これからスクラムマスターになりたいという方へ、おすすめの資格を3つご紹介いたします。それぞれの難易度や費用、勉強方法を比較した上で、「3つのうちどの資格が向いているのか選ぶ方法」などもご紹介しています。ぜひご覧ください。
1. 【スクラムマスター向け】スクラム関連おすすめ資格まとめ
1.1 スクラム開発とは
スクラム開発とは、アジャイル開発の手法の一つです。スクラムというチームを組み、次のような役割を決めて開発を進めていきます。
• スクラムマスター:チームメンバーを管理し、円滑にプロジェクトを進める責任を負う
• プロダクトオーナー:最高決定権を持ち、プロダクトに対して責任を負う
スクラム開発では、開発に携わる全ての人を「チーム」と呼び、チーム一丸となって最大限の価値を提供するという考えに重点を置いています。
スクラムマスターの役割については以下の記事も参考にしてください。
1.2 スクラムマスターとは
スクラムマスターは、チームメンバー全体の管理者として、開発メンバーのサポートを行うとともに、外部の関係者にもスクラムの価値を理解してもらうように働きかけます。
メンバーやプロジェクトに問題が生じた場合は、どのような問題がチームにあるのか、円滑に進んでいない要因はどこにあるのか等を整理して、成果を最大限に活かすように注力します。
1.3 スクラムマスター向け資格にはどのような種類がある?
スクラムマスターに特化した資格としては、次の3種類があります。
• Certified ScrumMaster®(CSM®):認定スクラムマスター
• Professional Scrum Master™(PSM)
• Registered Scrum Master®(RSM)
また、アジャイル全般であれば、アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験もあります。
詳細は、以下の記事をご覧ください。
2. スクラムマスターに関する資格3つを比較
スクラムマスターに関する3つの初級資格を、表にまとめました。
資格名 | Certified ScrumMaster®(CSM®) | Professional Scrum Master™1(PSM1) | Registered Scrum Master®(RSM) |
---|---|---|---|
難易度 | 3段階の初級 | 3段階の初級 | 3段階の初級 |
試験内容 | 研修+試験 | 試験 | 研修+試験 |
合格基準 | 50問中 37問以上
(ただし研修での評価により、筆記試験を受けられない可能性あり) |
80問中85%以上 | 30問中75%以上 |
試験の言語 | 日本語に対応 | 英語のみ | 日本語に対応 |
受験料 | 20~30万円程度
(研修実施団体による) |
150米ドル
(22,500円程度) |
22万円(税込) |
更新料 | 100米ドル | なし | 50米ドル |
有効期限 | 2年間 | なし | 1年間 |
公式HP | https://www.scrumalliance.org/ | https://www.scrum.org/ | https://scruminc.jp/ |
それぞれの試験について、詳しくご紹介します。
3. Certified ScrumMaster®(CSM®):認定スクラムマスター
出典:Odd-e Japan
Scrum Allianceが提供する「認定スクラムマスター(CSM)」は、数あるスクラムマスターの中で最もメジャーな資格です。
資格名 | Certified ScrumMaster®(CSM®) |
---|---|
難易度 | 3段階の初級 |
試験内容 | 研修+試験 |
合格基準 | 50問中37問以上
(ただし研修での評価により、筆記試験を受けられない可能性あり) |
試験の言語 | 日本語に対応 |
受験料 | 20~30万円程度
(研修実施団体による) |
更新料 | 100米ドル |
有効期限 | 2年間 |
公式HP | https://www.scrumalliance.org/get-certified/scrum-master-track/certified-scrummaster |
3.1 認定スクラムマスター(CSM)の難易度
まずCertified Scrum Master(CSM)の研修を受講し、研修+テキスト+演習をこなします。研修を途中で離脱したり、トレーナーから適性がないと判断された人物は、資格試験の受験自体ができません。特に演習パートは非常にハードで、スクラム未経験・未学習の場合は気合を入れて研修の受講と復習をする必要があります。合格率は非公表です。
試験そのものの難しさ以上に、研修全体のハードルが高めに設定されています。トレーナーは論理的に弱い箇所や穴がある箇所の演習を通じて徹底的に指摘し、特にグループによる演習を重視します。初日に課題が出され、課題解決の方法を話し合い、グループワークで「全員が合意する」状態に導き、ステークホルダー(研修においてはトレーナー)に内容を判断してもらうのが一連の流れです。
なおCSMの取得後1年以上のスクラム開発の実践経験を積むことで、「上級認定スクラムマスター®(A-CSM®)」の受験が可能になります。さらに最上位資格として、「認定スクラムプロフェッショナル®(CSP®-SM)」が提供されています。
3.2 認定スクラムマスター(CSM)の料金・費用
料金は研修の実施団体により異なり、相場は約20万円~30万円程度です。
3.3 認定スクラムマスター(CSM)の勉強方法
CSMは初級かつ研修つきの試験ですが、研修内容がかなり実践的なこともあり、ある程度の実務経験を積み、基礎知識を身につけてからの挑戦がおすすめです。
