ネットワークエンジニアのキャリアアップに繋がると言われている、ネットワークスペシャリスト試験。合格すれば、本当に年収アップや転職の成功に繋がるのでしょうか?
この記事では、ネットワークスペシャリスト試験に合格した場合に見込まれる年収の相場や、年収をアップさせるための具体的な方法を解説します。
1. ネットワークスペシャリスト試験とは
1.1 ネットワークに関するエキスパートスキルを示す国家資格
情報処理技術者試験とは情報処理推進機構(IPA)が運営する国家試験です。
情報処理技術者試験には「レベル4」として9つの高度区分試験が設けられており、ネットワークスペシャリスト試験はそのうちの1つです。ネットワークエンジニアやインフラ系エンジニアを目指す方におすすめの試験とされています。
ネットワークの固有技術からサービス動向まで幅広く精通し、目的に適合した大規模かつ堅牢なネットワークシステムを構築し運用できるネットワークエンジニアやインフラ系エンジニアを目指す方に最適です。
引用元:ネットワークスペシャリスト試験|IPA
1.2 履歴書への書き方
履歴書には正式名称で書くことが一般的ですので、次のように表記できます。
「平成○○年○月 ネットワークスペシャリスト試験 合格」
ただし履歴書の書き方に決まった制度はなく、相手に正しく伝わるようであればどう表記しても問題ありません。しかし情報処理技術者試験は「試験」であり、厳密には公式に「資格」という表現はされていません。よってここでは「取得」ではなく「合格」と記載することがおすすめです。
1.3 取得すると年収はどのぐらい上がる?
ネットワークスペシャリスト試験に合格することで上がる年収は、状況により様々です。例えば現在ITエンジニアではなく、これからIT業界へ就職や転職する予定もない方であれば、持っていてもあまり意味がありません。
現役のネットワークエンジニアの方の場合も、資格手当があるケースを除き、翌月から急に年収が上がるということはありません。ただ昇給時の評価では、ほぼ確実にプラスに働きます。
なお資格手当のケースとして、筆者が以前勤めていた企業では、高度試験に合格すると毎月3万円が資格手当として月給に上乗せされていました。その場合、単純計算で年収が36万円アップすることになります。
さらにこれからITへ就職・転職するという方にとっても、選考時に有利に働きます。理由は次の項目で詳しく解説します。
2. ネットワークスペシャリストは転職・就職に有利?年収アップにつながる理由
2.1 NEとして就職する場合はとても有利
新卒や第二新卒で就職する場合、ネットワークスペシャリスト試験に合格していると、ネットワークエンジニアとしてだけでなくIT系職種全般において効力を発揮します。高度区分試験は経験を積んだエンジニアが受験するケースが多く、就職活動時点で取得できている学生は僅かであるため、高い学習意欲を示すことがでるためです。
ただしネットワークエンジニア以外の職種を希望する場合は、なぜネットワークスペシャリストを取得したのか、または、なぜ取得したのにネットワークエンジニアでない職種を志望したのかを説明できるようにしておく必要があります。
2.2 キャリアアップ転職で年収を上げる方法
高度区分試験は補助金を出して取得を奨励している企業も多く、転職時にも評価される資格といえます。ただし「ネットワークに関する専門性の高さを示す」ために取得している必要があります。
専門の異なる資格を片端から取得するスタイルでは、「資格のための資格であり、実務能力が伴っていないのでは」と思われてしまいます。そこで、例えばネットワークスペシャリスト試験に合格した次は他分野の高度試験ではなくCCNPを狙うなど、「ネットワークの専門家」であることを補強するために取得することがおすすめです。
またネットワークエンジニア以外のエンジニア職種からネットワークエンジニアに転職する場合も、ネットワークスペシャリストはおすすめです。ネットワークに対する基礎知識がしっかりと備わっており、かつ学習意欲があると示すことができます。
2.3 未経験からネットワークエンジニアを目指す場合の年収目安は?
