一人での客先常駐に辛さを感じているエンジニアの方に向けて、ストレス対策やよりよい働き方を伝授します。客先常駐はなぜ辛いと言われてるのか、客先常駐に向いているタイプ、客先常駐のメリット、客先常駐型フリーランスとしての働き方など、あらゆる観点から客先常駐を解説。辛さから抜け出す方法を探ります。ぜひご一読ください。
1. 一人での客先常駐は何が辛いのか?
一人での客先常駐はなぜ辛いと言われているのでしょうか?
主な原因を知り、どのようにストレスを回避すればよいかを考えていきましょう。
1.1 心細い、孤独感を感じる
◆周りに頼れる仲間がいない
常駐先にたった一人で身を置くという状況そのものが、非常に心細く、辛さを感じるといいます。周りは皆お客様なので、自分だけが外部の人間であることに孤独を感じることもあるでしょう。困ったときに頼れる仲間や上司が近くにおらず、周囲とのギャップに辛くなりやすいのです。
◆トラブルを一人で対処しなくてはいけない
業務でトラブルが起きた際、一人で対応しなければいけないことも辛さの要因です。もちろん自社へ相談するなどの対応を取ることも可能ですが、いつトラブルが発生するかわからないので常に気を張っていなくてはいけないという気持ちがプレッシャーとなり、いつしかストレスとなってしまうようです。
◆自身のITスキルに不安を感じる
経験が浅いエンジニアであればあるほど、自身のITスキルに不安を感じ、ストレスを溜め込みがち。実際に問題なく業務に対応できていたとしても、お客様が求める技術を提供できているか不安を感じてしまい、辛くなってしまうこともあるかもしれません。
1.2 仕事が面白くない、キャリアアップ出来ない
◆単調な作業ばかりで、エンジニアとしての仕事ができない
テストや資料作成、ヘルプデスクばかり任されるなど、常駐先での仕事内容に不満を感じている人もいます。案件によってはエンジニアとしての技術を活かすことができず、プログラミング作業のない日々を余儀なくされる場合もあります。
◆自分の意思で現場を選べず、案件ガチャになることが多い
一人での客先常駐に限ったことではありませんが、自分の意思で現場を選べないことから、客先常駐は業務内容に対してミスマッチが起こる"案件ガチャ" という状況に陥りやすいです。炎上している現場に投入される、開発のごく一部しか担当できずストレスがたまるなど、さまざまな辛さが。
◆エンジニアとしてのスキルを磨けず、キャリアアップが見込めない
所属会社の指示で現場が振り当てられるため、思うようにキャリアを築きにくいことも辛さを感じる要因です。また、一人での客先常駐は教えを請う人が周りにいないため、先輩エンジニアの技術に触れることができず、スキルアップの機会が少ないこともマイナス要素になってしまうのです。
1.3 給与が低い
◆自社開発のエンジニアと比較して給料が低い
客先常駐の場合、業界大手のSIer企業など上位層からの下請けがほとんどです。上位層にガッポリとマージンを抜かれた額で開発の発注を請けているので、必然的に給料も少なめ。働いた成果をお給料で感じにくいのは辛いものです。
◆顧客との契約金と自身の給与に大きなギャップがある
企業に勤めている以上仕方のないことではありますが、常駐先と勤め先の企業が交わす契約金が自分の給与として支払われる訳ではありません。しかしその支払額の大きな差にショックを受けてしまい、やる気を削がれてしまうケースも考えられます。
1.4 安定しない
◆勤務時間や通勤場所が安定しない
常駐先によって勤務時間や通勤時場所がその都度変わるので、生活スタイルが安定せずストレスを抱え込みやすいのも辛さの要因。場合によっては長時間の通勤時間を余儀なくされ、結果プライベートな時間が浸食されてしまうこともあるでしょう。
◆案件ごとに人間関係を築かなければならないストレスがある
常駐先が変わるごとに環境も変わるため、その都度新しい人間関係を築かなくてはならないこともストレスに繋がります。エンジニアとしての技術の他、社交性まで必要とされることを重荷に感じる人も少なくありません。
◆派遣先によって稼働時間に差がある
派遣先の勤務形態や残業に対する考え方によって、在籍する企業の勤務形態に関係なく稼働時間に大きな差が生まれます。土日出勤を余儀なくされる、サービス残業が多いといった派遣先への勤務の場合、ストレスは溜まる一方でしょう。
2. 客先常駐が辛いと感じるタイプ
そもそも性格的に客先常駐が向いていない、という場合も大いに見受けられます。
どんなタイプが客先常駐を辛く感じやすい傾向にあるかを以下にまとめました。
2.1 技術志向が高い人
