PM(プロジェクトマネージャー)が独立を考える場合、「今より年収面などの待遇はアップするのかな?」や「40歳を過ぎてからでもフリーランスになれるの?」といった心配があるのではないかと思います。
本記事では、フリーランスのPM案件を受注するために必要なスキルや、年収の目安、独立時に必要な手続き一覧、案件の探し方、将来性などについて、具体的に解説しています。
独立を検討しているPMの方や、これからPMを目指している方なども、ぜひご覧になってください。
1. フリーランスのプロジェクトマネージャー(PM)とは?
フリーランスのプロジェクトマネージャーとは、基本的に企業には所属せず(例外もあります)個人事業主としてプロジェクトマネジメント業務を行う人のことです。
プロジェクトのスケジューリングやリソースの見積もり、実際の管理を担当することとなるため働き方としては「出社中心」になることも多いです。
つまり1つのプロジェクトに参画している期間中の働き方としては、会社員に近しいです。そして担当しているプロジェクトが手離れしたら、また別のプロジェクトに参画するといった動き方になるでしょう。
1.1 フリーランスPMの業務内容
フリーランスPMの業務内容には、次の4つが挙げられます。業務の性質上、正社員のPMと個人事業主のPMで行うこと自体はあまり変わりません。
まずプロジェクトの計画として、目標を設定し、スケジューリングやリソースの見積もり、割り当てを行います。プロジェクトが始まったら、開発がスムーズに進行するよう諸々を管理します。その間、プロジェクトの進捗状況をクライアント等に報告したり、チームメンバーの状況を把握するためにも、コミュニケーションが欠かせません。最後に成果物を納品し、プロジェクトを閉じる作業を行います。
これらの業務のうち、メインとなるプロジェクトの管理では、次のような業務を行います。
• チーム管理:チームメンバーを作業に割り当て・監督し、評価する
• リスク管理:リスクを予測し、それらに対処する戦略を立てる
• 予算管理:プロジェクトの予算を作成・管理する
• 契約管理:プロジェクトに関わる各種契約を管理する
• 品質管理:成果物が要求された品質基準を満たしているかチェックする
プロジェクトマネージャーの詳しい役割を知りたい方は、次の記事も参考にしてください。
1.2 フリーランスPMの具体的な働き方:1日のタイムスケジュール例
画像は、フリーランスエンジニアである平木さんの1日のタイムスケジュール例です。
平木さんは新卒で5年間SIerでSEとして勤務した後に、フリーランスエンジニアとして独立しました。上流エンジニアとしてのタスク作業をこなす傍ら、クライアントとの打ち合わせやプロジェクト進捗会の実施、タスク整理など、マネジメント業務を行っています。
現在の勤務形態は出社とテレワークが混在しており、これは出社する日のスケジュール例です。フルで出社する場合、会社員と近い働き方になる案件も数多くあります。フリーランスになっても働き方を大きく変えたくないという場合は、会社員に近い働き方ができる案件を選ぶことも可能です。
2. フリーランスPMの平均年収の目安
当サイト「プロエンジニア」に登録されている「プロジェクトマネージャー」の案件を集計したところ、平均年収は約1056万円でした。※1
なお月給の最低額は50万円から、最高額は120万円以上です。自身のスキルや案件との相性にもよりますが、年収1000万円も十分に狙えます。
「求人ボックス給与ナビ」が、2024年時点でサイト上に登録されているプロジェクトマネージャーの求人情報から算出した値によると、正社員プロジェクトマネージャーの平均年収は645万円でした。※2
なお厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査(職種別)※3 によると、R4年度の全一般労働者の平均年収は約497万円です。
※1:2023年6月時点でプロエンジニアに登録されているフリーランス案件情報のうち、月額報酬の下限額および上限額が公開されている案件より、単価平均×12か月で年収平均を算出
※2:2024年3月時点で「求人ボックス給与ナビ|プロジェクトマネージャーの仕事の年収・時給・給料」に公開されている求人統計データ
※3:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査にて公開されている職種別賃金のうち、「決まって支給する現金給与額」× 12か月分に「年間賞与その他特別給与額」を加えた値を算出
経験年数や勤務形態など条件別の相場を知りたい方は、次のページを確認ください。
▶ プロジェクトマネージャーフリーランス案件の特徴・単価・必要スキル
3. フリーランスPMの独立に必要な経験年数、スキル、資格
企業にとって、フリーランスのプロジェクトマネージャーは外部人材です。つまり即戦力を期待しているため、充分な経験年数やスキルが求められます。
