IT系の資格には数多くのベンダー資格が存在しますが、それゆえにどの資格を選択すればいいのか、迷ってしまうこともあるのではないかと思います。
そこで今回は慢性的に不足していると言われているネットワークエンジニアにおすすめの資格として、必要な知識と技術を世界的に証明できると言われている「シスコ技術者認定」のうち「CCNA」をピックアップして、難易度から具体的な勉強方法まで、詳しくご紹介したいと思います。
1. CCNAとは?
「CCNA(Cisco Certified Network Associate)」は、世界最大手のネットワーク関連機器メーカーであるシスコシステムズ社が実施する、ネットワークエンジニアの技能を認定する試験です。同社の主力商品であるCiscoルータ、Catalystスイッチに関する技術力の証明となるだけでなく、基礎的なネットワーク技術(TCP/IPなど)を持つことの証明にもなります。
世界共通基準の資格であり、ネットワークの世界では最も有名な資格でもあります。
2. 試験のグレードと分野
2.1 試験のグレードは6種類
シスコ技術者認定には6つのグレードがあり、簡単な方から「エントリー」「アソシエイト」「スペシャリスト」「プロフェッショナル」「エキスパート」「アーキテクト」の順です。その中で最もポピュラーなものがアソシエイトレベルに属する「CCNA」です。
2.2「CCNA」は現在1種類のみ!
以前のCCNA試験は複数に細分化されていましたが、現在は統合され「200-301 CCNA」の一種類のみとなりました。
3. CCNAの難易度は?
3.1 難易度と勉強時間の目安
弊社が運営する、未経験から2ヵ月でITエンジニアを目指すスクール「エンジニアカレッジ」の講師である竹本さんに、CCNAに合格した方の勉強時間の目安を伺ってみました。
エンジニアカレッジ講師 竹本 季史
全くの未経験からIT業界に飛び込むことは勇気がいると思います。ただ、それはあなただけではなく、私自身も同じくそうでしたし、エンジニアカレッジを卒業した多くの卒業生も皆始めは全くの初心者でした。エンジニアカレッジには初めてITインフラを学ぶ最適な環境が用意されています。あとはあなたが初めの一歩を踏み出すだけです。これからの自分自身に大いに期待してください。
3.2 他のネットワーク系試験との難易度を比較
ネットワークエンジニア向けの試験である「シスコ技術者認定試験」「LinuC」「LPIC」「情報処理技術者試験」の4種類について、経済産業省の定める「ITスキル標準※1」のレベルを比較してみましょう。
試験の種類 | レベル1 | レベル2 | レベル3 | レベル4 |
---|---|---|---|---|
シスコ技術者認定試験 | (CCST)※2 | CCNA | CCNP | CCIE |
LinuC | LinuC-1 | LinuC-2 | LinuC-3 | (LinuC システムアーキテクト)※2 |
LPIC | LPIC-1 | LPIC-2 | LPIC-3 | - |
情報処理技術者試験 | ITパスポート | 基本情報技術者試験 | 応用情報技術者試験 | ネットワークスペシャリスト試験 |
出典:ITSSのキャリアフレームワークと認定試験・資格とのマップ Ver11r2
※1:ITスキル標準(ITSS)とは、高度なIT知識・技能を有する人材を育成するために、経済産業省が定めたスキル体系のこと。
※2:()内の試験は、ITSSの発表後に追加となったレベルの試験を、弊社で仮に割り当てたものです。
3.3 CCNAは初心者でも合格できる?
上の表のように、CCNAはLinuCやLPICではレベル2相当、情報処理技術者試験では基本情報相当の難易度ということが分かります。
初心者が簡単に受かるレベルではありませんが、少しでもシスコ社製品の実務経験がある方や、未経験でも本気でネットワークエンジニアを目指している方には、挑戦してみるのにちょうどよいレベルの試験です。
とはいえ「いきなりCCNA受験は、受験料が高額だし不安…」という方には、LinuC-1からの挑戦もおすすめです。
これからCCNAを勉強してネットワークエンジニアを目指しているという方には、未経験から完全無料でITエンジニアへの就職を目指すITスクール「プログラマカレッジ」もおすすめです!
