ここ1~2年の間にPython(パイソン)の知名度はぐんぐん上がり、プログラミングに興味がある人やエンジニアであれば誰しもが一度は気になり注目する言語になっています。
そしてPythonと同時に耳にすることが増えた、「AI」「機械学習」「ディープラーニング」などのAI分野のキーワード。Pythonとはどのような関係性があるのでしょうか。
本記事では、今ではAI分野の開発に欠かせないと言われているPythonの概要や人気の秘密などについて解説します。
目次
2.1 外部ライブラリーが豊富
2.2 文法がやさしく他人が書いたコードでも読みやすい
2.3 情報を入手しやすくほぼ無償で利用できる
3.1 人工知能(AI)
3.2 IoT(アイオーティー)
3.3 データ解析や分析ツール
3.4 Webアプリケーションの開発
1. Pythonとは
Pythonは1991年にリリースされ、プログラムの記述や実行を簡単に行えるスクリプト言語のひとつです。
近年は世界でもトップクラスの人気を誇るプログラミング言語となり、特に機械学習やディープラーニングなどのAI開発においては必須言語としての地位を築いています。
多用途性を持ち、幅広いタイプのプログラムを作ることが可能であり、小規模なものから大規模なプログラム開発にまで対応できます。
1.1 Pythonの主な特徴
人気急上昇中のPythonですが、言語としてはどのような特徴があるのでしょうか。
◆ シンプルで文法がやさしい
シンプルな必要最低限のコードで多くの処理ができます。
文法はやさしくコードが読みやすいことから、初心者にも学びやすく、学校などでのプログラミング教育用にも使われています。
◆ 強力な標準ライブラリやフレームワークと充実した外部ライブラリ
Pythonでは多くのタスクをサポートするライブラリやフレームワークが豊富にあります。
また、AI分野を主とする外部ライブラリが充実しているため、これらをふんだんに活用することにより、工数を抑え生産性の高い開発が可能になります。
◆ 様々なハードウェアとOSに対応できる移植性の高さ
Windows、Mac、Linux、PlayStationなどに対応することができ、どの機種・OSにおいてもPythonで作ったプログラムは同じ動きをします。
◆ 埋め込みが可能
CやC++で作られたアプリケーションにPythonを埋め込んで機能を強化することができます。
また、CやC++のライブラリと連携してコードの一部を変換し、Pythonの処理速度を改善することも可能です。
2. 注目されるPythonの人気の秘密
ここ数年でPythonの注目度は一気に高くなり、書店でもPython関連本が増え目立つようになりました。
また、2020年からの基本情報技術者試験においては、プログラミング言語の選択肢としてCOBOLの代わりにPythonが採用されることも決定しています。
このPython人気の背景には今最も注目を集める「AIブーム」があります。
AI開発を行う上でPythonは最も使いやすい言語とされており、多くの企業がPythonをこぞって取り入れ、ディープラーニング(深層学習)や機械学習のためにPythonを学び始める人も増えました。
ここではPython人気の秘密を具体的に見ていきましょう。
2.1 AI分野の外部ライブラリーが豊富
Pythonでは、AI分野の標準ライブラリやフレームワークの他、オープンソースの外部ライブラリが多く公開されています。
ライブラリのアップデートも早く、これらを活用してスピーディーにAI開発を進めることが可能です。
【Pythonの主な外部ライブラリ】
◆ 深層学習:TensorFlow(Googleが開発) 、PyTorch(フェイスブックが開発)
◆ データ前処理:pandas(データ解析支援ライブラリ)
◆ webアプリケーション:Django(Web開発の機能全般を含むフレームワーク), Flask(軽量でカスタマイズ性が高いフレームワーク)
◆ 機械学習:scikit-learn(機械学習アルゴリズムに対応)
ライブラリやフレームワークに関してはこちらの記事も参考にしてください。
2.2 文法がやさしく他人が書いたコードでも読みやすい
Pythonはコンパイル不要のインタープリター方式であるため、ソースコードをそのまま実行することができます。
文法が簡単なことに加え、if文などのブロックをインデントで指定するというルールがあるため、プログラムの書き方が統一されることから、書きやすく、読みやすいという特徴もあります。
2.3 情報を入手しやすくほぼ無償で利用できる