主に求められるスキルや経験は、以下の通りです。
3.1 独立するには「10人以上、3年以上」の実務経験があることが望ましい
フリーランスのプロジェクトマネージャー案件で条件として求められることが多いのは、「プロジェクトマネージャーとしての実務経験が3年以上あること」です。小規模のプロジェクトでも実務経験があれば独立は可能ですが、メンバーが10名以上からなるプロジェクトのマネジメント経験があれば安心です。
▶ プロジェクトマネージャーフリーランス案件の特徴・単価・必要スキル
ただ前述の平木さんのように上流SEから徐々にマネジメント経験を積むことで、プロジェクトマネージャー案件を受注可能になるルートもあります。例えばリーダー経験で受けられるPM案件例として、次のような案件が挙げられます。
▶ 【PM】ライブ配信アプリの開発推進
3.2 フリーランスPMに必要なスキル
フリーランスのプロジェクトマネージャーに求められるスキルとして、次の4つがあります。
まずプロジェクト管理スキルやコミュニケーション能力など、プロジェクトマネージャーとしてのスキルが必要です。
さらにフリーランスの場合、自分が働く案件を受注するための営業力や、労働条件や報酬などの交渉力が必要です。また、自分で自分の作業の進捗や健康面を管理する必要があります。特にフリーランスは体調を崩した場合、収入が大幅に下がってしまう場合があります。健康管理には充分に気をつけてください。
3.3 フリーランスPMに有効な資格
フリーランスのPMにおすすめの資格として、次の3つが挙げられます。
◼ プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、プロジェクトマネジメントの知識を証明する国家試験です。官公庁の案件では資格保持者がプロジェクトに参加することが入札条件になっている場合があり、各社で資格手当を出すなどして重宝されています。フリーランスのPM案件でも、プロジェクトマネージャ試験の合格が望ましいとされている案件が数多くあります。
プロジェクトマネージャ試験について詳しくは、次の記事も参照してください。
◼ ITILファンデーション
ITILファンデーションは、ITサービスマネジメント※ についての知識を証明する国際資格です。そのため日本国外でも仕事をすることを考えた場合、特におすすめです。
※ITサービスマネジメントとは、ITシステムを安定稼働させるための運用管理業務全般のことを指します。ITILとは、ITサービスマネジメントの指標を英国の政府機関がまとめたものです。
ITILファンデーションについて詳しく知りたい方は、次の記事も参照してください。
◼ PMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)
PMPとは、プロジェクトマネジメントのスキルを認定するための国際資格です。マネジメント知識の参考書的存在である「PMBOK」※ を、しっかりと理解していることを証明します。こちらもITIL同様に、海外との仕事を視野に入れている方におすすめです。
※PMBOKとは、アメリカの非営利団体PMIが作成した、プロジェクトマネジメントに関する知識を体系的にまとめた参考書のようなものです。現在はプロジェクトマネジメントの世界標準になっています。
これらの資格を取得しておくと、「ウォーターフォールしか経験がない」「スクラムしか経験がない」という場合でも、他のマネジメント知識がある証明になります。経験の幅を広げたいという方にも、面接でのアピールポイントにできるのでおすすめです。
▶ プロジェクトマネージャーフリーランス案件の特徴・単価・必要スキル
4. 会社員からフリーランスPMへ|独立までの手順
会社員からフリーランスのPMになるまでの、一般的な手順をご紹介します。フリーランスになるまでの基本的な流れを把握する参考にしてください。
4.1 SEやプログラマーとして就職・転職する~マネジメントやリーダーの実務経験を積む
PMになるためには、まずSEやプログラマーとして就職し、上流工程の実務経験を積むところから始まります。そこから徐々にリーダーとして開発現場のマネジメントを行う経験を積んでいき、プロジェクトマネージャー向きの実務経験を積みます。
開発メンバーが100名を超えるような大規模プロジェクトでは、プロジェクトマネージャーは部長などの管理職が担当して現場レベルでのマネジメントは行わず、渉外や予算管理などに徹している場合もあります。そういった大規模案件でのプロジェクトリーダー経験は、プロジェクトマネージャー相当の経験内容として評価される場合があります。スキルシート(職務経歴書)で、担当した業務の範囲をしっかりとアピールすることが大切です。
4.2 個人事業主になるための手続きをする~退職する
給与以外での副収入が年間20万円を超えた場合、確定申告を行う必要があります。その際に個人事業主として市区町村の税務署に「開業届」を提出しておけば、控除額の幅が大きい青色申告ができるようになります。