客先常駐は基本的に単調な仕事が多く、仕事内容は派遣された企業に沿っての内容となるため、技術志向が高く、仕事にやりがいを求める人の場合は辛くなりがち。また、現場での様子が伝わりにくいため、自社での評価を得られにくい傾向にあります。褒められたい、認められたい、評価されたいタイプの人は不向きと言えるでしょう。
2.2 ストレス耐性の弱い人
コミュニケーションを取るのが苦手で、案件ごとに新しい人間関係を築くことに負担を感じる人は、客先常駐に辛さを感じてしまいやすいでしょう。また、客先常駐の場合は顧客やプロパーの立場が強く、肩身の狭い思いをすることもしばしば。慣れない開発環境、慣れない人間関係のなかで仕事をこなすには強いメンタルが必要。ストレス耐性が弱いと客先常駐では疲弊してしまう危険性が大です。
2.3 ライフワークバランスを大切にしたい人
案件ごとに勤務地や通勤時間、勤務時間などすべてが変わる客先常駐。残業時間も現場次第で変わり、休みを取得する難易度が高い場合も。ライフワークバランスを大切にしたい方やプライベートを充実させたい方、日々のルーティンを大切にしている方には不向きと言えるでしょう。
3. 客先常駐のメリットもある
デメリットをいくつかご紹介しましたが、客先常駐にはメリットもあります。
デメリットとしてあげた部分も、捉え方次第でメリットになりえます。
現在、常駐で辛い思いをしている方は、改善のヒントになれば幸いです。
3.1 現場経験をたくさん積める
企業に勤めながら、さまざまな会社のシステムや技術、プロジェクト業務に就けるため、たくさんの現場経験を積むことができます。システムのテストや品質管理、製造や設計など、案件によって業務は多岐に渡り、その都度新しい技術を身につけることができます。
3.2 人脈を増やせる
いろんな現場で働ける客先常駐は、人脈を増やすチャンスに溢れています。特に転職や独立を考えている方には大きなメリットに。常駐先にコネクションができれば、その分チャンスも増えるので、積極的にコミュニケーションを取ることをオススメします。常駐先へ引き抜かれたいと考えるなら、プロパーに気に入ってもらえるよう行動してみるのも一つの手です。
3.3 メンタルが強くなる
周りに先輩や上司がいない状況は一見マイナスイメージですが、メンタルが強くなるという利点も。常駐先での業務を一人でこなすことは、顧客への対応能力、自ら考え突き進む行動力が身につきます。また、客先常駐は顧客の要望で現場に赴いているため、『顧客の役にたつ仕事を任されている』とプラスに捉えると、仕事にやりがいを感じられるように。
3.4 大手企業で仕事ができる
常駐先が大企業の場合、憧れの大手企業で仕事ができるというメリットも。セキュリティがしっかりしたキレイなオフィスでの仕事は、それだけでステータスを感じることができるでしょう。就活中は雲の上の存在だった企業で働けるチャンスがあるのは、客先常駐の特権です。
4. 客先常駐が辛い時のアドバイスと対処法
メリットがあると分かっていても、日々のストレスから解放されず、辛さを感じている人もいるでしょう。
ここでは辛さを乗り越え、ストレスを軽くする対処法をお教えします。
4.1 客先常駐で辛さを乗り越える
まずは辛さを乗り越えられるよう常駐先で努力してみましょう。具体的な対処法は以下になります。
◆コミュニケーション能力を磨く
周囲の人間関係が良くなれば、業務も円滑に進みます。まずは自身のコミュ力を磨くことを心がけましょう。積極的にコミュニケーションをとり、顧客とよい関係性を築くことで、孤独からも解放されるはず。上手く立ち回ることができれば社内の情報を察知しやすくなり、常駐先の業務を早く覚えることもできるでしょう。
◆勉強してスキルアップする
いろんな現場に行くことが出来る『客先常駐』であることを最大限に活かし、修行期間と割り切って自学でスキルアップをはかりましょう。業務に関連する資格を取得することもひとつの手段です。今の現場でスキルアップできないと思ったら、次の現場に備えて独自の勉強を進めるのもアリです。
◆副業する
給与の低さに辛さを感じているなら、副業がオススメ。給料を交渉することも大切ですが、応じてもらえない場合も残念ながらあります。副業は仕事の幅を広げるよい機会になりますので、ぜひチャレンジしてみてください。エンジニア職は副業を容認する企業も多いので、実践しやすい対処法です。本業がおろそかにならないよう、無理のない仕事量の案件を選ぶことがポイントです。
4.2 自社内で異動する
自社の上司に相談して、客先常駐ではない自社オフィス勤務に切り替えられないかを交渉してみましょう。
自社での勤務が難しい場合は、常駐先を別案件に変更できないか相談してみてもいいかもしれません。
仕事内容が合わない事、精神的な面で辛い部分など、あなたの想いをしっかり伝えれば、配置転換をしてくれる可能性もあるでしょう。