Pythonは標準ライブラリやフレームワークをはじめ、多くの外部ライブラリがありますが、ほぼオープンソースのフリーソフトウェアのため無償で利用できます。
それらを多くのエンジニアや研究者が利用し、インターネット上にはPythonに関する様々な情報・ソースコード・サンプルが豊富にあり、サポートコミュニティも充実しています。
そのため開発時のトラブル時もネットで検索すれば解決策を見つけやすいこともPythonで開発する利点と言えます。
3. Pythonの強みが生かされている分野
前述したように、Pythonは幅広く様々なプログラムを作成できますが、特にPythonの強みが生かされている分野について解説します。
3.1 人工知能(AI)
学習・推論・判断などの人間の知能のはたらきをコンピューターが真似て行うことであり、また人口知能自らが考える力を備えています。
現在、あらゆる産業の分野でAI活用が進んできています。
ほんの一例を挙げると、人間の感情を搭載したロボットや、思考エンジンを搭載したAI将棋やAIチェス、AIによる交通渋滞予測などがあります。
3.2 IoT(アイオーティー)
IoTとは身の回りのあらゆるものにコンピューターが仕組まれ、インターネットとつながることを指します。
インターネットが広く普及した現代において、IoTは人々の生活に便利さや豊かさを提供する技術として注目されています。
一例として、車の自動運転や、家屋内のエネルギー消費の最適化、農業での作物管理や分析、遠隔医療システムなどがあります。
3.3 データ解析や分析ツール
ビッグデータ(巨大なデータ群)の中から価値のある情報を見つけ出します。
例えば、ユーザーの性別・職業・年齢と購入商品を分析して新製品を開発するなど、個人に特化したサービスの提供や、企業の業務効率化に役立ちます。
3.4 Webアプリケーションの開発
Youtube, Instagram, Dropboxなどの有名なアプリケーションもPythonで作られています。
Pythonは各種モジュールが充実していることもあり、容易にメンテナンスを行える機能を迅速に作れるため、大規模なWebアプリケーションへの対応が可能です。
Pythonの活用分野に関してはこちらの記事も参考にしてください。
4. 国内におけるPython活用事例
国内でも、企業や教育機関において積極的にPythonが活用されるようになってきました。
次にいくつかの例を挙げてみます。
4.1 ITベンダー企業
◆ NTTデータ
高解像度の衛星画像を用いた自動運転車用の高精度地図の自動生成を他社と共同で検証中
◆ NEC
AI人材育成のための「NECアカデミー for AI」を社会人・大学生対象に開講
NECのAIプラットフォーム「AAPF」を活用してNECグループ社員向けのAI教育を実施
4.2 AI(人工知能)スタートアップ
◆ ABEJA
広告クリエイティブ画像の効果を予測するAIモデルを開発
◆ COGENT LABS
世界最高水準の文字認識精度 手書き文書データ化サービス「Tegaki」の提供開始
4.3 ユーザー企業
◆ ブリジストン
AI搭載のタイヤ成形システム「EXAMATION」にセンサーを取りつけデータを分析
◆ JINS
AIによる眼鏡の似合い度判定サービス「JINS Brain」搭載のミラーが店舗に設置
◆ 楽天
「Rakuten AI Platform」による、自動応答サービス「チャットボット」
4.4 教育機関
◆ 東京工科大学
コンピュータサイエンス学部では2020年より「人口知能専攻」と「先進情報専攻」の2専攻体制に
◆ 関西学院大学
AI活用人材育成プログラムを開始。2019年秋よりPythonによる機械学習・深層学習を開講
◆ 福山大学
2017年より情報工学科で1年生にPython必修化
5. まとめ
Pythonは主にAI開発に使われることで有名になりましたが、様々な分野での活用が始まり、今後も用途が広がると期待されています。そんな中でPythonを扱えるエンジニア不足もあり、多くの企業・教育機関も力を入れ始めました。
こうした動きからもPythonのスキルを身に着けることはエンジニアとしての可能性が広がることにつながると言えるでしょう。
言語仕様のシンプルさから学習にも取り組みやすいプログラミング言語ですが、Pythonの充実したライブラリやフレームワークをどう活用するかが重要です。
Pythonに興味があれば、Pythonで実現できることのために必要なスキルなどにも目を向けていくことをおすすめします。