ネットワークエンジニア向けの資格といえば、ベンダー系試験である「シスコ技術者認定」と国家試験である「ネットワークスペシャリスト試験」が有名です。今回はネットワークスペシャリスト試験について、取得する価値や年収への影響、シスコ技術者認定との相違点など、詳しくご紹介していきたいと思います。
目次
1.1 ネットワークに関するエキスパートスキルを示す国家資格
1.2 履歴書への書き方
2.1 NEとして就職する場合はとても有利
2.2 キャリアアップ転職でも有利な場面が多い
3.1 職場での評価
3.2 平均年収は他のITエンジニア職より高め
4.1 国家資格とベンダー資格
4.2 試験範囲・内容を比較
4.3 試験難度を比較
4.4 有効期限の有無を比較
4.5 前提条件を比較
4.6 受験料を比較
1.ネットワークスペシャリスト試験とは
1.1 ネットワークに関するエキスパートスキルを示す国家資格
情報処理技術者試験とは情報処理推進機構(IPA)が運営する国家試験であり、「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省によって認定されています。情報処理技術者試験には「レベル4」として9つの高度区分試験が設けられており、ネットワークスペシャリスト試験はそのうちの1つです。ネットワークエンジニアやインフラ系エンジニアを目指す方におすすめの試験とされています。
ネットワークの固有技術からサービス動向まで幅広く精通し、目的に適合した大規模かつ堅牢なネットワークシステムを構築し運用できるネットワークエンジニアやインフラ系エンジニアを目指す方に最適です。(IPA公式サイトより引用)
1.2 履歴書への書き方
履歴書には正式名称で書くことが一般的ですので、次のように表記できます。
「平成○○年○月 ネットワークスペシャリスト試験 合格」
ただし履歴書の書き方に決まった制度はなく相手に正しく伝わるようであればどう表記しても問題ありませんが、情報処理技術者試験は「試験」であり、厳密には公式に「資格」という表現はされていません。よってここでは「取得」ではなく「合格」と記載することがおすすめです。
2.ネットワークスペシャリストは転職・就職に有利?
新卒や第二新卒で就職する場合、ネットワークスペシャリスト試験に合格していると、ネットワークエンジニアとしてだけでなくIT系職種全般において効力を発揮します。高度区分試験は経験を積んだエンジニアが受験するケースが多く、就職活動時点で取得できている学生は僅かであるため、高い学習意欲を示すことがでるためです。
ただしネットワークエンジニア以外を受ける場合は、なぜネットワークスペシャリストを取得したのか、または、なぜネットワークエンジニアでない職種を志望したのかを説明できるようにしておく必要があります。
高度区分試験は補助金を出して取得を奨励している企業も多く、転職時にも評価される資格といえます。ただし「ネットワークに関する専門性の高さを示す」ために取得している必要があります。専門の異なる資格を片端から取得するスタイルでは、「資格のための資格であり、実務能力が伴っていないのでは」と思われてしまいます。例えばネットワークスペシャリスト試験に合格した次はデータベーススペシャリスト試験ではなくCCNPを狙うなど、「ネットワークの専門家」であることを補強するために取得することがおすすめです。
またネットワークエンジニア以外のエンジニア職種からネットワークエンジニアに転職する場合も、ネットワークに対する基礎知識がしっかりと備わっており、かつ学習意欲があると示すことができます。
3.合格する価値・評価と平均年収
国家資格に関しては、官公庁系システム開発案件の場合は入札条件になることもあります。(プロジェクトチームに○○の資格保持者が△名参加すること、など)そのため、企業によりますが重視されるケースが多くあります。減少傾向にありますが、資格手当や一時金がもらえる企業もまだ多く存在しています。
3.2 平均年収は他のITエンジニア職より高め
ネットワークスペシャリスト試験合格が直接影響するわけではありませんが、ネットワークエンジニアは需要のわりに不足しており、その他IT系職種と比べて年収が高めの傾向にあります。ネットワークエンジニアを目指す上で有利に働くという点で、ネットワークスペシャリスト試験合格者の平均年収は未受験者より高めになると考えられます。
職種 | 年収のボリュームゾーン |
---|---|
プログラマ | 250~600万円 |