4.3 転職する
状況を一掃するという意味では、転職も解決策のひとつです。
自分の希望が叶わない環境で消耗してしまい、心が病んでしまうようなら、環境を変えることに目を向けてみてもよいでしょう。
客先常駐で経験を積んでいれば、今より給料や労働条件の良いところが見つかるはず。
自社開発をしている企業、社内SEやITサポートを募集している企業、リモート勤務できる企業など、自分にあった働き方ができる企業を探してみてください。制度が整っている企業や魅力的な常駐先がたくさんある企業であれば、同じく客先常駐の企業を選んでもよいかもしれません。
自分が働く上で何を重視しているのかを今一度考えて、転職先を探してみてください。
4.4 客先常駐型フリーランスになる
給与面が納得できない、もっと自分で案件を選びたいと考えているなら『客先常駐型フリーランス』として独立してみてはいかがでしょうか。
常駐先で一人で働くということに変わりはありませんが、直接報酬を手に入れられるため収入はアップしますし、自分にあった案件を選ぶことも可能になります。
顧客から信頼・評価されて契約金額が上がれば、それに連動して報酬もあがります。
ただし正社員と違い、確定申告などの事務作業が発生すること、不況時には予算削減のために解約される場合もあることを心に留めておいてください。
5. 失敗しない転職活動方法を知っておこう
転職や独立で客先常駐の辛さから脱却したいと考えた場合、失敗しない転職活動方法を知っておくことが大切です。求人サイトに登録して自分で転職先を探すか、転職エージェントに頼んで自分に合った転職先を探してもらうか。大きく2つの活動方法があります。
現状の辛さから解放されても、転職先やフリーランスとしての仕事がうまくいかないなんてことのないよう、事前にそれぞれの特徴をしっかり調べて転職活動に活かしてください。
5.1 求人サイトを使うリスクを理解しておく
求人数が多く、マイペースに転職活動ができることが魅力の求人サイトですが、インターネット上の情報だけで企業を判断せねばならず、ブラックかどうかの判断が難しいという側面も。また、自身で企業を探したり面接日を調整したりというリスクがあります。
受けたい特定の企業が決まっていたり、応募条件に合わない応募がしたい(たとえば年齢条件が当てはまらないが応募したい、正社員でなくフリーランス常駐として起用してほしいなど)場合は、求人サイトを使わずに転職活動を行うことをオススメします。
5.2 転職エージェントを使うメリット
転職エージェントとは、転職を希望している人に対して、新たな人材を求めている企業をエージェントがマッチングしてくれるサービスです。
キャリアや希望条件などをもとに、最適な就職先を自ら探すのはなかなか大変なもの。客先常駐の辛さや現場の雰囲気などをしっかり理解しているエージェントにサポートしてもらうことで、 ミスマッチの少ない仕事に出会うことが可能に。
採用までのスケジュール調整をエージェントが担当してくれることもメリットのひとつです。
6. 自分に合った働き方を見極めることが重要
転職する、副業する、社内異動を希望するなどさまざまな対策をご紹介してきましたが、どの働き方を選択しても、自分にあったワークスタイルを見極めることが重要です。
今辛いと感じている常駐先での仕事も、仕組みを理解し、自分にあった働き方にシフトチェンジしたら、辛さを回避できるかもしれません。
常駐先にスキルがそぐわない、常駐先での業務に居心地の悪さを感じる、周りに頼れる人がいないなど、辛いと感じる要因は多々あると思います。
おそらく客先常駐という働き方が辛いのではなく、常駐先での状況が辛い方が多いのではないでしょうか。
今置かれている環境をよりよく改善し、自分にあった働き方を見極めることでも、辛さを回避することは可能です。安易に環境を変えようとするだけでなく、さまざまな面から働き方を見直した上で、転職や独立を考えてみてください。
7. まとめ
一人での客先常駐が辛い要因は、周囲に頼れる人がおらず、トラブルも一人で対処しなければならない心細さ、安定しない勤務形態、安い給与、そして単調な作業への不満などが主な原因であることがわかりました。
しかし、捉え方によっては現場経験もたくさん積め、人脈を広げられるなどメリットもたくさんあります。
客先常駐が辛いと感じている方は、まず現状のマイナスポイントを洗い出し、プラスに捉えられることがないか、改善点はないかを考えてみてください。
それでもやっぱり辛かったり、自分の思い描くキャリアにこのままでは進めないと感じたなら、転職や独立などを視野に入れるとよいでしょう。
みなさんが笑顔で充実したエンジニア人生を送れることを願っています。