ネットワークエンジニアは、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」の分類では、「システムエンジニア(基盤システム)」つまりインフラエンジニアに含まれています。
「job tag」ではインフラエンジニアのスキル別年収データも公開しており、それによるとITSSレベル1~2(入門者レベル)の年収は420万円~620万円です。
国税庁が発表する「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、正社員(正職員)の全体の平均給与は530万円でした。つまりスキルが入門者レベルであっても、正社員全体の平均給与と同等の年収を得られることが分かります。
なおITSSとは、経済産業省の認定するITスキル標準のことです。IT関連の資格は、それぞれこのITSSのレベルが定められており、情報処理技術者試験およびシスコ技術者認定試験は、次のようにレベルが設定されています。
難易度 | 試験区分 |
---|---|
レベル1 | ITパスポート試験 |
レベル2 | 基本情報技術者試験、CCNA |
レベル3 | 応用情報技術者試験、CCNP |
レベル4 | ネットワークスペシャリスト試験、CCIE |
2.4 スキル別ネットワークエンジニアの年収は?
「job tag」によると、ITSSレベルとネットワークエンジニア(インフラエンジニア)の、スキル別年収は、次の通りです。
レベル1~2 | 420万円~620万円 |
---|---|
レベル3 | 450万円~700万円 |
レベル4 | 500万円~780万円 |
レベル5以上 | 600万円~950万円 |
さらにプロエンジニアに登録されている「ネットワークエンジニア」のフリーランス案件を集計したところ、平均年収は912万円でした。※1
※1:2023年6月時点でプロエンジニアに登録されているフリーランス案件情報のうち、月額報酬の下限額および上限額が公開されている案件より、単価平均×12か月で年収平均を算出
2.5 担当業務別ネットワークエンジニアの年収は?
スキルにも関連することですが、特にフリーランスエンジニアの場合、担当するフェーズによっても年収が変わります。やはりより高いスキルや経験が要求される上流工程に向かうにつれ、平均年収も上がる傾向にあります。
3. ネットワークスペシャリスト合格者の年収事例
3.1 職場での評価と年収の関係
国家資格に関しては、官公庁系システム開発案件の場合は入札条件になることもあります。(プロジェクトチームに○○の資格保持者が△名参加すること、など)そのため、企業によりますが重視されるケースが多くあります。近年では減少傾向にありますが、資格手当や一時金がもらえる企業もまだ多く存在しています。
3.2 平均年収を他のITエンジニア職と比較
ネットワークスペシャリスト試験合格が直接影響するわけではありませんが、ネットワークエンジニアは需要のわりに不足しており、その他IT系職種と比べて年収が高めの傾向にあります。ネットワークエンジニアを目指す上で有利に働くという点で、ネットワークスペシャリスト試験合格者の平均年収は未受験者より高めになると考えられます。
職種 | 年収のボリュームゾーン |
---|---|
プログラマ | 250~600万円 |
システムエンジニア | 300~700万円 |
Webエンジニア | 300~700万円 |
組込み・制御系エンジニア | 400~800万円 |
ネットワークエンジニア | 400~800万円 |
4. ネットワークスペシャリスト試験とCCNPとの違い
4.1 国家資格とベンダー資格
ネットワークスペシャリスト以外のネットワークエンジニア向けの資格といえば、CCNPなどシスコ技術者認定試験が挙げられます。両者の最も大きな違いは、ネットワークスペシャリストが国家試験であるのに対し、CCNPはベンダー試験であるという点です。
国家資格は国内では強い効力を持ち、官公庁案件の入札条件に登場することもあります。しかしながら、海外ではほとんどの場合に評価され難い資格になります。それに対して、世界的ベンダーが主催しているベンダー資格は海外でも効力のあるものが多く、シスコ技術者認定もそんな国内外問わず評価される資格のひとつとなっています。
4.2 試験範囲・内容を比較
国家試験は分野別になっているとはいえネットワークに関する知識全般から幅広く問われるのに対し、ベンダー資格は対象製品を深く掘り下げる内容となっています。
特にCCNPなどのシスコ技術者認定はシスコ社製品に特化していることから、限られた範囲で深い知識が問われます。そのためネットワークスペシャリストよりCCNPの方が実践に寄った内容となっています。難度に差があることからも評価の上下は状況により変わりますが、一般的にベンダー試験の方が実務に役立つ資格と見られる傾向にあります。