システムエンジニア | 300~700万円 |
Webエンジニア | 300~700万円 |
組込み・制御系エンジニア | 400~800万円 |
ネットワークエンジニア | 400~800万円 |
4.ネットワークスペシャリスト試験とCCNPとの違い
4.1 国家資格とベンダー資格
ネットワークスペシャリスト以外のネットワークエンジニア向けの資格といえば、CCNPなどシスコ技術者認定試験が挙げられます。両者の最も大きな違いは、Nネットワークスペシャリストが国家試験であるのに対し、CCNPはベンダー試験であるという点です。
国家資格は国内では強い効力を持ち、官公庁案件の入札条件に登場することもあります。しかしながら、海外ではほとんどの場合に評価され難い資格になります。それに対して、世界的ベンダーが主催しているベンダー資格は海外でも効力のあるものが多く、シスコ技術者認定もそんな国内外問わず評価される資格のひとつとなっています。
4.2 試験範囲・内容を比較
高度区分試験は分野別になっているとはいえネットワークに関する知識全般から幅広く問われるのに対し、ベンダー資格は対象製品を深く掘り下げる内容となっています。
特にCCNPなどのシスコ技術者認定はシスコ社製品に特化しており、さらに「CCNP Cloud」や「CCNP Routing and Switching」など専門別に試験が細分化していることから、限られた範囲で深い知識が問われます。そのためネットワークスペシャリストよりCCNPの方が実践に寄った内容となっています。難度に差があることからも評価の上下は状況により変わりますが、一般的にベンダー試験の方が実務に役立つ資格と見られる傾向にあります。
4.3 試験難度を比較
シスコ技術者認定とネットワークスペシャリスト試験の試験難度の比較は、一般的に次のように表せます。
(易)CCNP << ネットワークスペシャリスト試験 << CCIE(難)
試験範囲の傾向が異なるため一概には言えませんが、CCNPは実務+αで学習が完了する方も多く、ネットワークスペシャリストほど広い範囲を網羅しなくて良いことから、CCNPの方が簡単と感じる方が多いようです。
ただしシスコ技術者認定の最上位資格であるCCIEについては、ネットワークスペシャリスト試験よりもかなり難度の高い試験です。ラボ試験と呼ばれる1日かけた実機試験を伴うなど、机上の勉強だけでなく十分な実務経験がなければ突破できない内容となっています。さらに筆記試験・ラボ試験共に試験が英語のみで行われることも、英語が苦手な方にとっては難度を高める原因となっているようです。
4.4 有効期限の有無を比較
資格に3年の有効期限のあるシスコ技術者認定と異なり、ネットワークスペシャリスト試験の合格者であるという肩書に有効期限はありません。ただし取得年のあとに関連業務に就いていないなど経歴にブランクがあると、有効な資格として見てもらえない場合もあります。
4.5 前提条件を比較
情報処理技術者試験には受験資格に制限は設けられていません。基本情報などに合格していなくても、いきなり高度区分試験から受けることができます。
CCNPは前提条件として、CCNAに合格していること(かつ有効であること)が必要です。余談ですが、CCIEについては前提条件なしで受験可能です。
4.6 受験料を比較
ベンダー資格は一般的に受験料が高い傾向にあり、CCNPもご多分に漏れず高額です。1科目約3万円で3科目合格する必要がありますから、最終的に9万円ほど必要になります。さらにラボ試験が存在するCCIEについては、合計で25万円ほどかかります。
それに対して国家試験であるネットワークスペシャリスト試験は5700円ですから、挑戦しやすいのではないでしょうか。
5.合格のメリットは他者からの評価だけじゃない
ネットワーク全般についての知識が広く問われるネットワークスペシャリストの試験対策を行うと、実務で長年ネットワークに携わっていても知らなかったという分野が意外に存在します。実務経験者の方にとっては自己評価の目安にもなり、知識が偏っていないかの確認としても使えるのではないでしょうか。
また日常的にネットワークの実務をこなしているという方にも、自分のスキルがどのくらいのレベルのものなのか、また偏っていないかなどを確認することができます。これまでの知識の整理や新しい発見にもつながるので、よければこの機会に練習問題など一読してみて下さいね。
次回はネットワークスペシャリスト試験の難易度について、詳しくご紹介したいと思います。
よければ合わせてご覧下さい。