IoTについての知識や技術を認定する資格として注目されている「IoTシステム技術検定試験」について、詳細をご紹介します。
IoTという言葉がたびたび聞かれるようになり、IoTって何だろう?と疑問を持たれる方も多いと思います。
IoTとは「Internet of Things」の略で、直訳するとモノのインターネットと表すことができますが、具体的なイメージが沸かず、ますます混乱してしまうかもしれません。
IoTは、私たちの身の回りにある家電や車など、あらゆるモノがセンサーや通信機能を持ってインターネットに繋がることで、それらの情報が新しい価値を生み出し、生活やビジネスに新たなイノベーションを起こす可能性を秘めています。
なお、IoTについては以下の記事でも解説していますので、合わせてご覧ください。
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モノのインターネット IoTの活用事例と市場規模から考える、エンジニアの需要
目次
1.IoTシステム技術検定試験とは
IoTシステム技術検定試験とは、IoT技術者の育成を目的としてMCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)が実施する検定で、2016年12月に第一回目が実施されました。
MCPCは、モバイルコンピューティングの普及促進を目的に1997年に設立された団体です。「IoTシステム技術検定試験」を実施することにより、5年間で5万人以上のIoT技術者を新たに創出することを目指すと発表されています。
2.IoTシステム技術検定試験の構成とグレード
IoTシステム技術検定試験は、基礎、中級、上級の3つに分かれています。各グレードに受験前提はなく、誰でもどの級からでも受験することが可能です。
公式サイトによると、試験の概要は以下のように定義されています。
「IoTシステム技術検定試験」は、IoTシステムを構築・活用するため基本的かつ実践的な技術知識の習得を目指す方を対象とし、IoTシステム構築・活用に関する技術知識を認定し、そのスキルを基礎、中級、上級の3段階で構成されます。
(引用元URL:http://www.mcpc-jp.org/iotkentei/gaiyou.html)
2.1 IoTシステム技術検定試験 基礎
IoTシステム技術検定試験の基礎は、IoTについての基礎知識を有することが認定されます。
IoTの基本的な用語を習得することにより、一般的なIoT関連の書籍の読解が可能となり、セミナー等における専門用語も理解できるようになります。
2.2 IoTシステム技術検定試験 中級
IoTシステム技術検定試験の中級は、IoTシステムの構築についての基礎技術を有することが認定されます。
IoTシステムの構成や通信方式、データ活用やセキュリティ対策等、IoTシステムの全体像を把握することが可能です。
2.3 IoTシステム技術検定試験 上級
IoTシステム技術検定試験の上級は、高度なIoTシステムの構築技術、および実践的な専門技術を有することが認定されます。
2019年1月現在、上級の試験はまだ行われていないようです。
3.IoTシステム技術検定試験の試験範囲
3.1 IoTシステム技術検定試験 基礎の出題範囲
IoTシステム技術検定試験の基礎についての試験範囲は、以下の通りとなっています。
試験レベル | 試験範囲 | 試験時間と問題数 |
---|---|---|
IoTシステム技術検定試験 基礎 | 1.IoTシステム構成と構築技術 IoTシステムアーキテクチャ、IoTサービスプラットフォーム 2.センサ/アクチュエータ技術と通信方式 IoTデバイス、ネットワーク、LPWA、プロトコル 3.IoTデータ活用技術(AI) ビックデータ分析技術、活用事例 4.IoT情報セキュリティ対策技術 脅威と脆弱性、セキュリティ対策技術、情報セキュリティの標準と法制度 5.IoTシステムのプロトタイピング技術 プロトタイピング活用 |
60分/60問 (マークシート) |
3.2 IoTシステム技術検定試験 中級の出題範囲
IoTシステム技術検定試験の中級についての試験範囲は、以下の通りとなっています。範囲としては基礎と同じ表記のようですが、中級の試験範囲には出題比率がプラスされています。
試験レベル | 試験範囲 | 試験時間と問題数 |
---|---|---|