開業届を出さずに事業を始めたり、青色申告を始めることに罰則はありません。ただし、原則として事業を始めて1か月以内に開業届を提出するように所得税法で定められています。
また、従業員を雇うなど事業の規模が大きくなる場合、個人事業主よりも法人として登録した方が、税金面で有利になるケースがあります。法人として起業する場合は、会社の設立登記を行います。
開業手続きについて詳しくは、フリーランスPMの開業手続きチェックシートを参照してください。
なお専業のフリーランスだけでなく、副業でも個人事業主として開業することができます。専業フリーランスになるために職場を退職する際には、早めの引継ぎがおすすめです。
4.3 フリーランスエージェントに登録する~案件に参画する
フリーランスが案件を探す方法についての詳細は、後述のフリーランスPMの案件獲得方法を参照してください。
案件に合格したらクライアントと契約を交わし、プロジェクトに参画します。報酬額や契約期間に行き違いがないよう、契約の段階でしっかりと確認しておきましょう。特に出社よりテレワークが主体の案件の場合は、日々の連絡方法なども事前に確認しておくことがおすすめです。
5. フリーランスPMの開業手続きチェックシート
これから個人事業主として開業する方へ、2024年時点で開業に必要な手続きをチェックシートにまとめました。
まず開業に必要な「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」の提出先は、納税地(住民票に記載されている住所)の税務署長です。
さらに前職を退職して専業になる場合は、ここで厚生年金から国民年金へ切り替える手続きが必要です。
健康保険については、退職しても2年間は継続して加入することができます。ただ後回しにしすぎていると「多忙でうっかり忘れていた」などが原因で、保険証に空白期間ができてしまうことも。トラブルを防ぐためにも、早めの手続きがおすすめです。
開業手続きについて詳しく知りたい方は、次の記事もご覧ください。
6. フリーランスPMの案件獲得方法
フリーランスのPMが案件を探す方法として、主に次の3つが挙げられます。
フリーランスとして充分な人脈や実績があるという方には、クライアントから直接案件を受注している方もいらっしゃいます。その方法が難しい場合、クラウドソーシングやフリーランスエージェントなどのサービスを通して案件を探す方法が一般的です。
クラウドソーシングやフリーランスエージェントは、どちらも案件を依頼したいクライアントと案件を探しているフリーランスのマッチングを行うためのサービスです。
サイトによって少し違いがありますが、これらのサービスには次のような特徴があります。
● クラウドソーシングサービス
フリーランスが自分で案件を検索し、クライアントと契約する場所を提供
● フリーランスエージェント
フリーランスが自分で案件を探すほか、条件に合った案件をエージェントが探すサービスを提供
副業の場合、クラウドソーシングの方が多彩かつ小規模の案件を扱っています。ただ専業フリーランスの場合、フリーランスエージェントの利用がおすすめです。
フリーランスエージェントは無数にある案件から依頼者のスキルに合う案件を探して紹介してくれるだけでなく、単価交渉の代理や、請求書発行などの事務処理も代行してもらうことができます。
雑務を効率的にこなして本来のPM業務に集中したいという方は、ぜひエージェントの利用を検討してください。
弊社サービス「プロエンジニア」では、フリーランスの方の独立支援のご相談も承ります。これまで支援した方の中には正社員時代のご相談から並走し、安心して独立していただいた実績もございます。
▶ 独立支援も無料で承っています。ぜひお気軽にご相談ください。
7. PMが独立することのメリットとデメリット
PMがフリーランスになった場合、次のようなメリットとデメリットが考えられます。
独立のメリットとして、まず受注する案件を自分で決められるという点が挙げられます。
そのため自分が伸ばしたいスキルに合った案件を受注したり、テレワークなど働く場所を選んだり、週に稼働する日数が少ない案件を選んだりすることができます。
また会社員であれば部署の業績などに左右されやすい収入も、フリーランスであれば自分のスキル次第で報酬が高額な案件を受注することが可能です。
一方で、フリーランスには収入が不安定というデメリットがあります。体調不良や不慮の事故などで仕事ができなくなった場合、会社員と違ってフリーランスは無収入になる可能性があります。雇用保険などの社会保障も少ないため、自分で必要な保険などを探して加入しておく必要があります。
このように収入が安定しない状況になると、社会的信用が低下してしまいます。安定した保障のある会社員より、フリーランスは家や車のローンや賃貸の審査が通りにくくなります。またクレジットカードを作るのも難しくなる場合がありますので、ローンを組んだりカードを作る予定がある方は、退職前に済ませておきましょう。
