Linuxエンジニアとは、インフラエンジニアの中でも特にLinuxの扱いに特化したエンジニアのことです。今回はその詳しい仕事内容や、実際に貰える年収、また今から目指す場合に気になる今後の需要などをご紹介したいと思います。
1. Linuxエンジニアとは
Linuxエンジニアとはインフラエンジニア、特にサーバーエンジニアの一種であり、中でもLinuxというOSの利用を得意とするエンジニアのことを指しています。
1.1 Linuxエンジニアの定義
それでは、Linuxエンジニアの定義をもう少し詳しく解説していきたいと思います。
■ インフラエンジニアの一種
Linuxエンジニアとは、大カテゴリに分類すると「インフラエンジニア」に属する職種です。インフラエンジニアは主にITインフラ設計、構築、管理、運搬を担当しており、ネットワークエンジニアや、サーバーエンジニアと呼ばれる職種はこのインフラエンジニアに該当します。このサーバーエンジニアの中でもLinuxの利用に特化したエンジニアが、Linuxエンジニアと呼ばれています。
■ Linuxに特化した人材
前述の通り、Linuxエンジニアはインフラエンジニアの中でもLinuxに特化しているエンジニアのことを指します。
なおLinuxは現状、サーバーOSの主流となっています。理由はGPL(General Public License)というライセンス体系を採用しており、自由に改変と再配布を行える、つまり無償で利用できるためです。よって有償のサーバーOSを導入するよりも安価でコストの優位性が高くなります。
さらに自由に改変が可能ということは、コードの中身を見ることができるということです。そのためエラーが発生した時に、その発生箇所を特定しやすいという利点も挙げられます。
また構成を柔軟に変更することが可能であることから、その利点を生かし超軽量なディストリビューションも多数提供されています。そのため、性能が低い機器でも軽量に動作しやすいのです。
2. Linuxエンジニアの役割・仕事内容
Linuxエンジニアの作業は、次のような流れで行います。
要件定義 | 顧客要望をヒアリングし、どんなものを構成するか検討する |
---|---|
設計 | どのハードウェアを使い、どんな設定にするかを検討する |
構築 | 設計した内容に沿って、実機を調達・接続して設定を行う |
テスト | 設計した通りに出来上がっているか確認する |
運用・保守 | 動作状況を監視し、トラブル発生時に対応する |
2.1 要件定義
まず顧客から必要な機能や性能をヒアリングし、どのようなシステムを構築するか検討します。Linuxサーバ設計の方向性を検討し、高可用・高信頼インフラの構築を目指します。この段階で事前のアセスメントやPOCを十分に行って、OSS製品の適用可否や仮想化可否、および移行可否も判断します。
2.2 設計
標準構成を検討します。必要に応じて「セキュリティ設計」や、使用するハードウェアとの互換性を意識した上での「ドライバやファームウェアのバージョン選定」などを行います。また各種サーバーの設定値もここで決定しておきます。またログの管理など、運用開始後の対応など、細かな部分まで決定しておく必要があります。
2.3 構築
機器を調達し、実際に接続するなどの構築を行います。決定した標準構成に沿って、サーバ機器に OS (Linux)やミドルウェア(ApacheやMySQL)をインストールする作業を行います。ここでしっかりと、高可用・高信頼インフラを構築しておく必要があります。
2.4 テスト
設計書に記載されている通りに問題なく動作するか、細かくチェックを行います。
2.5 運用・保守
構築したサーバーが正常に動作しているかを日々監視し、障害が発生した場合には速やかにトラブルシューティングを行います。
3. Linuxエンジニアに求められるスキル
Linuxエンジニアに求められるスキルは、Linuxに関する技術や知識のみではありません。この項目では、Linuxに関すること以外でLinuxエンジニアに必要なスキルをご紹介します。
3.1 コミュニケーションスキル
顧客と円滑なコミュニケーションを取り、正確な要件定義を行うためにも、コミュニケーションスキルは重要です。
ITインフラは、IT関連の業界だけでなく、流通や製造など様々な分野や規模のサービスへと導入されています。つまりITインフラやLinuxへの知識が豊富な顧客ばかりとは限らないため、顧客が本当に必要としているものを引き出し、読み解くスキルが重要になります。
要件定義の段階で認識に齟齬があると、後々サービスのダウンやエラーの原因になり得て、顧客に損害を与える可能性もあります。
3.2 多彩なオープンソースソフトウェア(OSS)への高い理解度と開発経験
顧客の様々な要望に答えるためにも、Linux以外の多彩なオープンソースソフトウェア(OSS)についての知識と活用スキルを持っていることも重要です。
3.3 アセスメント
Linuxエンジニアの業務には、既システムのLinux移行や、OSSを活用して顧客要件に沿ったシステムを開発する案件なども多数存在しています。
事前のアセスメント※1 やPoC※2 を十分に行い、OSS製品の適用可否、仮想化可否、および移行可否を判断する必要があります。さらに移行方式の検討・立案および仮想化による性能・運用面への影響度も評価し、各工程の作業計画を立案する必要があります。