4.3 試験難度を比較
シスコ技術者認定とネットワークスペシャリスト試験の試験難度の比較は、一般的に次のように表せます。
(易)CCNP << ネットワークスペシャリスト試験 << CCIE(難)
試験範囲の傾向が異なるため一概には言えませんが、CCNPは実務+αで学習が完了する方も多く、ネットワークスペシャリストほど広い範囲を網羅しなくて良いことから、CCNPの方が簡単と感じる方が多いようです。
ただしシスコ技術者認定の最上位資格であるCCIEについては、ネットワークスペシャリスト試験よりもかなり難度の高い試験です。ラボ試験と呼ばれる1日かけた実機試験を伴うなど、机上の勉強だけでなく十分な実務経験がなければ突破できない内容となっています。さらに筆記試験・ラボ試験共に試験が英語のみで行われることも、英語が苦手な方にとっては難度を高める原因となっているようです。
4.4 有効期限の有無を比較
資格に3年の有効期限のあるシスコ技術者認定と異なり、ネットワークスペシャリスト試験の合格者であるという肩書に有効期限はありません。ただし取得年のあとに関連業務に就いていないなど経歴にブランクがあると、有効な資格として見てもらえない場合もあります。
4.5 前提条件を比較
情報処理技術者試験には受験資格に制限は設けられていません。基本情報などに合格していなくても、いきなり高度区分試験から受けることができます。
CCNPは、かつては前提条件として「CCNAに合格している」必要がありました。しかし現在は前提条件が廃止となりました。
4.6 受験料を比較
ベンダー資格は一般的に受験料が高い傾向にあります。
例えばCCNPの場合、コア試験が¥49,280(税込)でコンセントレーション試験が¥36,960(税込)となっており、合計で¥86,240(税込)の受験料がかかります。
さらにラボ試験が存在するCCIEについては、合計で25万円ほどかかります。
それに対して国家試験であるネットワークスペシャリスト試験は7,500円ですから、挑戦しやすいのではないでしょうか。
5. ネットワークスペシャリスト資格を活かして年収アップを実現するには?
5.1 高年収の求人を見つけるためのポイント
高年収の求人を見つけやすくするためのポイントには、次のような点が上げられます。
• 求人サイトは複数登録する
複数の求人サイトを比較検討し、高年収の求人を探しましょう。
• 転職エージェントを利用する
転職エージェントは個人にフィットする転職先を紹介されるだけでなく、非公開求人や企業の内情に詳しい場合もあります。
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5.2 資格取得後のキャリアプラン
ネットワークエンジニアは、まずネットワークの運用保守の案件からスタートし、設計構築などの業務へと段階を踏むことでキャリアアップしていくのが一般的となっています。
キャリアパスも様々で、
• マネージャーや管理職を目指す
• 技術者として専門分野のスペシャリストを目指す
• 経験を積んでコンサルタントを目指す
など、多岐にわたっています。このうちどのパスにおいても、ネットワークスペシャリスト試験に合格したことは有利に働きます。
6.【Q&A】ネットワークスペシャリストに関する疑問を解決!
6.1 ネットワークスペシャリスト試験に合格しても、実務経験がないと意味がないのでしょうか?
【A】意味はあります。未経験であっても、ネットワークに関する基礎知識を学んでいることが証明できるため、未経験からの就職に有利に働きます。
6.2 ネットワークエンジニアのおすすめ求人情報を教えてください
【A】例えば経験が浅くても受けられるフリーランス案件の場合、次のような求人がおすすめです。
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フリーランスネットワークエンジニア(インフラエンジニア)の求人動向について詳しくは、次の記事もチェックしてください。
7. まとめ:合格のメリットは他者からの評価だけじゃない
ネットワーク全般についての知識が広く問われるネットワークスペシャリストの試験対策を行うと、実務で長年ネットワークに携わっていても知らなかったという分野が意外に存在します。実務経験者の方にとっては自己評価の目安にもなり、知識が偏っていないかの確認としても使えるのではないでしょうか。
また日常的にネットワークの実務をこなしているという方にも、自分のスキルがどのくらいのレベルのものなのか、また偏っていないかなどを確認することができます。これまでの知識の整理や新しい発見にもつながるので、よければこの機会に練習問題など一読してみて下さいね。
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