8. フリーランスPMの市場動向と将来性
まだまだ「プロジェクトマネジメントは正社員が行うもの」と考えている企業が多い状況です。しかし近年ではPM関連の案件の外注も増えており、プロジェクトマネージャーとして独立するフリーランサーの方も増えています。
優秀なPMを社内で育成するには時間もコストもかかります。そこでスポット参戦できる即戦力として期待されているのが「フリーランスのPM」です。
プロジェクトがある限りフリーランスのPMの需要もあり続けます。ただ、プロジェクトも時代とともに運用の仕方が常に変化していくものです。変化に対応できるよう、常にアンテナを張っておくことが重要です。
次の記事では、フリーランスのPMについて、プロエンジニアのエージェントが質問に詳しくお答えしています。独立を希望している方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
▶ プロジェクトマネージャーフリーランス案件の特徴・単価・必要スキル
9. フリーランスPMのキャリアパス
フリーランスのPMに考えられるキャリアパスとして、豊富な経験を武器にPMを続けることもできるほか、プロジェクト管理知識を活かしてITコンサルを目指す道が考えられます。
9.1 フリーランスのPMを続ける
例えばフリーランスのPMを続ける場合、次のような案件があります。
◼ 豊富な経験が評価される高単価のフルリモート案件
▶ 【PM/弊社実績多数】大手損害保険会社関連プロジェクトのマネジメント★上流設計経験者優遇!フルリモートで月100万~
こちらは月額単価100万円~120万円で、大手損害保険会社関連プロジェクトのマネジメントを行う案件です。マネジメント経験だけでなく、大規模案件での上流工程の設計経験があることが条件とされています。基本的にフルリモートで、私服勤務も可能な案件です。
◼ ビジネスレベルの英語力を付けると単価が上がる可能性がある
▶ 【PM/弊社実績多数】航空券予約システムのブリッジ業務★英語力優遇!リモート可で月120万~
こちらは月額単価120万円以上で、クライアントおよび外部ベンダーとの窓口として、やりとりを行うポジションを募集する案件です。マネージャーとしての経験のほか、英語での円滑なコミュニケーションスキルが求められます。このように、英語力があれば高単価の案件を受注できる機会が増加します。
9.2 フリーランスのITコンサルタントになる
フリーランスのPMからITコンサルタントを目指す場合、次のような案件があります。
◼ ITコンサルタント寄りのPM案件
▶ 【PM】スタートアップ企業における受託開発のPM・ITコンサルタント業務
PM案件の中でも、ITコンサルタント寄りの業務を行う案件です。クライアントからの要望整理及び、調整業務、課題解決の提案といった顧客折衝の経験のほか、要件定義や仕様書/設計書の作成経験が必要スキルに挙げられています。
◼ PM経験で応募できるITコンサルタント案件
▶ 【PM/PMO/コンサル】ECサイト構築(発注側IT課題解決)支援
こちらの案件は、プロジェクトマネージャーの経験があれば受注できるITコンサルタントの案件です。ただしPMならば内容は問わないというわけではなく、要件定義経験や予算管理経験、50人月以上のプロジェクトでのPL経験、課題解決経験などが求められています。
10. フリーランスでマネジメント業務を行っている方の事例|ご本人へのインタビュー
実際に会社員の上流SEからフリーランスの上流SEに転身した方の事例として、ご本人へのインタビューを紹介いたします。
◼ フリーランスでマネジメントも行っている平井さんへインタビュー
今はコロナの影響で、お客様との打ち合わせはオンライン上でおこなうことが多いですが、お客様と打ち合わせをして要件を詰めるところから、開発、テスト、リリースまで関わっています。
現在、プロパーの方が業務の中心にいて、それにつく形で仕事をしていますが、将来的にはメインに立てるようになりたいと思いながら日々仕事に励んでいます。
(中略)
今後、スキルアップをしていきたいなと思っているので、次の案件ではマネジメントに特化するなど自分の経験値をアップできる案件を見つけられたと思っています。引用元:フリーランスエンジニアはプログラミングスキルが全てじゃない-前職で培った経験や知識が現場で重宝されています|プロエンジニア
11. まとめ
管理職がなるものというイメージの強いPMがフリーランスとして独立することのメリットは、何より自分のライフスタイルに合った案件を選べるという点ではないでしょうか。
この記事がフリーランスという働き方を考える、お手伝いになりましたら幸いです。
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