そのため、正確なアセスメントができる知識が必要となってくるのです。
※1 アセスメント:机上等で実施した調査・分析による、設計や移行についての評価
※2 PoC(Proof of Concept):概念実証=新しい概念やアイディアが実現可能か検証すること
3.4 経理、生産管理などの業務知識
特に業務用アプリケーションについて、経理や生産管理などアプリケーションの開発が目的となる場合には、現場に即した業務知識を持ち、利用者側の視点にも適宜立ちながら仕様書をまとめ上げていくスキルが必要になります。
3.5 プログラミングスキル
システムの設計を行うためには、プログラマでなくとも「プログラミングによって何ができるか」をきちんと理解しておく必要があります。
また現場でのとっさのコード修正が必要な場面もあり、Linuxエンジニアにとってもプログラミングのスキルは重要です。
4. Linuxエンジニアに役く立つ資格
Linuxエンジニアに役立つ資格には、次の2つが挙げられます。それぞれの試験には、次のような特徴があります。
• LinuC:
日本国内における実務に沿うことを重視した資格
• LPIC:
国際的な試験であり、日本国外でも通用する資格
4.1 LinuC
LinuCは、日本国内におけるLinuxエンジニアの実務に沿うことを特に重要視した試験です。特にこれからインフラエンジニアを目指したいと思っている方には、実務に必要な知識も得られるので特におすすめの資格となっています。
申し込み受付 | 随時 |
---|---|
試験日 | 祝日を除く、月~土曜日 |
試験会場 | 全国のピアソンVUE公認試験会場
【試験会場(テストセンター)一覧】 |
前提条件 | LinuC-1:特になし
LinuC-2:有効なLinuC-1を保有していること LinuC-3:有効なLinuC-2を保有していること |
受験料
(税込、1科目あたり) |
LinuC-1:16500円
LinuC-2:16500円 LinuC-3:16500円 |
4.2 LPIC
LPICは、Linuxのスキルを問う国際的な試験であり、日本国外でも通用する試験です。2016年12月時点で、全世界で18万人が認定を受けているとの発表がありました。海外も視野に入れている方におすすめの資格となっています。
申し込み受付 | 随時 |
---|---|
試験日 | 祝日を除く、月~土曜日 |
試験会場 | 全国のピアソンVUE公認試験会場
【試験会場(テストセンター)一覧】 |
前提条件 | LPIC-1:特になし
LPIC-2:有効なLPIC-1を保有していること LPIC-3:有効なLPIC-2を保有していること |
受験料
(税込、1科目あたり) |
LPIC-1:30000円
LPIC-2:30000円 LPIC-3:30000円 |
5. Linuxエンジニアの年収の目安
平均年収.jpの発表によると、インフラエンジニア全体の平均年収は550万円です。
特にインフラエンジニアの需要は年々高まっており、そのためエンジニアの不足から平均年収も上昇傾向にあるようです。最大年収については、1000万円を超えるケースも。
なお前述した「LPIC」保持者の平均年収は、450万円~650万円となっています。
参照:インフラエンジニアの年収や給料について詳しく解説します!|平均年収.jp
6. Linuxエンジニアの将来性
Linuxエンジニアをこれから目指すという方は、今が良くても将来的にどうなるのかが気になるところではないでしょうか。この項目では、Linuxエンジニアの将来性について紹介したいと思います。
6.1 インフラエンジニアの需要は安定的に存在する
最近ではシステムを実機ではなくクラウド上に構築する事例が増えてきましたが、それでもLinuxの需要は高い状態です。
なぜならば、人気のクラウドサービスであるAWS(Amazon Web Service)は「Cent OS」というLinuxの一種とほぼ同様に使える「Amazon Linux」を提供しているからです。
またGCP(Google Cloud Platform)でも、「Cent OS」を使用した仮想マシンの構築を行うことができます。
これらのことから、今後もLinuxを扱えるインフラエンジニアの需要が衰えることはないでしょう。
6.2 Linuxはクラウド時代の重要なスキル
Linuxエンジニアのための資格であるLinuCは2020年の出題範囲改定で、物理サーバーのみならず、オンプレミスやパブリッククラウドの活用なども試験範囲に含むようになりました。
以前は物理サーバーで使用されるプリミティブなコマンドのみが出題範囲でしたが、改定後は統合監視や自動化ツールなどに関する知識も問われるようになっています。
さらにこのようなパブリッククラウドの技術者には注目が高まっており、そこで利用されるLinuxの専門知識を持つエンジニアもまた、需要が高まっているのです。
7. まとめ
インフラエンジニアは、今後も需要があり続ける職種です。さらにLinuxに対する知識を深めることで応用力が高まり、どこの現場でも重宝される存在となるのではないでしょうか。インフラエンジニアを目指している方は、ぜひLinuxについても学んでみて下さいね。