今なら、インフラエンジニアに人気の資格「LinuC」の受験料が無料になるキャンペーンも行っています。
3.4 初心者にはシミュレーション問題が難易度の分かれ目に
「200-301 CCNA」では、シミュレーション問題と呼ばれる「実機の設定をシミュレートする記述式の問題」が出題されます。実機を操作したことのない方には、これが特に難関になります。
個人で購入するには実機はとても高価なので、Web上で動くシミュレーターなどを活用して学習を進めて下さい。
シミュレーター付きの参考書について、詳しくは「10. CCNAのおすすめ参考書&問題集」にてご紹介します。
また、Ciscoから公式でシミュレーターも提供されています。英語に抵抗感のない方は、こちらを利用するのがおすすめです。
Cisco Packet Tracer の詳しい使い方については、弊社が運営する「プログラマカレッジ」の記事も参考にしてください。
▶ CCNAの勉強方法|実機なしの初心者が独学で合格する方法も解説
4. CCNAの合格点と合格率は?
CCNAの問題はランダムに出題されるため、同じ会場で同時に受けている方でも異なる出題内容となっています。合格点も同様で、受けた人により異なります。
合格ラインは公式では非公開となっていますが、後述の勉強サイト「Ping-t」の合格体験記コーナーに、合格された方々によって「何点で合格したか」の口コミが多数投稿されています。
「何回目で何時間勉強して合格した」などの感想も多く投稿されていますので、合格率などを知りたい方も一度のぞいてみてはいかがでしょうか。
5. CCNA取得のメリット
CCNAを取得すると、次のようなメリットがあります。
• 世界に通用する資格である
• ネットワークエンジニアとしての基本的なスキルが備わっていると証明できる
• 自分自身が今持っているスキルの棚卸しになり、レベル感が分かる
• 初心者の場合、CCNAを学べば効率よくネットワークの基礎を学ぶことができる
6. CCNAの試験時間・出題形式・合格点
対象試験 | 200-301 CCNA v1.1 |
---|---|
試験時間 | 120分 |
問題数 | 非公開 |
出題形式 | CBT(コンピュータ入力)方式 |
合格点 | 非公開 |
前提条件 | 特になし(ただし年齢制限あり) |
履歴書の表記 | シスコ技術者認定 CCNA |
6.1 試験時間
試験時間は120分です。CCNAは選択問題だけでなく筆記問題が存在します。さらに出題数も多いため、あまり1問に悩まず、まずは最後まで解ききることがおすすめです。
6.2 出題形式
CBT(Computer-Based Testing)方式とは、紙の問題用紙・解答用紙ではなく、コンピュータを用いて問題表示・解答入力を行う方式です。マウスで操作する選択問題や、キーボードで操作するシミュレーション問題などが出題されます。
6.3 CCNAの受験資格と前提条件
13 歳未満の場合、親の同意があったとしても受験および認定資格の取得はできません。13歳から17歳の場合は、保護者の同意があれば可能です。詳しくは公式サイトのポリシーを確認して下さい。
6.4 履歴書の表記
履歴書には正式名称で書くことが一般的ですので、次のように表記できます。
「令和○○年○月 シスコ技術者認定 CCNA 合格」
ただし履歴書はあまり厳密に書く必要はなく、「分かれば良い」という側面があります。もっとシンプルに書いても、相手に伝わるようであれば問題ありません。
7. CCNAの試験範囲
2025年1月時点で最新バージョンであるv1.1の試験範囲は、次の通りです。
試験範囲についてさらに詳しく確認したい方は、リンク先の公式サイトをご覧下さい。
• ネットワークの基礎
• ネットワークアクセス
• IPコネクティビティ
• IPサービス
• セキュリティの基礎
• 自動化とプログラマビリティ
8. CCNAにはどんな問題が出題されるのか
CCNAの出題形式には、多肢選択式だけでなく、ドラッグ&ドロップ式、キーボードを使用したコマンド入力式などがあります。
詳しくは公式サイトに出題形式を説明するチュートリアル動画がありますので、試験を受ける前に確認しておくと安心です。
Web問題集サイト「Ping-t」にて、ドラッグ&ドロップ式のサンプルが掲載されています。勉強サイトについて詳しくは、「12. CCNAの勉強サイト」にてご紹介いたします。
9. CCNAの勉強方法
9.1 ネットワークの実務経験が無い方
CCNA試験には「シミュレーション問題」という「実機の設定を疑似的に行う問題」も出題されるため、参考書を読むだけでなく実機を動かして試せる環境を作ることが重要です。
しかし実機を個人で準備するのは難しいのではないかと思います。Cisco公式のシミュレーター(Cisco Packet Tracer)のインストールが難しいという場合は、後述の参考書「短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本」にてブラウザ上で動くシミュレータが提供されていますので、ネットワークの環境準備が難しい方は利用してみてはいかがでしょうか。