IoTシステム技術検定試験 中級 | 1.IoTシステム構成と構築技術(出題比率5~15%) IoTシステムアーキテクチャ、IoTサービスプラットフォーム 2.センサ/アクチュエータ技術と通信方式(出題比率30~35%) IoTデバイス、ネットワーク、LPWA、プロトコル 3.IoTデータ活用技術(出題比率25~30%) ビックデータ分析技術、活用事例 4.IoT情報セキュリティ対策技術(出題比率20~25%) 脅威と脆弱性、セキュリティ対策技術、情報セキュリティの標準と法制度 5.IoTシステムのプロトタイピング技術(出題比率5~15%) プロトタイピング活用 |
90分/80問 (マークシート) |
3.3 IoTシステム技術検定試験 上級の出題範囲
2019年1月現在、IoTシステム技術検定試験の上級は実施されていないようです。
公式サイトによると、専門技術の講座を受講するほか、小論文の提出が必要とのことです。今後の情報に注目したいところです。
4.IoTシステム技術検定試験の有効期限はない
IoTシステム技術検定試験の有効期限は、今のところ設定されていないようです。
しかし、ベンダー試験で有名なCCNAは3年間、LinuC(LPIC)では5年間、資格の優位性の期限が設けらています。
IoT技術はこれから発展する分野と思われるため、技術進歩の流れに伴って、CCNAのように優位性期限が設けられるなど、試験の改定が行われることも予想されます。
5.IoTシステム技術検定試験の合格率・合格者数は非公開
IoTシステム技術検定試験の合格率、および合格者数は非公開となっています。
2018年12月に第5回の試験が行われたばかりの新しい検定のため、受験記などの情報も少なめですが、後述するテキストをしっかり学習することで合格は十分可能のようです。 今後受験者が増えるにつれて、難易度や必要となる勉強時間もより見えてくるのではないでしょうか。
6.IoTシステム技術検定試験おすすめの参考書
IoTシステム技術検定試験の試験対策に欠かせない参考書として、公式テキストが発売されています。
6.1 IoTシステム技術検定試験 基礎
IoT技術テキスト 基礎編
[MCPC IoTシステム技術検定基礎対応]公式ガイド
IoTシステム技術検定基礎対応の公式テキストです。基礎試験は2017年12月に初回試験として開始されました。
第1章 IoTの概要を知る
第2章 IoTデバイスを理解する
第3章 IoTにおける通信方式を知る
第4章 モバイル環境とその活用を知る
第5章 IoTでデータを活用する
第6章 プロトタイピングを知る
第7章 情報セキュリティを知る
第8章 IoTのエコシステムを知る
6.2 IoTシステム技術検定試験 中級
IoT技術テキスト
― MCPC「IoTシステム技術検定 中級」対応 ―
IoTシステム技術検定中級向けの公式テキストです。2018年10月に第2版が出版されました。
第1章 IoT 概要
第2章 IoTシステムのコンピューティング技術
第3章 IoTデータ活用技術
第4章 IoT通信方式
第5章 IoTデバイス
第6章 IoTシステムのプロトタイピング開発
第7章 IoT情報セキュリティ
第8章 IoTシステムに関する保守・運用上の注意点
6.3 受験対策講座も実施されている
参考書での勉強のほか、MCPC認定校において受験対策講座が実施されています。
また、公式サイトでは各グレードのサンプル問題が掲載されていますので、実際の試験の難易度や雰囲気をつかむためにも、目を通されることをおすすめします。
サンプル問題については、以下の公式サイトをご覧ください。
(サイトURL:http://www.mcpc-jp.org/iotkentei/text.html)
7.IoTシステム技術検定試験の受験料と支払方法
7.1 受験料
受験料は、基礎と中級で異なります。(※2019年1月現在、上級は未実施)
レベル | 受験料 |
---|---|
基礎 | 10,800円(税込) |
中級 | 15,100円(税込) |
7.2 受験料の支払い方法
受験料の支払い方法は、申し込み方法により異なります。
申込方法 | 支払方法 |
---|---|
個人申込み | クレジットカード決済またはコンビニエンスストア決済 |
団体申込み | バウチャーの団体購入による |
他のベンダー試験の支払い方法としてよく使われるバウチャーでの支払いは、団体申込のみで利用可能です。個人申し込みの場合はクレジットカードかコンビニエンスストア決済のみとなります。