研修を受ける前には、公式のスクラムガイドの最新版に目を通しておきましょう。
研修後の試験対策としては、有料で過去問や模擬試験が販売されています。
CSMは、特に研修の対策が重要です。実務経験が足りないと感じる場合は、フォーラムなどで仲間を募り、模擬プロジェクト運営などを実践してみることもおすすめです。
4. Professional Scrum Master™1(PSM1)
出典:scrum.org
Professional Scrum Master™1(PSM1)は、Scrum Org. によるスクラムマスターの認定資格で、圧倒的に低コストで受講ができます。研修やトレーニングへの参加が必須ではないため、150ドルの受験料のみで取得可能です。
またPSMには有効期限がないため、資格の更新料も不要です。知識の裏付けとなる認定資格は欲しい(腕試ししたいなど)が、スクラムマスターとしての在り方を極めるというよりはゼネラリスト志向の人や、コストを抑えたい人におすすめです。
資格名 | Professional Scrum Master™(PSM) |
---|---|
難易度 | 3段階の初級 |
試験内容 | 試験 |
合格基準 | 80問中85%以上 |
試験の言語 | 英語のみ |
受験料 | 150米ドル
(1$=150円の場合、22500円) |
更新料 | なし |
有効期限 | なし |
公式HP | https://www.scrum.org/ |
4.1 PSMの難易度
研修・トレーニングへの参加が必須ではないため、CSMのような研修そのものを乗り越える難度の高さはありません。
一方で資格試験そのものの難易度はCSMより高めに設定されています。スクラムガイドをしっかり読み込むなど事前対策が必要です。
2025年1月時点で、試験は基本的に英語で実施されています。日本語を希望する場合は、Google翻訳が利用可能です。ただ翻訳は完全ではないため、分かりにくいところは英語で確認できる程度の英語力があれば安心です。
PSM1の合格後は、上位資格としてPSM2、PSM3が提供されています。
4.2 PSMの料金・費用
PSMの受験料は150米ドルです。
4.3 PSMの勉強方法
Scrum.orgではOpen Assessmentという何度でも受けられるプレテストがあり、出題傾向を把握できます。さらには英語力向上のため、スクラムガイドを英語で読み込むなど対策するのがおすすめです。
合格をより強固なものとするには、Udemyの対策コースの練習テストと、PSM I™ Preparation Quiz – Real Modeを2~3周して95~100%の正答率を取れるようにしておくと安心です。
5. Registered Scrum Master®(RSM)
Registered Scrum Master®(RSM)は、Scrum Incによるスクラムマスターの認定資格です。Scrum Inc. JapanはKDDI株式会社、株式会社永和システムマネジメントとScrum Inc.の、3社による合弁会社です。
スクラム経験有無に関係なく、誰でも受講可能なのが特徴で、研修を受けたのちにメールでWebサイトへのログイン情報が届き、サイト上で試験を受けて合格すると資格が得られます。不合格の場合でも2回目は無料、3回目以降は25ドルで再度受験可能です。
資格名 | Registered Scrum Master®(RSM) |
---|---|
難易度 | 3段階の初級 |
試験内容 | 研修+試験 |
合格基準 | 30問中75%以上 |
試験の言語 | 日本語に対応 |
受験料 | 22万円(税込) |
更新料 | 50米ドル |
有効期限 | 1年間 |
公式HP | https://scruminc.jp/ |
5.1 RSMの難易度
研修が終了するとメールでサイトURLが送られ、試験を受けることができます。四択問題が30問あり、全問解答するとすぐに結果が表示されます。
75%以上の正解で合格です。不合格の場合でも2回目をすぐに受けられるため、試験そのものの難易度はそれほど高くないといえます。スクラム未経験者も受講可能の研修、かつ系統立ててスクラムを学べるため研修の内容が身についていれば1回~2回の受験で合格できる可能性が高いでしょう。
完全な上位互換の資格ではありませんが、キャリアアップ資格として、Scrum Inc. JapanではRegistered Scrum@Scale Practitioner®(RSSP)などが提供されています。さらに英語では、Registered Scrum Trainer™ (RST)という講師向けの資格も提供されています。
5.2 RSMの料金・費用
料金は22万円(税込)です。
5.3 RSMの勉強方法
試験内容自体は研修で内容を網羅している&再受験が即時可能なため、研修の内容が定着していれば問題なく解けます。
スクラム開発が完全未経験の場合は、事前に公式のスクラムガイドに一通り目を通しておくことがおすすめです。
英語が苦手な方の場合は、日本語の書籍で学習することもできます。
■ SCRUM BOOT CAMP THE BOOK スクラムチームではじめるアジャイル開発
【著者】西村 直人、永瀬 美穂、吉羽 龍太郎
【出版社】翔泳社
【発行日】2020年05月20日
【価格】2,640円(税込)
【ページ数】288ページ
出典:Amazon
6. スクラムマスター向け資格関連のよくある質問・Q&A
スクラムマスター向け資格関連のよくある質問・Q&Aをまとめました。
6.1 資格を取得しなければ、スクラムマスターになることはできないのでしょうか?