9.2 ネットワークの実務経験が有る方
まずは試験範囲の把握から始めて下さい。ひと通り参考書(白本)に目を通し、初見の項目があればまずそこを理解することから始めることがおすすめです。
ひと通り試験範囲を理解することができたら、あとは時間のある限りひたすら後述の学習サイトで提供されている練習問題を繰り返し解いておくことがおすすめです。
10. CCNAのおすすめ参考書&問題集
10.1 ネットワークの実務経験が無い方
1週間でCCNAの基礎が学べる本
著者:宮田 かおり
出版社:インプレス
発売日:2021年4月13日
価格:2,640円
ページ数:336ページ
出典:Amazon
完全初心者からCCNAを目指している方へ、ぜひ最初に読むことをおすすめしたい本です。ネットワークに関する基礎がとても分かりやすく解説されています。
逆に学校などで情報系を専攻していた方にはどこかで聞いたことのある内容ばかりですが、手軽に復習することができます。また7章にはシスコ製品についての解説ありますので、製品についてあまり知らないという方にもおすすめです。
10.2 ネットワークの実務経験が有る方
シスコ技術者認定教科書 CCNA 完全合格テキスト&問題集[対応試験]200-301(通称:白本)
著者:林口 裕志、浦川 晃、中道 賢(監修)
出版社:翔泳社
発売日:2020年6月24日
価格:4,268円
ページ数:888ページ
出典:Amazon
参考書と問題集、さらに2回分の模擬試験が1冊にまとまっています。これが全て理解できれば、あとは試験日までひたすら練習問題を解いていくだけと言える一冊です。
10.3 ネットワークの設定を実行できる環境が無い方
短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本
著者:のびきよ
出版社:マイナビ
発売日:2014年9月19日
価格:1,523円
ページ数:336ページ
出典:Amazon
ブラウザ上で動くシミュレーターが提供されています。本試験では、ネットワークの設定を模擬的に行うシミュレーション試験が実施されます。実機が触れない方は、ぜひ何らかのシミュレータで設定の練習など行っておくことをおすすめします。
CCNAの問題集では、次の2冊が人気です。
試験範囲を一通り把握し終えた方は、ぜひ問題集を解いてみて下さい。
Cisco試験対策 Cisco CCNA問題集 [200-301 CCNA]対応(通称:赤本)
著者:Gene、松田 千賀
出版社:SBクリエイティブ
発売日:2020年9月19日
価格:3,960円
ページ数:760ページ
出典:Amazon
徹底攻略Cisco CCNA問題集[200-301 CCNA]対応(通称:黒本)
著者:株式会社 ソキウス・ジャパン
出版社:インプレス
発売日:2021年4月21日
価格:3,828円
ページ数:688ページ
出典:Amazon
11. CCNAの過去問
シスコ技術者認定については、公式での過去問公開はありません。また公式で受験者に対して試験問題の漏洩を禁止しているため、正式な手段で過去問を手に入れることは実質不可能となっています。
その代わり次の項で紹介する2つの勉強サイトにて、とても秀逸な練習問題が公開されています。実務経験者など「まずは問題を見て難易度を確認したい」という方には、手始めとして勉強サイトの確認がおすすめです。
12. CCNAの勉強サイト
12.1 CCNAイージス
サイトURL:https://www.infraexpert.com/info/ccnaz7.html
CCNAの無料Web教科書です。個人の方が運営するサイトですが、市販の参考書と遜色ない、とても充実した内容に仕上がっています。そのほか同サイト「ネットワークエンジニアとして」では、ネットワークエンジニアに役立つ様々な情報が提供されています。
12.2 Ping-t
サイトURL:https://mondai.ping-t.com/g
企業による運営の勉強サイトですが、ユーザー登録を行うだけで閲覧できる無料Web問題集やコマ問集があります。ドラッグ&ドロップ問題のサンプルもあります。
特に多くの方による詳細な合格体験記を読めるということが大きな特徴です。合格までにかかった「学習期間」や「学習方法」が詳細に共有されているだけでなく、本番試験の雰囲気をつかめます。受験を考えている方は、ぜひ一度読んでみてください。
問題の答えがあっているかの手応えが感じられずかなり不安で、残時間30分で最終問題を解いたあとの「合格」の表示が信じられませんでした…(笑)
選択問題は、ルーティングテーブルの図を見て答えさせる問題が気持ち多かったと思います。
ドラッグ問題は従来型とコントロール型のネットワークの比較、AAAの機能の違い、コンソールログインの設定手順が出ました。
コンソール問題は、IPPhoneとPCをつなぐVLANの設定、イーサチャネルの設定、IPv4とIPv6のルーティング設定が出ました。IP設定やVLANの作成など、初期設定レベルのタスクはやり通し、後半の難しそうなタスクは捨てました。引用元:合格体験記|Ping-t
