション能力
ネットワークエンジニアは、チームで作業する場面が多くあります。チームメンバーと円滑に情報交換し、連携していくためのコミュニケーション能力が必要です。
さらにネットワークエンジニアとしてのキャリアを積んでいくと、上流工程、つまり顧客との対話を行う状況も増えていきます。そこで顧客の要望をスムーズに引き出して理解するためにも、適切なコミュニケーションスキルが必要です。
3.2 スキル編
次にネットワークエンジニアに必要なスキルとしては、次の3点が挙げられます。
■ TCP/IP全般の基礎知識
ネットワークエンジニアに最も必要なIT知識と言えるのが、このTCP/IPの基礎知識です。TCP/IPとは通信プロトコル(通信規約)のことで、コンピュータが互いに通信するときのお約束のようなものです。ネットワークを扱う際には、必須の知識となっています。
■ 論理的思考能力
例えばネットワークにトラブルが発生した場合、素早く冷静にその「発生原因」を特定し、「対処方法」を検討するためにも、論理的思考能力が必要です。さらにトラブル自体が発生しないように、ネットワークを設計する時点で必要な要件に漏れがないか、検討するためにも論理的思考能力が重要となります。
■ クラウド
近年では実際にサーバーを配置しケーブルでつなぐという場面は徐々に減り始め、クラウドへの移行が進んでいます。そのためネットワークエンジニアにも、クラウドの利用を含めたネットワーク構築に対応するためのスキルが求められています。
4. ネットワークエンジニアを目指す人におすすめの資格
ネットワークエンジニアを目指す人におすすめの、人気かつ実用的と言われている資格2つをピックアップしてご紹介します。
4.1 CCNA
シスコシステムズ認定資格は、ネットワーク機器最大手であるシスコ社が公式で実施している認定資格です。
シスコ社製品を扱えることはネットワークエンジニアにとってほぼ必須条件であり、またその資格の実用性の高さから、世界中に多くの取得者のいる資格となっています。
さらに下のエントリレベルとしてCCTという資格も提供されていますが、ネットワークエンジニアとしてはCCNA以上を取得しておきたいところです。
受験資格 | 13歳以上であること |
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開催時期 | 随時 |
料金 | 33,600円(税抜) |
受験方法 | ピアソンVUEのサイトを開き、希望する会場と日時を指定して予約する。試験はCBT方式で行われる |
公式サイト | https://www.cisco.com/c/ja_jp/training-events/training-certifications/certifications/associate/ccna.html |
4.2 CCNP
CCNPは、前述のCCNAの上位資格です。
プロフェッショナルの名前の通り7分野に細分化されており、より専門性の高い内容が問われます。
このCCNPに合格することで、シスコ社製品の取り扱いに関して確かな知識を持っていることを証明することが可能です。
受験資格 | 必須条件なし |
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開催時期 | 随時 |
料金 | 78,400円(税抜) |
受験方法 | ピアソンVUEのサイトを開き、希望する会場と日時を指定して予約する。試験はCBT方式で行われる |
公式サイト | https://www.cisco.com/c/ja_jp/training-events/training-certifications/certifications/professional.html |
5. ネットワークエンジニアのキャリアパス
では肝心の、ネットワークエンジニアになった後はどのようなキャリアパスを描く方が多いのか、ご紹介します。
5.1 スペシャリスト
ネットワークエンジニアになった後のキャリアパスとして挙げられるのは、まず「スペシャリスト」、つまりその分野では誰にも負けないという深い知識を持った専門家です。もちろん他のIT知識も基礎的なものは広範囲に必要ですが、さらに特定の分野に強みを持った人材がスペシャリストと呼ばれます。
そのスペシャリストの深掘り方法にも、色々なパターンがあります。例えばCisco社製品など特定の機器や製品に特化したスペシャリストの場合を、その資格取得のパターンで考えてみましょう。
前項でご紹介したCCNPですが、7つに細分化された分野を持っています。このうち日本で一番人気とされている「CCNP Enterprise」に合格した場合、次に考えるルートとして次の2つが挙げられます。
• CCNPシリーズのその他の種類の合格を目指して、全分野を網羅する
• 上位資格である「CCIE Enterprise」の合格を目指し、さらに一つを極める
これはどちらもスペシャリストですが、より自分に向いている方のパスを見極めて選択することが重要です。
さらに近年は、「ネットワークのセキュリティ対応に特化している人」や「クラウド対応に特化している人」などに注目が集まっており、さまざまな分野で専門性の高い人材が求められています。これから始める方にはその辺りを意識しておくことがおすすめです。
5.2 ゼネラリスト
対するゼネラリストは、ITに関するより広範な知識を身に着け、プロジェクト全体の管理や提案、そしてチームのリーダーができる人材のことを示しています。
その先はプロジェクトマネージャーとしてスムーズな進行を統括したり、社内であれば管理職などを目指す場合もあります。なお社外の場合は、ネットワーク構築に特化したコンサルタントを目指すという道も存在しています。
どの方面が自分に適しているのか、試しに探してみて下さい。
6. まとめ
今回はネットワークエンジニアについて、仕事内容や必要なスキル、キャリアパスなどをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。本記事がネットワークエンジニアに興味を深めるきっかけとなりましたら幸いです。