スクラムマスターの資格はいずれも民間資格であり、国家資格ではありません。よって資格保有者でなくとも「スクラムマスター」と名乗ることは可能です。
スクラムマスターの資格取得は知識・スキルの客観的証明、および「研修でスクラムマスターに関する経験値を高める」ことの意味が大きいです。さらには、未経験者で就活をする際の会社へのアピール材料や社内での昇進・昇格の対象になったりメリットが大きいので、資格の取得をおすすめします。
6.2 スクラムマスター関連の資格を取るには、どんなスキルセットや学習が事前に必要ですか?
「PSM」は試験内容は難しめですが、研修がないため、実務経験がそれほどなくても充分な試験対策で合格することが可能です。
「RSM」は研修で体系的に学べるため、こちらも実務経験が少なめでも問題ありません。
「CSM」は研修そのものの難易度が高めに設定されており、業務での開発経験・マネジメント経験を積んでいることが前提です。経験が浅い場合は、RSMや、アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験の受験から始めるのもおすすめです。
6.3 スクラムマスター関連の資格3つのうち、どの資格を選ぶべきですか?
就職、転職などの場面でより実用的だと判断される資格としては、CSMとRSMが挙げられます。これらはいずれも数日にわたる研修・トレーニングに参加した上で、試験を受験する形式です。さらに資格に有効期限があるため、知識がフレッシュな状態で保たれていると考えられるためです。
「CSM」は最もメジャーと言われている認定資格です。ただしトレーナーに資質がないと判断された場合は、研修終了後の試験を受けられないという厳しさがあります。研修でもトレーナーが受講者に厳しく接するケースがあるため、スクラム開発の実務経験が充分あり、かつ実力をつけたい方におすすめです。※1
研修内容に関してはここで詳細は明文化しませんが、実際に受講してみて、この歳になってここまで精神的に追い込まれるとは思いませんでした。3日間でスクラムマスターのマインドセットをこれでもかというほど叩き込まれます。
※1:認定スクラムマスター研修に行ったら認定されなかったので別の研修行った件
「RSM」はKDDIなどが参加した合弁会社の主催で、ワークショップが分かりやすく、楽しいという声が多いようです。スクラム開発の実務経験はあまりない方が、体系的に学ぶ場合におすすめです。※2
ワークショップが楽しい
※2:なんちゃってスクラム実践者が CSM 研修を受けて痛感したこと(RSM と CSM の違いを添えて)
「PSM」については研修が不要、かつ有効期限がないため、受験や維持にかかる費用をかなり安く抑えることができるというメリットがあります。
3つの資格それぞれに特徴がありますので、好みや目的に合わせて選択してください。
6.4 スクラムマスター向けの他のおすすめ資格には、どのようなものがありますか?
アジャイル開発に特化した資格として、「アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験」があります。アジャイル試験の詳細は、以下の記事をご覧ください。
また、広くプロジェクトマネジメントに関する資格として、「プロジェクトマネージャ試験」もおすすめです。PM試験は人気の国家試験であり、受験料も安く、有効期限もありません。アジャイル・スクラム開発以外にも広くマネジメント知識をつけるためにも、挑戦してみてはいかがでしょうか。
6.5 スクラムマスター関連の資格に、有効期限はありますか?
CSMは2年(更新費用:$100)、RSMは1年(更新費用:$50)の有効期限があります。PSMについては、無期限となっています。
6.6 スクラムマスターになれば、年収はアップしますか?
スクラムマスターは、資格が取れたらイコール認定されるというものではありません。とはいえ、スクラムマスターを名乗るほどの経験を持つ方の多くが、高い年収を獲得しています。
例えばフリーランスの場合、スクラムマスター経験で受注できる案件の多くが、月額単価100万円前後(年収1200万円)に設定されています。
▶ 参考:スクラムマスターの案件情報|プロエンジニア
7. まとめ
研修や更新が必要な資格は、取得費用が高額になりがちです。しかしそのぶん、職場での昇進や転職の場面において、実践的な実力があるという証明になります。
3種類それぞれに違った特徴があるので、ぜひ貴方に合った資格を探してみてください。
当サイトプロエンジニアのコンサルタントが厳選したおすすめのフリーランス案件特集はこちら
特集ページから案件への応募も可能です!
実際にフリーランスエンジニアとして活躍されている方のインタビューはこちら