8.IoTシステム技術検定試験の受験スケジュール
申し込み受付期間 | 試験日のおよそ2か月前 |
---|---|
試験日 | 年2回(7月、12月) |
試験会場 | 東京、横浜、名古屋、大阪、札幌、仙台、さいたま、広島、福岡(変動あり) |
合格発表 | 試験日の約1か月後 マイページにて合否発表:合格証書は合格発表後ダウンロード可能 |
8.1 申し込み受付期間
次回、第6回の試験の申し込み受付期間は、基礎・中級ともに、2019年4月25日(木)~6月18日(火)です。
申し込み受付期間は延長されることもあるのでご注意ください。
8.2 試験日と試験会場
次回の第6回試験は、基礎・中級ともに、2019年7月6日(土)に実施されます。
第7回目は2019年12月に行われるものと見込まれます。
試験会場は、申込み時に受験地(東京、横浜等)の指定はできるようですが、具体的な受験会場については申し込み後に通知されるようです。
8.3 申し込み方法
個人での試験の場合、まず申し込みサイトから新規ユーザー登録を行い、マイページ上から試験の申込を行います。
(サイトURL:https://atc.jjstc.com/mcpc/)
申込方法の詳細は公式サイトにも掲載されていますので、こちらも合わせてご覧ください。
8.4 試験当日に持参するもの
申試験当日は、受験票、および身分証明書、筆記用具、時計(携帯電話不可)を持参します。
また、本人確認用として、顔写真付の身分証明書(運転免許証またはパスポートなど)もしくは、保険証とクレジットカード、学生証とクレジットカード、社員証とクレジットカードの提示が必要となります。
8.5 合格発表と合格証書
合格発表は、試験日の約一か月後にマイページ上で見ることができます。
第5回の合否発表は、基礎・中級ともに、2018年12月20日(木)のAM10時~の予定です。
合格証書は発表から一か月の間、マイページ上からダウンロードが可能です。
9.「IoTシステム技術検定」と「IoT検定」の違い
本記事でご紹介している「IoTシステム技術検定」に加え、IoT関連の資格で挙げられるものとして、「IoT検定」(IoT検定制度委員会主催)があります。
・IoT検定について
IoT検定は、IoT普及を目的として2016年に始まりました。
レベル1~3の試験に加え、2018年10月からはユーザー向けとして「IoT検定ユーザー試験パワー・ユーザー」試験が開始されています。
検定の実施以外にも、IoTの導入を検討している全国の自治体などを対象に、主にIoT検定の合格者をコーディネーターとして紹介する活動もされているようです。
両者の主な違いとしては、受験者の対象だと思います。
IoT検定の試験範囲には、IoTの技術的視点のみならず、マネジメントや電波法などの法律関連、ユーザー視点からのスキル要件も含まれています。
資格名 | IoTシステム技術検定 | IoT検定 |
---|---|---|
主催 | MCPC (モバイルコンピューティング 推進コンソーシアム) |
IoT検定制度委員会 |
開始年月 | 2016年12月 | 2016年5月 |
対象 | IoTエンジニア寄り | IoTに関係する全ての人向け |
レベル | 基礎・中級・上級 | ユーザー向け・プロフェッショナル向けレベル1~3 |
受験料(税込) | 基礎 10,800円 中級 15,100円 |
ユーザー向け 8,640円 レベル1 10,800円 |
試験日程 | 7月と12月(年2回) | 随時 ※プロメトリックから予約可能 |
試験形式 | マークシート形式 基礎 60問/60分 中級 80問/90分 |
CBT形式 ユーザー向け:48問/40分 レベル1:70問/60分 |
備考 | 上級は準備中 ※2019年1月現在 |
レベル2~3は準備中 ※2019年1月現在 |
IoT検定についての詳細は以下から確認できますので、興味のある方はぜひチェックしてください。
10.IoTシステム技術検定試験でIoTエンジニアとしてのスキルアップ
いかがでしたでしょうか。
2016年の試験開始から間もないことや、3つのグレードのうち上級試験はまだ未実施(2019年1月現在)ということもあり、IoTシステム技術検定試験はまさにこれからの試験という印象です。
今後のIoT社会に向けて、IoTの導入や活用に対応できるエンジニアは不足していると言われています。IoTシステム技術検定試験をきっかけとして、IoT技術に触れてみてはいかがでしょうか。