13. CCNAの試験日、試験会場は?
CCNAには、試験日や試験会場の指定はありません。自分にとって「都合のいい日」に「都合のいい場所」で、いつでも受験することができます。
申し込み受付期間 | 随時 |
---|---|
試験日 | 祝日を除く、月~土曜日 |
試験会場 | 全国のピアソンVUE公認試験会場
【試験会場(テストセンター)一覧】 |
合格発表 | 試験終了後、即時 |
13.1 申し込み受付期間
CCNAの申し込みは、試験希望日の前日まで可能です。しかしながら目標とする試験日を決めることで勉強計画もたてやすく気合も入ると思いますので、早めの申し込みがおすすめです。
13.2 試験日
試験が実施される日は、基本的に祝日を除く月~土曜日ですが、テストセンターにより休日が異なる場合もあります。念のため事前にご確認下さい。
試験が受験可能な時間帯も、会場により異なります。
13.3 試験会場
試験会場には全国100か所以上のテストセンターから、希望の会場を選択することができます。詳しくは表のリンク先をご覧下さい。
13.4 合格発表・合格証
合格発表は、試験終了の直後に画面上の表示で行われます。
印刷された合格証が必要な場合については、郵送で届けられます。申請から配送までに必要な時間は、6~8週間程度です。
14. CCNAの受験料とその支払方法は?
14.1 各試験の受験料
2025年1月現在、受験料は300米ドル(税抜)と設定されています。
日本円で受験バウチャーを購入する場合、42600円(税込)です。
試験名 | 料金 |
---|---|
200-301 CCNA | $300(税抜)
42600円(税込) |
14.2 受験料の支払い方法
オンライン申し込みの場合、支払いはクレジットカード、または事前に購入したバウチャーで行うことができます。
15. 受験申し込みの流れ
シスコ技術者認定試験の申し込みは、Cisco社の試験公式ページで行います。
1. まずピアソンVUE社のシスコ技術者認定試験のページから、Cisco社の試験予約ページに移動し、アカウント登録を行います。
→ピアソンVUE社申し込みページ
2. Cisco社のシステムにログインしたら、希望するテストセンターと日時を指定して、試験会場の座席を予約します。
3. 受験料の決済を行えば、申し込み完了です。
あとは予約した当日に、テストセンターへ向かってください。
16. 受験当日の流れ
当日は試験開始時刻の15分前までに到着しておく必要があります。なお試験時間に15分以上遅れると受験資格がなくなってしまい、その場合は受験料の返金は行われません。
身分証明書が2種類(1つは免許証やパスポート、マイナンバーカードなど、公的機関が発行し顔写真が入ったものであること)必要なので、忘れずに持参しましょう。
17. CCNAの再受験ポリシー
1回目の受験で残念ながら不合格となってしまった場合、同じ科目の2回目を受験できるのは中5日空けた翌日からになります。
なおPCのフリーズなどによりきちんと受験できなかった場合は、日程を改めての再受験が可能です。
18. CCNAの有効期限と資格の更新
CCNAなどシスコ技術者認定資格は、3年で失効してしまいます。資格を保持し続けるには、3年以内に同じレベル、または上位のレベルの試験に合格して資格を更新する必要があります。
厳しいようですが、この仕組みが常に資格をフレッシュな状態に保ち、即戦力につながる知識や技術があるというブランド力の裏付けになっています。
19. CCNA受験でネットワークのスキルチェック
ベンダー資格は受験料が高額なため受験をためらうことがあるかもしれません。しかしこれからネットワークの勉強を始めようとしたけれど何から手を着けていいのか分からないという方には、CCNAの学習を通して基礎を効率よく学べるというメリットがあります。
また日常的にネットワークの実務をこなしているという方にも、自分のスキルがどのくらいのレベルのものなのか、また偏っていないかなどを確認することができます。これまでの知識の整理や新しい発見にもつながるので、よければこの機会に練習問題など一読してみて下さいね。
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エンジニアカレッジは、2ヵ月の講座内でLinuCへの合格を目標としています。そこからさらに独学でCCNAを取得する方のケースでは、LinuCの合格後から早くても1か月半~2か月ほどの勉強期間を要しているようです。
なお同じく講座修了後の状態から、独学ではなく就職先の新人研修などで取得を目指す場合、その期間は1か月という場合が多いようです。
なおこれらのケースは1日に5~7時間程度勉強した場合ですので、1日の勉強時間があまり取れない方は、そのぶん長くかかると見積もった方がいいでしょう。逆に経験者の方であれば、もっと短時間で合格できるケースもあります。